今回はあとがきに重要なことが書いてあります。
それぞれの戦場で敵を撃破した頃。
次郎長はツナ達を連れ、一足早く目的地付近に辿り着いていた。
「オイラの勘ピューターは、ここだと反応してやがらァ」
「「勘ピューター……」」
諜報員や刺客と違い、次郎長は勘を働かせて敵地を探っている。
が、そこは魔境・並盛の裏社会の頂点に立つ男。勘の精度は極めて高く、超直感の領域の手前にまで研ぎ澄ましてある。
その勘の鋭さは、10年後の未来でも通じた。
「お、おじさん、どうするの?」
「そこだな。この先に入江正一はいるのか、俺達が把握していない強敵がいるのか、罠が仕掛けられているか、肝心の情報がわからねェ」
――だからこそ、正々堂々と真っ正面から入るんだよ。
漢気に満ちた笑みを浮かべ、次郎長は居合一閃。
見るからに頑丈そうな扉を一太刀で破壊し、殴り込んだ。
「な、なななな……」
「おう、兄ちゃん。いい度胸してんじゃねーの、気に入ったぜ」
相手方にとって一番のイレギュラーである、最強の次郎長のカチコミ。
並盛出身、あるいは並盛に住む者達にとって、泥水次郎長は巨大な存在。味方になれば心強く、敵に回せばとても厄介な脅威となる。その理屈は、次郎長から並盛の覇権を奪ったミルフィオーレファミリーとて例外ではない。
その次郎長が全盛期の姿で、ミルフィオーレファミリー屈指の実力者をことごとく蹴散らし、ついに基地の最深部――入江正一の研究室まで辿り着いたのだ。
「オイラの並盛でこんなデッケェの造ってたなんてな。造るんなら呼んでほしかったぜ、ウチが喜んで手ェ貸すってのに」
誰の許可を得て造っとるんじゃワレェ、という副音声でも聞こえたのか、腰を抜かして顔を引きつらせる入江。
しかも次郎長は笑顔を浮かべているが、目が笑っていない。むしろ殺意すら孕んでいる。
「――まあ、お互いに色々言いてーこたァある。ってな訳で……」
刹那、次郎長は傍に控えていたホワイトスペルの服装を着こなすチェルベッロの二人の頭を掴み、床に減り込ませた。
ズドゴォ! という轟音を立てて首から下が埋まるという生首の状態となり、チェルベッロは沈黙した。
チャキッ……
「ひっ」
「正体バラすのと、てめーの身体バラすの、どっちがいい?」
おじさんはどっちでもいいぞ、と満面の笑みで対応。
なお、副音声は「おどれの身体バラバラにして魚の餌にするぞこの野郎」である。
「……正体、バラします」
「……だよな」
引きつった声で前者を選んだ入江に、次郎長は殺気を解いて刀を納めた。
*
その後、続々と敵を撃破してきた仲間達とも再会し。
次郎長に見下ろされ、ビクビクしながらも入江は正座して全てを語った。
ミルフィオーレファミリーは、ボンゴレリングとを手に入れるためにあらゆる手段を講じ、この時代にツナ達を連れてきた。次郎長の暗躍でボンゴレの指揮権は
入江は承諾するも、事実上ツナはマフィアの血筋を持つ
が、ここで想定外の事態が起こった。次郎長が飛ばされてきたのである。先の作戦で隠居の次郎長を仕留めるのにかなりの損害を被ったというのに、全盛期の次郎長が飛ばされてきてしまい、計画は破綻。しかもジンジャー・ブレッドと次郎長は昔のよしみであるという衝撃の関係が発覚し、ついに膝から崩れ落ちた。
「並盛の王の帰還を止めることができず、踏み台となってもらう刺客達も仕留められてしまい、今に至るのさ……」
目に見えて落ち込む入江に、気まずくなる一同。
もっとも、次郎長と朧、剛田は「あっそ」とでも言わんばかりの態度だが。
「カタギの嬢ちゃん達を連れてきたのは、ツナ達を強くするためだろうが、死亡率の高さを考えると筋が通ってねェな」
「そんなことはわかってる! でも全てを賭けて対処しないといけない! 下手すれば、人類の危機なんだぞ!」
「それに絡んでるのが、白蘭か」
次郎長は目を細める。
人類の危機とは穏やかではない。ましてや、それを企んでる人間がこの時代の支配者となれば。
「事情はわかった。本題に入ろう」
「親分……」
次郎長が理解を示したことに、安堵する入江だったが――
「……元の世界に帰る手段はあるのか?」
『は?』
――この人、今までの話聞いてなかったのか!?
