次回以降が、一番面白くなりそうなので。(笑)
朗報は、突然やってくる。
「皆! 元の世界へ戻るための装置が完成したぞ!」
『!!』
駆けつけた入江の一言に、衝撃が走る。
何と、元の世界へ戻るための十年バズーカに代わる
(チョイスとやらまで残り一日……ギリギリっちゃギリギリだが、よくやった)
明日は白蘭の言うチョイスの当日。
一応白蘭のスパイが潜り込まないか巡回したが、影も形もなかった。見方を変えれば、敵の懐に潜り込まずとも勝算があるということであり、同じ土俵に立てば思うがままに転がされるハメになる。
そもそも次郎長は、白蘭がルールを守るような男には思えなかった。ルールを守れるなら、カタギにまで手をかけるはずが無いからだ。それ以前に裏社会に汚いや卑怯は女々しい言葉であり、どんなに喚き散らしたところで負ければ意味を成さないのだ。
「うし、とっとと準備するぞ。40秒以内に仕度しとけ、さっさとこんな腐った世界からトンズラだ」
次郎長の掛け声に、一同はすぐさま準備に取り掛かった。
この時代の白蘭に、もう用は無い。過去へ帰り、完全体となる前に摘んでおくのが手っ取り早いからだ。
(まあ、いくら強くてもバミューダ達には及ばねーだろ。地力が違うからな)
次郎長は刀を手にし、部屋を後にした。
その後、入江といくつか言葉を交わし、元の世界で白蘭の暴走を未然に防ぐべく、入江の装置のチカラで一行は現代へと帰ることができたのだった。
*
「戻ってこれたーーーーーーっ!!」
ツナの声と共に、一同は歓喜する。
未来での滞在時間は随分あったが、入江は装置に転移先の時間を設定し、ツナが未来へ飛んだ翌日に戻ることができた。
日常に戻ることが、こんなにも嬉しいことなのだ。
(ったく、とんだ災難に遭ったぜ。おかげで組の課題もわかっちまったしな)
頭を掻く次郎長は、未来での
未来の溝鼠組は、次郎長を失ったことで勢力が急激に弱体化し、壊滅に近い打撃を受けていたことが伺えた。言い換えれば、十年経っても次郎長に依存している面があったということに他ならない。
せっかく体制が盤石になったのに、これでは組が
(それにしても、俺まだ三十四だよな? 三十四で隠居かよ……)
隠居というのは、壮年を過ぎてからようやく似合う言葉。
人生八十年、いや百年の時代において、いくら何でも早すぎる。隠居したら隠居したらでやることがなくなるので、これまた悩みの種だ。
(……ダメだ。四の五の考えんのやめよ。疲れて仕方ねェ)
そうだ、これは後回しでもいい話だ。
次郎長は頭を切り替え、ひとまず屋敷へ戻ることに決めた。
「オイラァ
次郎長は踵を返し、我が家へと向かう。
その時、ツナが慌てて駆け寄った。
「待って、おじさん!」
「ぐげっ!!」
ツナはうっかり頸に巻いている赤い襟巻を鷲掴みしてしまい、それによって次郎長の首が一瞬締まった。
潰れた蛙みたいな声を上げた次郎長に、ツナはハッとなった。
「あっ……ご、ごめんなさい!」
「ツナ……せめて袖にしてくれよ袖に……」
首元を押さえる次郎長に、ツナはアワアワする。
気を取り直して、伝えたかったことを口にする。
「おじさん……今回もありがとう」
「礼なんざいらねーよ。オイラの意思でやったことだし、奈々にはデカい借りがあるからな。ただ奈々にはちゃんと謝れよ? 家を空けた身なんだ、心配してるだろうしな」
穏やかに告げ、次郎長はツナの頭を優しく撫でてから帰路を辿った。
溝鼠組の屋敷に辿り着いた次郎長は、どこかやつれていた。
(それにしても、久しぶりに戻ったな……)
10年後の世界から帰還した次郎長は、ヘトヘトだった。
未来の世界で支配権を奪われた挙句、新興マフィアにフルボッコにされ。
組は崩壊して一部が地下に逃げ延び。
ボンゴレに関わった人間は表も裏もお構いなしに襲撃され。
敵勢力に知り合いが紛れてなかったら、死も覚悟する程の状態だった。
今までの抗争の中でも、断トツで疲弊したかもしれない。
「……たでーま」
そう呟きながら、玄関を開ける。
すると、組員達が一斉に次郎長へ駆け寄った。
『オジキィィィ!!』
「おい、ちょっとうるせーぞてめーら……」
元気なのは結構だが、色々と疲弊している身には堪える。
勘弁してくれよとボヤいた時、登が血相を変えて近づいた。
「オジキさん! 綱吉君は……」
「見つかったよ。またマフィア絡みだったぜ……」
