不遇な少女達の魔王道   作:那由多 ユラ

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第8話

私と琴音がこの世界に来て、私が魔王に就任して約三年が経過した。民は私のやり方に慣れ、私は魔王という立場、呼ばれ方に慣れてきた。

 

さて、三年も経てば私だってこの国の王。この国恒例の『魔王の我儘』を私も執行した。

 

それは魔族地区と魔物地区の境に建てられた孤児院。親のいない子に衣食住を提供するだけだなく、人攫いに襲われた子を保護し、親がいなければ孤児院へ、親がいるならばその子の意思で親元に帰るか孤児院に来るかを決める。

それと、国や村全体から虐げられる子も半強制的に保護している。その大体がハーフであったり、魔物に犯されたり、やむを得ず人を殺した子であったり様々だ。

 

孤児院の管理は私と琴音を中心に国全体だ行われており、子供好きな人なんかはよく子供たちに食事やお菓子をあげたり、孤児院の近くに子供たちが遊べる公園を土地の有り余った魔族地区に大きな公園を作ってくれたりもした。

また、魔族地区を管理しているマフィさんの協力のもとスライム等の安全な魔物を孤児院に連れてきてもらって子供達が可愛がったりしている。

 

他には……あ、リリアちゃんなんだけどあの子はマフィさんの助手としてマフィさんの家で暮らしている。つまりあのクラークは美人さんと美少女と一緒に暮らしているという訳だ。うらやまけしからん!

 

 

 

タタタタタタタタタタタッ

およ?一歩一歩か凄い早い足音が聞こえる。これはこの城のメイド、ラストさんだ。何かあったのかな?

 

なんて考えていたら玉座が有るだけのこの部屋の扉が勢いよく開かれた。

 

「魔王様!緊急事態です!妖狐の少女が冒険者と思わしきものに攫われました!」

 

「はぁ!?その子の家族は!」

 

「両親と弟くんがいましたが……」

 

「あーもー!とりあえず行ってくる!方向はどっち!」

 

「人身売買が盛んな街、モーゼスです!」

 

やっぱあそこかよ!絶対あの街はそのうち滅ぼすんだから。

 

 

 

ラストさんの報告を聞いた私は城から飛び出し、ヘルムートの門の前まで街に被害が出ない程度のスピードで走り抜ける。

 

妖狐の子と家族はヘルムート近くの平原で遊んでいたそうだ。ヘルムート近くは一年の大半は冬のような寒さで雪が降るが、夏だけは雪が降らないので国の外に遊びに行く人は割とよくいる。その際大人と一緒に行くように言ってるんだけど、まさか親まで殺されるなんて…

 

 

平原に着くとそこには狐の耳と尻尾を生やした金髪の男女とその子供と思われる少年の遺体が転がっていた。彼等は皆心臓あたりを切り裂かれていて、魔族に聖水をかけたときに生じる爛れた跡がある。

少し離れた位置に剣と杖、槍が突き刺さった土の膨らみがあった。

 

「ステータスMAX、敏捷」

 

私は音を超えるスピードで野を駆け山を駆け…という程ではないが3kmほど進んだ所に鎧と剣を血で汚し、不自然に揺れる子供一人入りそうな麻袋を肩にかけた男がいた。

 

アイツだ。ぜっったいアイツだ

 

私は奴の背後に着地し、即座に袋を奪い取り破き開けると中からは予想通り妖狐の少女が手足に口をを縛られた状態で出てくる。

 

「ンゥッー!!んっ!?んん!?」

 

私は少女を潰さないように、決して離さないように抱きしめ、人攫いから距離をとる。

 

「誰だっ!……喜多…さん?」

 

人攫いは希依のことを知っているようだがその声は希依に届かない。

 

 

私は少女を地面に腰を下ろした形で地面に下ろし、手足を縛るロープと口を縛る布を少女を傷つけないように引きちぎると少女の幼いながらも整った顔と金に輝く綺麗な瞳が顕になる。

 

「ぁっ、ま、まおーのおねー「ごめんなさい!」…さん?」

 

「ごめんなさい!あなたの家族、守れなかった…本当に、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

希依は少女を再度抱きしめ、涙を流しながら少女の両親と弟を守るはずの立場であるのにも関わらず守れなかったことを、謝る。

 

少女もまた涙を流し、自らを抱く魔王、希依の言葉を否定し、自身の愚かな発言を悔いる。

 

「…おねーさんのせいじゃない。リンがパパとママに外に行きたいって言わなきゃ…」

 

