gold・Brigade ー黄金の旅ー 作:放浪者キカイマン
~1~
私は何度か野蛮な人達を「見た」事があるが、実際に対峙した事は無かった。
私は魔法の目で人物像を見る事が出来るが、そういった人達のシルエットは皆色がどす黒いのだ。
にもかかわらず私がワイズに倒された人達を気にかけたのは、そのシルエットがそのようなどす黒い色ではなく鮮やかな水色だったからだ。
色が鮮やかな人は総じていい人が多い、あの時の果物屋のように。
私がもし今の状況でどす黒い人に出会ったら、恐怖も相まって何処かに走り去っていただろう。
もちろん鮮やかな色の人でも例外はあるかもしれないが…。
はや20年変わらなかった事の例外を解くのははばかられた。
目の前にいる人たちは。
私達を待ち伏せしていたと思われる人達のシルエットは。
やはり、鮮やかな青色。
その人達は通路の出口180度を包囲していた。
その中の1人が
「よう、最近暴れてる兄ちゃんよぉ」
喧嘩腰の口調でワイズに話し掛けた。
「んなフランクに話しても無駄だろが、人の通行先に突っ立つ馬鹿共がぁよ」
ワイズはその言葉を全反射し、ガンつける。
(突き放しの文句がまともだ…)
案外正論を言う人なのだろうか。
…それにしても。
「あぁ!?」
「おぉ!?」
これは…。
「あぁん!?」
「ごるぁ!?」
会話なのだろうか…。
互いにメンチを切っているようにしか見えない…。
~2~
「ふん…拉致があかねぇな」
メンチ合戦を先に切上げたのはワイズだった。
私はその間一言も話せず。呆然としていた。
「(おい…)」
そんな私が彼の小言に気付いたのは数秒後、呼ばれて2回目の時だった。
「(おい!)」
「へっ!?あ、あぁ…うん、どうしたの」
「(またかお前…耳あんのか)」
ごめん、と小声で謝り、訳を聞く。
「(こっから離れんぞ)」
「(え、倒さないの…?)」
てっきり私はあの未知の力で全員はっ倒すものかと思っていたが。
「(だりぃんだよ)」
(だるいのか…)
「(そ、そう。逃げるの?逃げられるとは思ってないのだけれど…)」
そう、180度くまなく囲まれているというのに、どうやって逃げるのか。
「(とにかく俺の後ろに回れ)」
「(…分かった、信じる)」
経験がありそう。という理由だけだが、言われた通りにする。
幸い彼等の視線はワイズに向いている。
私が動いても、大して反応は無かった。
ワイズはその様子を確認し、
目の前の人達に明らかな敵意を向け、拳を振り上げた。
「生憎今は暇じゃねぇんだ!どけやぁ!」
私は殴り掛かるかと思ったが、その硬そうな拳は地面に向かって振り下ろされた。
「「「!?」」」
その様子を見て、私含む一同は同じ反応を見せた。
ズドン!
そんな鈍い音と共に振り下ろされた直の拳は石造りの地面を悠々と叩き割り。放射状のヒビを作り上げ…。
「おおぉぉぉぉ!?」
ヒビの先にいる人達を後退させた。
(人間…じゃない!?)
「わ、わわ」
その地割れを起こす程の衝撃に私は尻もちをついてしまう。
やはりこの人は、何かが飛び抜けている。
(な…何者なの…?)
「言っとくが」
直後、拳を地面から引き抜いたワイズは、その手を。
ちょこちょこ石の破片がついている手を。
私に向けてきた。
「俺は人間だからな」
説得力の欠けらも無い言葉である。
「…そ、そうですか」
変に敬語にして返してしまった。
戸惑う私を見兼ねたか、ワイズは構わず私の手を無理くり持ち上げ、立ち上がらせた。
「っ…とと」
腰が抜けたようだ、立たせてもらった矢先膝から崩れ落ちてしまった。
「…」
「ご、ごめん。なんとかするから…」
へたり込む私を黙って見つめてくるワイズに対し、急いでまくし立てるが。
「いや、いい。」
そのワイズの一言とともに、私の体が。
持ち上がった。
「〜!?」
背中を押さえられ、もう片方の腕で腰周りを浮かせ、担ぎあげる形になった。
「ちょっ…ちょっと…!?」
戸惑う私を無視し、ワイズは軽く息を吸い込み、
「暴れんなよ」
その呟きと同時に、跳躍した。
途端私の視線から地面が急に離れ、腹部に軽い衝撃が走る。
顔を上げると。
「っ…!?」
ワイズと私が宙に浮いていた。
というのも、羽が生えて飛んでいる訳でもなく、すぐにきちんと落下する。
唯一そこが彼が弁明した「人間らしい」所だろうか。
ドスン!
飛んだ距離相応の着地音を鳴らし、別の場所に足を付ける。
「うぇぷっ」
衝撃で肺から空気が漏れ出る。
着地したのは何処かの屋根だった。
斜め前に跳躍して住宅らしき建物の屋根に乗ったようだ。
私は担がれているので後ろは見れないが、彼らの声が下から響いてくる。
「何処に行きやがった!?」
「探せ!馬鹿野郎!」
瓦礫で私達の姿が隠れていたせいか、見失ったようだ。
一方私を担ぎあげているワイズだが。
「どこだったけなぁ」
辺りを見回していた。
私は肺から出た空気を取り戻す為、下ろすようワイズに頼むが。
「…ふー、は、早く下ろしてくれ…る…うぷぉ!?」
何かと思えばすぐに跳躍し、ワイズはそれっきり止まらなくなってしまった。
~2~
「ちょ…ちょっと…っ!」
ドスン
「うふぁ」
ドスン!
「ふぐ」
ドスン!
私はあらん限りの息を吐き出した。
「ちょっとぉ!」
ピタリとワイズが止まった。
そして気だるそうな目を向け
「うるせぇぞアンタ」
そんな事を言い出す、担いだまま。
傍から見たら誘拐犯である。
この体制では呼吸がしづらく、息苦しい。
「…からっ、下ろしてよ…胸も…苦しいし…」
「…」
彼は黙ったままだった。
…駄目か?
と、
「ふん」
そんな鼻息とともに
ワイズは私を担ぎあげるのをやめた。
そして私の体から手が離れる。
(離れるっ…!?)
私の体は軽々と放り投げられた。
そして、なんと器用なことか。
私の体は逆(腹を上に向けての担ぎあげである)になって、再び彼の肩に降りたった。
「これで息は吸えるだろ」
「………」
まぁ━━
━━さっきよりは苦しくなかった。