島津伝 ~平凡な高校生がチート無しで戦国時代にタイムトラベルしたら現代知識無双で天下をとって織田の姫様たちとハーレムで地球を征服しちゃうまでロケットで突き進むぜ~ 作:えんどうこいち
1限目が終わり休憩時間、俺は早朝訓練に使用したAK-47を分解整備していたら、転校生のうさぎちゃん、遠藤早苗が話しかけてきた。
「あんた、私のおパンツを返しなさいよね」
遠藤早苗は何やら訳が分からないことをいう。どうやら壁にぶつかったときに脳をやられたらしい。オーノー。
「あれは俺の戦利品だ。勝者が敗者から戦利品を奪うのはデュエリストとして当然の権利。それにあのスキャンティは幼女が履いてこそ輝くのだ。10年若返ってから出直すんだな。おまえにも帰る家があるんだろう」
「うそっ!あなたもデュエリストなの!だってここら辺のデュエリストは3年前の戦いで全滅したって聞いていたのに」
3年前…この女、あの戦いのことを知っているのか。
俺は整備していたAK-47を放り出し、遠藤早苗から距離をとる。もし奴が敵対的なデュエリストならこの距離、もう能力の射程内だ。迂闊だった。俺以外に生き残りはいないと思い込んでいた。よそから来るデュエリストの存在を考えていなかったとは。俺は気取られないようにゆっくりと奴から死角になっている左手を背に回し、右肩甲骨にある俺の
その光景を校舎の外、500メートルほど離れた鉄塔、その上部の方にある梁に立って眺めている男女二人がいた。
男は黒いコートを羽織りコートの下にはこれまた黒い全身タイツを着用した全身黒ずくめ。サングラスをかけ煙草を咥えている。頭は剃っているのか髪は全くないスキンヘッドだが、斜めに走る異様な刀傷が頭部を印象的にしている。
女は逆にけばけばしい赤青黄色と原色を散りばめた原宿風といったファッションで、整った顔立ちのためそのままならさぞかし男受けするだろうに、髪をバサバサにしてこれまた赤青黄色に乱雑に染め分け、両頬に蜘蛛のタトゥーを入れていて台無しにしている。
「始まったか。これもシナリオ通りというやつなのか」
男は苦々しげに顔を歪め、咥えた煙草を口から吐き捨てる。煙草は宙へと放物線を描き飛んでいくが横にいた女が指を鳴らすと一瞬にして燃え上って灰になってしまった。
「煙草のポイ捨て禁止だよ。前から言ってるけどそういう基本的な社会のルールを守れないやつって嫌いなのよね」
女が呆れたように男へと文句を言う。
「それに下っ端のあたしらには上の考えなんて分かりっこないって。あたしらはただ起きたことを正確に記録し、提出するだけだよ。それでお給料もらえてるんだから問題ないじゃん」
「お前はそういう事ながれ主義が過ぎるのが欠点だ。下っ端だからこそ常に時流を見据え、どんなイレギュラーが起きても対応できるようにする必要がある。いざ事が起きれば下っ端なんぞあっさりと見捨てられるんだぞ。結局最後に頼れるのは己だけだ。生き残るためには些細な情報から全体の流れを推測して立ち回る必要ってものが」
「はいはい、そういう小難しいことはあたしにはわっからなーいって。それにそろそろ始まるよ」
女は軽い口ぶりとは対照的に表情を真剣にして校舎を指さした。
「唸れ風神!空舞うエレメンタル!光すら捻じ曲げ全てを切り裂く猛き乙女よ!」
平穏の終わりは一瞬だった。
遠藤早苗の発動した術式が、不可視の風の刃が教室中に荒れ狂った。それによってタカシが、梨沙が、クラスメートたちが小間切れに切り裂かれていき、一瞬にして教室中は血煙に包まれた。
事象発現型能力か厄介な。守護星座使いだから召喚型かと思ったんだが。自己原罪型の俺とは相性が悪い。
だがぼやいている暇はなく風の刃は俺にも迫ってくる。
