gold・Brigade ー黄金の旅ー 作:放浪者キカイマン
1
「ぬぅぅ!」
「おいおい、もうちょい気ぃ張れよ」
腕相撲は良い。
簡単に力比べが出来る。
頭の悪い俺でも分かる思考の競技だ。
「ん」
「ぐっ!」
今目の前に居る男は。
俺が
(何に痺れを切らしたのかは知らんが…)
まぁ俺は自分の事をやったに過ぎない、怒られる筋合いでは無い。
それでも尚こうやって勝負を持ち掛けられ、勝ったらお前が出ていけ。等と言われるのは。
目の前に居る男がそこらに腐るほどいるチンピラだからだろう。
当たり前だが、不毛なやりとりである。
まぁ売られた喧嘩は買うべきだろうと、ほんの少し期待しつつ腕相撲を仕掛けたが。
「グ…」
彼の右手はきっちり左のテーブルに押し付けられている。
(まぁ、そんな訳無ぇよな)
俺は嬉しくもない勝ちを宣告した。
「俺の勝ちだ。」
「てめぇ…」
クソがくそがと悪態をつきつつ、彼は出ていった。
「…。」
「くだらねぇ…」
俺はそう呟いた。
俺は長々無き親父に言われた「相棒」を探しているが、「相棒」の意味がよく分かってはいない。
強い者を味方につければ良いのか?
それとも、只息が合うだけで「相棒」として成立するのか?
親父が死んでからも、馬鹿な俺にはその2語の意味が分からない。
先程の腕相撲で頼んでいた酒瓶が零れていたのを見て、頼み直した。
暫くして、注文したそれがテーブルに置かれる。
「…ハハ」
俺のどこか不安げな顔が酒瓶のガラスに映っている。
(顔にも出ちまってるのか)
「糞、胸糞わりぃ…」
酒瓶を掴み取り、酒を口に流し込む。
「ふぅ…」
(味気ねぇ酒だ。)
と、その直後。
「ゴトン」とテーブルに何かが置かれる音がした。
「おい、追加で頼んだ覚えは…」
いつの間にか下げていた頭を上げると。
「お隣いいかしら?」
やけにボロボロな服装の女が立っていた。
一つの酒瓶を手に、もう一つをテーブルに置いている。
「なんだ…アンタ」
「ここは委託所よね」
あぁ、何かの依頼だろうか。
風貌的に護衛か何かだろう、概ね旅人と言った所か
その旅人らしき人は、先程自分で出した質問の答えを聞く気がないようだ。
俺の隣に堂々と座ってきた。
「失礼」
「…まぁ良いけどよぉ…」
背丈は俺より少しデカい、元より俺が少し小さいのも有るが女にしては背が高い。
俺より若そうな女だ。
容姿がボロボロなのがその顔に似合っていない、付け焼き刃のようなローブを来ている。
(危険なヤツじゃなさそうだな)
「貰っとくよ」
さっき飲んだが貰えるものは貰っておこう、と差し出された酒瓶を1口飲んだ。
「で、奢ってくれたのは有難いが、何の用だ」
生憎俺は気分が優れない、野暮用なら断ろう、そう決めた。
「ん…そうね…依頼って訳ではないんだけど…」
「そうか、なら他を…」
答えを聞くや俺は断る素振りを見せた。
つまらん仕事は断るに限る。
しかし彼女は俺の言葉を遮り、こう言った
「貴方の事なんだけど…」
「あたってくれ…。って、貴方ぁ…?」
断る向上を言い終わっていたため、腑抜けた声が出てしまった
(こいつは、俺の事を知っているのか?)
改めて彼女の風貌を一瞥するが、やはり見覚えはない。
「俺になんの依頼があるんだよ」
そう問うと、彼女は視線を上に向け、人差し指で頬を付きつつ。
まるでなんとなく、といった素振りで。
「貴方…浮かない顔してたから…」
そんな答えを返す。
それを聞いて俺の眉間に皺が寄った。
(なんだ…こいつは)
なんなのだろうか、この胸騒ぎは
俺は、心にある何かを駆り立てられていた。
「俺はあんたの事は知らねぇし、俺の気分についてとやかく言われる筋合いはねぇが…」
何故だかは、分からないが。
俺はそこで切り上げてもよい場面で、彼女を追求した。
「まだ答えを聞いていない。俺が浮かない顔をしているから、なんだってんだ」
コツン
そんな音が俺の耳に届く。
机に置かれたのは、1枚のコイン。
「あ…?」
「うん、決めた」
彼女はその覚悟とも言える呟きの後。
「貴方の────人生を、雇う。」
俺の耳に響いたその言葉は、雑音紛れる委託所の中でもはっきりと聞こえた。
そして彼女の目は、何かを真っ直ぐ見据えていた。