思わずポカンと口を開ける一同。しかし朧と剛田は、その真意を察した。
「10年前の白蘭を倒せばいい……そういうことか? 次郎長」
「そーゆーこった。奴の組織は新参なんだろ? 10年前ならほぼ一人の状態である可能性も高い。居場所さえわかればこっちのモンだ」
「無理だ!! 一騎打ちで勝てる相手じゃない!!」
入江は白蘭の恐ろしさを語る。
普段は飄々として快楽主義者のような態度を見せるが、自分に従わない者は容赦なく始末する冷徹さを持ち、自分を信奉する部下すらも切り捨てたり道具のように扱う。しかもジッリョネロファミリーの当主である少女・ユニに対しては会談の時に劇薬を投与しており、ユニを物言えぬ体にしてから裏で操っていた非道さもある。
それだけではない。彼は
「……ちょっと何言ってるかわからねーが、要するにこの世界は最後の希望ってことか?」
「よくわかってるじゃないか」
「……恐れるに足らん」
フッ、と不敵に笑う次郎長。
勝利を確信したような笑みに、入江は「フザけている場合か!?」と声を荒げた。
「クク……心配すんな、俺は〝知り合い〟に話を振って結果を待つだけだ」
「……お前、まさか!」
獰猛な笑みを浮かべる次郎長に、リボーンはハッとなった。
そう、次郎長はこの時代で白蘭を倒すつもりはない。真の狙いは「一刻も早く元の世界に戻り、〝
白蘭がいかに強大な存在であっても、この時代の最先端の戦いと違い、10年前は科学力を含めた武力ではなく
すぐにでも10年前に戻り、力を付ける前に潰しておいた方が楽と言えば楽だ。
「……奴らがそう簡単に頷いてくれるのか?」
「頷かせてみせるさ。それにアイツらの強さは身を以て知ってる」
「てめェ、まさか戦ったのか!?」
「ま、修行がてら。最初の頃こそ、いいように使われるのは目に見えてたけどな」
驚きの声を上げるリボーンに対し、次郎長は煙管の紫煙を燻らせて笑った。
「どの道この世界終わってんだから、終わる前に時を戻そうじゃねーの」
次郎長はさらに言葉を続ける。
おそらく、
「攻め手ってのァ、必ず
「……親分……」
「鉄は熱いうちに打てってことだ。今は冷え切ってカチコチだからな、おそらく真っ向勝負の勝率は限りなく低い。だが弱者は弱者の戦い方がある……格上の強者とわざわざ足を並べる義理はねェ」
白蘭をこの時代で倒すのは、力の差を考えると困難を極める。
ならば、自分達が確実に勝てるような策を見出さねばならない。
そういう点では、次郎長の策は犠牲を最小限にするという点では理に適っている。
「……僕としてはあまり気が乗らないね」
「黙れ、この戦闘民族! おめーみてーなのが一番困るんでい!」
戦闘と戦争は別物なんだ、と戦闘狂の恭弥を窘める次郎長。
盛大に溜め息吐いてから、今度は入江に話を振った。
「それと入江……この会話が連中に筒抜けなんてこたァねーよな?」
「え?」
一応警戒はしてバレちゃ困る部分ははぐらかしたがよ、と付け加えつつ、次郎長は入江を見据えた。
「本当にデキる奴ってのァ、
《へえ~、頭いいんだね》
『!?』
刹那、上機嫌そうな第三者の声が響いた。
その声の主を知っている入江は、顔を青褪め凍りついていた。
「……てめーは」
次郎長達の眼前に立つ、真っ白な服に身を包んだ白髪の青年。
よく見るとその姿はぼやけ、透けているようにも見える。
どうやらホログラムの映像で映し出されているようで、本人が直接ここにいるわけではないようだ。
《この時代のあなたとは、初めましてだね。僕は白蘭……ミルフィオーレファミリーのボスにして、この時代の支配者さ》
「そうかい……オイラァ、泥水次郎長。この
対峙する両者。
その凄まじい圧迫感に、ツナ達は息を呑んだ。
《成程、さすがは
「それは嫌味と受け取らせてもらうぜ」
眉をひそめる次郎長に、「純粋に褒めてるんだけどなぁ」と笑う白蘭。
しかし飄々と掴み所の無い笑顔を浮かべているあたり、本心はまた別であるのは事実だ。
