浅蜊に食らいつく溝鼠   作:悪魔さん

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やっと更新です。
ついにリング戦が始まります。


標的59:〝報復〟の怪物

 並盛のある住宅地。

 次郎長はどんなに鈍い人間でも逃げたくなる程に殺気立った状態で町をうろついていた。

(登がやられた以上、ヴァリアーはすでに町に潜伏している。あの騒音機みてーに昼間からやらかすとは思えねェ。見つけ次第血祭りに上げてやらねーと町が危ねェ)

 湧き上がる殺意と煮えたぎる憎悪を、理性でどうにか抑えつける。

 すると、次郎長の目の前に小さな影が三つ飛び出てきた。

「……あ! 親分さん!」

「おめーら……」

 それは沢田家の居候組――フゥ太とランボとイーピンだった。

「何やってんでい。こんな夜中に」

「それが……ツナ兄の友達と遊んでたらはぐれちゃって……」

「昼と夜の区別もつかねーのか、今時のガキゃ」

 次郎長は頭を掻いて深い溜め息を吐いた。

「あのなァ……今この町は物騒になってんでい。いつ抗争(ドンパチ)になるかわかりゃしねェ。流れ弾でも当たったらどうする? ツナと奈々が泣くぞ」

「ごめんなさい……」

「しゃーねェなァ……おじさんが家まで送ってやるよ。ここで目ェ離して何かあったら話にならねェ」

 いくらマフィア、それもボンゴレ関係者といえど子供なのは事実。

 困っている子供を放置するのは、どうも罪悪感がある。

「奈々も少しはキツく言ってほしいモンだぜ……っ!」

 次郎長はふと、背後の殺気に気づいた。

 人数は、三人。

「あっ、危ない!」

 フゥ太は叫んだ。

 次郎長の背後に、剣を持った黒ずくめの男達が迫ってきたのだ。このままでは次郎長が刺されてしまう。

 そう思った、次の瞬間!

 

 バキャキャアッ!

 

「「「!?」」」

 次郎長を振り向きざまに抜刀し、居合を炸裂。

 剣の刃を全て粉砕した。

「てめーらか、登に手ェ出したの」

 

 ドガァッ!!

 

 左手で一人目の顔面を掴み、地面にヒビが生じる程の勢いで叩きつけて一撃で沈める。そして二人目には強烈な膝蹴りで顎を穿ち、三人目には頭突きを放ちその衝撃で脳震盪を起こして卒倒させた。

「……カタギじゃねーたァいえ、ガキに手ェ出すバカがいるか」

 次郎長の圧倒的な強さに、フゥ太達はポカーンと口を開けた。

「……おめーら、今日はウチに泊まってけ。ここいらは溝鼠組の御膝元でい、屋敷も近い。奈々にはうまく伝えとく」

「え? でも……」

「防犯という面じゃウチが一番だ。行け、オイラァ後始末が残ってる(・・・・・・・・)

 その言葉に、フゥ太とイーピンはハッとなった。

 そう、まだ終わってはいないのだ。

 次郎長の心意を悟り、二人はランボを引っ張りながらその場を後にした。

「さて……残りはてめーだな」

 次郎長はそう言ってある家の屋根を見上げた。

 屋根の上には、強面の男が一筋の汗を流していた。おそらく先程の三人のリーダー格だろう。

「き、貴様っ……!!」

 殺意が込められた目に、強面の男は戦慄した。

 この男に近づくのは危険すぎると、本能がうるさく警鐘を鳴らし始める。

 人は、あんなにも狂暴な気を放てるのか。

「い、いいだろう……ここで殺す!!」

 完全に気圧された強面の男はどうにか堪え、背中に8本背負った電気傘(パラボラ)を手に取り飛ばした。

 彼が仕掛けようとしたのは、四方八方に飛ばした電気傘(パラボラ)から強烈な電撃を浴びせる〝レヴィ・ボルタ〟。あらゆる天候下で使用できる一撃必殺の技で次郎長を葬るのだ。

「死ね!! レヴィ・ボル――」

 

 ズドッ!