すぐさま聖痕を開放し、己の原罪を発現する。原罪により過敏になった五感が見えないはずの風の刃を感知し、一つ、二つ、と避けていく。己の罪を自覚せよ。心の奥から響く声が俺の体を少しずつ塗り替えていく。そう、あれは暑い夏のこと。俺の家でクーラーが設置されている唯一のリビングで、裸になり汗を迸らせながらアクロバティックなオナニーをしていたのを梨沙と母親に見られた14の夏。それを今思い返しても猛烈な恥ずかしさにもだえ苦しむ。その恥ずかしさが俺の鼓動を何倍にも加速させる。その加速された心臓の鼓動が身体能力を格段に上げていく。思考速度は加速し、五感は研ぎ澄まされ、血液を過剰に送り込まれた筋肉は数倍にも膨れ上がる。
そして一瞬にして間合いを詰めた俺は、遠藤早苗の頭に殺人的な威力を秘めた拳をたたきつける。
だが、その拳は遠藤早苗の体をすり抜け、むなしく空を切る。
「ふふふ、残像よ」
背後から遠藤早苗の声が届く。
「残像…というか蜃気楼か。先ほどのは風の刃と蜃気楼の多重詠唱だったってことか」
振り返ると教室の反対側に遠藤早苗が立っている。彼女の右目が金色に変色している。彼女は妖艶な笑みを浮かべ、そしてスカートの裾をつまみ、ゆっくりと其れをめくりあげていく。そして俺は彼女の…
そこまで書いたところで俺は顔を上げ、隣の席に座った遠藤早苗に、
「そういえば、お前って下の毛生えていたっけ?朝に脱がしたときはスキャンティに目が釘付けだったせいでよく見てなかったんだが」
そうCoolに問いかける。
「あんたは一体授業中に何聞いてくるのよド変態」
驚愕のまなざしを向けながら遠藤早苗が返す。
俺は自分が毎日欠かさず書いている自伝ノートを彼女に見せながら、下の毛が生えているかどうかがこの自伝のクオリティに欠かせない要因だと力説する。彼女は渡された自伝ノートを死んだ魚を見るような目で読み、そしておもむろに破り捨てる。
「おい何をするだ!それは大事な歴史的資料になるんだぞ!」
すぐさま俺は破れてバラバラになったノートをかき集め、丁寧に修復する。最近の若者はすぐに衝動的破壊行動を取ろうとする。こいつも例にもれずキレる若者というやつだったか。やはり俺の伝記で描写された彼女の行動は正しかったわけだ。
その後、キレる彼女から右ストレートを食らい、教師に見咎められ、二人仲良く廊下に立たされるわけだが、一旦ここで回想シーンは中断させてもらう。
現在、戦国時代にタイムスリップした俺の目の前には万を超える大群とたぬき武将が憤怒の表情で立っている。
「やぁやぁ我こそは三河の国の支配者、徳川家当主、徳川家康なるぞ!我が右腕、戦国最強の武者、本多忠勝を打ちとりし賊め!いざ尋常に勝負なり!」
そういって手に持った屏風を天高く掲げ、俺へと勢いよく振り下ろす。
するとそれを合図に万を超す足軽が刀を抜き俺へと一斉に駆け出した。その迫力はすさまじく、足軽たちが地を蹴る度に地響きが鳴り響き、ぐらんぐらんと大地が揺れる。そして彼らの雄たけびは天へと響き、今までこの森のどこに潜んでいたのか、多くの鳥たちが一斉に羽ばたき空へと逃げだしていく。ただの賊ならものの一時間で全滅するであろう、その大軍を俺はどこか他人事のように見ながら冷静に手に持った凶器から空になったマガジンを抜く。
「奴の武器は南蛮渡来の種子島だ!一発撃つごとに装填せねばならず!10分は次の球が撃てないぞ!今のうちに叩き潰すのだ!」
たぬき武将、奴のいう事が正しいならたしかに直ぐにでも叩き潰されるだろう。徳川家康が俺のこれを指さしながら呵呵大笑する。
「確かに、俺のこれが種子島ならば弾込めに10分はかかる。熟練した兵士でもせいぜい8分ってところか」
俺は素早く腰の弾薬ポーチから弾が装填されたマガジンを取り出す。
「だが、あいにくだが、俺の持っているのは種子島なんかじゃない」
俺から足軽兵たちの先頭まで、距離はおおよそ1キロメートル。全力で走っても1分半はかかる。それなら1分は余る計算だ。俺はそう考え、素早く銃にマガジンをあてがい、装填作業を進める。そしてちょうど30秒後。
