西住まほは俺の嫁……らしい。   作:江波界司

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ありのまま起こったことを話すぜ。
更新三日目でお気に入りが百件を超えていた。
何をいってるか(以下略
とにかくすごく驚いています。





開幕の前奏

 ――東条まこと。

 現東条家当主であり、東条まひろの父。

 真面目で厳格な性格も含め、その也は政治家のように経済を回す日本の重要人物と言っても差し支えない。いや、むしろ彼の影響力は社会的に大きく、戦車道の1スポンサーとして語るには役不足である。

 そして、まこと自身も自覚していることに彼は仕事人間であり、さらには政治屋すら負かさんばかりの決断力と思考力を持つ男であった。

 

 

 

 

 

 

 

「親父っ……」

「久しぶりだな」

 

 なんの因果か、東条家の親子はまた顔を合わせることになる。

 端的に言って、まひろは父を良く思っていない。確かに責任感や地位、持てる能力に至るまで彼は素晴らしい男だとは評価している。

 だが、だからと言って身勝手を許せるわけではない。

 

「どうぞ、お座り下さい」

 

 清楚な女性――西住しほの声に従い、二人は彼女の正面に腰を下ろす。

 ここは西住家の屋敷。和室に通されたまひろは前日、西住しほに電話で呼び出された。

 彼女が直接連絡を取ってくるのは、少なからず重大な何かがある時だと知っている。だからこそこうして訪れたのだが――。

 要件は凡そ最悪な内容だろう。何せ、実の父が自分と一緒にここにいるのだから。

 

 形式的な挨拶の後、まこととしほは直ぐに本題に入る。

 

「婚約の件、式の日取りを決めておこうと思います」

「希望は確か、まほさんが成人してからでしたね」

「はい。ですが大学生の間は戦車道に時間を使って欲しいと考えています。そこで――」

「大学卒業と同時に、でしょうか?」

「それが良いかと」

 

 二人の会話を耳だけで捉えながら、まひろの握った拳はワナワナと震えている。

 気に食わない。二人のことが、どうしようもなく認められない。

 許婚を決めたこともそうだが、今ここに、まほがいないことが何より許せない。

 今日は戦車道の大会、その抽選が行われる日だ。まほはここに居合わせられないのだ。日程など、いくらでもずらせただろうに。

 確かに彼女なら、それが西住流ためならと割り切れだろう。

 だが――そもそも何故そんな割り切りが必要になるのか。

 しかしまひろが口を開くことはない。今の自分では、何も出来ないから。

 彼らに、彼女らに感情論は通用しない。そして今明確に縁談を破談させる方法もない。まひろやまほ個人が何かしらの問題を起こして終わる話なら、まひろは迷うことなく既に実行している。

 まただ。また、足りない。

 自分の無力さが嘆かわしい。

 

「……話が終わったんなら、俺は帰るぞ」

 

 区切りの着いたところで返事も待たずに腰を上げる。

 しほも、まことも止めはしない。気持ちを察したのだろうか。だとしたらこんな話はなかったことにして欲しかった。

 ……ふざけるな。

 もはや言葉にすることすら煩わしく、まひろは無言で空を見上げる。背後に構える屋敷が、やけに暗く感じた。

 だが、何よりも、彼は彼自身を一番に恨んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 事前情報より、戦車道大会の抽選が行われる場へと赴いたまひろ。

 すんなりと入れるものだと思っていたが、想像以上の人混みに最短ルートを外れてしまった。

 仕方がないと妥協し回り道しながら目的地へと進む。裏道を通るのも躊躇はない。

 しかし、裏道というだけ道幅はあまり大きくなく、彼はすれ違う女性の肩とぶつかった。

 

「――っと、すまない」

「いえ、こちらこそ」

 

 やけに礼儀正しいなと。振り返り確認した彼女は、その声と言葉遣いが似合うお淑やかな顔をしていた。

 金髪を編み込み、青を基調とした服に身を包むさながら淑女。年は高校生くらいだろう。戦車道の選手だろうか。

 

「急いでいたもんでな」

「そうですか。しかし、そちらにはアリーナしかありませんが」

「え、あ〜マジか」

 

 彼女の物言いに、まひろは間に合わなかったことを理解する。

 もとより時間的に余裕がないことは分かっていたが、できればみほにも会っておきたかった。

 金髪の彼女が言うのは、つまり抽選会は既に終わっているということだろう。

 

「遅かったってことか」

「あなた、戦車道に興味が?」

「ん?まぁ知り合いがいてな」

「ダージリン様」

「あら、遅かったわね、ペコ」

 

 ……ダージリン?お茶?

 恐らくダージリンと呼ばれた彼女の知り合いだろう。同じく青い服――ここまで来れば制服だと分かる――を来た少女。小柄だが、仕草や声にはダージリンのように品がある。

 

「何故こんな所に?」

「アッサムから、こちらの方が近道と聞いていたの。それはそれとして」

「え?」

 

 ペコに軽く返したダージリンは再びまひろに目を向ける。何か用でしょうか?