 

「がっ……!?」

 次郎長は一瞬で間合いを詰めてボディを殴りつけた。

 本来なら、レヴィ・ボルタを防ぐことは不可能だ。全周囲を死角なく囲んで電撃を浴びせるのだから、逃げることはまずできない。直撃を食らって死ぬのが関の山だ。しかし、いかに強力な技でも発動して相手に直撃するまでに攻撃を食らえば意味はない。次郎長は刹那の躊躇いもなく突っ込み、猛烈な拳打を叩き込んだのだ。

「登の分も含めて殴るから覚悟しろ」

 

 ズドドドドドッ!

 

「ぐわああああああ!!」

 次郎長は一切の慈悲も無く、強面の男を殴り続けた。

 フルスロットルの連打は標的を逃がさず、ボディや顔をズタズタにしていく。

 どんな装備も通じない。どんな武器も関係ない。次郎長の拳骨は直接潰しにかかるのだ。

 

 ゴッ! ゴシャアッ!

 

「ごぽっ……!!」

 地面を転がり、強面の男は血の泡を溢す。

 満身創痍の彼に、憎悪を剥き出しにした次郎長は無言で歩み寄る。

 今の次郎長はいかなる仁義も条理も通じない、仇敵を滅ぼすためなら自分を傷つけることも命を削ることも辞さない〝報復〟の怪物と化している。

 無限に湧き出る殺意を向けられ、命の危機を感じた。

(この男は危険すぎる!! 早くボスに……!!)

 苦悶しつつも立ち上がる。

 もはや戦う気は失せた。一刻も早く次郎長から逃げて、生き延びてボスに報告しなければならない。この化け物の暴走を止めねば、ボンゴレの全てを手に入れるボスの野望が潰える。

「……逃げるのか」

「!」

 地を這うような低い声に、肩を震わせた。

「そう心配すんな……てめーのボスも、あのクソジジイも、全員オイラが潰してやる」

「っ――!?」

 その言葉に、背筋が凍った。

 次郎長はボンゴレファミリーを滅ぼすと断言したのだ。

「てめーらの歴史と伝統は、この次郎長が殺す。だから安心して……くたばってろ」

 次郎長はそう言って、アスファルトにヒビが入る程の力で踵落としを見舞った。

 

 

           *

 

 

 十分後。

 フゥ太達を探しに夜の町を駆け回ったツナ達は、ヴァリアーの面々と邂逅を果たしていた。

「う゛お゛ぉい!!! また会ったなカス共、今度は全員三秒でおろしてやるぞぉ!!」

 スクアーロは挑発的な大声と共にツナ達を見下ろす。次郎長との一戦の傷が癒えきっていないのか、頬には湿布が貼られている。

 するとスクアーロを押しのけ、一人の男が姿を現した。

 XANXUS(ザンザス)だ。

「ひっ……!」

 圧倒的とも言うべき威圧感に、ツナは怯んだ。

 言葉として例えるなら、次郎長が「畏敬」とすればXANXUS(ザンザス)は「畏怖」だ。無法者ながらも尊敬される次郎長と違い、他者を平伏させる支配者として恐れられているように思えた。

「沢田綱吉……」

 XANXUS(ザンザス)はそう呟くと、掌から光を放ち始めた。

「まさかボス、いきなり、アレを……!!」

「俺達まで殺す気か!?」

「ヤベーぞ! 逃げろ!」

「ええ!?」

 XANXUS(ザンザス)がツナを攻撃しようとしたその時。

 

 グシャッ!

 

 縄でグルグル巻きにされた黒い塊が飛んで、地面に落ちた。

 その正体に、ヴァリアーは驚愕した。

「――レヴィ!?」

 強面の男――レヴィ・ア・タンだった。

 顔は腫れあがってボコボコで、血だらけで真っ赤だ。体は何かに引きずられた跡がくっきりと残り、皮が擦り剥け打撲が目立っている。意識などあるはずもない。

 レヴィは暗殺部隊の幹部格であり、実力も戦歴も人間離れした暗殺能力を誇る「ヴァリアー・クオリティ」に恥じぬ実力者だ。そんな彼ですら、何者かに手も足も出ず一方的に半殺しに遭ったのだ。拷問の後のような、変わり果てた同僚の姿がどれだけ異常で、どれだけ屈辱的な状況なのかが嫌でもわかる。

