陰陽師になりました。   作:ラリー

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24話

 

春虎視点

 

夏目の護衛に塾長が雇ったスーツ姿の仮面の男。

まちがいない。あの仮面は以前夏目が誘拐されたときに現れた謎の陰陽師の物だ。

本名以外は未だに不明だが、実力は夏目が誘拐されそうになった時に見たし、塾長のお墨付きだ。

塾長の話を聞けば、夏目にはさらに陰陽庁から護衛が配属されるというし、夏目の安全は飛躍的に上がるだろう。

ひとまず夏目に関しては安心した俺は、冬児を探す為に走り出した。

それなのに……。

 

「あの馬鹿、どこに行きやがった!?」

 

そこそこの時間を掛けて町を走り回り、冬児の馬鹿が見つからない現状に思わず悪態をつく。

コンや天馬、先生達も冬児を治療してくれる人を探してくれているのに!!

全然見つかりやしねぇ!!こうなったら……。

陰陽塾から出る際、本郷さんが『弱いが囮や盾に使える式神だ…持って行くといい』と

言って渡してくれた式札をしまっていたポケットから取り出す。

いや、ダメだ。

たぶん戦闘用だろうし、捜索には向かないだろう。

ちきしょう!!本当にどこにいやがるんだ!!

 

「そこの少年。人探しか?」

 

現状に一人でイラついていると見知らぬおっさんが声を掛けてきた。

 

「さっきから走り回っていただろう?誰か探しているのか?

誰をさがしているのか知らないが、それと同じ制服を着た少年なら少し前に見かけたぞ。

様子がおかしかったから覚えている」

 

おおっ!!天の助けならぬおっさんの助け!!

ようやく冬児の情報を掴めるぞ!!

 

「本当ですかっ!?一体どこで……」

 

「あの先のオフィスフィルの近くだ」

 

俺がおっさんが見た場所を聞くと、おっさんは右手で冬児が居た場所を指を差して

教えてくれた。

ってあの場所は……実技試験の場所じゃねーか!!

なんであんな所に居るんだよ!!

 

「あ、ありがとうございます!!本当にありがとう!!」

 

おっさんに礼を言って、再び走り出す。

あれ?

走り出した一瞬。おっさんに違和感を感じた俺は瞬時に振り返るが……。

さっきまで話していたはずのおっさんの姿は何所にもなかった。

 

 

夏目視点

 

陰陽塾で春虎と別れた私は、塾長に雇われた護衛の本郷さんと私が心配で付いてきてくれる事になった

倉橋さんの三人で民家のない広場に設置されたテントに来ています。

テントの外では陰陽師達が霊災の確保迎撃の為の準備をしていてとても慌しい様子を見せています。

そんな中、外の準備が出来るまで待機しているように言われた私は、陰陽庁から私の護衛任務に付く

人と出会う事になったのですけど……。

 

「初めまして……ではないか…じゃあ改めて、俺は独立祓魔官の小暮(こぐれ)禅次郎(ぜんじろう)。

今回君達には俺達と作戦を遂行してもらうことになった。はっきり言って危険な任務だ。

そこで、君達は俺と一緒に行動してもらう。つまり俺がそこの仮面の彼と同じ護衛役ってわけだ。

あんたも作戦中は俺のいう事をよく聞いて指示に従って欲しい。」

 

十二神将が護衛役!?

 

「ちょっと待ってください!フェーズ3の霊災を修祓するんですよね?

ぼくに付いていたら戦力的に……」

 

「アハハハハッ、大丈夫だ。今回の作戦では祓魔局が総力を結集する。

そんな心配はしなくていいよ」

 

戦力の低下について心配して発言してみましたが

どうやら、問題はなさそうです。

それにしてもこの人…緊急事態なのに態度が軽いような……。

 

「あ、それはそうと…きみら陣(じん)が担任なんだろ?

どう、あいつ?真面目に講師してる?」

 

「え?」

 

「……『陣』って」

 

言われて一瞬、私と倉橋さんは分からなかった。

けど、私達の担任ですから……。

 

「大友先生!?」

 

「お、お知り合いなんですか?」

 

倉橋さんと私は驚きを隠せませんでした。

意外です。意外すぎます。

まさか十二神将と大友先生が知り合いだったなんて……。

 

「知り合いって言うか……そもそも陰陽塾で同級だったから」

 

「ええ!?陰陽塾のっ?」

 

「あれ?そんなに意外か?陰陽庁には塾の卒業生なんか山ほどいるぜ?」

 

違います!そんな事で私達は驚いていないんです。

まさか……まさか大友先生が二十代だったなんて!!

 

「俺等は三六期生でさ…『三六(さぶろく)の三羽烏(さんばがらす)』なんて呼ばれていたんだぜ」

 

「小暮さんと大友先生が友達だったなんて……」

 

「きっと大友先生は小暮さんしか友達が居なかったじゃない?」

 

「凄くありえそうな……」

 

「でしょ?それにしても意外すぎる組み合わせね……あれ?」

 

小暮さんの話に倉橋さんと花を裂かせていると倉橋さんが何かに疑問を持った様です。

どうしたんでしょう。

 

「『三羽烏』ってことはもう一人居るんですか?」

 

「あ」

 

倉橋さんの疑問を聞いて、さっきまでの明るい表情を一変させバツの悪そうな顔を

する小暮さん。

その様子を見るに、どうやら地雷だった様です。

 

「うん…まぁ…その……いや、大した話じゃないんだけども……」

 

気まずそうにしどろもどろに話す。小暮さん。

正直どうすればいいのか戸惑います。

 

「失礼します。小暮独立官。お待たせしました」

 

テントに入ってくるスーツ姿の男性にホッっとした表情を見せた小暮さんは

そそくさと男性の隣に移動し、男性の紹介を始めました。

 

「呪捜部(じゅそうぶ)の比良多(ひらた)篤祢(あつね)だ。」

 

 

 


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