純「……で、今度はうちに来たわけか」
京太郎「こういうのは数が大事なのよ、と八つ当たり気味に言われました」
京太郎「でもよく引き受けてくれましたね、手の内を明かすようなもんなのに」
一「手の内を明かす、なんて今更だよ。牌譜やビデオを見れば分かることだし、それ以前に清澄とは散々打ってるし」
純「そもそも手の内を知られたら戦えなくなる、なんてのは実力がねえ証拠だしな」
智紀「知られたら困ることは教えないから大丈夫……」
一「それに知らない相手でもないしね」
純「ハギヨシに料理とか教わりに何度か来てるからな。まあ何よりも……」
透華「教えを請う先にウチを選んだのは慧眼であると褒めて差し上げますわ!」
智紀「透華がこうだから……」
京太郎「俺としてはありがたいですけど」
純「とりあえずオレが教えるのは流れと気配についてだな、流れってのがピンとこなければ気運の向きでも確率の偏りでも呼び名はなんでも良い」
京太郎「おっす!」
純「流れを感じとるにも気配を読むにも感覚の練磨と経験が必要だ。だが普段からいくつかのことに気をつけておけば必要な経験値は早く集まり精度も上がる」
京太郎「うっす!」
純「……さっきからなんだ、その体育会系みたいなノリは」
京太郎「いえ、純さんってなんというか兄貴って感じで失礼があってはいけないかと」
純「オレは女だ!」
一「そしてボク達だけど、ボクの打ち方は特別教えられるような所もないんだよね」
智紀「デジタルは原村和に教わってるならそれで十分……」
一「ともきーは相手に合わせた打ち方でちょっと違うんじゃない?」
智紀「あれは特定個人向けなだけで今回のこととはまた違うから……」
京太郎「ええと、じゃあ……」
智紀「……お茶、飲む?」
一「息抜きってことで」
京太郎「じゃあ俺入れてきます」
一「お客さんなんだから座っててよ、ボク達もせっかくこんな格好してるんだから」
智紀「今日は学校じゃないからメイド……」
京太郎「じゃあ、お言葉に甘えて。しかし、いつも思ってましたけど二人共似合いますね」
智紀「ありがとう……」
一「ちょっと恥ずかしいんだけどね」
京太郎「一さんは普段着の方こそ恥ずかしがるべきだと思いますけどね……」
智紀「それには同意……でもああいうのって男の子は嬉しいんじゃないの?」
京太郎「いや、小さい子が男湯に来てるのと同じようなもんですし。智紀さんとかならともかく……」
一「本人がどちらもいる前で言うことではないよね」
衣「きたか、清澄の凡夫」
ハギヨシ「よくおいでくださいました」
京太郎「おじゃましてます、衣さん、萩原さん」
衣「凡百の輩でありながら奮励努力を怠らぬその心根は見事、衣も随宜所説の心得でそれに応えよう」
京太郎「ええと……よろしくお願いします?」
※(随宜所説:相手に合わせて教えるよ!)
衣「きょーたろーは急所弱所の塊だ。雲外蒼天なれど並みの道程では叶うまい」
衣「牌を察知する力、相手の打牌の強さの予覚。それが衣の打ち方の真髄であり支配はそれの波紋なのだ」
衣「きょーたろーにはそれを実感してもらう」
京太郎「……つまり?」
衣「ハギヨシ!」
ハギヨシ「準備はこちらに」
京太郎「ここは……離れに、雀卓?」
衣「今から秋月が満ちるまで。その間を打ち続け"ちから"というものを感覚に得てもらう」
衣「さあ、花晨月夕といこうではないか」
※(雲外蒼天:困難の先には良い事あるよ!)
(花晨月夕:秋の夜って楽しいよね!)
透華「そしてトリは私!私がトリですわ!」
京太郎「」
透華「……この須賀京太郎は生きてますの?」
一「衣と数時間打ちっぱなしだったからね」
透華「……衣が楽しめるような打ち手でしたかしら?」
衣「いや、相も変わらず劣弱なる打ち手だった」
智紀「トリはトリでもこっちはヤキトリ……」
衣「しかし、鎧袖一触で終わりかと思えばその度に立ち上がる。それを繰り返していただけだったが不思議と退屈はしなかった。疾風勁草なる精神に興味が湧いたのかもしれない」
純「で、ぶっ続けかよ……よく耐えられたな。案外それが須賀のオカルトなんじゃないか?」
京太郎「……いえ……ただ単に咲たちと打ち慣れてるからだと思います……」
一「あ、生き返った」
※(鎧袖一触:有象無象の下等生物たちが……衣に勝てる訳無いんだからっ!!)
(疾風勁草:雑草魂というものは踏み潰して初めて目にすることができるのだ)
透華「ともかく、私に教えを乞うことのできるこのような晴れの場にて意識をおろそかにするなど言語道断!」
透華「以後は全神経を集中していただきますよう!」
京太郎「はい、申し訳ありませんでしたっ!!」
純「なんかあいつ使用人みたいになってねえか?」
一「ハギヨシさんに料理ついでで執事の作法教わってる時、透華が相手すること多いからじゃないかな」
純「……いつの間にか龍門渕家の執事になってても驚かないな」
一「でも透華、何教えるのさ。やっぱり原村和と同じデジタルについて?」
透華「同じものを教えてどうするの一、それでは目立てませんわ!」
智紀「じゃあやっぱり……」
透華「いかにして目立つか!人生目立ってなんぼ、目立ってなんぼですわー!!」
京太郎「いや、目立つ前にしっかり打てないと駄目なのでは」
透華「何を言っていますの、目立つということは注目されること。注目されるということは一挙一動が見られているということ」
透華「見られているという意識は強い打牌へと繋がり、プレッシャーを友とすることで強靭な精神を手に入れる事ができる」
透華「つまり目立つことがすなわち強くなるための道、王道!」
京太郎「な、なるほど!」
純「あいつ、馬鹿なのか?」
衣「きょーたろーは温和な面はあるが怜悧とは無縁だな」
一「執事モードに入ってるからそれもあるんじゃないかなー」
※(温和怜悧:まさにキャプテンのことだし!)
透華「まずあなたは見た目が地味ですわ。それでは仮に久々の登場でコマの端にいたとしても目立たない!」
京太郎「岩手のあの人に似ているとか変な方向には話題になってましたけどね」
一「金髪と白髪は漫画だとわからないから特にね」
智紀「あの絵だと姉弟とか姉妹と言われても納得……」
純「ある野郎はふざけて宮守の制服でコラったらあまりの違和感の無さに爆笑してたな」
透華「脱線しない!とにかく、あなたのその"描写されるまでそこに存在するのか存在しないのかが不確定"な存在感をどうにかしないことには、目立つこともままならないですわ」
透華「まずは麻雀で目立つ前に見た目から変えてみましょう。ハギヨシ!!」
ハギヨシ「は。こちらに」
透華「さあ、おいでなさい。生まれ変わらせて差し上げますわ!」