私の同居人(ペット)は狼女です。   作:凛之介

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君と寄り添うパジャマパーティー

『私、ずっと前から、貴方のことが――』

 

 暗いリビングの中に浮かび上がるテレビモニターの中で、ヒロインが勇気を振り絞って愛の告白をしている。

 それを見つめながら、私たちは肩を並べて手を繋いでいた。

 

 ◆

 

 私に手渡されたスマホの画面を眺めながら、ミカンが不思議そうに聞き返してくる。

 

「パジャマパーティー?」

「そう、しよ!」

 

 私は意気揚々と頷き、笑顔を作る。今週末はなんと月末と被っているので、折角だから普段より豪華にお疲れ様会をしたい。そう思った矢先、会社の同僚が彼氏とお泊まりした際に、パジャマで映画観ながらお菓子やお酒を楽しむ、パジャマパーティーをしたという会話を小耳に挟んだ。

 これはもうミカンとやるっきゃない! という訳、で今話題になっている映画を見ようと映画配信サービスに登録をした次第だ。

 

「ふーん。いいぞ、楽しそうだな」

「でしょ!」

 

 流石ミカン、話が分かる狼女だ。了承されること前提で買っておいたお菓子や飲み物を袋から取りだしていると、後ろからぎゅうとミカンが抱きついてくる。

 

「私も今日ちょっとだけ酒飲んでもいいか」

「えー、ミカン寝ちゃうと思うよ」

「……映画見ながら林檎に甘えたい」

 

 可愛すぎるその呟きに、思わず胸を押えて唸り声をあげる。そんな可愛くおねだりできるくせに、どうして甘えるのにお酒の力を借りようとするのか。今だってしっかり抱きついてきてるのに……ミカンが恥ずかしがる基準がよく分からない。

 結局私が折れて「ちょっとだけね」と約束して、私たちはパジャマパーティーに向けた支度を始めた。

 

 ローテーブルに並んだお菓子や飲み物。いつも着ている色違いでお揃いのパジャマ。今日の分の家事も終わり、準備は完璧だ。

 

「よーし、じゃあパジャマパーティー始めよー!」

「おー」

 

 ノッて右腕を突き上げてくれるミカンを微笑ましく思いながら、リビングの電気を消す。カーペットに腰を下ろしてソファにもたれかかると、隣にミカンも座ったのを確認して、私はテレビにスマホを接続して映画を再生した。

 選んだ映画は王道なラブロマンスで、すれ違いながらも次第に惹かれあっていく男女の物語。

 青臭くて、純粋な恋心の様子を映し出す画面を見つめながら、お菓子をのんびり口元に運んでいく。以前と同じようにほんの少しだけお酒を飲んでいるミカンも、やや目が蕩けているがその視線は画面に釘付けだった。

 

『私、ずっと前から、貴方のことが――』

 

 いよいよクライマックスを迎えたストーリーは、男女が見つめ合いながらお互いに熱い眼差しを交わしている。

 気がつけば私たちは鼻を啜っていて、どちらからともなく肩を寄り添わせ、固く手を繋いでいた。

 

 エンドロールが流れ始めると、私たちは揃って大きく息を吐いた。ぼやけた視界を戻そうと目を擦り、隣のミカンに目を向ける。

 

「あはは、ミカン、お目目真っ赤だよ」

「林檎だって赤くなってるぞ」

 

 そう言い合いながら、ミカンの肩にもたれ掛かる。目を瞑ると、脳裏にはクライマックスの告白シーンが浮かんできた。

 

「はぁ、やっぱりああいう恋愛、いいよねぇ」

 

 しみじみそう呟くと、少し不安げな目でミカンが覗き込んでくる。

 

「……林檎も、この映画みたいな恋愛がしたかったか?」

 

 それは、近しい関係の男女で、ということだろう。私は「まさか」と軽く一蹴して笑う。ミカンの頬を両手で覆い、優しく揉みほぐしながら、私はミカンの目を真っ直ぐ見つめた。

 

「憧れはあくまでただの憧れだよ。私にはこんな素敵なお嫁さん(ペット)がいるんだから」

 

 そう言い切ると、「ふふ、良かった」と安心したように笑うミカン。どれほど仲が深まってもミカンのこういった不安は拭いきれないのだろう。ならば、その度に真っ直ぐな愛を伝えるだけだ。

 と、不意にミカンに肩を掴まれ、そのままぐいと押し倒される。そのまま覆い被さって頬ずりしたかと思えば、甘いキスをされた。大胆な甘え方に照れながらもミカンの顔を見ると、やはり酔いが回ってるようで頬がゆるゆるになっていた。

 

「ずっと一緒に居ような」

 

 蕩けた口調でそう囁くミカンを抱きしめて「もちろん」と力強く返す。そのまま抱きしめ合いながら、私たちは目を見合せて笑った。

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