今年は時季ネタも書いていきます
ごぉぉぉん……。
遠くから聞こえてくる除夜の鐘の音に、私は意識を引っ張られる。
いつの間にか随分と時間が経っていたようだ。明かりが漏れ出るリビングから聞こえてくる年末の歌番組も、気がつけば終盤に差し掛かっていた。
今年もあっという間だったなぁ、などと回想に耽りつつ、ミカンの首筋に口を押し当てた。ぢゅぅと肌を吸う音とミカンの嬌声が、鐘の音やテレビの音声よりも鮮明に聞こえる。
「んっ、あっ、りんご……っ」
そういえば、年越し蕎麦食べてなかったな。明けてからでもいいか。
ベッドがぎしぎしと軋む。私は蕩けた顔のミカンを見下ろして、その柔らかい胸を揉みしだきながら、唇を重ね、舌を絡めた。
暗い寝室の中で滑らかな肌を密着させた私たちは、そうして長い時間、身を重ね続けた。
◆
薄ら明るい朝日で目を覚ますと、アラームの丁度1分前だった。昨晩はすっかり夜更かしをしたというのに、随分と新年の幸先が良い。
もぞもぞとベッド脇に脱ぎ捨てられた寝巻きを拾い上げて着ながら、既に明かりの点いているリビングへと向かった。
「お、林檎早いな。おはよう。明けましておめでとう」
「ん、明けましておめでとう」
エプロン姿のミカンに近づき、ハグとキスをして顔を見合わせる。自然と頬が緩み、お互いにはにかんでもう一度キスをした。
朝食の支度をしてくれていたであろうミカンの首筋には、幾つもの赤い斑点のようなものが残っている。それは紛れもなく、昨晩私が衝動のままに付けたキスマークだ。
昨日は盛り上がりに盛り上がったとはいえ、流石に付けすぎただろうか。なんとかして隠さないといけないレベルになってしまった。
そんな私の視線を察してか、自分の首筋を撫でながらミカンは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「今日はタートルネックを着るよ。それで隠れるから、気にするな」
「そっか、ごめんね。ありがと」
「いや、いいんだよ」
ミカンは私の頭を軽く撫でると、食卓に座るように促した。そして台所の鍋を温め直し始めてくれる。
「お雑煮出来てるぞ。餅、何個にする?」
「んー、眠くなっても困るから、2個かな」
「はいよ」
普段ならのんびりたらふくお餅を食べて寝正月を決め込むところだが、今年はそうはいかない。何故なら、このあと車を運転しなければならないからだ。
新年早々運転なんて本来絶対したくないが、今年は仕方がない。
「それにしても、お母さんから帰省命令が下るとはな」
2人分のお雑煮を運びながら、ミカンはそう言って苦笑いを浮かべた。
そう、今年こそは実家に帰省しろとのお母さんからのお達しが出ているのだ。
まぁ散々帰省をサボり続けたツケが回ってきたと考えれば、致し方ないことではある。今日は午後あたりに帰省して、そのまま一泊して明日の夜またこっちに帰ってくる予定だ。
ミカンが狼女であることも隠す必要がなくなったので、気兼ねなく帰省できる反面、これからは頻繁に帰省を要求されそうで、私は頭を抱えていた。
「そういえば、今日はお父さんも居るんだろ」
「居るよ。ミカンはもう会うの数年振りか」
どうやらミカンはお父さんに会えるのが随分楽しみらしい。細やかな声音の違いだけでもそれが分かった。
私が受験シーズンだったり体調を崩した時は基本的にお父さんがお散歩をしてくれていたし、日頃からよく遊んでくれていたから、ミカンもお父さんによく懐いていた。
勿論、私もお父さんとは決して仲が悪い訳ではない。むしろ反抗期も少なく喧嘩もほとんどしたことがないので、世間一般と比べると随分仲は良い方だと自覚している。
まぁミカンとの二人暮らしが幸せすぎて全く帰省をしなかったので、会うのは私も久しぶりなのだけれど。
そんなことを考えていると、「それにしても」とお雑煮を食べていた手を止めて、頬を赤らめながら私の顔をちらりと見た。
「いくら実家で我慢するためとはいえ……昨日の林檎はケモノみたいだったぞ」
「ゔっ」
その指摘には私も自覚があったので、思わず呻き声をあげてしまう。
でも仕方がないのだ。今回の帰省にはお父さんも居る以上、前回のように我慢できなくてミカンを襲って、それがバレようものなら新年早々リビングの空気がいたたまれないものになってしまう。
それを防ぐため、昨日はミカンとえっちしながら年を越したのだ。何連戦したかは、5回目以降数えるのをやめたので覚えていない。
「今年の目標は"禁欲"にしてみるか?」
冗談めかして笑うミカンに、私は微笑み返しながら胸を張って答える。
「勿論、絶対にいやだね」
そんな下らないやり取りに、私たちは顔を見合わせて笑い合った。
どうか今年も一年、2人でこうして笑い合える年でありますように。
「改めて、今年もよろしくね。ミカン」
「あぁ、今年もよろしく。林檎」
今年も隔週土曜13:00投稿の予定です
次回は1/24(土) 13:00投稿です