次郎長は屋敷に上がると、思わず崩れ落ちそうになった。
咄嗟に勝男が支え、他の組員達は慌てふためいた。
「オジキさん、大丈夫ですか!?」
「ああ、今日ァ何か疲れた……」
登の問いかけに、次郎長は力無く答えた。
次郎長は並盛の裏社会を牛耳りつつ、他の勢力が干渉して抗争の火種にならないよう、常に監視を怠らない。
その疲れが、来てしまったのだろう――勝男達はそう
「飯はいい。とりあえず今日は寝るとすらァ……勝男、
「オジキ……無茶せんといて下さい。ワシらが居るんやから」
「善処すらァ」
心身共に消耗した王は自室へと向かう。
そして緊張の糸がようやく解けたからか、布団を敷いた途端に倒れるように眠った。
*
「そいつが白蘭だ」
二日後の早朝。
次郎長は並盛山にて、バミューダとイェーガーの二人と密談をしていた。
マフィア界の掟の番人に、十年後の世界で目にしたことを全て語り、その上で黒幕でありきっかけとなった男の情報を提供したのである。
「彼が時代の頂に立つ十年後に、龍脈の異変があったんだね?」
「おう。それも富士山の龍脈の気で、まるで吸い取られたかのようだとよ。八咫烏の案件だろうが、お前らも聞いて損はねーだろ?」
「フム……」
バミューダは顎に手を当てた。
どうやら白蘭という男は、近い将来に龍脈という巨大なエネルギーを何らかの手段で掌握する可能性がある。それが事実であれば、一介のマフィアが得て良い代物ではないのは明白。この世界の均衡そのものを破壊しかねない程に危険であり、悪用されたら取り返しがつかなくなる。
そう考えれば、早めに摘んでおくという選択肢もある。
「彼を見つけ出して、始末してほしいと?」
「そこの裁量は任せる。奴が立ち回れなくなりゃあいいからな。生憎、オイラはそいつに構ってられねェ……どうしても付けなきゃならねェ〝ケジメ〟があるからな」
「……
バミューダの問いに、次郎長は答えない。
答えるまでもないのだ。
七年前のイタリア。
あの日の夜から始まった、ボンゴレの亡霊との因縁。
近い内に、彼との全面戦争が始まり、七年に及ぶ因縁に終止符が打たれる――次郎長はそう予感していた。
「奴さえ倒せりゃあ、オイラは御役御免だ。
「次郎長……」
「俺もアイツも
次郎長は揺るがぬ決意を語った。
もはや、引き返すことはできないと。
時同じくして。
ボンゴレファミリー初代霧の守護者にして、諸悪の根源とも言える亡霊――
(アレからもう七年ですか……)
胸に浮かぶのは、浅黒い肌をした
この
その強さは、紛れもなく怪物級。永い時を生き、人の域を超越したチカラを得ても、心してかかる必要がある相手だ。
(……シモンに潜伏して、信頼は勝ち取ってる。ですがやはり邪魔ですね……)
デイモンは現在、シモンファミリーの一員である加藤ジュリーの肉体を乗っ取っている。
本来ならば、シモンの内側からボンゴレへの恨みを焚きつけ、マフィア界の頂点に立つという名目で
負の感情をさらに煽ること自体は、造作もない。そうやっていくつもの敵対勢力を潰し、ボンゴレの勢力を示威してきたからだ。だが面倒なことに、炎真が一家共々あの次郎長の庇護下にある。
今の流れとしては、父親の真が息子に譲渡することとなってるが、問題なのは次郎長の傘下になるという選択肢を視野に入れていること。マフィア界から完全に足を洗い、シモンファミリーを極道組織に生まれ変わらせるのは、デイモンとしては絶対に避けねばならない事態だ。
デイモンも次郎長を
今のボンゴレの実権は
(七年……七年。お前のせいで私の崇高な計画は台無しにされた。その罪を償わせる時が来ましたよ)
ヌフフ、と妖しげに笑う。
デイモンも、七年間何もしなかったわけではない。あの怪物の息の根を止めるべく、年五入りに技を研ぎ澄ませ、いつでも殺すことができるよう整えてある。
あとは誘い出して、愛用の鎌で心臓を貫けばいい。
(決着を付けましょう、泥水次郎長。七年に及ぶ因縁に終止符を打つ!)
暗躍するは、古より這い寄る霧。
その魔の手を阻むは、平和な町の裏の顔役たる〝ならず者の王〟。
過去の怨恨と後悔の行く末は、何をもたらすのか。
怪物と亡霊の、未来を懸けた最後の戦いは近い。
次回、最終章「ヌフフのナス太郎編~第二次並盛戦争~」開始。
衝突する二人の男。
血塗られた歴史の清算。
己が定めた鉄の誓い、砕けるのはどっちか。
七年に及ぶ因縁に、ついに終止符が打たれる!