一番最後に重大発表がありますので、最後まで。
「え? 骸が二人!? どういうこと!?」
突然の事態に、動揺する一同。
先程までいたはずのクロームが消え、いつの間にか骸になっている。しかもツナ達の傍にも骸が横になって存在し、骸のクローンか何かのようだ。
その
「凪は特異体質でな、骸の精神を移し替えることができるんでい。肉体は凪だが、人格や経験値は骸ってことになってんでい」
「クロームと骸の中身がバトンタッチしたってこと?」
「察しがいいな、勘が鋭くなってる。それなりに成長したじゃねーか、ツナ」
そう言って口角を上げる次郎長に、ツナは照れ臭そうに顔をポリポリと掻く。
するとマーモンが苛立つように叫んだ。
「所詮お前は娘の体を借りた幻覚だろう!」
マーモンはフードの中から極寒の風を起こして骸の体を凍らせた。
しかし、その直後に真下から吹き上げた火柱にマーモンは飲み込まれ、さらにはそれを包むように現れた蓮と蔦に絡み取られてしまう。気づけば骸を覆っていた氷は溶け、余裕に満ちた表情を浮かべて鼻で笑った。
「誰が幻覚ですか?」
「バカな、間違いなく貴様は幻覚のはず……!」
「クフフ……次はそれを戴きましょうか、アルコバレーノ」
三叉槍を突きつける骸。
すると、マーモンのおしゃぶりが光って蔦が弾け飛んだ。
「図に乗るな!!」
突如、マーモンは分身を生み出して骸に襲いかかる。
しかし骸は一切動じず、槍を軽く振って分身もろとも本体を散らした。
「惰弱な」
「目から炎が……!」
藍色の炎を灯す骸に、ツナは死ぬ気の炎を扱えるのかと驚愕する。
だが、骸の口から出たのは全く異質のモノだった。
「このオーラこそ第四の道、修羅道で身に着けた格闘能力のスキル」
「修羅道……スキル……?」
骸曰く、自分の体には前世に六道すべての冥界を廻った記憶が刻まれており、六つの冥界から六つの戦闘能力を授かったという。
その言葉を聞いた一同は「何言ってんだコイツ」とでも言いたげにジト目で見つめ、ツナも首を傾げるばかりだ。
「えっと……どういうこと?」
「今の骸は、RPGで言う「攻撃力を数ターン分向上させる呪文を唱えた状態」って言えば伝わるか?」
「成程!!」
「おいおい」
次郎長の例えはわかりやすく伝わったのか、ゲーム好きなツナはスッキリした表情になる。
その様子を、リボーンは呆れていたが。
「情けないですね。それでも最強と呼ばれる赤ん坊ですか?」
「くそ……あの娘も然り、格闘ができる術士は邪道だ!」
すると、突然体育館がグニャリと大きく歪み始めた。
異空間に放り込まれたような感覚に、一同は膝を突き始めた。
「ぐぅっ……!」
「あ、頭が……」
「吐き気がする……!」
「幻覚汚染が始まってるぞ、コラ!」
獄寺やバジル、了平がその壮絶さに悲鳴を上げ始める。
それに対し、次郎長はと言うと――
「気をしっかり強く保て。
「何でてめーは無事なんだ、コラ!」
「アイツら以上の
「おめーホントにただのヤクザか?」
リボーンのもっともな発言に、周囲の視線が次郎長に集中する。
しかし今は試合中。ましてや術士による幻覚戦線。集中力を途切らせ、気が散漫してはいけない。
