浅蜊に食らいつく溝鼠   作:悪魔さん

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やっと更新できた!

今思ったけど、ホント未来編でバミューダ達は何をしてたんだろうか。


標的76:合流、そして呉越同舟

「しっかし、まさか並盛にこんなデケー空間が造られるたァ……」

 次郎長は驚きを隠せない表情で、足を進める。

 剛田がうっかりぶっ飛ばした大男が覚醒する気配がゼロだったため、止むを得ず放置して先に進んだ一行。

「次郎長、生かしておいてよかったのか?」

「ん? ああ、アイツ? 一応アリアんトコの人間だ。自分(てめー)の顔見知りの部下を問答無用で()れる程、オイラは非情になれねーんでな」

「逆恨みでもされて襲い掛かってもか?」

「そん時ゃ全力で捻じ伏せて服従させてやらァ」

 軽口を叩きつつ、奥へと進む。

 そしてとある部屋に足を一歩踏み出した時、魔女風の格好をしている少年が姿を現した。

「甘い甘いバ……あっ」

「……ジンジャー……!?」

 攻撃しようとした少年に、次郎長は瞠目した。

 目の前の少年――ジンジャー・ブレッドは、知り合いなのだ。というのも、次郎長は個人的な縁でマフィア界の番人〝復讐者(ヴィンディチェ)〟と通じている。その中でも古株であるアレハンドロが操る人形が、ジンジャー・ブレッドの正体である。

 彼の戦闘力は本物で、次郎長自身も苦戦を強いられた程だ。

 しかし、腑に落ちないのが一つ――

「……おい、てめー何やってんだ」

「……ピュー♪」

 口笛を披露しながら目を逸らすジンジャーに、次郎長は青筋を浮かべた。

 これは脅しても絶対言わないつもりだ。

 そもそもマフィア界の番人たる復讐者(ヴィンディチェ)に恫喝するのもおかしな話だが、こんな所で時間を食うわけにはいかない。

 とっとと帰る方法を探さねば。

「バミューダ達は何をサボってやがると思ってたが……てめーが口割るつもりゼロってんなら、訊かないでおいてやらァ。どうせ事情はいつか知れる」

「得意の暴言・暴力は使わないんだね」

「おめー後で覚えてろよ」

 何はともあれ、ジンジャーは敵対するつもりはないらしい。

 もっとも、敵対したらそれはそれで面倒な事になるので、互いに避けたいのが本音だが。

「……お前がここにいるってこたァ、立場上は()()()()?」

「一応はミルフィオーレファミリー・ホワイトスペル・第8グリチネ隊副隊長♪」

「結構偉いじゃねーか」

 ジンジャーの実力を知る次郎長は、それも当然かとも呟きながら、眉間にしわを寄せる。

「……で、お前はこっちにつくのか」

「別に〝彼〟への忠誠心は無いし。僕はただ敵に対して残酷で笑える殺し方ができればいいし♪」

「勝ち馬に乗る才能はあんだな」

 ジンジャーがニカッと笑うと、それに釣られるように次郎長も不敵に笑った。

 しかし得体の知れない人物ゆえか、クロームは警戒心を強め、朧は氷のように冷たい眼差しで見据えている。

「……何じゃ、組長さんの顔馴染みか」

「昔の義理だ、(わけ)ェ頃は色々あったんだよ」

 その時、朧が突然殺気立った。

 変化に瞬時に気づいた次郎長と剛田は、目を細めて構える。

「剛田、さっきみてーな一撃必殺は()()だ。情報を吐いてもらわなきゃ困る」

「あのガキは?」

最初(ハナ)から言うつもりねーだろうよ。副隊長っつー半端な役職だと期待はできねェ」

 組織の大物――それもホワイトスペル側の幹部格を狙うのが、次郎長の指針。

 剛田はゴキゴキと骨を鳴らし、闘気を剥き出しにする。

(ひい、ふう、みい……固まってきてるな)

 耳を澄まし、響く足音から五人以上は確実に来ていると察し、乱戦を確信。

 鯉口を切り、いつでも先手を打てるよう腰を沈める。

 が、それは杞憂に終わった。なぜなら――

「――えっ!? おじさんっ!?」

「……ツナっ!?」

 身内以外で一番親しい若者の一人だったからだ。

 

 

「……ったく、お互い大変(てェへん)な目に遭っちまったな」

「そうだね……でも、おじさんが生きててよかった……!」

「こっちの世界のオイラは袋叩きで負けちまったがな。――そういうおめーも無事で何よりでい、何かあったら奈々に顔向けできねェ」

 ようやく再会を果たした二人は、互いの安否が確認できたのか安堵していた。

 ツナ達も未来の世界に飛ばされてきた身で、彼らはボンゴレの日本支部に潜伏していたという。しかも厄介なことに、笹川京子や三浦ハルなどの民間人(カタギ)も巻き込まれているというのだ。

