私の同居人(ペット)は狼女です。   作:凛之介

102 / 122
君と私の実家にて(後編)

 久しぶりのお母さん手作りの夕食後、私とミカンは肩を並べてキッチンに立って後片付けをしている。

 

「お手伝いしてくれてありがとうね、2人とも」

 

 ニコニコ顔でリビングから声をかけてくるお母さんに、ミカンも嬉しそうに手を動かしながら言葉を返した。

 

「ここに居た頃はずっとお世話になりっぱなしだったからな。恩返しできて嬉しいよ」

「も〜、本当にミカンちゃんは良い子ね。お母さん本当嬉しいわ」

 

 お母さんはミカンが人間の姿になったのが余程嬉しいようで、もう何度も「嬉しい」を連呼している。まぁ一人娘だったから、もしかしたら2人くらい子供が欲しかったのかもしれない。

 そんなことを考えながら手を動かしていたらあっという間に片付けが終わった。やっぱり2人でやると早いから、今度からは私も洗い物くらい手伝うようにしよう……。

 

 リビングに戻り、2人並んでお母さんの向かいに座る。そして、ずっと気になっていたことを尋ねることにした。

 

「あの、さ。お父さんってミカンのこと、どこまで知ってるの?」

 

 全然メッセージでやり取りもしない上に、今日たまたま出張で居ないお父さん。決して仲が悪いわけではいのだけれど、隠し事をしていた手前いつかきちんとミカンについて話さなければとは思っていた。

 しかし真剣に悩んでいた私に対して、お母さんはあっけらかんと答える。

 

「なんか、女の子の姿になったってことだけ伝えてるわ」

 

 "ことだけ"というには大分ストレートな伝え方に、私とミカンは目を丸くしてしまう。

 

「へ、平気そうだったか?」

「んー、驚いてはいたけど……」

 

 お母さんは私たちの顔を見比べてから、穏やかに微笑んだ。

 

「二人が元気で暮らしてるなら、それでいいって」

 

 その温かい回答に、長らく合っていないお父さんの顔が脳裏に浮かび上がる。

 

「お父さん……」

 

 安堵と懐かしさで、涙腺が緩みそうになってしまう。私はそれを、ミカンに抱きついて誤魔化した。

 

 ◆

 

 夜も深け、大人3人のガールズトークもそこそこにして、私たちは寝る支度を始めた。

 昔私が使っていた部屋はそのまま残してくれているらしく、掃除もきちんとしてくれているようで、とても有難い。私が使っていたシングルベッドに寄り添う形で、ミカン用の布団が敷かれている。

 しかし、私たちは協議の末、私のベッドで眠ることにした。だって普段からシングルベッドで寝てるし……。今更2人離れて眠るなんて寂しすぎる、という意見が合致した結果だ。

 懐かしい布団カバーの柄に思いを馳せながらベッドに入り、肩を並べて寝転がる。

 

「ふふ、なんか懐かしいな」

 

 ミカンがこちらを向いて柔らかく笑うので、私も向き直って微笑み返した。

 

「ね。昔もミカンとこうして、この部屋で一緒に寝てたもんね」

「なんか……幸せだ。こうして二人で実家に来れて」

「また今度、お父さんがいる時にも来ようね」

「あぁ、そうだな」

 

 そんな話をしつつも、私はもぞもぞと布団の中で身体を動かした。不思議そうな顔をしたミカンが見つめてくる。私顔を近づけ、そっとキスをした。

 懐かしい部屋の匂いと風景に、狼女になった大好きなミカンが居る。

 正直、ちょっと耐えられそうにない。

 

「ところでさ、この部屋で一緒に寝るの……もう我慢できないんだけど……」

 

 一拍置いて、理解したミカンは顔を赤くして慌て始める。

 

「え……だ、だめだぞ!? 檸檬いるんだから!」

「ミカンが声我慢すれば大丈夫だよ、ね」

 

 私の上目遣いでのおねだりにミカンが弱いことは、ずっと前から知っている。

 

「……ちょっとだけだからな」

 

 満更でもなさそうに顔を赤らめるミカンにもう一度キスをすると、私は舌なめずりをしながら覆い被った。

 

 ◆

 

 チュンチュンと鳥の囀りと、外を通るバイクの音で目を覚ます。そういえば学生の頃も同じように目が覚めてたな……とぼんやり思い出しながら上体を起こすと、裸のまま寝ているミカンの寝顔を見下ろした。

 いやはや、昨晩は大層盛り上がってしまった……。学生時代にミカンとえっちしてるみたいで、なんとも言えない背徳感が堪らなかった。

 ミカンを起こして寝間着を着直し、二人でリビングに降りる。

 リビングでは、悩ましそうな顔をしたお母さんが朝食の支度をしていた。

 そして、

 

「……貴女たちね、お父さんがいる時はやめなさいね」

 

 と注意されてしまい、私たちは思わず顔を見合わせた。

 

「〜〜〜っ! だからダメだっていっただろ!

「ミカンが声我慢できないからでしょ!」

「だって林檎が――」

 

 キャイキャイ言い争っていると、お母さんが手を叩いてそれを遮ってくる。

 

「はいはい痴話喧嘩はやめて朝ご飯食べちゃて」

 

 むすっとしながら席に座りご飯をたべる私たちを見て、呆れたようにお母さんは笑顔を浮かべた。

 

「まったく、まさかここまでの仲良しだとは思わなかったわ。末永く幸せになんなさい」

 

 その言葉に私たちはまた顔を見合わせて、笑い合った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。