「ご苦労さまです〜」
頭を下げて立ち去る配達員を見送り、わたしは手元に残った小包を見下ろした。
記載されている発送元は実家の住所だ。なにか送られてくるって連絡は特に来てなかったはずだけど……。
首を傾げたままリビングに戻ると、ソファに座っていたミカンがこちらを振り返る。
「なんだった?」
「実家から荷物。何送ってきたんだろ」
2人で覗き込むようにして小包を開くと、中に入っていたのは見覚えのある黒い首輪。
それを目にして、私たちは直ぐに声を上げた。
「懐かしい〜!」
「これ、私が小さい頃に付けてた首輪だよな」
そう、まだ子犬(狼だけど)のミカンに初めて買った首輪だ。すっかり大きくなってからはサイズが合わなくなって別の大きい首輪を買い直したのだ。
すっかり忘れてたけど、そうか。ずっと実家にあったのか。
同封されていた便箋には、「掃除してたら見つけました。捨てるのも寂しいので、何かに活用してください」とお母さんの筆跡で綴られていた。
「これ付けてお散歩してたよね」
「あぁ……林檎が中学生くらいの頃だったか」
「もうそんな前かぁ」
懐かしい記憶に想いを馳せながら、何となく首輪をミカンの首元にあてがう。狼の成体だったミカンには小さかったけれど、人間の姿ではチョーカーにしても差し支えないサイズ感だ。
少し加工してチョーカーに仕立てようかな、なんて考えていたら、ミカンがぴくりと反応するのが見えた。
目線をあげると、ミカンの頬が赤く染っている。
「ミカン、顔赤いよ?」
「……へっ?」
無自覚だったのか、自分の頬を触ってその熱を自覚したミカンは、ますます顔を赤くして俯いた。
私はにじり寄って顔を覗き込む。
その顔はただ赤いだけでなく、瞳を扇情的に潤ませていた。
「……もしかして、首輪つけて欲しいの?」
「……はっ、そんなわけ……」
じーっと、無言でミカンの目を見つめる。ミカンは顔を赤くしたまま口をパクパクさせて、観念したように、俯いて蚊の鳴くような声で呟いた。
「林檎に、リード引かれてた時のこと、思い出して……」
言葉尻が溶けるように小さくなっていく。その様子に、私の劣情はあっけなく煽られてしまった。
本当に、この
ミカンの顎に優しく手を添えて、くいと上を向かせる。そしてそのまま、首輪をカチャリと付けてあげた。
ベルトを調節すると、それはミカンの首にぴったりと
「……うん、似合ってる」
素直に褒めるが、ミカンからの返答はない。
ミカンの表情をまじまじ見つめて、私は思わずくすりと笑った。
「すごい顔してるよ、ミカン」
頬は紅潮し、目元は垂れ下がり、瞳が潤んでいた。おまけに口が半開きで甘い吐息が漏れている。
「だ、だって……」
「だってじゃないでしょ?」
くい、と首輪に繋がったリードを軽く引っ張ると、ミカンの身体がビクリと反応した。
「ベッド行こっか。……お返事は?」
ミカンはその欲情に負けた目を私に向けて、呟いた。
「……わん」
次回は9/12(土)13時投稿予定です