連続した発砲音が戦場に木霊して、先頭30人が一斉に眉間から血を吹き出し倒れ伏す。
「俺のこれは種子島なんてチャチなものなんかじゃない。ロシアが生んだ最高の殺りく兵器、AK-47だ。装弾数30発。俺ぐらいの熟練兵なら30秒もあれば再装填できるのさ」
そして次の30人までが俺までたどり着くまでにさらに1斉射。そしてまた次の30人も…俺は冷静に淡々と装填と射撃を繰り返す。これなら足が速い分だけ猪の群れの方が厄介だな。俺は鬱蒼と広がるこの深い森の環境を利用して、時には木の上に登り、枝をしならせることにより通常の3倍の距離をジャンプして距離をとったり、または、他の枝に飛び移るなどして進行方向を読ませないようにし、殺到してくる徳川軍を分断しつつ、次々と各個撃破していく。もとより俺は市街地での戦いより山中でのゲリラ戦が得意だ。装填時間を使って簡易的な落とし穴やツタを使った罠を作ることなどお手の物。現代のゲリラ戦法に戦国時代の足軽たちは為す術もなく、これらの罠の原理すら分からず幻術だ、妖術だと驚きながらもどんどんと引っかかっていく。更に俺は野犬の群れ用にAK-47に装着しているオプションのグレネードランチャーも使い、更に効率よく足軽たちを吹き飛ばす。ぽんっとグレネードが飛ぶ軽い音が聞こえた後、耳をつんざくような爆音とともに、100人ほどの足軽が一斉に木っ端微塵に吹き飛ぶ。槍衾を作るために方陣を組んで固まっている敵兵にはこのような爆発武器が非常に有効だ。一心不乱に駈けてくる攻撃部隊は罠で、方陣で防御態勢を取っている部隊はグレネードランチャーで、そしてトドメとばかりにAK-47の銃弾が足軽の眉間を次々と貫いていく。
そして、2時間後、俺の周りには万を超える屍がうず高く積み上がっていた。生き残った足軽は一人もおらず、残っているのは腰を抜かして青ざめているたぬき武将徳川家康のみ。
「お、お前の実力はわかった。これは実はお前の士官試験だったのだ。本多忠勝は本当に使えぬ武将でな。実は新しい武将を雇おうとここらへんのツワモノたちを試験してまわっておったのだ。そうだ、お前ならわしとともに天下を取れる。給金は年に金貨10枚をだそう。どうじゃ、損な話ではないじゃろう。だからその物騒な種子島をしまってくれ」
家康は恐怖のあまりに下半身を汚水で濡らして、顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。こんな、こんな情けない奴に天下と取られ、俺のご先祖様たちは苦しめられたのか。あっけないような情けないような、そしてそれを上回る怒りがふつふつと湧いてくる。
「残念だが、俺はお前だけは絶対に許せないんだ。お前が曾祖父さんの両親にしたことを思い出しながら後悔して死ぬんだな」
「ひえええええ、何を言ってるのか分からんがしかたなかったんじゃ!わしが悪かったから許してくれ」
俺はもう無言で家康の頭を吹き飛ばした。
「自分のしたことすら覚えてないとか、どうしようもないクズだろう」
しかし、これで復讐は成った。
この時代に流れ着いて最初にエンカウントしたのがたまたま復讐相手だったとかご都合主義すぎる気がいないでもないが、もし神という存在が俺をこの時代に送り込んだのだとしたら、この想いを果たすためだったのかもしれない。
「さて、これで終わりってわけじゃないよな。これからいったいどうするか」
このまま俺がいた時代にすんなり戻れるならいいのだが、そういうわけにも行かないだろう。そういえば家康はここが三河国といっていたな。だとすると隣に名古屋県、いや今は尾張国があるんだったか。戦国時代といえば織田信長だな。やつは平民でも能力があれば取り立てるような先進的な武将だったはず。まずは衣食住を確保する必要があるから、織田に士官するのもいいかもな。確か三河は今川の手下。その三河を制圧したって手柄があるからちょうどいい。
そして俺は尾張に向ってゆっくりと歩きだした。