島津伝 ~平凡な高校生がチート無しで戦国時代にタイムトラベルしたら現代知識無双で天下をとって織田の姫様たちとハーレムで地球を征服しちゃうまでロケットで突き進むぜ~ 作:えんどうこいち
「我こそは三河最強の武士、本田忠勝なるぞ!我が槍の血錆びにしてくれる」
俺の目の前に立つ身の丈3メートル近くある巨体の男が電柱柱のような槍を振り回しながら駆けてくる。普通の足軽ならそんな状況なら無我夢中で逃げるか、恐怖で足がすくんでなすすべなく殺されるだろう。だが俺の心にはそんな恐怖心など微塵も湧かなかった。俺の手にあるのはそんな猪武者など容易く屠れる凶器があるからだ。
俺がその凶器を優しく撫で、向かってくる武士へと静かに構え、そしてトリガーを引いた。軽い破裂音が連続して鳴り、本田忠勝の頭が呆気なく破裂し、頭部を無くした身体はどうっと倒れ臥す。
「ば、ばかな…俺の槍は天下無双…それをこうも容易く破るとは…さては名のある武将か…名を…俺を破ったお前の名を…教えてくれ」
倒れ伏した本田忠勝は最後の力を振り絞り尋ねてくる。
「否、俺はただの高校生。名は島津刹那」
「まさか、ただの高校生って…高校生?えっと高校生ってなんだっけ?」
怪訝に首を傾げる瀕死の本多忠勝。
「高校生とはなにか?それはとても哲学的な問だな。俺も高校生とは何かなど、真剣に考えたことはなかった。そもそも人はなぜ学ぶのか。それはとても根源的な問だ。ただ人が人らしく生きるだけならば中学生レベルの学力だけで十分ではないのか?だが世間では中卒は人とはみなされないというのがこの悲しい現実であるな。高卒でも就職は覚束ないし、苦学して大学まで卒業してもこの不況下では就職は困難。大学院までいくと今度は年齢の問題で更に就職が厳しい。実際、俺の親父は大学出だが社会に出て大学レベルの知識を問われることはほぼないそうだ。母親だって学生時代真面目に勉強なんてしなかったらしいが仕事ではバリバリ活躍できてるらしいぞ。そんな中でなぜ人は高校生になり、そして大学まで進むのか。学びたいものがあるのか?それとも流されているのか?俺は一体どちらなのだろうか?お前はどうだ?」
「意味がわからん。無念なり」
俺の長々とした話を聞き、悔しそうな声をあげ、本田忠勝は息を引き取った。
勝って兜の緒を締めよ。俺は油断なく銃口を更に先へ向ける。そこには万を超える足軽兵と絢爛豪華な鎧を着て馬に乗ったたぬきのような壮年の武将がいる。たぬきのような武将は顔を真っ赤にして殺気を飛ばしている。
それを俺は冷静に観察しながら、こうなった経緯を思い返していた。
時刻は1時間ほど遡る。
特に取り柄もなく、退屈な日々を無為に過ごす毎日、そんな日々を飽き飽きとしながらもどこか安らぎを感じる、そんなどこにでもいる平凡な高校生の俺は今日も朝5時に目が覚めた。
高校も2年になった俺は将来の進路の為に、1時間ほど勉強をして、そして日課の鍛錬の為に裏山に登った。
俺の家は元々鹿児島の武闘派大名、島津家の数少ない生き残りだ。
関ヶ原の戦いで西軍についた俺の祖先は憎き徳川家に敗退して命からがら薩摩まで逃げ帰った。その後はみんな知っての通り徳川の世になり、島津家の生き残りは薩摩の地に隠れ住んでいた。そして細々と命を長らえ、長州藩と薩摩藩が江戸幕府を倒した時にはもう曾祖父さん一人だけが生き残っていた最後の島津家だったそうだ。
曾祖父さんの両親は産まれてすぐ徳川の暗殺者に捕まり殺されてしまったそうだ。まだ自分の出自すら理解できない子供ですら容赦なく殺す徳川の血も涙もない仕打ちに曾祖父さんは両親の敵を取るべく修行に明け暮れていたが、山籠りから里に降りた頃にはもう江戸幕府は倒れ、徳川家は全員晒し首にされていた。曾祖父さんはとうとう復讐に間に合わなかった。だからいつ何が起こってもすぐに復讐できるように日頃から鍛錬を欠かさず己の力を磨けと、爺さんの代からの掟になったのだ。
そして俺の爺さん、父さん、母さんはその掟を守り、常に戦場で戦い続けた。
