陰陽師になりました。   作:ラリー

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2話

前回の成功を機会に部屋に引きこもり、時間を掛けてゆっくりじっくりと

数年掛けて十二神将を完成させた俺だったが……。

いざ計画を進めようとハーレムを作ろうとした時、俺は一つ重要な事に思い至った。

 

 

式神のハーレムってオ○ニーみたいじゃね?

 

だって、自分で妄想した女(式神)で、もにょもにょ、もみもみするってそういう事だよね?

 

なんか想像していたらかなり悲しくなってきた……。

これも心の成長のせいだろうか?

まるで中二病から目が覚めた感覚に似ている……。

 

グッバイ俺の夢……。

 

人の夢と書いて儚い。

まさに言葉の通りだと感じた夏の日だった。

 

ちなみに式神製作に時間が掛かった理由は例の俺のイメージによる刷り込みが理由だ。

あの紅蓮を製作した後その問題は発覚した。

本人曰く「意識していれば武と呼べるが、油断してると名前を呼ぶ時、晴明になる」らしい。

紅蓮の問題を意識して、他の十二神将達を作ってみたつもりだがどういうわけか皆、紅蓮と

同じ問題を抱えてしまっていた。

意識しても式神を模るイメージが優先されるという事なのだろうか?

 

後、知られたら痛い事この上ない前世のアニメを元にした容姿を持つ

十二神将たちの存在を家族に隠す事を決め、彼等には非常事態以外では家族に姿を

あらわさないように命令しておいた。

家族にばれたらきっと悶え死ぬと思う。

 

 

……さて、そんな夢から覚めて心に傷を負いしばらく引きこもっていた俺は、弟である春虎と共に

土御門の本家に来ている。

なんでも本家の夏目ちゃんが熱を出したらしく、それを聞いた春虎が見舞いに行きたいと

父さんに言ったらしい。

そして、そんな息子の願いを父さんは条件付で叶えた……俺が一緒に行くならいいと…。

それを聞いた弟は、俺の部屋に乱入。

俺に付いてきてくれと頼んできた。

まあ、暇だったし傷ついた心を癒すための気分転換になるかもしれないと思いOK

をしたのだが……。

 

紅蓮(もっくんver)と勾陣(こうちん)本家に辿り着いた弟は夏目ちゃんに夢中。

夏目ちゃんも俺に一応挨拶はするがすぐに春虎といちゃいちゃしている。

 

要するに暇になり分家よりも大きな屋敷である本家の庭をこうしてプラプラと

歩く事になったのである。

 

「それにしても大きな庭だな……」

 

周りには緑が溢れ、庭の中心には大きな池まさに金持ちの庭だ。

そして無駄に広い。

当てもなく気分で歩いていると。

 

「ひっく……ひっく」

 

泣いている少女を発見した。

迷子か?

しかし、この土御門の家に子供が無断で入られるとは思えないし……。

そんな事を考えていると……。

 

「…!?」

 

俺の存在に気が付いた少女がはっとした表情になり、涙を勢い良く腕で拭う。

そして、涙を拭い終わると、俺を睨みつけてこう言った。

 

「な、泣いてなんかいないんだからね!!」

 

ツ、ツンデレ…?

 

「私はお父様達と客で招かれているのよ!けど、見て!」

 

自分は客と言い、何故か頭に指をさす少女。

迷子ではないらしいが、何故頭に指を指して俺を怒鳴る?

そして少女はこう続け手言った…。

 

「お祖母様にもらったリボンをこのお庭で失くしちゃったのよ。

大事お客様である私がよ?」

 

 

と……。

何と高慢なクソガキ様だろうか。

将来美人になりそうな顔をしている分、中身が典型的なわがままお譲でとても残念だ。

正直このままリボンなんぞ無視して帰りたいが、こんなクソガキでも一応、土御門の

お客様。

分家の俺が粗相をして、本家とクソガキの親の仲が悪くなったらどんな責任をとらされるか

分かったものではない。

ここはリボンを見つけるまで我慢だ。

 

「わかった。少し待っていてくれ」

 

内面ではメンドクセェと連呼しながら外面は笑顔にして対応する俺。

 

「紅蓮」

 

「…なんだ?」

 

今まで隠形(おんぎょう)して付いてきていた紅蓮が姿を現す。

その表情は、何を言われるのか分かっているのか、とてもふてくされた

ものだった。

 

「リボンを探して来い」

 

「……わかった」

 

主人である俺に対してジド目で睨んだ後、スタスタとリボンを探して

歩いて行った。

 

「ねえ……」

 

「どうした?」

 

「あのかわいい生き物は…何?」

 

「俺の式神だ」

 

「後で……その…触っても」

 

「いいぞ」

 

クソガキのお願いを快く了承する俺。

別に後は全て紅蓮に押し付けて春虎と家に帰ろう何て思っていない。

ただ、クソガキ様のご機嫌取りをさせるだけだ。

そして数分後。

 

見事リボンを見つけた紅蓮にクソガキの相手をさせて俺は弟と共に自宅へ帰ったとさ…。

 

ちなみに遅れて帰ってきた紅蓮はしばらく機嫌が悪かった。

 

 

 

☆☆

 

 

紅蓮視点

 

俺の主は俺が式神になった当初から持つ、記憶の晴明と呪力・容姿・声が

とてもよく似ている。

だからこの世に誕生してから数年、未だに主である武を晴明と呼んでしまいそうになる。

しかし、この問題は俺だけではない他の十二神将も同様に抱えている問題であり

俺達の軽い悩みの種だ。

 

