シスター死亡フラグ   作:桐宮

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14話 船上

「バジル・ホーキンス貴様~!」

 

 そう叫びだしたくなるほどに、商船へ同乗してからは最悪の連続だった。

 

 乗り込むのはうまくいったものの一部の船員に話が伝わっていなくて無賃乗車扱い。荷物を取り上げられそうになっていたところを航路変更を告げに来た航海士に助けられた。

 

 積荷でいっぱいの船内に客室などあるはずもなく倉庫の一室を貸し与えられる。船長室からそう離れていないので何かあったらすぐ呼びに行けるのが幸いだ。しかしおもちゃたちを入れた箱を輸出品の一つと思ったのか開いていた蓋を金釘で閉じられそうになって急いで止めた。

 

 更に嵐。いやこれはいい。航海をしていればいつかはぶち当たる天災だ。

 

 どんなに船が揺れようが崩れてきた商品がぶつかってこようが耐えられた。耐えられた、のだが実際に嵐の海で船を操っていた男たちはまさに死屍累々といった体で甲板に転がっているところを海賊船に襲われた。

 

 これで最初の発言に戻る、というわけである。

 

 ぐったりしていた船員たちはあっさりと船を引き渡した。倉庫にいた私も瞬く間に縛り上げられ、今は下働きの少年の隣に座っている。

 

(船長らがケチだからウチの商会は保険に入ってんのさ。だから下手に壊されるよりさっさと出て行ってもらった方がいいってわけ)

 

「こらそこ! 何を話してる!」

 

 うへぇ、怒られた。頭をちぢこめながらもまったく堪えた様子のない少年はぺろっと舌を出してみせる。

 

 確かに、どの船員も大した傷一つなく大人しく拘束されていた。うまくいきすぎて海賊の方が首を傾げてるくらいだ。

 

「積荷はすべて差し上げます~だからお命だけはお命だけは」

 

「船にも手ぇ出さねぇでくだせぇ~おらたちこれがなきゃ故郷に帰れねえだよ~」

 

 海賊の足にすがりついて許しを乞う船長さんたちはこういった事態に慣れているんだろう。なかなかの演技派だ。鬱陶しそうにそれを追い払った海賊がそそくさと穴の空いたトリコーンを被った人物の下に戻っていく。

 

「お頭、こういってやすがどうしましょ」

 

「全部載せたらうちの船が潰れちまうわ、バカ! だがただでくれるってんならもらってやる。おれたちゃタダの海賊団だからよ!」

 

 こちらも刃の欠けたサーベルを引き抜いて掲げると甲板を占領していた海賊たちから歓声が上がる。襲撃してくる時も名乗ってはいたがその時は一味の名前だとは思っていなかった。

 

 なんとか穏便に済みそうだとほっとしていたのも束の間、ぐるりと甲板を見渡していた海賊のお頭がずかずかこちらに近付いてきて私の首根っこを掴んだ。

 

「ようし、こいつは人質だ! 無事に次の島へついたら解放してやるから安心しな!」

 

「マギーさん!」

 

 乗船する時に名乗った偽名を少年が叫ぶ。どうにか安心させようと微笑むが見上げるほどに大きいお頭に持ち上げられ首が絞まる。

 

 顔を合わせるように吊り上げられているので後ろ手に縛られていては抵抗もできない。せめて下ろしてと口を開いて抗議するがひゅうひゅうと息がこぼれるくらいで言葉にならなかった。

 

「お頭お頭、首絞まってますって!」

 

 意変に気付いた海賊の一人が進言して荒っぽく床に落とされた。

 

「悪いな、大丈夫か嬢ちゃん?」

 

 正直まだ声を出すのも辛いのだけど頷いてみせた。縛られたままでは能力で対抗することもできず眉間にしわが寄る。

 

「それにお頭、まずいですよぉ。これからグランドラインへ行くってのにこんなお嬢さん連れていけるわけないですってぇ」

 

「む、そうだったな! どうしよう」

 

 いや知らないよ。一斉に首を傾げる間抜けな海賊団に突っ込みを入れそうになって耳を疑った。

 

「待って、あなたたちグランドラインへ行くの?」

 

 ぱちぱち瞬きをしたお頭がおうよと答える。そんなところまで行ったら帰って来れないと少年が悲鳴を上げるが私には好都合。心配しないでと今度こそ呟いて海賊に向き直った。

 

「私もグランドラインを目指しているの。喜んで人質、お受けします」

 

 どよめきが上がるのを背に、私はにっと笑ってみせた。

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