シスター死亡フラグ   作:桐宮

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13話 啓示

 辿りついた島で私はそれまで乗っていた船に火を点けた。

 

 海軍支部のない島を目指したそうでしばらくは追われる心配もない。けれど、ミナントから消えた船が別の場所で見つかればそれまでの足取りを辿る手がかりになってしまう。

 

 全員を下ろしたところで船内に火を放ち沖へ押し出した。中から発生する上昇気流で船はぐんぐん進んでいく。火がすっかり燃え広がれば私たちの痕跡すらかき消してくれるだろう。

 

 人気のない砂浜から町の方へ出るとなかなかの賑わいで思わずさっと帽子のつばを下ろした。雑貨屋に足を運び、口紅を一本購入して顔にペイントを施す。おやまあと呆れ顔をした女店主には大道芸人なのだと嘘をついて宿を尋ねた。ここへついてからおもちゃたちの入った箱をずっと抱えているものだから少しくたびれていた。

 

 おもちゃたちには見つからないよう部屋に隠れていることと明言して隊長だけを連れ出し港へ向かった。次なる足を探すため、助言を期待してのことだ。一通り見分した隊長が聞きとがめられないくらい小さな声で指示を出しその船に近付こうと足を向けたところで背後から声がした。

 

「その船に乗るのはやめた方がいい」

 

 振り返った先には少年がいた。地面に布を敷いて座り込み、なにやらカードを広げている。

 

 相手をするな、と隊長が囁く。けれど私はその仕草に既視感を覚えていた。目の前まで近付いても気にせずカードと向き合っている少年に、私は名前を尋ねた。

 

「言わずとも伝わると出ている。あなたの想像通りの名だと答えておこう」

 

 そうしてようやく顔を持ち上げた少年の名は、バジル・ホーキンス。

 

 後に最悪の世代と称される一人だった。

 

 

 

 

 カードと戯れ続けるホーキンスをなんとか引きずって宿へ戻った。あまり表情のない顔がそれでも小さく眉を寄せて不服そうに訴えてくるので何か奢ると言うと了承された。育ち盛りの食欲って偉大だ。

 

 見かけよりはたくさん食べる彼に手持ちのお金を確認しながら部屋へ上げた。扉の前で少し待ってもらっておもちゃたちは浴室に押し込める。昼間だからか隣には誰もおらず盗み聞きの心配がないのはありがたい。

 

「あの船の持ち主に死相が出ていた」

 

 先程の呟きについて問えば、そう返ってきた。何が起きるかはわからないが、もし乗り込んでいたら巻き込まれていたのだろう。彼の占いはほとんどがパーセンテージで表現されるので精度というには微妙だが、頂上戦争後のルフィの生存確率を当てるなど的中率は高い。

 

 私は彼に占って欲しいことがあると告げた。探している少年のこと、目的としている地とそこへ行くための手段の二つ。ノースの海図自体は軍艦からもらってきたものをそのまま持ち歩いているので問題はリヴァース・マウンテンを越えられるかどうか。

 

 ホーキンスは予想に反して二つ返事で了承してくれた。人助けをすると運気が上がる日だとかで対価もさっきの食事で十分だと続けタロットを取り出す。

 

「その子どもの名は」

 

「トラファルガー・ロー。十歳の男の子」

 

 誕生日や血液型も必要かと思ったけれどすぐに彼はタロットを混ぜ出した。しんとした室内にカードを切る音だけが響いている。

 

「出た」

 

 タロットが開示される。逆さまのそれを私も見た。昔かいつまんだくらいの知識なのでカードの意味などは理解できなかったけれど悪い結果にはならない筈だ。

 

「生きている。が、死神の手が近付いている。無為に過ごせばやがて死に至るだろう」

 

「居場所は? わかる?」

 

「蜘蛛の名を冠する地。だが、迂闊に手を出さず時を待てとも出ている」

 

 時……オペオペの実を手に入れるまで待て、ということだろうか。私が考えている間に彼はカードを集め直しまた混ぜ始めた。今後のことについて占ってくれるのだろう。

 

 再びカードが開示され、当然だけれど先程と配置も絵の向きも違うそれを見つめる。しばらく黙っていた彼がおもむろに口を開いた。

 

「汝の神を信じよ」

 

「え?」

 

「訳すならそんなところか。一番大きな船があっただろう、そこの副船長にいくらか握らせれば黙って乗せてもらえる」

 

「それも占いの結果?」

 

 妙に具体的な方法に尋ねれば言葉少なに否定される。つまりそれだけ頻繁に行われているということだ。

 

 何はともあれ具体的な指針ができたことでお礼を言って頭を下げた。いずれ追っ手が来ることも考えると宿は引き払った方がいい。一泊分の金額を払った後だったが、チップだと思って気にしないでおこう。

 

 再び荷物を抱えて宿を出るとホーキンスももう帰るときびすを返した。驚いたことにこの島の住人だったわけではないらしく、新たな出会いがあると占いに出て単身海を渡ったのだという。行動力ありすぎないか。去り際にまた、と呟いて颯爽と長くなりつつある髪をなびかせて小さくなっていく。

 

「また、かぁ」

 

 またの出会いを。そう言ってくれたのは、再会するまではどちらも死なないと予見してくれたからだろうか。人助けは運気が上がると言っていたが、それすらも建前だったのではと考える。

 

(いい子だったわね、レーナ)

 

「うん」

 

 さて、木箱を担ぎ直し前を向く。出港時刻が迫っているのか件の船の周りはひどく慌ただしい。それに追いつくために駆け出して声を張り上げた。次なる地へ向かうために。




この辺りキング・クリムゾン(時間を飛ばす)しようとしていた内容なので進行に悩んでいたらふらりと現れて啓示を与えて去っていきました。
ありがとうホーキンス。
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