本編と時間軸関係ないです。なので短編扱いでいいかもしれない。
メリークリスマス。
「これよりっ!第一回クリスマス争奪模擬戦を開催します!!」
「急にどうした指揮官。」
「優勝者には私と一緒にという条件が付くものの国内であれば一日自由権を進呈する。」
「参加者は銃を持てぇー!!今すぐに試合を始めるぞおおおおおおおお!!」
基地内の食堂。そこでチマチマと雑談なり何かしらの作業をしていた人形たちがいるのを確認した私は宣言する。隣でスコーピオンと一緒に酒を飲んでいたM16がツッコミを入れた直後に参戦の声を上げたけど顔が一瞬で狩人のそれに変化した。ついでに食堂中の人形たちもそれに倣うようにして顔つきが変わる。まって、そこまでお外で自由に動き回りたかったの?
「先に言うと、ここにいる人形達だけってなると不公平だから誰か放送室に行って知らせt…」
『指揮官主催のクリスマス争奪模擬戦を演習場にて行います。優勝者には指揮官と一緒に国内1日自由権が進呈されます。参加は自由、参加者は演習場に銃をもって待機してください。』
「早いな伝令!?」
「ルールは簡単、銃のみで1対1の勝負。トーナメント形式で組み合わせは乱数で決める。使用する弾はペイント弾で被弾したら負け、一回5分で決着をつけること。無論ダミーとスキルの使用も禁止、ただし肉弾戦はありとする。Mod持ちはそれを解除して通常状態で参加すること。文句はないな?」
『文句なぁし!!』
「審判は参加しない人形と指揮官だ。不正した場合は即座に失格とともに当直2週間とする。」
「待って待って待って。決めるの早くない?」
「参加者は演習場に移動だぁー!」
『おぉーーー!』
「聞こえてない…M16、お前はいつからそんな風になったんだよ…。」
言い出しっぺが言うのはあれだけど…マジで決まるまで早すぎ。私は状況がつかめなくなったよ…。後ろから肩にポンっと手を置かれた。振り返ってみればいたのはAK-12、そのまま「ああなったら手が付けられないわ。諦めましょう。」って言われた。はい、おとなしく審判します。
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争奪模擬戦終盤戦。ここまでに至るまでかかった時間はわずか3時間。おっかしいな…参加してる人形は優に100体を超えていたはずなんだけどな…。HG達は無理だと判断したためか最初から参加しない子が多かったね。コルトSAAは参加してたし今も残ってる。あやつ…早撃ちのスキルがえげつない。抜く瞬間と撃つ瞬間が全く見えなかった。
残っているのは6人。コルトSAA・M4A1・HK416・スオミ・KSG・トンプソンである。張り切ってたM16は416と撃ちあって僅差で負け。めちゃめちゃ悔しそうにしてたM16とそれを見て思いっきりどや顔決めてた416が見てて面白かった。あとはスオミは未だに銃を撃っておらず全部肉弾戦で撃破とかマジで頭おかしいとしか言えない戦い方してる。なんでスキル使ってないのに弾全部避けるんだお前は…何より無言でめっちゃ笑顔で向かってくるとかどんなホラーだよ。
審判として一緒に見に来てるAK-12は流石に苦笑い。そうだよね、本来の動きとはかけ離れてるし…何よりみんな揃って個性的すぎるもんね。大いに私の影響を受けていると思われる。拝啓、私にこれほどまでに素晴らしい力をくれたであろう神様。おかげで私はいろいろ巻き込まれて苦労しているものの充実した毎日を送っております。前世持ちである私のかつての記憶がどれだけ平和すぎたのかを実感するくらいには。
『ふっふーん!私の早撃ちに対応できるかなー?』
『…撃たせなければいい。ルールと常識は破るもの。』
「手加減してねスオミ!?みんなメインフレームだから修復発生させたら私がつかれるからね!?」
…やっぱりスオミはこの中で一番飛びすぎてると思うんだ。
結果は時間切れによる引き分け。マジかよ。でも今回は引き分けの場合両者負けの判定になるので2人とも「オアァー!!」って感じだった。M4と416の2人はM4の勝ちで「M16姉さんの仇は取りました…!」ってうれしそうにしてた。反対に416は「くっ…私はM4には勝てないということなの…!」って感じだった。安心してくれ、M4にはできないことを立派にこなしているぞ416よ。KSGとトンプソンの2人は最初から殴り合いになってた。なぜだ…お前らは銃を使う人形だろう…!なぜに「殴り合い宇宙」みたいな展開になってしかも引き分けになるんだ…!試合前に何か喋っていたけど、何を言ってたんだろうなぁ…。
「『こいよKSG、ご自慢のショットガンなんて捨ててかかってこい!!』、『…そこまで言うのなら受けて立とう。覚悟しろ、トミーガン!』っていってるわよ。」
「コマ●ドー!?なんでそうなるんだよ!!」
「直前まで見てたらしいわよ。シアタールームに置いてあったのを見てたみたい。他にも何人かいたけど…ああほらあそこ。『やろーをぶっ殺してやれー!』とか言ってるけどそれが元ネタなのかしら?」
「誰だ!!誰がコ●ンドー置いたんだ!!!あとで私も見るぞ!」
●マンドーなんてツッコミどころしかなかった。そして決勝戦をやる以前にまさかの引き分けで勝者が決まってしまったのは不完全燃焼すぎるぞ!!
