かなりの年月をキング・クリムゾン(時間を飛ばす)しています。
この日記を書くのは三年目。つまり、レーナさんが仲間になってからそれだけの年月が経ったことになる。
はじめは戸惑っていたレーナさんも今ではすっかり打ち解けてファミリーの一員になった。
若様には考えがあるようで表舞台には出さないけれど、船を出す時にはいつも一緒にいるからあまり寂しくはない。戦闘から戻ってこれば彼女が迎えてくれるから、むしろ前よりも帰るのが楽しくなった気がする。
レーナさんが入るきっかけになったローの行方は未だにわからない。新世界に入ってからも若様はノースブルーに拠点の一つを残し探しているけれど、それでも見つからないのだから一部の船員がもう死んでるんじゃないかって噂しているのを聞いたことがある。
そのすぐ後、血の掟に反した船員は串刺しの刑にあっていたけど当時のローを知る私たちも薄々そうじゃないかって思い始めている。
もちろんローには生きていて欲しい。けれど、ローの優れた医療知識があっても三年の間じゃ病気の進行を待つことしかできなかった。レーナさんは奇跡的に治療法を見つけたけれど、ひとりぼっちでいるローも同じように助かるとは限らない。
でも、若様はそうとは思っていないみたい。
少し前に天上金の輸送船を襲った若様は、そのまま政府を相手取り七武海の座を手に入れた。世界政府公認の海賊になれば色々なことができるようになるからだって言っていた。
もしそうだったら、ローの居場所がわかるといいな。ローのことを話している時のレーナさんはどこか寂しそうだから、はやく会わせてあげたいなって気持ちが強くなる。
本当に、どこへ行ったんだろう。私には何もわからないけど早く帰ってきなさいよ、ロー。
あんたのことを待ってる人は、たしかにいるんだから。
「ハァ、ハァ……どうなっている!」
一夜にしてドレスローザの様子は一変した。丘の上から見える景色は炎に彩られ、広がり続けるその火は王宮までもを呑み込んで赤く赤く燃え盛っている。
妻子を家に残し単身王宮へと向かったキュロスは、既に侵入していた海賊達を相手取るも四面楚歌の状況にとうとう捕まってしまった。
「この国に! 王に何をした! 海賊!!」
海楼石の錠をはめられたキュロスは海賊達の前に引きずり出された。玉座に腰掛ける海賊は不気味な笑みを浮かべ、倒れ伏したリク王を見下している。
キュロスは能力者ではないが、加工すらもひどく難しいとされる海楼石の錠は一朝一夕で壊せるような代物ではない。鋭い眼光で睨みつけるが敵の首領はどこ吹く風だ。
「ふざけるな! 海賊の部下になど誰が!」
渾身の力で錠をはめられた脚を揺り動かすが鎖の音が響くだけで足枷自体はびくともしない。それどころか接している肌が海楼石で擦れて傷を生む。
ドフラミンゴと名乗った海賊は手にしていた長剣をリク王の首に添え、キュロスの目前で処刑をなそうとしている。
もはや猶予はない。キュロスは自らの脚を剣で切り捨て、片足でドフラミンゴへ襲い掛かった。
「……マグダレナ!」
片手を塞いでいたドフラミンゴが長剣で迎え撃とうとして間に合わないと悟りそう叫んだ。玉座の傍らで佇んでいた修道服の女がそれに反応し、ドフラミンゴを庇うように立ってキュロスに片手を向ける。
ポンッ
ほんの一瞬。女が触れたのはほんの一瞬だった。
瞬く間にキュロスの体は光を帯びて収縮し……兵隊を模したおもちゃに変わる。ブリキでできているのか、大きな音を立てて地面に倒れ込んだおもちゃは自らに起こった出来事を理解しきれず片足で立とうと躍起になるが人のような筋肉も関節もない体では自由に動くこともままならない。
目の前に突然おもちゃが現れたことに戸惑ったリク王が声を上げる。その場にいる者は皆呆けているように動きが鈍かった。ただ一人、この状況を作った元凶の女の目が自分を射抜いたことを感じた兵隊のおもちゃは弾かれたように立ち上がるとリク王を担いで駆け出した。
「オモチャが逃げただすやん!」
行き先は考えなかった。勢いのまま窓に突っ込んで城外へ出ると、王宮の屋根に激突して片足が僅かにゆがむ。王宮のある台地を滑り落ちるように駆け抜け、追っ手の来ぬ内にと路地裏へ身を潜めた。
「ちょうどいい、このマントを借りましょう。ひとまず身を隠さねば、リク王様」
「あ、ああ……誰だかわからんが助けてくれてありがとう」
一国の王にゴミ捨て場から拾った衣服を渡すのは気が引けたが、今は形振り構っていられない。常に身に着けていた装束をそれとわからぬよう打ち捨てながらリク王は礼を告げた。
「私はキュロスですよ。こんな形になってしまいましたが」
「キュロス……?」
聞いたこともない名だと眉を寄せる王の目は本物だった。まさか、記憶を失っているのか。
立て続けに問いかけようとするが表の方から忙しない足音が聞こえる。これ以上長居はしていられず、兵隊は王に反対側へ逃げるよう告げると自身は囮になるために大通りへ出て行った。
幸いにもまだ幹部達には場所を知られていないらしい。適当に距離を稼いだところで追っ手を撒き、妻子と暮らす家へと急ぐ。ドフラミンゴが口にしていた通りそこには既に奴らの手の者がいて、レベッカを抱いたスカーレットが軍の隊員に庇われ逃げ惑っていた。
「貴様らァ!」
道中で奪った銃を放ち、襲ってくる海賊を蹴散らしていく。背後から聞こえる悲鳴と下卑た笑い声に身をすくめたスカーレットはレベッカの体を強く抱き直して走っていく。
(そうだ、それでいい。約束の場所で待っていてくれ。必ず迎えに行く)
銃弾を放ちながら胸中で呟いていた兵隊は、数日後、地獄を見ることになる。
映画スタンピード公開おめでとうございます! グッズ情報まだですか! 特典は欲しいので三回見ます!
見たら最高にハイってやつになって何も手につかなくなるので、今のうちにと続きを捻出しました。
前回から半年近く経って文体を完全に忘れてしまったため、文章が気に食わなかったらその内書き直します。
次回以降は色々すっ飛ばしてドレスローザ編に突入するか、ドラムのラミ達は今! を描くか、趣味しかないパンクハザード編をダイジェストで語るかの三択の予定です。
特に決まっていないので、書けた内容から始めていきたいと思います。
映画を見ながら気長にお待ちください。