《それと、僕を欺こうと必死に演技する正チャンも面白かったなぁ》
「やっぱりバレてたか」
脇が甘かったな、と入江に目を向ける次郎長。
入江自身、白蘭に見破られていたのは想定外だったのか、驚きを隠せない様子だ。
「オイラ達と手ェ組んだことも見破ってたのかい」
《いやいや。正チャンがいつか敵になるのは想定の範囲内だったけど、君達と手を組むところまでは思ってなかったよ?》
白蘭曰く、昔からずっと入江は自分のすることなすこといつも否定的な目で見てたとのこと。
その時から大方の未来の予想はついていたようだ。
《しっかし正チャンもつくづく物好きだよね。まだケツの青い中学生達なんかに、世界の命運を預けちゃうなんてさ》
「正しくは「一匹怪しいの混じってる」だ。恭弥はいつでも
「ねえ、ここで言うかな?」
青筋を浮かべてトンファーを構える恭弥に、次郎長は「事実だろうが」と反論。
殺伐としてるのかグダグダしてるのか、何とも言い難い雰囲気になるが、白蘭は愉快そうに笑いながら言葉を紡いだ。
《本当はこのまま息する暇もなく戦力を投入して君達を消すのは簡単なんだ》
「だろうな。数に勝れば質が悪くともどうにでもなるしな」
《アハハ、案外あっさり言っちゃうんだね。でもここまで楽しませてもらったし、信頼してた副官に裏切られたとあっちゃ、リーダーのプライドに関わるだろ?》
「だから何だ。そっちの面子なんぞ取るに足らねェ。てめー何が言いてーんだ、はっきりしろ」
白蘭は「せっかちだなぁ」と目を細め、宣言した。
《そろそろちゃんとやろーと思ってるのさ。僕のミルフィオーレファミリーとの正式な力比べをね》
「……力比べ?」
次郎長は眉間にしわを寄せ、ツナ達は驚きと疑問符を浮かべる。
《
「……あっそ」
『嫌そう!!!』
露骨に嫌そうな表情を浮かべる次郎長。
確かに関わるとロクなことにはならなそうだが……。
「……正式な力比べってこたァ、最低限の手の内は見せるって解釈するぞ」
《あのさ、嫌そうな表情のままで言うのやめてくんない?》
ついに真顔になる白蘭。
次郎長は心底関わりたくないのか、渋々といった様子を貫いている。
《まあ、勘づかれちゃったっぽいからには隠そうとするのもアレだから、ネタバレしちゃうね♪ まず6弔花のマーレリングなんだけど……それ、本物じゃないんだ♪》
白蘭が言い切った途端、入江の指に嵌められていた指輪が砕け散った。
入江は驚きを隠せない様子だ。どうやら今まで本物だと思っていたらしい。白蘭は「もちろんそれもランクAのスゴイ石なんだよ?」と言っているが。
《実は正チャンには内緒で他に組織してあるんだよ》
その直後、白蘭の背後に六つの映像が映し出された。
それぞれのモニターには人物が映し出されており、只者ではない雰囲気を醸し出している。
《彼らこそ真のマーレリング
「〝
「正チャンに心配事増やすとメンドくさいからね」
白蘭は言葉を続ける。
この時代における戦いの要はリングの炎であり、その源は強い覚悟にある。ゆえにただ強いだけでなく、常人離れした覚悟を持つ人間を世界中から探し出し、その覚悟が自身への「忠誠」になり得る人間を選んだという。
この言い分には次郎長も理解を示した様子で、「腕と度胸は必要だな」と呟いた。
《世界は広いよねー。例えば彼とか》
白蘭が例えとして紹介したのは、鋭い眼光を持つ、無精ひげと赤髪が特徴の男。
《大自然に恵まれた大変美しい故郷の出身なんだけど、「覚悟を見せてくれないか?」って言った途端、故郷を捨ててくれたよ》
そう言った直後にモニターに映ったのは、文字通りの地獄絵図。
真っ黒に染まった空。頂から赤い炎と溶岩を吐き出す山。燃え盛る森。壊滅した麓の町。……これら全ての所業を、赤髪の男は白蘭の忠誠を示すためだけに行ったのだという。
「……」
《あらら、怖い顔するねー。まあ気持ちはわかるよ? 生まれ育った木も山も村も村人も全部消してくるとは思わないじゃん》
殺気立つ次郎長を嘲笑うような態度の白蘭。