名前を呼ぶだけで気を使うのは正直疲れる。

女の神将達は武に晴明と呼んで嫌われないように必死だ。

その事を、遠まわしで武に伝えると十二神将と武だけの空間なら晴明と呼んでもいいと

許しが出た。

これで少なくとも十二神将と武だけの場なら名前に気を使う必要はなくなりそうだ。

 

そう思っていた矢先に晴明……武が自室に引きこもってしまった。

俺を含めた十二神将の男たちは武の様子から距離をおいてしばらく様子を見ようと

したが女達はこれ幸いと武の世話をするようになった

 

勾陣 天一(てんいつ)太陰(たいいん)天后(てんこう)

 

俺達を武の部屋の隅に追いやり、食事や着替えなどなどの常識の範囲内で

武の家族にばれないように世話を焼いていた。

ばれないようにしているのは武の命令の為だ。

まあ、自分で言うのもなんだが十二神将全員が武の持つ膨大な呪力により生まれた

強力な式神だ。

おそらく武は陰陽師として手札は身内であろうとも、出来る限り隠しておきたいのだろう。

 

世話が常識の範囲内だったのは恐らく武が時々発作を起こすように悶えたり

 

「俺って奴は…中二……」

 

なんて呟いて居たのを見てさすがに自重したのだろう。

もし、自重をしていなかったら武の貞操は風前の灯だったのかもしれない。

 

ちなみに武の症状は癒しや浄化の力を持つ天一が、さりげなく診断したところによると

悶えるのは精神的疲労が原因らしい。

もしかしたら膨大な呪力を使い俺達十二神将を生み出したり、かなりの量の資料を

漁っては修行もしていた付けが来たのかも知れない。

まあ、いい機会だ。

しばらくは、ゆっくりしてもらおう。

 

☆☆

 

 

武が引きこもってから、ようやく精神が安定して来たらしく悶える頻度も少なくなった。

どうやら大分回復したようだ。

少しは元気になった武を見て安堵の表情を浮かべる俺達十二神将。

普段から難しい顔をしている青龍(せいりゅう)も珍しく穏やかな表情を時々

武に向けている。

 

そんなある日、武の弟が突然やって来て一緒に土御門の本家に行って欲しいと

頼み込んできた。

なんでも友達のお見舞いに行きたいのだとか……。

本当は休んでいたいのだろうが武は快く弟の頼みを承諾し、俺と勾陣を

後ろにつれて、弟と共に土御門本家へと訪れた。

 

 

 

「それにしても大きな庭だな……」

 

仲良くしている弟とその友達に気を使い、散歩をする事にした武は土御門本家の

庭を自然を楽しみながら歩いていると……。

 

「ひっく……ひっく」

 

幼い少女が泣いていた。

おそらく迷子か何かだと思う。

少女の事が気になっているのか様子を見ている武。

 

その後、武に気が付いた少女は泣いていたところを見られて恥ずかしかったのか

泣いていた事を誤魔化す様に、ここに居る理由を説明しつつ自分のなくしたリボンを

武のせいにして攻める少女。

正直、癇に障るがあの歳の子供ならしょうがない。

武もそう思っているのか紳士的な態度で少女に対応する。

さすが俺達の主だ。

器が大きく感心してしまう。

そして同時に勾陣の拳からギリリという音が聞こえて背筋に冷たいものを感じてしまう。

 

「紅蓮」

 

武の口から突然呼ばれる、騰蛇ではないもう一つの俺の名前。

この場面で名前を呼ぶのだ、おそらく俺に少女のなくしたリボンを探させる為に呼んでいる

のだろう。

まったく、身内にまで見せたくない手札である俺を泣いていた子供の為

に見せてしまうなど……。

甘いというか優しすぎるというか……。

おもわず渋い顔をしてしまうが、主である武の命令だ。

 

「…なんだ?」

 

俺はしぶしぶ隠形を解いて姿を現し、想像が容易な用件を聞く。

 

「リボンを探して来い」

 

武の用件は思っていた通りだった。

まったくリボンなどの為に……。

 

「……わかった」

 

まあ、命令されたらしょうがない。

俺は武の式神、主の願いを聞き入れるのも仕事のうちだ。

 

少女の臭いを辿りようやくリボンを発見。

この白い姿の時は本当に動物のように鼻が利いて便利だが、同時に情けなく感じる。

まあいい、さっさとリボンを持ち帰ってやるか。

ちなみに見つけたリボンは武たちが居る場所から少しはなれた少女と同じくらいの

高さの木の枝に引っかかっていた。

 

すぐさま、枝の上に上りリボンを手で持ってリボンを汚さないように

二足歩行で武たちの元に戻った。

少女は俺と武にお礼をいい、リボンを見つけて持ってきた俺を撫で回す。

正直、勘弁して欲しいのだが相手は子供。

撫で回す手を振り払う事も出来ず、武に助けを求めるが見放されてしまう上に

勾陣と弟の三人で先に帰ってしまった。

晴明ーーーー!!!??

 

「ねえねえ、そういえば聞き忘れていたんだけどさ……」

 

先程まで撫で回していた少女が突然、顔を赤くしモジモジとした動きをする。

どうしたのだろうか?

 

「貴方のご主人様の名前ってなんていうの?」

 

……。

 

……ふむ。

 

この後、俺は少女に武の名前を教え、武の事について教えれる範囲で教えてやった。

別に主である武を困らせようとは思っていない。

ただ、俺は少女の質問に対して一人言を言ったまでのこと……。

 

恋する少女の応援をして幾分かすっきりした俺は武の下へと帰った。

 

 

 

 

 

 


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