女神転生 -人形黙示録-   作:名無しの執筆人形

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破滅の予感

 あまりに耳障りな声に、思わず耳を塞いでしまいながら、声がした上空へと視線を向ける人哉とM99。そこには、人型の生物がゆっくりと二人の目の前へと降りてきていた。

 

 人…ではなく、人型の生物と称したのは、造形こそ人型だが明らかに人ではない何かだったからだ。蠅の様な羽を背中から生やし、毛髪は無く頭部から一本の突起が付きだし、そして双眸は白目を剥いている。なにより、発する雰囲気がとにかく異質だ。

 

「…っ!? ち、近づかないでっ! それ以上近づくと撃ちますよっ!?」

 

 地面に降り立った”それ”が真っすぐに二人に近づいてきたので、あっけに取られていた二人の内、M99が我を取り戻し、”それ”に向かって銃口を向けて警告する。しかし”それ”の歩みは緩まない。

 

 対して、相手がこちらの言い分を聞く気はないと判断したらしいM99は、即座に発砲を開始した。M99も戦闘人形だ。警告を無視する危険と思われる存在に対して、容赦などしない。

 

 しかし、M99の小柄な体とはまるで不釣り合いなバカでかいライフル銃から放たれた数発の弾丸は、全て”それ”にヒットしたにもかかわらず、”それ”は平然としていた。どうやら、まるで効いていない様だ…。

 

 自分の銃が全く効かない事に驚愕の表情を浮かべるM99。そして、そうこうしている内に、遂に”それ”は二人の目の前にまで到達し、おもむろに右手を上空に掲げる。

 

 命の危険を感じた二人はきつく両目を閉じてしまったが、そんな二人の予想に反して、掲げた右手を己の胸の前に寄せ、丁寧なお辞儀を”それ”はしてみせた。

 

「お初にお目にかかります我が救世主よ。改めて、我が名はパズス…神の使いとしてこの地に降り立ちし者です」

 

 先ほどの酷く耳障りな声から一転、至って落ち着いた紳士的な声で人哉に向かって話しかけてくる”パズス”と名乗る生物。異質な雰囲気に反する物腰の柔らかさに、人哉は再度あっけに取られてしまった。

 

「…ふむ。どうやら、我が救世主は現状を上手く把握できていない模様。本来ならゆっくりと説明をするべきなのですが、残念ながら時間が惜しい。その状態のままで構いませんので、まずは私の話を聞いて頂きたい」

 

 そんな人哉を見て、しかしパズスは大仰に両手を掲げ始めた。どうやら、人哉の思考が正常に戻るまで待つつもりは一切ないようだ。

 

「今から数十年前、私は主の命によりこの地に降り立ちました。無論、今もなお続くこの無益な戦争を止める為です。ですが、降り立ちて間もなく、私は封印されてしまいました。恐らくは、この戦争を続けさせたいが為に裏で暗躍する何者か…の手によって。我が救世主よ、貴方にはその”何者か”の正体を暴き、そして………」

 

 身振り手振りを交えながら、まるで演劇の舞台に立つ演者の様に淀みなく語り続けるパズスだったが、不意にその語りを止め、後ろに視線を向けた。

 

「―――どうやら、私が復活した事を早速察知されたようです」

 

 そう口にするとともに、今まで真っ暗だった周囲に様々な映像が突如浮かび上がった。

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

 そして、その映像群を見た人哉とM99は驚愕の声を上げる。

 

 映像は、その全てがさっきまで二人がいたシェルターの内部を映していたのだが、なんとシェルター内の人達が戦闘人形に襲われてたのだ! 更に…

 

「あっちで襲っているのはスプリングフィールド…!? こっちは100式…。何故!? どうしてグリフィンの戦闘人形が民間人を襲っているのっ!?」

 

 人々に襲い掛かっている人形達を見てM99は絶望に近い叫びをあげる。そう、基本的にグリフィンの戦闘人形が理由もなく民間人に襲い掛かるなどという事は無い筈なのだ。

 

 この事実に、M99は勿論人哉も目を白黒させていたが、少しして人哉は襲っている人形達に違和感を覚える。

 

 M99を見れば分かるが、彼女達は人形と言われつつも、ちゃんと人間としての感情も持っている。しかし、今シェルター内を荒しまわっている人形達の瞳には、感情というか生気というか、そういうものが一切感じられないのだ。

 

 そして、体の方にも幾つもの銃創が確認できたり、中には一部が丸々欠損している人形もいた。いうなれば、ゾンビの群れ…とでもいえば伝わるだろうか。

 