 

 ブロロロロ……

 

 どこからともなく聞こえてくる、一触即発の状況を切り裂く甲高い音。

 車ではない。オートバイだ。それも(ツー)ストロークエンジン――スクーターのエンジン音だ。フルスロットルで飛ばしてるのか、音がすぐ近くまで迫っていた。

「……!」

 ドリフトしながらスクーターを停めた第三者に、XANXUS(ザンザス)は目を見開いた。

 現れたのは、ノーヘルで刀を腰に差した着流し姿の男。この町、いや裏社会の人間ですらよく知る大物だった。

『次郎長!?』

 並盛の裏を牛耳る最強の無頼漢、泥水次郎長だった。

 銀髪に近い白髪は返り血を浴びて真っ赤に染まり、その目つきはいつになく鋭く冷たい。

 どうやら、次郎長と遭遇したレヴィは一方的に血祭りに上げられたようだ。

「次郎長、何でここにいる。それにアイツは……」

「奴らの忘れ物をついでに(・・・・)届けに来ただけだ」

 すると、次郎長の姿を視界に捉えたスクアーロが前に出て剣の切っ先を向けた。

 先日の次郎長との戦いで負けたことを、相当根に持っているようだ。

「てめェ、この前はやってくれたなァ……今度こそ三枚におろすぞォ!!」

 殺気を放ち、特攻するスクアーロ。

 すると次郎長は、斬りかかってきたスクアーロ目掛けて放り投げた。

 ――愛車のスクーターを。

 

 ドゴォッ!

 

「う゛お゛お゛お゛お゛っ!?」

 いきなり愛車をぶん投げるとは想像しなかったスクアーロは、バイクごと道路擁壁に激突した。余程の力で投げられたのか、スクアーロの全身が思いっ切り減り込んでいた。

 あれはさすがに効くだろう。減り込んだままピクリとも動かないスクアーロに、怒りや呆れを通り越して哀れみすら感じた。

「あ……あのバイクって、おじさんの愛車じゃ!」

「愛車一台破壊(パーに)しただけでお前らの命救えるなら安い犠牲だ。最近調子も悪かったし、買い替えようと思ってたしな」

 次郎長はそのままヴァリアーへと視線を向けた。

「好き勝手やってくれたな……そんなにこの町を荒らしたきゃあ、全員まとめてかかって来い」

 

 ゾクッ!

 

 XANXUS(ザンザス)の威圧感をかき消す程の凄まじい殺気が、次郎長から放たれた。常人ならば息を殺されたり、耐え切れずに嘔吐してしまいそうになる程に研ぎ澄まされたそれが、無差別に襲い掛かる。

「ボス以上の殺気……!?」

「くっ……!」

「マジでヤバくね……?」

 ヴァリアーの面々は、次郎長の殺気に一歩後退る。

 すると張り合うようにXANXUS(ザンザス)も殺気を飛ばした。

 強く濃厚な強者同士の威圧感がぶつかり合い、一同は空間が歪むような錯覚に陥った。

「――どうした、ボンゴレファミリー(・・・・・・・・・)? ビビッて動けねーか」

「……てめェ」

 ――四の五の言わずに全員来いよ。

 挑発を重ねる次郎長に、XANXUS(ザンザス)は怒りを滲ませた。彼はこの場にいるボンゴレファミリーの構成員全員を、ひと山いくらのザコ扱いしているのだ。XANXUS(ザンザス)も含めてだ。

 自分や家光を超える殺気を放つ次郎長に驚きはしたが、このまま引き下がるのはヴァリアーを率いるボスとして情けないことだ。

「お、おじさん……」

「ツナ、心配すんな。ボンゴレは全員一人残らず俺が叩き潰してやる」

「……そんなに死にてーなら、てめーからカッ消す」

「やってみろクソガキ。そこのカカシ共みたいに無様晒しても責任とれねーが」

 そう言うや否や、XANXUS(ザンザス)は再び掌から光を放ち始め、それに呼応するように次郎長は見上げながらも鯉口を切った。

 一触即発の状況。それを切り裂くように、仲裁は入った。

 

 ガッ!