優勝したM4はちょっと驚いた顔をしたあと、とびっきりの笑顔でこちらにピースサインを向けた。
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「___それで、本当にここに来るだけでよかったの?」
「ええ。
「そうだよー。あとはまあ、もうちょっと北に行けばスキーとかスノーボードとかで滑って遊ぶこともできるよ。」
あのあと、M4が行きたいと言って来たのは関東地区で最も雪が見やすい地域。街中ではなく、ちょっとした山であり、夏場には天体観測などで多くの人が来る場所だというのだが…季節柄、今は人はおらずM4と私の2人で貸し切り状態だ。
ちらちらと空から降ってきている雪は、どこか懐かしさを感じるものだった。この世界に来てからは雪なんて見ていなかったから、ちょっと新鮮だったかもしれない。前世じゃあ東北に住んでいたから嫌というほど見てたし、それで悲鳴を上げたり辟易してた位なのに、いざ離れるとやはり恋しくなってしまうようだ。
周りには街灯もなく、照らしているのは月明かりのみ。皆との訓練のおかげで夜目は効くけど…うん、今なら眼帯を外しても大丈夫だろう。
「あ。指揮官。眼帯を外してもいいのですか?」
「灯りは月だけだからそこまで強くないしね。今くらいは外して見たいのさ。…うん、やっぱり片目より両目のほうがいいな。」
左目につけていた眼帯を外し、ゆっくりと目を開いていく。かつての怪我のせいで光にめっぽう弱くほとんど見えない左目だが、やはり両目で景色を見たほうがきれいに見える。空を見上げれば、雲一つなく月と星が輝いているのがしっかりと見える。そして降ってくる雪はそんな月明かりをほんのりと反射して輝いている。そのままチラリとM4のほうを見れば、どこかで買ったであろうカメラで写真を撮っていた。その顔はとても楽しそうであり、決してゲームの中では見せることがなかった表情であろう。
「(まったく…クリスマスプレゼントってことで誰か一人を実験的に自由にしようと思ったのに、これじゃあ私へのプレゼントみたいじゃないか。)」
「…うん、いい写真が取れました!指揮官、そろそろ体が冷えてしまうので帰りましょうか。」
「ん、いいよ。どっか寄り道する?」
「それじゃあ…ケーキを買ってから春庭に寄ってもいいですか?」
「いいよー。ちょっと遠回りだけどいいケーキ屋があるからそこにね。」
「はいっ!」
眼帯を再び装着し、山を去る。くるりと身を翻し、帰り道のほうを向いたその時だった。シャンシャンと鈴の音が一瞬、聞こえた気がした。もう一度、今までいたところを振り返ってみてみたが、当然そこには何もない。
「どうしたのですか、指揮官。」
「…いや、なんでもないよ。さて、行こうか。」
まあ、サンタなんていないだろうけど…いや、この世界ならいてもおかしくないか。
メリークリスマス。
一〇〇式ちゃんは問答無用で別の日に指揮官と一緒に自由行動する日を用意されていたので今回は参加せず。というか参加すれば無双するから誰も勝てない。
乱数で決めたのはマジの話。この組み合わせになったのは恐ろしいよバーニィ。