 

「急ぎのところ、時間を取ってしまって」

「いや、いいって。むしろ色々教えて貰ったんだし、謝罪も謝礼もこっちがするべきだ」

「そう。寛容な方なのね」

「さてどうかな。ついでに言うと、急ぎの用もなくなってるし」

 

 それ以上は互いに話すこともなく、まひろは別れを告げてダージリンとペコの元を去った。

 

「ダージリン様。さっきのお方は一体?」

「さぁ?でも、面白い殿方だと思うわ」

「そうですね」

 

 戦車道は女子の武道。その固定観念から男子はあまり興味を示さない。無論美しい女性に惹かれることはあるようだが、戦車道に対してという意味で興味を持つ男子は少数派だろう。

 見立てでは大学生くらいか。ならば自分より年上なのだろうが、不思議と同窓の中の者と話すように気軽だった。

 ……しまった、と。ダージリンは名を聞くことを忘れていたことに、今更になって気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 ダージリン達と別れてから少し歩いたところで、まひろの携帯に二通のメールが届く。

 一方はまほ――内容は抽選の結果だった。

 まぁ、まほの方は心配ないだろうと。まひろはもう一通の方を開く。

 送り主はみほ。内容はまほと変わらず抽選結果の報告だったが、それにある二行の文が追記されている。

 

『まひろくんも会場に来てるかな?

 もしいるなら、電話下さい。』

 

 普通にかけて来ればいいものをわざわざメールで確認と取る辺り、みほらしいなと思う。

 すぐに携帯を操作して、まひろはみほをコールする。

 

「……もしもし」

「おう、どうした?」

「あ、えっと。今から来れる、かな?」

「予定はないぞ」

 

 いつ頃抽選会が終わったのかは分からないが、どうやらみほは近くにいるらしい。

 みほはここからそう遠くないカフェの場所を示す。そこで戦車道の仲間と一緒にいるとのこと。

 

「何か用があったのか?」

「その……みんなが、会ってみたいって……」

 

 みんな、というのがみほの戦車道のチームメイトだとして、何故自分が呼ばれるのか。

 まぁ行けば分かるか、と。まひろは了解と返して通話を切る。

 それからまほのメールに返信した後、みほの言っていたカフェを目指した。

 

 

 

 

 しばらく歩いて目的のカフェに到着する。中はそれなりに賑わっていて、だがそれ以上に色々と個性的だった。

 具体的には、なんかこう、戦車道だった。

 入口から店内を見渡し、店員が話しかけて来るより先にみほの顔を見つける。そのまま、近くの店員に待ち合わせですと声をかけて、まひろは店の一角に歩いていった。

 

「あ……」

「よう」

 

 久しぶりに顔を合わせた幼馴染に、みほとまひろは短い挨拶を交わした。

 ついたテーブルにはみほを含めて五人の少女達が座っており、人数的に同じ隊なのだろうとまひろは察する。

 立ちながらカフェオレを注文していると、同時進行で彼女らの中で話し合いが行われている。

 まひろの知らぬところで何かが決定し、六人が座れる座席にまひろが混ざった。

 

「んで、どうすればいい?」

「え?」

 

 どういう流れかは知らないが隣になったみほに聞くと、何故か困惑する。困惑したいのはまひろの方だろうが。

 まぁしかし、みほがそういったことが苦手なのは知っている。まひろは寝ぐせ散らすように軽く頭を掻いてから、すぐに正面を向く。

 

「東条まひろだ。えっと、みほから話は聞いてるのか?」

「はい。みほさんの幼馴染なんですよね?」

「まぁそんなところだ」

 

 まひろの正面にいる黒髪ロングの少女が答え、その後それぞれが名乗りついでに自己紹介を始めた。

 席ちなみに順は窓側から秋山、武部、五十鈴の順で、こちら側は三人並んだ中央にみほ、その奥に冷泉という図だ。話し合いの結果のようだが、意図が知りたい。

 お互いの自己紹介が終わると、それはそれは根掘り葉掘り色々と聞かれた。

 

「この前、みほさんがまひろさんのことをお兄さんと呼んでいましたよね?」

「歳上ってことで呼ばれたな。恥ずかしいからやめてくれって頼んだけど」

「東条というのは、もしかしてあの東条なのですか?」

「どの東条かは知らないが、偽名じゃないぞ?」

「あの!どういった子がタイプですか!?」

「あ〜、特にないな。まぁ、そうだな。笑顔が素敵ならいいなとは思うかな」

 

 にしても、めっちゃ踏み込んで来るな。

 助けを求めようにもみほは隣で頭を下げている。恥ずかしいんですかね?俺の方が数段恥ずかしいですよ?

 冷泉は興味がないのか、ひたすら目の前のケーキを食べている。なんとも個性的なメンバーだ。

 まぁしかし、みほがこうして戦車道を続けているのも、前より笑えているのも彼女らのお陰だろう。ならば素直に礼を言いたい。

 もっとも、言ったら言ったで何かしら面倒なことになりそうだとは思うが。

 やはり女子高生と女子大生の破壊力は違うなと、まひろは一段落してカフェオレで喉を潤す。

 特に勢いが違う。この前のバミューダアタックが軽く見える。

 

「……副隊長?」

 

 そんなことを思っていた矢先、通りすがりの黒森峰の学生が足を止めた。

 

 




ちょっと短めです。
区切りがいいところまで書こうとしたらダージリンさんに持っていかれた……。
次回も早めに出す予定です。
それと誤字報告と感想ありがとうございます。
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