私の同居人(ペット)は狼女です。   作:凛之介

127 / 127
君と私を繋ぐもの

「ご苦労さまです〜」

 

 頭を下げて立ち去る配達員を見送り、わたしは手元に残った小包を見下ろした。

 記載されている発送元は実家の住所だ。なにか送られてくるって連絡は特に来てなかったはずだけど……。

 首を傾げたままリビングに戻ると、ソファに座っていたミカンがこちらを振り返る。

 

「なんだった?」

「実家から荷物。何送ってきたんだろ」

 

 2人で覗き込むようにして小包を開くと、中に入っていたのは見覚えのある黒い首輪。

 それを目にして、私たちは直ぐに声を上げた。

 

「懐かしい〜!」

「これ、私が小さい頃に付けてた首輪だよな」

 

 そう、まだ子犬(狼だけど)のミカンに初めて買った首輪だ。すっかり大きくなってからはサイズが合わなくなって別の大きい首輪を買い直したのだ。

 すっかり忘れてたけど、そうか。ずっと実家にあったのか。

 同封されていた便箋には、「掃除してたら見つけました。捨てるのも寂しいので、何かに活用してください」とお母さんの筆跡で綴られていた。

 

「これ付けてお散歩してたよね」

「あぁ……林檎が中学生くらいの頃だったか」

「もうそんな前かぁ」

 

 懐かしい記憶に想いを馳せながら、何となく首輪をミカンの首元にあてがう。狼の成体だったミカンには小さかったけれど、人間の姿ではチョーカーにしても差し支えないサイズ感だ。

 少し加工してチョーカーに仕立てようかな、なんて考えていたら、ミカンがぴくりと反応するのが見えた。

 目線をあげると、ミカンの頬が赤く染っている。

 

「ミカン、顔赤いよ?」

「……へっ?」

 

 無自覚だったのか、自分の頬を触ってその熱を自覚したミカンは、ますます顔を赤くして俯いた。

 私はにじり寄って顔を覗き込む。

 その顔はただ赤いだけでなく、瞳を扇情的に潤ませていた。

 

「……もしかして、首輪つけて欲しいの?」

「……はっ、そんなわけ……」

 

 じーっと、無言でミカンの目を見つめる。ミカンは顔を赤くしたまま口をパクパクさせて、観念したように、俯いて蚊の鳴くような声で呟いた。

 

「林檎に、リード引かれてた時のこと、思い出して……」

 

 言葉尻が溶けるように小さくなっていく。その様子に、私の劣情はあっけなく煽られてしまった。

 

 本当に、このお嫁さん(ペット)は誘うのが上手い。

 

 ミカンの顎に優しく手を添えて、くいと上を向かせる。そしてそのまま、首輪をカチャリと付けてあげた。

 ベルトを調節すると、それはミカンの首にぴったりと(はま)った。

 

「……うん、似合ってる」

 

 素直に褒めるが、ミカンからの返答はない。

 ミカンの表情をまじまじ見つめて、私は思わずくすりと笑った。

 

「すごい顔してるよ、ミカン」

 

 頬は紅潮し、目元は垂れ下がり、瞳が潤んでいた。おまけに口が半開きで甘い吐息が漏れている。

 

「だ、だって……」

「だってじゃないでしょ?」

 

 くい、と首輪に繋がったリードを軽く引っ張ると、ミカンの身体がビクリと反応した。

 

「ベッド行こっか。……お返事は?」

 

 ミカンはその欲情に負けた目を私に向けて、呟いた。

 

「……わん」




次回は9/12(土)13時投稿予定です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

そのウマ娘、亡霊につき(作者:カニ漁船)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

そのウマ娘は、全てが謎に包まれていた。経歴、素顔、生まれ……その全てが謎に包まれたウマ娘。▼亡霊と呼ばれた彼女がトレセン学園になにをもたらすのかは、まだ分からない。


総合評価:3889/評価:8.35/連載:183話/更新日時:2023年08月06日(日) 21:00 小説情報

人とはこの世で最も醜悪な獣の総称である。(作者:顔のない女@人外ものしか書けない人)(オリジナル現代/恋愛)

人付き合いがとても苦手で、教室の隅で息を潜めて震えながら生きてきた少女には、画面越しにしか愛せない推しがいた。▼ところがその推し——超大手VTuberの彼女は、偶然にもクラスに在籍していて、しかも彼女は少女が自分のガチ恋だと知ったうえで、距離を詰め、からかい、やりたい放題してしまう。▼やがて限界を超えた少女は、ある日の教室で魔が差し、最推しの彼女の唇を奪って…


総合評価:648/評価:8.47/完結:111話/更新日時:2026年08月03日(月) 23:05 小説情報

化けガラスってマジっすか……。(作者:SOGEKIKUN)(原作:東方project)

▼ 気がついたらなんか雛鳥になってたんだけど。いや意味が分からん。親鳥は足から目やくちばしまで全身黒いし………あれ?カラスじゃない?▼これは、ポンコツな1羽のカラスが一生懸命生きていくだけの話。▼ おいっ出てこい!!人外魔境に転生させたやつ(涙)▼追記:少しだけ刺激的な描写が含まれる回もあるのでR-17をつけました。苦手な方はお控えください。好きな方は一緒に…


総合評価:672/評価:8/連載:119話/更新日時:2026年08月28日(金) 18:00 小説情報

コミュ障TS転生少女の千夜物語(作者:テチス)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 何かよく分からないが自分の好きなキャラを作ったらその姿で異世界に居た。どうやら『夜の化身』として凄い力を手に入れてしまったらしい。夜になるたびポンポン生まれる眷属がなんか強い。▼ だけどクリエイト時につけてしまったもう一つの設定の弊害によりコミュ障で表情の変わらない女の子になっていた。その表情と能力が周囲の勘違いを産み、空回りを生んでいく。▼8/13 完結…


総合評価:25141/評価:8.94/完結:72話/更新日時:2021年08月13日(金) 21:00 小説情報

アイドルが群雄割拠する世界にTS転生したので闇堕ちした天才アイドルみたいなムーブする(作者:音塚雪見)(オリジナル現代/日常)

歌って踊れるアイドルが多すぎる世界にTS転生した俺。▼人前に出るのは苦手だし、自分がアイドルになるのは無理。▼ということで闇落ちした天才アイドルみたいなムーブをして遊びます。▼──そしたらなんか主人公みたいなキラキラ女子に絡まれてるんだが!?▼ええい俺には悩みとかないから放っておいてくれ!!!!▼小説家になろう様とカクヨム様にも投稿はじめました。


総合評価:10419/評価:8.13/完結:58話/更新日時:2026年03月06日(金) 12:23 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>