お風呂から上がってリビングのソファに座って休んでいたら、林檎が上機嫌そうに近づいてきて、私の足元にしゃがみ込んだ。
「ねね、ミカン」
「ん、どうした?」
上目遣いで見上げてくる林檎の可愛さに心の中で特大のリアクションをしながら、あくまで冷静に穏やかな微笑みを貼り付けて返事をする。
「明日日曜だし、予定ないでしょ。デートしない?」
先にお風呂に入って既にパジャマ姿の林檎は、きゅっと膝を抱えてニコニコしながらそう提案してくる。林檎はここ最近土日にも予定があったりと、あまり一緒に外出できていなかった。林檎の言うとおり、私も明日は特に買い出しなどの予定もないし、断る理由はない。というよりも大賛成だ。
私だって当然、林檎とデートがしたい。
「いいな。ショッピングして食事とか?」
「それもいいんだけど」
林檎は手に持っていたパンフレットを、私に差し出してきた。そこに載っているのは、うちから少し離れた場所にある、さほど大きくはない博物館だ。
私がパンフレットから顔を上げると、笑顔の林檎と目が合う。にこにことご機嫌な林檎は、私の膝に手を乗せて上目遣いで微笑んだ。
「博物館デート、しない?」
◆
明日の予定が決まったところで、私と林檎は2人して寝室に立ち、腕を組んでいた。私たちの目の前には、何着もの服が広げられている。
「せっかくのデートだし、オシャレしたいよね〜」
という林檎の提案により、それぞれ着ていく服装を選んでいるのだ。
とはいえ、お互いそれほど持っている服は多くないし、それに加えて行き先も考慮すると、いくらかは候補が絞られてくる。私としては、博物館なので落ち着いたカラーで組みたいところだ。
「ん、これと……このスカートでいいか」
上半身は選択肢が多いのに対して、下半身は尻尾を隠す都合上、どうしてもロングスカートになりがちだ。早々に決めた私と違って、林檎は私の選んだコーデを一瞥して、またうんうんと唸り始めた。何をそんなに悩んでいるのかと尋ねたら、私のコーデとも合うようなコーデにしたいらしい。なら2人で決めれば良かったと思いつつも、悩んでいる当の本人が楽しそうなのでいいだろう。
私はそんな林檎を尻目に、つけていくアクセサリーを選び始めた。
「ミカン、ちょっといい?」
不意に背後から呼ばれ、私は手にしていたネックレスを置いて振り返る。そこには、2着のワンピースを掲げた林檎が立っていた。
片手には白とベージュのワンピース、もう片手にはモノトーンのワンピース。どちらもシンプルながらも林檎に良く似合うスラッとしたシルエットで、博物館とも私のコーデとも確かに合うと思う。
林檎のファッションセンスに感心していると、両手を交互に上げながら、林檎は私に尋ねた。
「どっちかで迷ってるんだけど、どっちがいいと思う?」
決定権を委ねられて、私は顎に手を添えて少し考える。どちらも林檎に似合うし、正直優劣は無い。であれば、私の好みで決めてしまおうか。
「そうだな、モノトーンもいいけど……私は、こっちを着てる林檎とデートしたいかな」
白とベージュのワンピースを林檎の手から取り、正面に合わせて着てる姿をイメージする。「うん、似合ってる」と真っ直ぐ林檎を見つめて褒めると、瞬く間に顔を赤くしてしゃがみこまれてしまった。
手に残ったワンピースを抱きしめて顔を隠すようにしていた林檎は、その赤い顔でちらりとこちらを見あげると、少し不服そうに呟く。
「……そういう口説き方って、どこで覚えてくるの」
「ふふ、内緒」
むすっとしながら立ち上がる林檎に、選んだ方のワンピースを返す。
そして、
「ほら、せっかくだから着て見せてくれ」
そうお願いすると、恥ずかしがりながらも着替え始めてくれた。その様子を、ベッドに腰かけながら私は眺める。無遠慮に着替えを見つめる私に、また林檎は恥ずかしそうに顔をしかめていたけれど、文句は言わずに手早く着替えを済ませて、私の前でくるりと回って見せてくれた。
「どう?」
「うん、似合ってる。可愛いよ、林檎」
褒められた林檎は素直に顔を綻ばせて喜ぶ。私の隣に腰を下ろして、ニコニコしている林檎が可愛らしいくて、つい抱きしめて額にキスをしてしまった。
「〜〜っ!」
その不意打ちに林檎はまたまた顔を真っ赤にして、それを隠すように私ぎゅうと抱きついてくる。こちらからも抱き締め返して背中を撫でていると、もごもごと肩口で林檎が呟いた。
「ミカンに可愛いって褒められるの、未だに嬉しすぎて心臓が持たない……」
そんな文句に、私はついつい笑ってしまう。そんなこと言われても仕方がない。
「林檎が可愛すぎるのが悪いんだよ」
素直にそう返すと、林檎は声にならない声をあげて、また私の腕の中で蹲ってしまった。
今日も私の
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