爺さんは日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦を戦い抜き、戦後はどこの国にも属さない正義の戦士としてベトナム戦争や中東などで戦い、父さん母さんも物心ついた頃からアフガニスタンや中東などで激しい戦いを現在でも続けている。なので爺さんや両親は週末にしか家に帰ってこないのがちょっと寂しい。俺も物心付く前から小学校に入るまでは中東で少年兵として戦っていたのだが、義務教育があるため、小学校に入ってからはずっと日本で暮らしている。
だが大学を卒業したらすぐに世界に羽ばたけるように常日頃から鍛錬は欠かしていない。
俺は1歳の誕生日に両親から送られた愛銃のAK-47を手に今日も裏山で襲いかかってくる野犬の群れや猪の群れ、熊の大群を相手に戦闘訓練を続けていた。
3時間ほど訓練を続け、パンを口に咥え、「やだもー遅刻!今日も遅刻しちゃう!」と今日も学校へと足早に向かう。
だが今日は学校へとあと少しというところの曲がり角から飛び出したセーラー服の女の子にぶつかってしまった。
「きゃっ!」
そんな可愛い声を出してぶつかった少女は体重差の関係で勢いよく転がり壁に叩きつけられ、ぶつけた頭を抱えて苦しんでいた。
だがセーラー服で倒れて転がっていったため、スカートが完全にめくれてしまい、うさぎさんの絵柄がプリントされたスキャンティが丸見えだった。しかも上着もはだけてしまいおヘソまでこんにちはしている。
だが大丈夫。俺は紳士だったため無言でスマホを取り出し、ローアングルでじっくりと撮影しただけで手を出したりはしない。YesロリータNoタッチだ。だがよく見ると、そのセーラー服は俺の通う高校の制服ではないか。
おのれ、うさぎさんのスキャンティだから幼女かと思ったら同年代じゃねーか。金返せ。
とりあえずまだ悶えているようなのでズームで撮影しながら彼女が正気を取りもどうのを慈愛の目で見守る。
そういえば今日のパンはうぐいすパンだ。
昨日訓練中に取れた野生のうぐいすを血抜きし、丁寧に羽を全部取り除く、そのあと内蔵を抜いて、全体にオリーブオイルをまぶし浸透させる。そして刻んだハーブと塩コショウを少しかけて、オーブンでじっくりと焼き上げる。その後パン生地で包み、更に焼き上げる。銀座の名店でバイトしていたときに習得した秘伝のレシピだ。親友のジョージや幼馴染の梨沙にも絶賛された美味なるうぐいすパン。彼らの分は別に作ってカバンに入れてある。今日のお昼にご馳走する約束だ。
そんなパンを俺は先程の衝撃で潰れてないか確認した後、ホカホカと温かいうさぎさんのスキャンティを大事に折りたたんで一緒にカバンに仕舞い、学校へと急ぐ。
なんとか教室に滑り込めたのはホームルームが始まる5分前、8時25分のことだった。
「よう刹那、今日もギリギリセーフだな。約束のうぐいすパン忘れてないだろうな」
「忘れてたら承知しないわよ、せっちゃん。こっちも約束の手作り弁当持ってきてあげたんだからね。べっべつに絶対食べてほしいって訳じゃないんだから。いらないならゴミ箱に捨てるわよ。ねぇ・・・本当に食べてくれるんでしょ?ぐすっ(´;ω;`)」
親友のタカシと幼馴染の梨沙がすぐに挨拶に来た。
「ふっ、俺がそんなに忘れんぼうに見えるとでも?見よ、この輝くうぐいすパンを!」
俺はカバンから取り出したパンを見せる。
「「「「おおおおおお!あれが銀座の名店パン屋の秘伝のうぐいすパンか!」」」」
クラス中から一斉に歓声が上がる。
「うーぐいす!うーぐいす!うーぐいす!」
「うおおおおお俺も食いてえええええええええ」
「ねぇ刹那!私と結婚して毎日うぐいすパン作って!」
「そのパン、この伊集院が1000万円で買い取ろう」
「だが断る」
「どうでもいいけどそろそろホームルーム始まるよ」
「ガリ勉野郎は黙ってろ!」
もうクラスは大盛り上がりだ。
だが俺はニヒルにこう言った。
「これは2個しかない。つまりタカシと梨沙の分だけさ」
その一言にタカシとジョージは感涙の涙を浮かべ俺へとハグしてきた。