「……ここに来るまで、そんな苦じゃなかったろ? いくらか連中の戦力削ってきたから」

「貴様の仕業だったのか、ホワイトスペルの部隊が次々と壊滅していったのは!!」

「……ツナ、コイツ誰だ?」

 次郎長はそう言って指差すのは、顔や体の一部に火傷のような傷跡が刻まれた、明らかに只者ではない女性。

「ラル・ミルチだ。貴様が泥水次郎長だな」

「いかにもそうだが……何でそんな殺気立ってんだ」

 次郎長は、ラルの殺気が自分と()()()()に向けられてることに気づく。

 そのもう一人は――ジンジャー・ブレッドだ。

「でっち上げとか言いがかり……じゃねーな。俺はわからねーが、ジンジャーの方に因縁でもあんのか」

「因縁も何も!!」

 声を荒げ、ラルはこの世界で起きた悲劇を語った。

 この十年後(みらい)の世界において、マフィア界最強の赤ん坊〝アルコバレーノ〟は、彼らにとって有害な放射線「非7³線(ノン・トゥリニセッテ)」が大気中に照射されていたために皆死んでしまったという。

 ラルもアルコバレーノであったが、厳密に言えばアルコバレーノに準じた存在であり、それゆえに非7³線(ノン・トゥリニセッテ)の影響も少なく、こうして生き永らえているという。

 そして、彼女は元教え子であるコロネロを失い、その仇を見つけ復讐を果たそうというのだ。

「……つってっけど、おめー心当たりあんのか」

「勘違いしているようだね。アルコバレーノも非7³線(ノン・トゥリニセッテ)の放射される中じゃ死にかけた虫みたいなものさ。そんな退屈なもんをわざわざ自分の手で殺すかよ」

「……とりあえず、()ったのはおめーじゃねェってか」

「まあ、ね♪」

 爽やかな笑みを浮かべるジンジャー。

(正確に言えば、僕はただ残酷で笑える殺し方を提案して、眺めてただけだけど……言う義理も無いからね)

 その心中を察したかはわからないが、ラルは殺気を解かないまま二人を睨む。

「……で、何でコイツとグルでいるんだって訳か」

「…………察しがいいな」

「ジンジャー……この際全部言っちまえばいいだろ」

「それじゃあご主人様がね~」

 何やら意味深な会話をする次郎長とジンジャーに、リボーンは尋ねた。

「てめーら、どういう関係だ?」

「「顔馴染み」」

『はあっ!?』

 何の躊躇いもなく放たれた爆弾発言に、ツナ達は驚愕。

 そう、この世界のジンジャーはミルフィオーレ側。次郎長と顔馴染みであるのは不可解なことなのだ。

「お、おじさん! どういうこと!?」

「ミルフィオーレと通じてたのか?」

「白蘭とどういう関係だ!? 吐け!!」

「返答次第ではただではおかんぞ!!」

 一斉に次郎長に詰め寄る一同。

 次郎長は焦る様子もなく、眉を顰めてさらなる爆弾を投下。

「何言ってんだ、ジンジャーは復讐者(ヴィンディチェ)側だ。白蘭のガキへの忠誠心はねーよ」

「……おい、てめー今何つった」

「……クォルァ、バミューダァァ!!! どうなっとんじゃワレェェ!!!」

 次郎長は今までで一番大きな叫び声を上げたのだった……。

 

 

「くしゅん!」

「大丈夫カ、我ガ主君」

「知り合いが僕の名前を叫んだ気がした……」

 それに呼応するかのように、バミューダもくしゃみをしていた。

 

 

           *

 

 

「……つまり、ジンジャー・ブレッドは復讐者(ヴィンディチェ)の刺客であり、白蘭との関係は希薄だと?」

(はえ)ェ話、そういうこった」

 次郎長とジンジャー、ひいては若き日の次郎長と復讐者(ヴィンディチェ)の話を聞き、リボーンは真剣な眼差しで見つめた。

 こんな話、初耳だ。本人は食いついてこなかったからだと言ってのけていたが、次郎長が復讐者(ヴィンディチェ)の下っ端として黒マフィア潰しに加担した時期があったのは驚いた。ヤクザはマフィアとは別なので、マフィア界の道理や掟が通じないとは考えていたが、まさか掟の番人が掟破りの方法を使っていたとは。

「つまり、コイツは信用に足ると?」

「個人的にはご主人様の方だけどな。人格的に難があるのはコイツ自身だし」

 きっぱりと言う次郎長に、一同苦笑い。

 対するジンジャーはバシバシと箒で次郎長の頭を叩き、無言で抗議した。

「まあ、そういうこった。寄せ集めの呉越同舟でどうにかしろってことだろうよ」

「そうか……それで、この二人は何だ?」

 リボーンが注目したのは、朧と剛田だった。

「白いのが朧。黒いのが剛田猛だ」

「おじさん! 端折りすぎ!」

「朧が属する組織は八咫烏陰陽道。ツナ、おめーのご先祖様であるボンゴレ創設者が帰化した時に世話んなったそうだ」

 さらに発覚した衝撃の事実に、ツナは目を見開いた。

(た、確かにリボーンは日本に帰化したって言ってたけど……)