「人は生まれた時から同じ人生を無限に繰り返すモノさ。だから僕は集めるんだ!! 金をね!!」
「がめつい奴だな。自分の将来に不安でも持ってんのか?」
「黙れそこ!!」
「クハハハ! 強欲の元アルコバレーノですか! ですが、欲なら僕も負けません!!」
火柱が立ち、蓮の花が咲き乱れ、幻覚のぶつかり合いが苛烈する。
立て続けに幻覚を見せられたせいか、ツナは呻きながらその場にしゃがみ込んだ。
「ツナ!?」
「十代目!?」
ツナの仲間達が身を案じる。
「頭に何か入ってくる……!!」
ツナの頭の中では、骸と次郎長に関する映像が流れてきていた。
まず入ってきたのは、優しく骸の頭を撫でる若き日の次郎長と、動揺しつつも彼を見上げる幼少期の骸。その後ろには城島と千種がおり、不信感と恐怖感を混ぜたような雰囲気を醸し出している。
「骸……泣きてー時は涙一杯流して泣きゃあいいし、笑いてー時は思いっきり笑えばいい。もうおめーを縛る奴ァいねェ、思うがままに趣いたままに生きろ」
「……思うがままに、趣いたままに……」
「そうだ――人間ってのァ、しぶとく図太く強かにしなやかに生きてナンボだからな」
そして、二人はフック状に曲げた小指を互いに引っ掛け合った。指切りげんまんだ。
その映像の後、今度は全く違う場所の映像となった。
「ヌフフ……古里真の声が届いたとはいえ、幻術で視覚を完全に狂わされた状態で急所を避けますか。デカイ口を叩くだけはあるようですね、あくまで平和ボケした島国での話ですが」
「て、めェ……!!」
(おじさん!?)
ツナは、俄に信じ難い光景に言葉を失った。
あの喧嘩すれば敵無しの次郎長が、骸に酷似した人物によって巨大な鎌で右肩を貫かれ壁に抑えつけられているのだ。その傍には、かけがえのない親友・古里炎真と妹の真美が両親に庇われる形で泣きそうな顔をしていた。
(誰なんだ? あの男は一体何者なんだ!?)
「……何なんですか、その眼は。たかが五流マフィアに恩を売られただけで、なぜその眼ができるんですか? なぜ剣を握って戦えるんですか?」
苛立ちを隠せないまま、男は鎌を握る力を込めて次郎長を睨む。
次郎長は常人なら息を殺されそうな殺気を放ちながら、男を睨み返した。
「なぜ戦えるかなんざ……てめーにゃ死んでもわからねェよ……!!」
「ヌフ?」
「てめーのルールも持ち合わせてねー
(おじさんっ……!!)
追い詰められてなお、心は折れず。命の危機に瀕しても、戦意は失わず。
そんな次郎長に、ツナは言葉を失った。
「せっかくです、あなたの刃で彼らを葬っていただきましょう……そして誇りなさい。あなたは命拾いするどころか、私の為に――ボンゴレの為に忠誠を誓い尽くしてもらえるのですから」
(まさか、あの鎌を持った男が――)
先程の次郎長の言葉を思い出す。
――アイツら以上の
一言も聞かされなかった衝撃の過去に驚愕するツナ。映像はそこで途切れ、すかさず次郎長に振り返った。次郎長はそれを察したのか、溜め息を吐いた。
そして……。
「クフフフ……全く、すぐに負けを認めればいいものを。君の敗因はただ一つ、僕が相手だったことです」
「ンムーーーーーッ!!」
ドパァン!!
