gold・Brigade ー黄金の旅ー 作:放浪者キカイマン
貴方の人生を雇う。
その言葉は俺を固まらせるのに十分な力を持っていた
「……。」
「……。」
暫く間が空き
「…どう?」
と、彼女か詰めてきた。
「言ってる意味が分からんが」
考える前に口が動いた。
(うん、改めて考えても分かんねぇ)
心の中でそう結論付けた。
彼女は言語が通じないと解釈したのか声を荒らげた。
「えぇ!なんでよ!ここの国の言葉は話してるでしょ!」
(なんだそりゃ)
「いや、そういう問題じゃねぇし、今まで会話してたじゃねぇかよ」
俺は続けて言う
「それにアンタの言ってる事を本気だと信じるとして、だが」
俺は彼女の真意を確かめるべく、要件に答えるより先に彼女に釘を指す為の口を出した。
「俺、そのコイン1枚じゃ虫退治も受ける気にならねぇぞ」
俺はこれでも一応雇い人の仕事を全うしている。
ちゃんと対価に合う仕事をする。それが当たり前なのだ。
(こんな端金じゃぁ動く気にもならん)
「なんでよ、良く見てよ」
「あ?どう見たってトウカ1つ…」
にも関わらず彼女が不満そうな声を上げるものだから、俺は卓上のコインを拾い上げ、彼女に突き返した。
「おら、どう見たって1トウカ…あぁ?」
真実を告げようとして、突き返したコインの質感が違うことに気付いた。
手に持ったコインは俺が思っていた物より遥かに重かったのだ。
国の金はトウカで統一されていて、10、100、1000〜とそれぞれ纏められた1枚にできる。
色は灰色、銅、銀、金〜とあるが。
俺が彼女に突き返したコインは、俺が知る色では無かった。
「おいアンタ、これはこの国の…金だな…マークがちゃんとついてやがる…」
「お金は統一されてるんだから当たり前じゃない」
彼女は俺がこのトウカの価値を知らない事を察したらしい。
ニンマリ含み笑いを入れて言った。
「ふふん…それは…トウカ100億枚分よ」
「…。」
再び静寂が訪れる。
(はぁ!?)
「おいおい、冗談はよせよ、アンタ旅人だろ?どっかの貴族かなんかでもねェよな?」
俺は笑い飛ばしたが。
「ええ、只のしがない旅人よ?」
そう真面目に返されたものだから。
「そいつはおもしれぇな!」
笑いが1層増した。
(いやぁ、そんな)
(どうしたの?といった顔をされてもなぁ)
疑心暗鬼な俺を見て。
「言ってる事は本当よ!私はそのトウカ100億枚で、貴方の人生を雇うって言ってるのよ」
そう言い切った。
「クック……」
俺は彼女の顔立ちを一瞥し笑いを止めた。
「……。」
(…こいつ、
先程の眼と同じ、信念が詰まった目である。
長々仕事柄で人との関わりを持って、多少依頼人の嘘真は見抜けるつもりだが。
彼女程に一途な意志を持った奴はそう居ないんじゃないか。
「…マジか?」
「マジよ!」
(マジなのか…)
俺は少し考え
「はぁぁ〜そうか、そうか」
深く息を(溜息かもしれない)をつき、頷いた。
(面白い…)
本当にアンタが人生を雇うのなら。
「まぁ、いいよ。その話、乗ってやる」
「ホント!?」
「但し」
せめて。
「アンタの目的を聞いてからだ、それを言わないならこの話は無しだ。内容によっても…だな」
(それに似合う目標がねぇとなぁ…!)
彼女は難解な表情を浮かべ。
「…分かった。隠すのは良くないし…。さっきみたいに笑い飛ばさないでよね」
「おう」
俺は小さく頷き、答えを待った。
「私は────」
ガチャガチャガチャガチャガチャ──!
言葉は遮られ、無骨な金属音だけが鳴り響いた。