そうじゃない。悪いのは守れなかった私であり、人間。この世界であり、モーゼスとかいう腐った国。

 

何が最強だ。

何が魔王だ。

なにが星神のなりそこないだ。

私は少女とその子の家族を守れないくらいに、弱い。

 

 

妖狐の少女と希依がお互いに自らの行いを悔いているとそこに人攫いが希依に声をかける。

 

「あ、あの、喜多さん?一体何を?それは魔族だよ?」

 

「…誰?なんで私の名前を知ってるの?」

 

「は、はは。冗談きついなぁ。俺だよ。君と一緒に召喚された勇者の織田光亮だよ」

 

勇者……あぁ、そういえば私と琴音はこいつの巻き添えだったんだっけか。

…あと2,3人いなかったっけ?

 

「…そう。…この子の両親を殺したのって、あんた?」

 

「両親?何を言ってるんだ?それは魔族だろう?」

 

なんだこいつ。話が通じない。

 

「あ、あいつだよ。パパとママとリョウを、殺したの」

リョウって言うのはきっとこの子の弟のことだろう。

 

「そう。ねぇ、リンちゃんって言ったかな?リンちゃんはあいつ、殺したい?」

 

「えっ?」

 

希依の言葉を聞きリンという妖狐の少女は考える。考え、数秒で答えを出した。

 

「ううん。だって、殺したら、私だってパパとママを殺したアレと一緒になっちゃう。

 

パパが言ってた。

『やられたらやり返せ。じゃなきゃ嘗められる。

殺られても殺り返すな。そしたらリンも同類だ。』って。

 

ママが言ってた。

『ママもパパも、いつかはリンより先に死んじゃう。それは普通のことだから。

病気で死んだのなら病人を、

寿命で死んだのなら老人を、

誰かに殺されたのなら、弱い子を、

リンが守れる強い子になってくれれば、

 

パパもママも、それがいっちばん嬉しい』って」

 

羨ましい。それがリンちゃんの、リンちゃんの両親の言葉を聞いて最初に思った、思ってしまった私の思いだった。私も、そんなカッコイイお父さんとお母さんがいたら、何か変わったのかな。

 

まぁ、そんなこと考えたって無駄なんだけど。

 

「ねぇ、勇者のお前、なんで殺したの?あともう2,3人いなかったっけ?」

 

「…されたからだよ」

 

「あ?」

 

「殺されたからだよ!香澄に瀬名に亮太も!3人ともそいつの仲間に殺されたからだよ!」

 

「…誰?それ」

いや、ホントに誰だっけ?私に石投げた奴?それとも椅子?机?もしかして琴音をいじめた奴?

 

「まさか、忘れたのかい!?仲間だったじゃないか!僕達6人とも魔王を倒す為の!」

 

「知らないし。いちいち敵モブの固有名まで覚えるほど私の頭は良くない。

それと、私に仲間なんていない。いるのは琴音という家族とマフィさんとリリアちゃんみたいな親友、クラークっていう悪友、あと私を慕ってくれる国民たち。それだけ」

 

「――魔王様、私とクックちゃんの事をお忘れでは?」

 

勇者の反対側、希依とリンの後ろに体長3mのライオンの体、頭部。蛇の体と頭部の尻尾、広げると幅5mという大型の翼の生えたキメラと魔王城唯一のメイド、ラストがそこにいた。

クックとはキメラの名前でクックちゃんは私のペットだ。

 

「…ごめん。素で忘れてた」

 

「んもう、酷いです!」

ラストは頬を膨らませ、プンプンという効果音が聞こえそうな様子で怒りを表していた。

 

…いやあんた幾つだよ。初代魔王より前じゃなかった?生まれたの。

 

「ガウッ!/シャー!」

クックちゃんは尻尾の蛇とライオンの顔を私の顔に近づけて何かを伝えて来るが理解者の琴音やマフィさん、覚のクラークと違って具体的には分からない。

 

「ゴメンゴメン」

とりあえず私は両手でそれぞれの頭を撫でながら謝ることにした。

 

 

「き、喜多さん、君は一体…、それに魔王って…」

 

「希依様は魔国ヘルムートの国王でございます。頭が高いのではなくて?歴代最悪の勇者よ」

 

勇者の問いにラストが代わりに答える。

私はクックちゃんのご機嫌とりに忙しい。

 

「き、君の方が失礼だろう!何様のつもりだ!」

 

「聞けばなんでも教えて貰えるとでも?」

 