しかもモニターをよく見ると、その赤髪の男が風呂にでも入るかのように溶岩の中に体を沈め、岩に体を預けているではないか。
《さらに彼ら一人一人には五千名の部下と、選りすぐりのA級
「……ハッタリ、じゃねーようだな」
《ここまで来てホラは吹かないよ》
腹の探り合いを繰り広げる次郎長と白蘭。
次郎長は一々疑っても話が進まないと判断し、単刀直入に切り出した。
「……おめーさんの言う〝力比べ〟ってのは?」
《昔、正チャンとよくやった〝チョイス〟って遊びさ。あれを現実にやるつもりだよ》
次郎長は目を細め、睨みつける。
チョイスという勝負が何なのかはともかく、おそらく自分達にとって不利になる可能性が高い。そう踏んでおくのが賢明だろう。
《詳しいことは10日後に発表するから楽しみにしててね♪ それまで一切手を出さないからのんびりするといい》
その言葉に、次郎長は目を見開いた。
自分の策略は、今のところ悟られてはいない。その上で相手が余裕綽々と10日間は手出ししないと言い切っているのだ。このチャンスを逃す訳にはいかない。
「……いいだろう。だが言い出しっぺはおめーさんだ、そっちから妙なマネすんなよ」
《勿論! 僕にも
「――二言は無いな?」
《もう、そんなに疑わなくてもいいじゃないか……》
念を押して10日間は手出ししないことを確認し、次郎長は心の中で嗤った。
タイムリミットは10日……それまでに
《――さて、君らとはもっと話していたいけど、もう逃げないとね。そろそろこのメローネ基地は消えるから》
「消える?」
《正しくは基地に組み込まれた超炎リング転送システムによって移動するんだけどね。楽しみだね、10日後♪》
その言葉を最後に、ホログラムの白蘭は姿を消した。
直後、基地の奥から目もくらむような閃光が立ち上ってきた。
(ヤベェ!)
危険を察知し、次郎長は本能的にその場に伏せた。
「皆、どこかに掴まれ!!」
入江のその声を最後に、目も眩むような閃光に包み込まれた。
光が晴れると、文字通り基地は消滅していた。
白蘭が転送システムと言っていたので、厳密に言えば強制的にテレポーテーションさせられたと言うべきだろうが。
「……いででで……何てことしやがらァ」
「何ちゅーモン造ったんじゃ、アイツら!」
至極もっともな反応をする剛田。
しかし、それどころの問題ではない。事態はかなり深刻だ。
次郎長らの活躍で幻騎士らを叩き潰すことができ、さらにジンジャー・ブレッドや
ボンゴレの力が完全に衰退している状況下で、残り10日で何ができるというのか。それはリボーンも感じている不安だ。
しかし、次郎長は微塵も思ってなかった。
「――よし、言質は取った。この世界にもう用はねェ」
『えぇ!?』
何と、次郎長はチョイス参加を拒否すべきと提案。
これには入江も怒りを示した。
「見損なったぞ!! 戦わないのか!?」
「バーカ、戦う必要なんかねーんだよ。黒幕が知れ、さらに向こうが「10日間は一切手を出さない」っつってんだ。この時点でオイラ達は王手なんだよ」
幸いにも向こうは勘づいた様子じゃねーしな、と言って笑みを深める。
そう……次郎長は
「入江。今までオイラの町で好き勝手やってくれたが、元の世界に戻れる手段を用意してくれたら全部水に流してやるよ」
「っ!」
「相手のお言葉に甘えて、あえて不戦敗とさせてもらう。今回の喧嘩は買う必要がねーからな」
次郎長の要求に、入江は「わかった」と応じたのだった。
【重大発表】
本作が投稿されて三年が過ぎました。
主人公の最大最強の敵であるD・スペードとの決着を目途に、本作は完結させて次回作に力を入れようと思います。
当然ながら、作者はヌフフのナス太郎に全力でプレッシャーをかけて、完結まで突っ走ってまいります。
ちなみに未来編はあと少しで終わらせ、元の世界で白蘭にお仕置きする予定です。継承式編? 直々にナスぶっ潰せばいいんだよ!(笑)
最終章は次郎長VS変態野菜妖精による第二次並盛戦争です。乞うご期待!