リメイクしました
君は愛しの
「つっかれたぁぁ〜」
大きく溜息を吐いて肩を落としながら、アパートの外階段を昇る。
毎日のように上司に怒られ、同期からは呆れられ、周りに迷惑をかけてばかりな駄目OL。
それが私、鈴木 林檎です。
普段からミスばかりで叱られているけど、最近は忙しさに拍車がかかって通常の三割増しでミスをしている。上司は怖いけど、こんな私を雇い続けてくれている会社だ。見限られないよう、一生懸命働いている。
それでも結局、ミスが多いから叱られるのだけれど……。
「お腹すいた……早くご飯食べたい……」
もしもこれで一人暮らしでもしていようものなら、仕事の疲れを理由に家事をすべて怠り、挙句の果てには孤独死していたと思う。いや割と本気で。
不器用な私は仕事はおろか、家事もからっきし苦手なのだ。
だがしかし、我が家には私の帰りを待っている家族がいる!
まぁ、愛犬が一匹なんだけど。
「ただいま〜」
「おかえり林檎。今日は寒かったろ、風呂湧いてるぞ」
玄関扉を開ければ、愛犬が優しく微笑みながら出迎えてくれる。
「そうだ。昨日リクエストしてたハンバーグ、作っておいたからな」
正しく言えば、犬ではなく狼だ。言うなれば、
「あ、あと……」
私の上着を受け取りながら、愛しの狼は頬を赤らめて私の頭を撫でた。
恥ずかしそうに、頭から生えている獣耳がパタパタと揺れている。
「今日は満月だから……毛深くなる。夜の運動は……我慢してくれ」
もっともっと正しく言えば、狼ではなく、人狼だ。
ある日突然、狼から人の姿になった狼女だ。
アッシュグレーの髪の毛を雑にくくった彼女は、私の同居人―もとい、ペットである。
◆
「別に毛深くなっても私は気にしないのになー。ミカンは恥ずかしがり屋さんだね」
「そうか、ハンバーグいらないのか」
「嘘です! ごめんなさい、ごめんなさい!!」
取り上げられそうになった皿を無事取り戻し、私は綺麗な楕円形のハンバーグに箸をいれる。私と違って家事が得意な愛狼―ミカンの作る料理はとても美味しい。
狼に生活力で負けている件に関しては、とっくにプライドを捨てているため気にならない。
プライドでお腹は膨れないのだ。
それにしても。と、私はミカンの顔をちらりと覗き見る。
毎日顔を突き合わせているけれど、ミカンの顔面の格好良さにはいつまで経っても慣れる気配がない。まつ毛は長いし鼻筋は通ってて綺麗だし……造形美がカンストしている。
狼の頃から大好きなミカンだけど、こうして人間の姿になってからは、美味しいご飯を作ってくれるし、家事全般もこなしてくれるし、何より私を癒してくれる。
食卓を挟んで向かいに座る彼女の凛々しい顔立ちに見惚れていると、ミカンが口元にご飯を運びながら不思議そうに首を傾げた。
「どうした林檎。冷めるぞ」
「あぁ、うん。ミカンって本当にかっこいいよなぁって」
別に悪気があったわけではないが、ミカンは私の言葉にむせてしまった。急いで背後に回り、背をさすってやる。
普段は凛としているのに、少ーし褒めるとこれだ。どうしてミカンはこうも押しに弱いのか。肉食獣のくせして夜はネコだし。いや、肉食獣だからネコで合ってるのか。
げほげほとむせながらも、ミカンはその切れ長の目に涙をうっすら浮かべて私を睨み付ける。その顔は照れからか、真っ赤になっていた。
「林檎、そういうのは控えてくれと何度言えば……」
「だって本当のことだし」
今のは悪気があってやった。反省はしていない。
さらにむせるミカンの背をさすりながら、私の頬は緩みきっていた。もしミカンがいなければ、今頃私は――。
「ありがとね。ミカン」
「げほっ、そこはごめんね、だろう!?」
大好きな