「貴様が沢田綱吉か。俺は朧。貴様の祖先・沢田家康が尽くした数々の行い、虚様が大変感謝なさっている。この場を借りて礼を言う」

「え、いや……そんな……」

 明らかに強そうな男に突然礼を言われ、しどろもどろになるツナ。

 朧のことをよく知らないリボーンやラルも、彼の鋭い眼差しから修羅場をくぐった数を察し、興味深そうに凝視している。

「そんで、そいつ足引っ張ったりしねーだろうな」

「心配すんな、実力的には俺と大差ねェ」

「ははっ! じゃあ安心だな!」

「それは心強いな!!」

 次郎長の異次元の強さと同等だと知り、山本は楽観的に捉えた。

 了平も同じことを思ったのか、腕を組んでニヤけている。

「そんで、こっちはこの世界の登の部下。素手喧嘩(ステゴロ)だったらこの世界の並盛じゃ最強……成長したらオイラの強さを継ぐかもしれねェ」

「次郎長の後継者となり得る奴か……」

「何じゃこの赤ん坊、スーツ着とる」

「ちゃおッス、おめーが剛田か」

 素質としては並盛の王者を継ぐと次郎長自身に言わしめていることに、ラルは息を呑む。

 そんな中で、何気なくリボーンと挨拶している剛田を見て、ツナは「確かに大物だ……」と小さく呟いた。

「……さて。ここでオイラから提案なんだが」

『!!』

「こっから先は俺達が行く。おめーらは邪魔だ」

 次郎長は、ツナ達は足手まといだと宣言。

 それを聞いた獄寺や了平、さらに敵討ちに燃えるラルは激昂した。

「んだとてめェ!!」

「そういう言い方は無いだろう!!」

「貴様、自惚れも大概にしろ!!」

「青二才と消耗しきった女を庇うのは楽じゃねーんだよ」

 その言葉に、ラルはハッとなった。

「……気づいてたのか」

「そこばかりは勘だ。だがおめーが無理してるだろうなってことぐらいはわかる」

 次郎長の真剣な表情に、ラルは強く出れなくなった。

 この場にいる者で、間違いなく次郎長は最強クラス。対するラルも、アルコバレーノに準じた存在ゆえ確かな実力を持つが、非7³線(ノン・トゥリニセッテ)の影響はゼロではないし、あの家光をも退かせる実力を持つ次郎長(おとこ)には及ばない。

 体調のことも何となく把握させられてしまっている。悔しいが、次郎長の言うことは間違いではない。それでも――

「だが、コロネロの仇を……!!」

「わかったよ、おじさん」

 ラルの言葉を遮るように、ツナは声を発した。

「……おじさん達に、敵は任せていい?」

「ああ、おめーらは何も心配せず〝核〟を叩いて来い」

『!!』

 そう、次郎長は何も戦線離脱を勧めたわけではない。

 突き進んで敵を潰すチームと、その隙に手薄となった部分を掻い潜って目的を果たすチームに分け、ツナ達に後者を勧めたのだ。

 次郎長や朧が暴れれば、敵も幹部格や手練れを呼び寄せる。ミルフィオーレ側の強豪の相手を引き受ける代わりに、本隊として征圧してほしいと遠回しに言っているのだ。

「……回りくどいことを」

「おめーらじゃ足手まといだと思ってんのはホントだ」

「殺す!!」

 足手まといに感じているのは本当だと暴露され、銃口を向けるラル。

 山本達が必死に宥める中、次郎長はツナに頭を下げた。

「お、おじさん……」

「この時代の俺が不覚をとった。本来はお前らに頼るのはよくねーことだし、避けたかった……すまねェ」

 次郎長のツナをなるべく巻き込みたくないという想いは、一切変わってない。だが、こうも状況が切迫してしまい、ツナ達も目的を果たすためにはこの場に居なければならない。

 トントンと話が進んではいるが、次郎長自身としては苦渋の決断であった。

「ツナ……約束する。この命懸けて、お前の奈々の元へ必ず帰す」

「……違うよ。おじさんもだよ」

「!」

 次郎長は、バッと顔を上げた。

「おじさんが母さんに惚れてたことも、気にかけてることも、俺は知ってるから。おじさんにも家族がいるんだしさ」

「……おめーも言うようになったな。奈々と似て仕方ねェ」

「オレ、母さんの子だから」

「だな」

 ニッと無邪気に笑うツナと次郎長。

 まるで実の親子のようなやり取りに、リボーンは「砂でも吐きそうだゾ」としかめっ面でボヤき、ラルはこの場にいない家光を憐れんだのだった。

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