タカシは野球部のエースで4番。
彼との出会いは数年前、高校入学式の朝だ。
当時2年だったタカシは新入生の俺が迷子になっているところを教室まで案内してくれた。当時の俺はまだ日本語が喋れず、エクスキューズミーと英語で通りすがりの先生や生徒に教室の場所を尋ねていたが、誰も英語が通じず相手にしてくれなかった。そんな俺を朝練帰りのタカシが流暢な英語で案内してくれたのがきっかけだ。タカシは駅前留学が趣味で英語が非常に堪能だった。そんな俺は日本語を覚えるまで金魚のフンのようにタカシの後ろにくっついて過ごす日々だった。
そして今年の春、同じクラスになった頃には俺たちはもう大親友になっていた。
彼からはいくつも大事なことを教わった。
和式便器の使い方から日本語まで、そして一番大事なこと。
それは諦めないことだ。
タカシは今ではエースで4番だが、高校入学時は一番の下手っぴだったそうだ。
毎年ずっとボール拾いばかり、ずっと補欠にすらなれずにいた。
だがタカシは諦めなかった。朝練や夜練、休日練習を欠かすことはなかった。毎朝素振り1万本をした。最初は深夜までかかった素振りを諦めずに毎日やり続け、今では1時間もかけずに1万本の素振りを終えることができるようになった。
そんなタカシが2年生になった頃には野球部のエースで4番になっていたのは当然のことだろう。
俺もそんなタカシの諦めない心をリスペクトして日々の訓練に励むようになった。
いつか島津家再興を夢見て辛い訓練に耐え抜く。
いまの俺があるのもそんなジョージの熱いハートのおかげだろう。
そしてそんな俺を影で支えていてくれたのが梨沙だ。
だがそれは今は置いておく。
なぜならホームルームが始まったからだ。
俺らの学校は今どき珍しく第一時間目の前に30分のホームルームがある。これは早朝にしっかりと今日やるべきことを伝えることでそれぞれの計画を立てることを習慣化させるためらしい。なんでもこの学校の創立者が常に行き当たりばったりの生活を繰り返した挙げ句、最後には大事な商談をすぽーんと忘れてしまい、競馬にのめり込み、全財産を使い果たし、その後借金まみれになりカニ漁船で死ぬまで奴隷生活だったことを後悔し、生徒たちにはそんな苦労をさせてはならないと、学校を作ったときに毎日欠かさず朝一番にホームルームを行うことと決めたのがきっかけらしい。
そんなわけでホームルームの単位はとても厳しく、1回でも遅刻したら厳罰で、最悪留年も覚悟しないといけないらしい。でもま、本当にホームルームを落として留年したなんてやつは見たことがないが。だが高校で留年するやつってどうしようもないクズだろう。俺はそんなやつとは関わり合いにならないようにしているから気づかないだけかもしれない。
おっといけないいけない、またよそ事を考えていたらしい。
俺らの担任の沼田先生、通称ヌマセンはとても怒りっぽい熱血教師で、ホームルーム中によそ事を考えていようならすぐさま罵倒とチョークが飛んでくる。だがそんなヌマセンが今日はどこかおかしい。整髪料でテカテカしたいつもの七三分けを整えネクタイが曲がってないか確認して、自慢のジャージに汚れがないかチェックしている。そしてちょっと頬が赤い。そして松田優作モデルのサングラスを本人はかっこいいと思っているらしい仕草でスチャッと装着する。そしてヌマセンは深呼吸をして声を張り上げた。
「今日はみんなに新しいお友達を紹介する!転校生ちゃんだ!入れ!」
そしてヌマセンの掛け声に答えるようにガラリと教室のドアが開き彼女が入ってきた。
「はーーーーい!みんなー転校生の遠藤早苗でーす!」
溢れるような笑顔と愛らしい声、そしてセーラー服を翻しながら黒板の前まで駈けてきたのは、なんと登校のときにぶつかったウサギちゃんだった!
「おっおまえはーーーー!」
思わず俺はうさぎちゃんのスキャンティを握りしめて立ち上がり彼女を指さして叫んでしまった。
「あっあなたは!!!!」
彼女も俺のことに気づき、俺の握ったスキャンティを指さした。
そして運命の俺らは出会ってしまったのだ。