「だから刀も銃もいらないって言ってるだろ」
「じゃあどうやって戦うんですか!」
「虚刀りっ…体術があるって」
「そんなんで他のISに勝てる訳がないでしょうが!!」
倉持技研のスタッフとのやりとり。
かれこれ三十分ほどこのやりとりをしている。
「ブースターもいらないって!足場が無けりゃ蹴り技もだせないだろ」
「なんで地上で戦う気なんですか!?飛ばないと蜂の巣にされますよ!??」
ISの常識を欠いた花実の要求に正論をぶつけて対抗する倉持スタッフ。虚刀流を見せたら多分話は早いんだが、相手がいないのでそうもいかない。まず第一に刀である花実に武器は文字通り使えない。剣を振るえばすっぽ抜け、銃を撃てば衝撃で真後ろに飛んでいくことだろう。これに関してはやって見せてもふざけているとしか思われない。現状で虚刀流の説明をすることが不可能なのだ。
「とにかく武器の類はいらない。体術だけだ。あとなるたけ装甲を外してくれ。動きやすさの重視で」
「だから装甲はまだしも武器ぐらいはは必須ですって!!」
「まぁまぁ、とりあえず鑢くんの言う通りにしてやってくれ。武器に関してはあとからどうにでもなるだろう?」
「ですが…」
スーツ男が倉持スタッフを宥めてくれる。
彼も彼で中学男子の戯言ぐらいしか思ってはいないようだが。
「あ、ほらこれ。こんな感じがいいな軽そうだ」
そういってPCの画面を倉持スタッフに見せる花実。
「って、これ第一世代の写真じゃないですかぁぁあ!!!」
◯
結局、概ね花実の希望通り造られることとなった。
倉持スタッフはどっと疲れた顔をして鑢家を後にする。
「あぁ、そうだ鑢くん。これから時間あるよね?」
「いやまぁありますけど」
「君の身体能力を測りたい。それと、君の武術のほうも見ておきたいしね。余程自信があるんだろう?」
皮肉交じりに笑いながらスーツ男は言う。
「外に車を停めてある。動きやすい服装に着替え、準備が出来次第乗りたまえ」
スーツ男は家を出て行った。
「はぁ。…面倒だ」
「…驚いたな。冗談としか思えん…」
車で移動し三十分程、国営であろう施設内で一通りの測定を終える。
その結果を見た人間がことごとく言葉を失っている。アスリートの倍以上の身体能力。それこそ生身で二段ジャンプができるのでないかと言われるほど、花実の身体能力は高かった。花実がやったのは健康診断、体力テスト、組手の三種。至って健康、化物並みの身体能力、竹刀を持った大の大人が5秒持たないというとんでもない結果だ。
「確かに武器がいらんというのも頷ける」
「いや使えないんだって」
さっき試しに竹刀を振ったが、明後日の方向へ飛んでいった。
「さっきの模擬戦の映像は倉持の方に回しておく。これで武器云々の話はもうなくなるだろう」
「はあ、どうも」
「さて、これで入学前の準備は大方終わった。学園から配られた事前参考書があるんだろう?それでも覚えて気長に待っていてくれ。また何かあったら連絡するよ」
車に揺られて帰宅。
こうして花実の入学準備は終了したのだった。とはいうものの例の電話帳並みの厚さの参考書を頭に叩き込むという作業が残っている。花実は地頭は良く勉強は苦手ではない。が、いかんせん面倒なのだ。それだけの理由であり、十分な理由である。自宅に着くとすぐに布団に体を投げる。
(明日からやろう…。ああ、面倒だ)
そんなことを考えながら、花実は眠りについた。