「お、お母さん、私も何か手伝おうか」
「良いってミカン。久しぶりの実家なんだからゆっくりしようよ」
「ミカンちゃんは座ってて良いのよ〜。林檎はお皿出すの手伝って」
「なんで私だけ!?」
猛烈なお母さんからの帰省要求コールにより、私たちは初めて二人揃って実家に帰ってきている。公共機関だと長時間他人の目に晒され続けるので、例の如くレンタカーをひぃひぃ言いながらなんとか運転して。
到着してからというもの、ミカンはずっとそわそわしていた。いつも家事をしてくれている分、お母さんがあれこれ支度してくれているのが落ち着かないのだろう。
「手伝うけど……なんでミカンは良いのさ」
「どうせ普段ミカンちゃんに家事任せっきりなんでしょ。たまにはやりなさい」
「ぐぅ……」
反論もできないので素直に夕ご飯の用意を手伝うことに。ミカンは手伝いの申し入れをお母さんに止められたので、ソファに座りながら私たちの様子をずっと眺めている。
正直面倒臭いけれど、動き回る私たちを見ながらおろおろしているミカンがなんだか新鮮で可愛くて、たまには家事をやっても良いかなと思えたので良しとしよう。
しかしとうとう痺れを切らしたようで、私が持っていたトングを取り上げて、おかずをお皿に分け始めた。
「実家にいた頃は私もお世話になってたんだから、私にもお母さんの手伝いをさせてくれ」
はにかみながらそう言うミカンに、お母さんは目を輝かせえて喜んだ。
「も〜なんて良い子なのミカンちゃん。可愛い娘が増えて本当に嬉しいわ」
二人してぽわぽわ嬉しそうに微笑みあっているのを見て、私もなんだか嬉しくて顔がにやけてしまうのであった。
◆
「ん〜、お母さんのご飯美味しい〜!」
「あぁ、すごく美味しい……。こんな味だったんだな。食べられて嬉しい」
私は久しぶり、ミカンは初めてのお母さんの料理の美味しさを、惜しむことなく絶賛する。本当に久しぶりだけれど、懐かしさと安心感が込み上げてきてなんだか涙が出そうだ。
「そんなに喜んでくれると作った甲斐があるわ。お父さんはあんまり感想言ってくれないからね〜」
喜びつつも不満を漏らすお母さんの言葉に、私は暫く会ってないお父さんの顔を思い浮かべながら返す。
「でもちゃんと美味しいと思ってるでしょ。お父さん元々口数少ないじゃん」
「それは分かってるけど、でもやっぱり感想の有り無しは違うのよ」
溜息混じりにそう弱音を吐くお母さん。私はよく分からないけど、ミカンはすごく共感したようで首を縦に何度も振っていた。
「分かる。やっぱり自分の作った料理を振る舞う時って、ちゃんと美味しくできてるか不安になるよな……」
「そうなのよ〜」
「林檎はいつも美味しい美味しいって喜んでくれるから、作り甲斐があるよ」
隣に座る私の方を向いて、嬉しそうににこりと微笑むミカン。急に顔の良さを突きつけられて私は危うくむせるところだった。
ミカンのご飯はめちゃくちゃ美味しいんだから、「美味しい」って言わない方が難しいと思う。そう素直に伝えると、ミカンは照れたのか顔を逸らしてご飯をパクパク食べ始める。
そんな私たちを眺めながら、お母さんはいつもの柔らかな笑顔を浮かべていた。
「二人が仲良く暮らしてるようで何よりだわ」
その言葉に私たちは顔を見合わせて、照れ臭くて笑い合う。そして肩を並べて左手薬指の指輪を見せながら、
「ずっとずっと仲良しだよ」
と言うと、お母さんは驚いたような顔をしたけれど、すぐに嬉しそうに微笑みを浮かべてくれた。