「いいや、聞くまでもない!君は間違いなく俺の敵だ!」

 

勇者は聖剣を構え、ラストに斬り掛かる。

 

「…魔王様、戦闘許可を」

 

「リンちゃんの前だから、殺しはなしね」

 

「承知」

 

 

 

 

 

「うおおおお!!」

 

「種族というどうしようもない差、見せつけて差し上げます。『右腕変形(ライトアームトランス) 鬼神(オーガ)』」

 

勇者の振り下ろす聖剣をラストの浅黒く一回り大型化した右手で握り砕く。

 

「嘘だろ!?」

 

「リンちゃんの家族が殺されて怒っているのは魔王様だけではございません。『左腕変形(レフトアームトランス) 巨人(ジャイアント)』『脚変形(レッグトランス) 天馬(ペガサス)』」

 

ラストの左腕が大木のように大きな腕となり、下半身は翼の生えた馬となる。その見た目はさながら異色のキメラと言っても差し支えない。

 

異形となったラストは翼を羽ばたかせて天高く舞い、勇者から1m程離れたところに巨人の拳を振り下ろす。

離れていたので直接のダメージはなかったもののクレーターが勇者の足元まで広がった。

 

「今すぐこの場を去りなさい。これ以上続けるのならば、リンちゃんを気絶させてあなたを殺します」

 

「う、うわぁぁあああああ!!」

 

勇者は直ぐに駆け足で悲鳴をあげながらその場を去る。

…あいつ、名前なんだっけ

 

 

 

「お怪我はございませんか?リンちゃん」

 

「ん。ありがとうラスト様。ちょっとスカッとしちゃった。リン、悪い子?」

 

「いえいえ。むしろ家族を殺されたのなら当然でございます。でしょう?魔王様」

 

「うん。むしろもっと怒っていいと思う。私が琴音を殺されたら…」

 

「「殺されたら?」」

 

「この世界を空間ごと破壊して私も死ぬ」

 

「…魔王様、そんなタチの悪い自殺をなさらないでください。リンちゃんは真似してはいけませんよ?」

 

「う、うん。というかできないと思うの」

 

「いいえ、リンちゃんは強い子です!いつかきっと出来るようになりますよ!」

 

「わっちょっ、ラスト様ぁ!」

 

ラストはリンちゃんを肩車してクックちゃんの背中に飛び乗る。

 

「クックちゃん!魔王城まで全速力です!」

 

「ガウッ!」

 

二人を乗せたクックちゃんは魔王城目掛けて飛び去っていった。

…私を置いて。

 

「待てコラー!」

 

 

その日、魔王城の屋根に突き刺さった美少女魔王が目撃されたとか




~ある日の二人の会話~

ねぇおねーちゃん、どうして異世界もののラノベ主人公って元の世界に帰ろうとするのかな。SAOの人達みたいにタイムリミットが短かったりしたらわかるけど

さぁね。多分、ちゃんとオタクじゃなかったんじゃない?

ごめん、意味わかんない

『神のミスで死んで転生したい』『異世界に飛ばされてハーレム作りたい』『俺は生まれてくる世界を間違えた』…とか言う人結構いるけど、いざ異世界に行ったら帰りたいなんて言うのは、それってきっと趣味に対して全力じゃなかったんじゃない?ってこと。もしくは全くのオタクじゃなかったか

でもさ、異世界に来たからってみんながみんな私達みたいに何かしらのチートを持ってるわけじゃないじゃん。そんな人はやっぱり帰りたくなるんじゃないかな。オタクであっても

私が言えることじゃないけどさ、チートを持ってて当たり前なんてのはただの甘えだよ

ホントにおねーちゃんの言えることじゃないね

命の危険があるのは現代の世界でもファンタジー世界でも同じ。極論、身を守る為の武器が正当かどうかだよ。

言われてみれば確かに。私やおねーちゃんはいつ殺されても、自殺してしちゃってもおかしく無いくらいの暴力を受けてたもんね

うん。別に異世界に来たからって勇者とか冒険者になる必要なんて無いわけだし。現代でも、きっと、ひたすら逃げ続ければ、私達みたいなのでも30歳くらいになれば人並みは無理でも、奴隷位には幸せになれたんじゃないかな

それがホントなら私、こっちに来てよかった

私も、琴音と一緒に来れてよかった。私だけで来てたら、向こうに一度戻らなきゃ行けないもん

その時は私も連れていってくれる?

もちろん。私と琴音の仲じゃない
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