陰陽師になりました。   作:ラリー

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5話

塾長の電話から数日後。

弟、土御門(つちみかど)春虎(はるとら)が今度の月曜日から

陰陽塾に通うことになったと連絡が来た。

 

面倒を見るといったが具体的には勉強以外で何をすればいいんだ?

男子寮の案内か?それとも寮母である富士野 真子には注意しろと教えてやるか?

ちなみにこの男子寮の寮母さんはなんとBL好きの貴腐人であり、常に頭の中は

妄想で一杯、きっと我が弟は冬児と共に妄想の犠牲となるだろう。

 

そんな事を考えながら陰陽塾の廊下を歩いていると……。

目の前の曲がり角から一人の先生が出て来て、こっちに向かって来る。

右足の義足と眼鏡がトレードマークでたしか去年、陰陽塾にやって来た

大友 陣(おおとも じん)先生だったかな?

先生は俺を見ながらひょこひょことした足取りで向かってきているので、もしかしたら

俺に用事があるのかもしれない。

 

「おお、丁度よかった。今、君を探してたんや」

 

「何かあったんですか?」

 

相変わらずの軽いノリ。

優秀な教師らしいが言動や雰囲気からはとてもそうには思えない。

 

「いや、別にたいした事じゃないんやけどな?

武クンは、十二体の式神がおるんやろ?そろそろ登録をしてほしいって塾長が言ってたで」

 

「……」

 

隠形をして、いつものように肩に乗っている紅蓮がピクリと動いて反応する。

俺も、幸い表には出てはいないが内心では驚愕している。

何時バレた?

 

「まあ、秘密のほうがカッコええとか、先生も男やから分かるけどな?

一応、陰陽塾の決まりやから今日中にやっといてや」

 

「…わかりました。わざわざ伝えてくださり、ありがとうございます」

 

動揺を悟られ黒歴史がばれるのを恐れた俺は、さっさとこの先生から逃げるべく

お礼を言った後、陰陽塾のセキュリティであるオメガ達の下に向かって歩き始めた。

もちろん登録するのは十二神将達の本名ではなく、紅蓮のようなもう一つの名前の予定だ。

 

「ああ!それから言うの忘れとったんやけど……」

 

「…なんでしょう?」

 

歩き出して先生のいた場所から少し離れた階段を目の前にした時、先生に後ろから声を掛けられる。

 

「君の弟クンとそのお友達は僕が担任をすることになったからよろしゅうな」

 

「…そうですか」

 

 

「それとな……気ぃつけやー。塾長の式神は塾舎中におるから

秘密なんてあのバア様にすぐにバレてしまうで?」

 

「……」

 

 

この日、俺は予定通りにもう一つの名前でオメガ達に登録し男子寮へと帰還したが……

 

 

やべぇ!!黒歴史がばれたらどうしよう!!!

 

と塾長に怯え、眠ることが出来なかった。

 

 

 

☆☆

 

 

ったく、あのバア様は本当に人使いが荒いわ……。

唯でさえ、教職で忙しいのに本当に困ったもんや…。

そう心の中で愚痴りながら、土御門武の背中を見送る。

 

彼と話をする少し前、塾長に呼ばれた僕はさっき土御門武に言ったように

式神の登録をするようにと彼に伝える事と、彼は何かを隠しているかも知れないから

ついでに探ってきて欲しいと頼まれた。

まったく何がついでや、それが本命なんやろうが……。

 

生徒を疑いたくはないが雇い主の命令なら仕方がないと探りを入れてみたが

収穫はゼロ。

いやはや秘密が本当にあるのならとんだ狸やな……。

 

しかし、塾長が土御門とはいえ一人の生徒に興味を抱いているのは珍しい。

まあ、孫娘と夜光の生まれ変わりと噂されている夏目クンと言う例外は存在するんやけど……。

 

あのバア様は生徒に対して基本は放任主義にして実力主義。

無駄のないカリキュラムを作り、陰陽師として先の分からない生徒や

授業について来れない生徒を切り捨てる。

そんな人が一人の生徒に関心を持つのは本当に驚いたと同時に気になった。

 

塾長の狙いと、彼の秘密。

 

一体なんなんやろうな?

まあ、式神が秘密と関係しとるのは分かった。

後は僕なりに彼に接触して調べるだけやな……。

 

 

 

 

 

 

☆おまけ[今日の塾長]☆

 

 

 

 

ふふふ、大友先生のことですからきっと気になって、自主的に調べてくれるでしょう。

私も忙しいので、自主的に手伝っていただけるなんて本当に助かります。

 

「ああ…お茶がおいしい」

 

お茶を飲み、穏やかな表情で手駒を増やした塾長だった。

 

 

                                      

                                  おまけ終了

 

 

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