私の同居人(ペット)は狼女です。   作:凛之介

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やっとこさ100話です。
いつもありがとうございます。


君とのんびりカフェデート

「抹茶白玉パフェと……カフェラテのアイスお願いします!」

「あとブレンドコーヒー、以上で」

「かしこまりました」

 

 丁寧にお辞儀をして厨房へ去っていく店員さんを見送り、私は向かいの席に座るミカンに目線を戻した。

 

「カフェでお茶するの久しぶりだね」

「そうだな」

 

 柔らかく微笑みを返してくるミカンに、私はきゅんと胸をときめかせる。

 

 ◆

 

 暖かな日差しが燦々と降り注ぐ日曜日。気温も程よく、こんな良い天気の日に外に出ないなんて勿体無い! という訳で私たちは散歩に繰り出していた。

 道中見つけた雰囲気良さげなカフェは日当たりも接客も良い割に利用客が少ない。しかしそれが私たちには都合がは良く、奥まった席で二人向かい合ってのんびりと注文品を待っている。

 

「このあとさー、本屋寄って良い?」」

「ん。駅前じゃない方だろ」

「勿論。あそこの本屋さん、個人経営で人気(ひとけ)ない割に品揃え豊富で私たちにうってつけだよね」

「店主のご老体が心配ではあるけどな……」

 

 このあとの予定のことをダラダラと話し合っていると、店員さんが飲み物を先に運んできてくれる。

 

「カフェラテアイスと、ブレンドコーヒーです。パフェはもう少しお待ちください」

「ありがとうございます」

 

 カップを手に取り、お互い口をつける。そして、目を合わせた。

 

「おいし〜!」

「こっちも美味しい……一口飲むか?」

 

 顔を綻ばせながらコーヒーカップをこちらに差し出すミカン。私は喜んでそれを受け取り、私のカフェラテを代わりにミカンの手元に置いた。お互いのを飲んだ私たちは、やはりその美味しさに顔を見合わせて笑い合う。

 

「コーヒーも美味しい!」

「レジ横にコーヒー豆売ってたから、帰りに買おうか」

「いいね! 出勤前に飲もうっと」

 

 毎日朝家を出る前に、朝食後のコーヒータイムがある。いつもミカンがインスタントコーヒーを淹れてくれるが、折角だから暫くはここのコーヒー淹れてもらおうかな。それにしても、自分で淹れるより人に淹れてもらったものの方が数段美味しいのはなんでなんだろう……。

 

 そんな事を考えていると、待ち望んでいた抹茶白玉パフェがついにテーブルに置かれた。

 

「ご注文のお品は以上でよろしいでしょうか」

「はい、ありがとうございます」

 

 メニューに描かれた淡い色彩のイラストよりも豪勢に盛り付けられたそれに、私は目を輝かせた。想像よりも量も多く盛り付けも可愛い。お値段以上の嬉しさだ。

 早速白玉を一つ救い、抹茶クリームと餡子をつけて口へ運ぶ。途端に口の中に広がる和洋折衷のハーモニーに、私は思わず変な声を出して喜んでしまった。

 

「お、美味しい。すごく。デリシャス、とても」

「落ち着け、語彙力がすごい低下してるぞ」

 

 向かいで苦笑しているミカン。私の反応を大袈裟に感じているのだろうが、それはこの美味しさを実感していないからだ。私は同じようにパフェを掬うと、身を乗り出してミカンの口元に差し出した。

 

「ほら、あーん」

 

 ミカンは少し恥ずかしそうに目を泳がせたけれど、近くに他のお客さんがいないからか、観念したようにパクッと口に含んでくれた。そして、

 

「……すごく、美味い」

 

 見事に語彙力が低下していた。

 

 ◆

 

「おいし〜」

「ふふ、良かったな」

 

 ボリューム満点のパフェをご機嫌で食べていると、ふとやけに強い視線を感じて顔をあげる。視線の主は、勿論向かいの席のミカンだった。

 頬杖をついているミカンとばっちり目が合うと、ミカンは目を細めて柔らかく微笑んだ。

 なんだかいつもと少し違う―やけに慈愛に満ちたような―笑顔に、胸がどきりと跳ねてしまう。

 スプーンを咥えたままドキドキして目を合わせていたら、ミカンがふふと小さく笑い声を溢した。そして、身を乗り出して私の口元に手を添えてくる。ちょ、待って、外なんですけど。

 鼓動が激しくなり、思わず目を閉じる。

 

 そして、唇の端をそっと指で撫でられた。

 

「ん、口の端についてたぞ」

 

 そう言って見せられた指先には、拭い取られたクリームが付着していた。どうやら知らぬ間に口元にクリームをつけたまま私は一人でパフェを楽しんでいたらしい。

 良い年で口元にクリームを付けていたことと、勝手にキスされるかもと勘違いしていたダブルパンチで、未だに鼓動はうるさいままだ。

 はぁと小さく溜息を吐いたその時、

 

「んむ」

「ちょ!?」

 

 ぺろりと、ミカンが指についたクリームを舐めとった。それ、私の口元についてたやつだよね……。普段から間接キスどころかキス以上の事もしているのに、何故だかそれが無性に恥ずかしく、顔が熱くなるのが自分でも分かった。

 

「どうした林檎。顔真っ赤だぞ」

 

 そんな私のドキドキをよそに、心配そうに顔を覗き込んでくるミカン。

 

「もう、ほんとそういうとこずるいよね」

「え……?」

 

 私は短く文句を伝えると、戸惑うミカンを無視してパフェを再び口に運ぶ。

 心なしか、さっきよりも甘い気がした。

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