「この魔力は…死人使いネビロス。しかし、人間の死骸ではなく、この哀れな人形の死骸を使うとは奴め、小賢しい事を…」

 

「い、一体どうすりゃいいんだよっ!?」

 

 

 そんな中、一人冷静に状況を分析をしているパズスに、人哉は怒鳴りながら詰め寄った。

 

「我が救世主よ、落ち着いて頂きたい。まずは貴方のPCに”悪魔召喚プログラム”を送りましょう」

 

「あ…”悪魔召喚プログラム”…だって?」

 

 パズスが口にした物の名に、人哉はもう本日何度目か分からない驚きに包まれる。

 

 ”悪魔召喚プログラム”…これは、先ほどまでプレイしていたゲーム『デビルバスター』の設定の根幹を成していた物であり、これによって悪魔との交渉、使役、更には悪魔同士の合体などと言うみるからに禁忌な技をも使用可能としていたのだ。

 

 とはいえ、架空のゲームだからこそ、受け入れる事が出来たのだ。こんな白昼夢みたいな出来事を、現実として受け止めるなどそう簡単にできるものではない。

 

「そして、『デビルバスター』にて仲魔にした悪魔を、この悪魔召喚プログラムに移しておきましょう。さあ、我が救世主よ。今こそ死人使いネビロスを打ち倒し、このシェルターの救世主…そして、世界を救う救世主となる時です」

 

「ちょ…」

 

 言うや否や、パズスは己の両手の平を打ち付ける。次の瞬間、周囲は光に包まれ、まだ聞きたい事があった人哉もM99も、その光に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

「………ろ………なり……お…ろ………人哉…起きろっ!!」

 

 思い切り身体を揺さぶられている感覚に、ゆっくり目を覚ます人哉。揺さぶっていたのは、元軍人であり、今はこのシェルターの警備隊長をやっている男だった。

 

「やっと起きたか…。ったく、この非常事態に呑気に昼寝とは、意外に神経の図太い奴だ」

 

「…う……ん……?」

 

 呆れた感じのため息を吐く警備隊長。その直後、人哉の隣で寝ていたらしいM99も目を覚ました。

 

「M99も目を覚ましたか。いいかよく聞け二人とも! 今、このシェルターは戦闘人形達に襲われている! 最初は何故グリフィンの戦闘人形が…とも思ったが、どうも様子がおかしい。いいか、事態が明らかになるまで、ここに隠れているんだ!」

 

 そう言って、警備隊長は一丁の拳銃…ワルサーPPKを人哉に手渡してきた。恐らく、護身用として持っていろ…という事だろう。

 

「私も行きます!」

 

 即座に出て行こうとする警備隊長に、M99がついて行こうとするが、

 

「いや、M99もここで待機していてくれ。片腕しかないとはいえ、やはり君は戦闘人形…このシェルターの中では一番の戦力だ。しかし、修理も補給も容易に出来ない今、その最強の戦力を闇雲に消耗させるわけにはいかない。とにかく、まずは原因究明だ。そして、原因が明らかになれば、そこをM99に叩いてもらう」

 

 警備隊長はM99を制止し、その理由を簡潔に語る。

 

「で、でも、相手は戦闘人形ですよ!? 生身の人間では…」

 

「なに、こう見えても対人形の戦闘経験はそれなりにある。そう簡単には死にはしないさ!」

 

 なおも食い下がろうとするM99に、しかし警備隊長はM99を安心させるためか、ニヒルな笑みを浮かべながら足早に部屋を立ち去ってしまった。

 

「M99さん…これを見て下さい」

 

 警備隊長の後姿を呆然と見つめていたM99に、人哉が語りかける。M99が振り返ると、人哉はPCの画面をM99の方へと向けていた。そして、その画面にはある文字が…。

 

「―――”悪魔召喚プログラム”」

 

「ええ、もしかしたら、この異常事態も何とかなるかもしれません…!」




 因みに、女神転生Ⅱ(FC版)は発売当時の未来の話という設定なので、現実世界の銃も実名で登場します。ワルサーPPKはこのお話と同じく最初に渡される銃で、他にも店売りとしてウージー(UZI)、デザートイーグル、M60マシンガン(M60)等があります。特に、ウージーは最序盤の要で、これを装備するだけで、殲滅力が段違いに上がります。

 一方、ゲームならではの架空銃も登場します。プラズマライフルやメギドファイアなどがそうです。今作の場合、これらの戦術人形も出した方がいいのでしょうか…?
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