「堕ちろ。そして巡れ」
大きな音を立てて破裂したマーモンの身体を見て、ヴァリアーもツナ達も同様に表情を強張らせた。
「あのバイパーが……」
「ボロボロかよ」
マフィア界最強の赤ん坊の一角を退けた骸の強さに、コロネロとベルフェゴールは息を呑んだ。
これが、マフィア狩りで有名な骸の強さなのか。
「ちょ、そんな、あそこまでしなくても……!」
「この期に及んで敵に情けをかけるとは……あの赤ん坊は逃げましたよ。彼は最初から逃走用のエネルギーは使わないつもりだったようです」
「……おめーアイツが逃げること知ってて楽しんでたろ」
物好きだな、と呆れる次郎長。骸は「そのつもりはありませんよ」と否定しつつも口角を上げている。
一方の
「ゴーラ・モスカ、争奪戦後マーモンを消せ……方法は任せた」
ゴーラ・モスカは了承したのか、目の部分が光りプシュウゥゥと機械音を立てた。
それを見ていた骸は、微笑みながら口を開いた。
「君はマフィアの闇そのものですね、
「……」
「いえ、別にその話に首を突っ込むつもりはありません。僕は良い人間ではありませんので。ただ……これ以上あの〝怪物〟を怒らせない方がいいですよ。もはや手遅れかもしれませんが」
勝ったのに冷や汗を掻いて目線を逸らす骸に、次郎長を除いたその場にいる全ての人間が顔を引きつらせた。それぐらい次郎長はヤバイ存在なのだ。
骸は忠告すると、背を向けて城島と千種の元へ向かった。
「骸しゃん」
「骸様……」
「クロームを頼みますよ」
すると骸の身体が霧に包まれ、その中からクロームが姿を現し、千種に凭れかかった。
その直後に、横になっていた骸の本体が目を覚まし、起き上がって次郎長の元へ向かう。
「うまく行ったようだな」
「ええ、クロームも引き際を弁えていいように弄ぶことができました。胸がすきましたよ、あなたのおかげです。――武運を祈ります」
たった十数秒のやり取り。
しかし、それで全てが伝わったのか、互いに何も言わなかった。
「これで二勝二敗一分け。次の守護者戦で決まるな」
「明日はいよいよ最後のカード、雲の守護者の対決です」
チェルベッロはそう言い、グラウンドで行うことを提示した。
次は並中最強の雲雀恭弥だ。次に恭弥が勝てば4対3になり、大空のリングを手に入れているとはいえツナ達の勝利は決定する。
「次はヒバリさんか……」
「大丈夫だろ。オイラにゃ負けっぱなしだが、マフィア
次郎長は鋭い眼差しで
「一つ尋ねる。おめーは負けたらどうするつもりなのか教えろ。この際ウソでもいいぞ」
「おいウソはダメだろ」
「前に言ったはずだ……雲の対決でモスカが負けるようなことがあれば、全てをそいつらにくれてやると。ボンゴレの精神を尊重し、決闘の約束は守る」
次郎長率いる溝鼠組は、裏社会の組織としては反抗や裏切りとみなされる一切の行為がほとんど見られない珍しい一面がある。ヤクザであれマフィアであれ、組織の首領の支配や集団の一体性を乱すような行為は反履して発生しやすい。だが次郎長は組員一人一人に誠意を持って接するため、上下関係を厳守しつつも組員の意見には耳を必ず傾ける。ランチアの処罰をめぐっての登とのやり取りがいい例だ。そんな真面目さがあるからこそ、次郎長の決定に皆納得して従うため、溝鼠組の次郎長に対する忠誠心は鉄壁と言って過言ではない。
しかし
(仕掛けるのは恭弥の時か……尚弥を動かした方がいいか)
(明確にじゃねーようだが、勘づいてやがるな……奴の強さを考えると、消すタイミングは選んだ方がいいな)
互いに腹の探り合いをする。
が、リボーンがここで次郎長に銃口を向けた。
「ちょ、リボーン!!」
「鯉口切ってるゾ」
「!」
気づけば、次郎長は鯉口を切っていつでも斬りかかる状態だった。
確かに
「……
「気が立ってるどころか剣抜きかけてたぞ、コラ……」
こうして、霧のリング戦は幕を閉じた。
ここで重大発表。
先週「無限列車編」を見て感無量になったばかりで、その熱が今だ冷めてないです。多分「JUMP DRIFTERS」で煉獄やしのぶの出番をもっと増やそうと思ってるくらいです。(笑)
そこで熱が冷めないうちに新作として「鬼滅の刃」の小説を投稿しようと思います。
詳しくは活動報告にて。