gold・Brigade ー黄金の旅ー 作:放浪者キカイマン
放浪乙女其ノ一
1
「うふふ…上手くいくと良いわね…愛しい私の子…」
眩しい程の輝きの中優しい私の声が響く
それは声でありながら、眩しいとさえ感じるような声
落ち込んだ者を一声で安心させる声
自信過剰かもしれないが、きっとそうに違いない
「お世話はしてあげられないけれど、私の子に変わりは無いわ…」
私はお腹をさすり、宥める。
お腹には1つの光があった。
「やりたい事をやって、自由に…生きるのよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
2
ゴトン!!ゴトン…
馬車の車輪が段差を蹴る。
その衝撃で私は目を覚ました。
「う…」
痛い。
どこがって、頭が。
馬車を引くおじさんが申し訳なさそうに肩越しに声をかける。
「あらや、起こしちまったかぁ?」
「いやぁ別にいいですよ、おじさん、運んでもらってるんだし…」
馬車のおじさんは、ハハハ、それもそうだな!と高笑いする。
笑いのツボが良く分からない馬車のおじさんを前に
「ハハハ…」
私も釣られて笑ってしまった。
やがて小さな笑いは止み、少しの間静かな時間が流れた。
響くのは、馬の嘶き声と、私が座る座席の軋む音。
その静かながらリズムのある雑音に耳を傾けた。
「…」
(さっき…いやぁ、何時間前?頭に衝撃が来た時かな?)
その場に居ない何かに声を掛けられた気がする。
馬車のおじさんでは無い。
「(――――――――――。)」
記憶は曖昧で、思い出せない。
(何回目かなこれ…)
「うーん」
少し考え。
「まぁいいかぁ」
思考に踵を返した。
(分かった所で何も無さそうだし、どうでもいいかなぁ)
「独り言かいな?」
前方から声が掛かる。
無論、馬車のおじさんから。
「…なんでもないですよ」
「そうかね?そろそろセメタルトに付くんもんで…」
そう言われて馬車の進行方向に顔を向ける
(セメタルト石国かぁ、もう着いたんだ…。)
「うん…お疲れさまだね、おじさん」
「はは、そういうのは着いてからにして欲しいもんだが…ありがとよぅ」
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3
あのお客さんは代金を払ってセメタルト石国に入っていった。
「…」
入口で彼女を見送ったが。
(不思議な奴だったなぁ)
このご時世に女性が、しかも一人で旅なんて、物珍しいことこの上ない。
「にしても、おじさんかぁ…まだ20代なんだがなぁ…」
たしかに声は低いとは思うが…。
「…んぅ?」
遠ざかる彼女の姿を見て、気づいた。
「なんだあいつ…おぼつかねぇ歩き方だな…」
さらに気づく、手元にある代金の重さが「いつも」と違うことに。
「…?代金が…?」
いつもの癖と久々の長運びによる徹夜で代金の確認を怠ってしまっていた。
一瞬良くない乗り逃げの言葉が浮かんだが。
その考えはすぐに絶たれる。
(おいおい…)
俺の手には
代金の10倍価値のコインが置かれていた。