 

「「!」」

 XANXUS(ザンザス)の前に、ツルハシが突き刺さった。

 ツルハシが飛んできた方向に目を向けると……。

「そこまでだ。ここからは俺が取り仕切らせてもらう」

 そこに現れたのは、家光だった。

 ただ、先日の次郎長との戦いの傷が完治してないのか、頭には包帯が何重にも巻かれている。

「家光……何だその様は」

「ん? これか? ……ちょっと色々あってな」

「何が色々でい。あんだけシバいてまだ懲りねーか」

 冷え切った目で家光を睨む次郎長。

 その言葉に、ヴァリアーの面々はザワついた。

「逃げてばかりの腰抜けが何の用だ」

「何を!」

「止せ、バジル。……XANXUS(ザンザス)、俺は逃げてたんじゃない。9代目からの回答を待っていたんだ」

 家光曰く、過激なヴァリアーのやり方と穏健派の9代目がそれを容認していることに疑問を持ち、異議申し立ての質問状を送っていたという。

 そしてその回答ととれる勅命が、今日届いたのだ。

 その内容は、こうだ。

 

 

 今まで自分は後継者に相応しいのは家光の息子である沢田綱吉だと考えてそのように仕向けてきた。

 だが最近死期が近いせいか私の直感は冴え渡り他により相応しい後継者を見つけるに至った。我が息子XANXUS(ザンザス)である。彼こそが真の10代目に相応しい。

 だがこの変更に不服な者もいるだろう。現に家光はXANXUS(ザンザス)へのリングの継承を拒んだ。

 私はファミリー同士の無益な内輪揉めによる抗争を望まない。

 そこで、皆が納得するボンゴレ公認の決闘をここに開始する。

 

 

「ツナ率いる並盛生とXANXUS(ザンザス)率いるヴァリアーの、同じ天候のリングを持つ者同士のガチンコバトルだ!」

「納得するわけねーだろ」

 

 ドガァッ!

 

「あだぁっ!?」

「親方様ァァァァァ!!」

 スクアーロと共に道路擁壁に減り込んでいたスクーターを引き抜き、家光にぶん投げた。

 まさかのスクーターに虚を突かれたのか、避けることもままならず顔面に直撃して家光は倒れ、バジルは悲鳴を上げた。

 ちなみにスクアーロの方はというと、顔面にタイヤの跡がくっきりと刻まれており、額や鼻、口から血を流して白目を剥いて気絶していた。

「うわあ……」

「アレは……っていうか、かなりの豪腕なのね」

 XANXUS(ザンザス)の部下である赤ん坊姿のマーモンとオカマのルッスーリアは、家光の不運ぶりに顔を引きつらせた。

 顔面に二輪車が飛び込むという攻撃はあまり食らいたくないモノだ。

「……まあ、これでツナの方が都合がいい(・・・・・)ってオイラの嫌な予感も当たったわけだ」

 次郎長は拳を強く握り締め、額に青筋を浮かべた。

「そこの暴れん坊のボンボンよりツナの方が裏で操りやすい。それにツナを裏社会に引きずり込みゃあ、その気になればオイラを手駒にすることも可能。あわよくばオイラの身内も巻き込んで人質にすれば思うがまま……って訳か」

 その言葉に、ツナはハッとなる。

 次郎長とツナの関係は、おそらくリボーンを通してボンゴレ側に伝わっているだろう。家光をも退ける次郎長の強さを、敵対勢力の排除などに利用したがるボンゴレの古株もいる可能性はかなり高い。次郎長をコントロールするには、彼と親しい間柄の人間の存在が必要と判断し、ツナを是が非でもボスにする……それも狙っているはずだ。いや、確実に狙ってるだろう。

「俺がボスになれば、おじさんはボンゴレの操り人形にされるってこと……? それじゃあ、人質ってまさか炎真達も……?」

「そもそも内部抗争の勃発とその原因を全く予測できないってこと自体がおかしな話でい。血筋って点なら家光が(・・・)ボスになれば(・・・・・・)解決するしな。本来カタギの子供をいきなり裏組織のボスに据え置こうとするなんざ狂気の沙汰だ」

