どこを見てるか分からない、真ん丸の瞳。
だらしなく開かれた、大きな口。
間抜けな顔に乗っかる、丸く小さいお耳。
ピンク色のぽっちゃりボディと短い手足、そしてしっぽ。
「なんだ、その……珍妙な生物は」
「景品で当たった。えっと……なんかのぬいぐるみ」
◆
会社の懇親会で行われたビンゴ大会。そのD賞という何とも中途半端な順位の景品で当たったのは、今私の腕の中に収まっているピンクの間抜けな生き物のぬいぐるみだった。
それにしても、見れば見るほど本当に間抜けな顔をしている。
「なんかのキャラクターなのか……?」
「さぁ……総務の人すら知らなかったから」
「誰が選んだんだよじゃあ…」
私はぬいぐるみを抱きしめながらベッドに腰掛けた。隣から、しげしげとミカンが眺めてくる。
見た目の割にやたらと抱き心地が良く、むにむにと弾力がある。ちょっと癖になりそう。
むにむに、むにむに……。
「……林檎、帰ってきてからずっとそいつ抱いてるな」
「あれ、そんなに? なんか無性にフィットするんだよね」
私が腕を締め付けると、ぬいぐるみが押しつぶされてまるでバンザイしてるようなポーズになる。間抜けな顔とポージングがアンバランスすぎて、思わずくすりと笑ってしまった。
「見てこれ、ほら。なんかよくない?」
「……ふーん」
その時、ひょいとぬいぐるみが取り上げられた。唐突に空になった腕の中に「えっ」と声が溢れる。
ぬいぐるみの行方を目で追うと、すっぽりとミカンの膝上におさまった。
むぎゅ、とミカンがぬいぐるみを抱きしめる。
「ふーん、まぁまぁだな」
微妙な評価を下す割には、私に返してくれる気配がない。まるで八つ当たりのようにぎゅうぎゅう抱きしめるたびに、ぬいぐるみの形が歪む。
「ミ、ミカン?」
名前を呼びながら顔を覗き込むと、ぱちっと目が合う。ミカンは口元をぬいぐるみに埋めてから、ぽすん、と私に寄りかかるように腕の中に転がり込んできた。
普段私を見下ろしているミカンが、私をじっと見上げてくる。
私が何も言えずにただただ見つめ合う時間が流れる。しばしの沈黙の末、ぽつりとミカンが呟いた。
「……ここはあたしのポジション」
「〜〜っ!!」
腕に力が入る。思わずミカンを強く抱き締めていた。
「も〜ぬいぐるみに嫉妬〜? 可愛いなぁー!」
「ふん。新参者に譲るほど優しくない」
「はいはい、ミカンが最優先だよ〜」
ミカンがぽいとぬいぐるみをベッドの端に転がし、私の胸に甘えてくる。お迎え早々除け者にされるぬいぐるみには少し申し訳ないけれど、
暖かい身体をぎゅうと抱きしめて、私たちはベッドに転がった。
◆
ぬいぐるみが我が家に来てから、数日が経過していた。相変わらず平和な日常。ただし、変わったことがひとつ。
「……あの、ミカンさん」
「ん?」
「……その子抱きすぎじゃない? 最近ずっと抱いてるよね」
「なんか腕馴染みが良くてな」
「……そっかぁ。そっかぁ」