 つまり、次郎長は9代目が黒幕だと断言しているのだ。

 証拠はないが、そう考えると辻褄があってくる。

「おそらくボンゴレ上層部の狙いは、後継者としてのツナと戦力的な手駒としてのオイラ。それ以外はどうなろうが知ったこっちゃねェ。たとえ後継者争いで誰が何人死んでも、ボンゴレという組織が存続できれば全て良し……雑だが考えられる裏事情はこんなトコか」

「次郎長! ツナに誤解を与えるな!」

 動揺を隠せないツナに、家光は次郎長を叱責した。

 しかし次郎長は「おめーにだけは言われたかねェ」と殺意を込めて切り返す。

「もういい。てめーらが俺をどうしようが勝手だ。裏社会の住人である以上、こういう事態(・・・・・・)はいつか来ると思ってた。だがツナ達にまで手ェ出すってんなら、容赦しねェ」

 次郎長がヴァリアーに対し殺意を向けた、その時。

 

 ――バァン!

 

 鳴り響く銃声。

 音がした方へ振り向くと、そこには意外な人物が立っていた。

「京次郎……?」

 次郎長とは盃を酌み交わす中である隣町の極道・中村京次郎がいた。

「久しいな」

「京次郎、これは並盛(ウチ)の問題だ。お前は自分のシマを護る方に専念すべきだろ」

「この騒動の裏に絡んでいる奴に、心当たりがある」

 その言葉に、次郎長は目を見開いた。この騒動、すなわちリング争奪戦の裏で暗躍する人間がいるだけでなく、その正体についての情報を得ているというのだ。

 確固たる証拠はないだろうが、裏社会は噂話や未確認情報から真実を炙り出さねばならない弱肉強食の世界。耳を傾ける価値はあるだろう。

 ただ、次郎長は京次郎への(・・・・・)警戒も(・・・)怠らない(・・・・)が。

「付き合えるか」

「……わかった、行こう」

 次郎長は、この騒動の黒幕に繋がる糸を辿ることを優先した。

 その糸を辿り、黒幕を倒せば万事解決と判断したからだ。

「……事情はわかった。そのボンゴレ公認の決闘とやらは白紙だ。まずはあのクソジジイを呼んで来い、奴の言い分次第でこっちが決める」

「お待ちください。その提案は承諾できません」

 そこへ、ピンク色の長髪と褐色肌が特徴の黒い仮面を着けた女性二人組が次郎長の前に立った。

「……何だてめーら」

「我々は9代目直属のチェルベッロ機関の者です。今回のリング争奪戦では我々がジャッジを務めます。この争奪戦において、我々の決定は9代目の決定だと思ってください」

 9代目直属と聞き、次郎長はニィッと笑みを浮かべた。

「直属か……だったらジジイを呼ぶ手間が省けるな。こっちから出向いて血祭りに上げてやるから居場所教えろ」

「おじさん、()る気満々だーーーーっ!!」

 次郎長の剥き出しの殺意に、ツナは思わず絶叫。

 事実上の報復宣言に、チェルベッロは背筋が凍った。

「わ……我々は9代目に仕えてはいますが、それを教えることはできません」

「だったら水差すんじゃねェ。この町を戦場にするつもりか」

 静かに凄んできた次郎長に、チェルベッロは後退った。

 ただでさえ醸し出している雰囲気が恐ろしく剣呑なのに、近頃のマフィア関連の事件で色々と溜まっている次郎長。元来の鋭い目つきはボンゴレへの殺意でさらに鋭くなったことで、自らの身の危険を本能が感じ取ってしまう。

「……異議を認めねーのァお互い様でい。この町でやるんなら、この次郎長の(タマ)を取れたらの話だぜ。それでもやるんなら、こっちも考えがある」

「「っ……!」」

 

 ――せいぜいオイラよりも先にボロを出さねーよう、気をつけるこったな。

 

 地獄の底から響くような声で告げ、次郎長はその場を徒歩で後にした。




今回は京次郎が久しぶりに登場しましたが、実は……!
次回では、次郎長が7年ぶりにアイツと再会します。
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