人によっては胸糞悪いと感じるし、場合によっては方向性が合わないと思う人がいるかもね…
「ああくそっ!提督に頼まれたから出てきたけど…これじゃあ怒られっちまう!」
『…そのまま進むと既に始まってる戦闘に巻き込まれるわよ。3時方向に迂回して。』
「了解…歪みが多すぎて処理しても空くじばっかりか…っよ!!」
悪態をつきながら何もない空間を殴りつける江風。だが、何もないと思われるその場所を殴れば、何かが割れるような音と同時にわずかな違和感が晴れる。しかしそこには目当ての人物たちの姿はなく…またしても、ただ置かれただけのダミー空間だとすぐにわかる。さらに江風はこの作業を既に100を超える数をこなしており、圧倒的に人より体力的に有利であっても若干呼吸が荒くなってきていた。
そのほかに、同時に襲撃してきた敵が複数おり、さらには場所もそれなりにばらけている為にそこかしこから戦闘音が聞こえてきていた。先ほど、皆が肝試しをしていた場所からそこそこ離れた位置にある岩場から盛大な爆発音のようなものが聞こえてきていたが…今は聞こえなくなってきているようだ。おそらく、誰かが敵と戦って決着がついたのだろう。そのおかげか今のところ、江風達、艦娘と戦術人形たちに敵が当たっていないのはある意味幸運なのかもしれない。
「またはずれ…畜生、この体たらくじゃあ川内さんに叱られっちまうじゃないか…。」
『江風、私も出る。生憎私は殴って空間干渉などできない為に、
「ありがたい。んじゃ、江風ももう少し本気になって
顔に浮いた汗を乱雑にぬぐいながら、江風は再び走って騒がしい森林にある空間の歪みを探しに行った。
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「あなた達にできるのは、この人が帰ってきたときに安心していられる場所を守る事。彼女の魂は彼女自身があるべきところに帰ろうという心があれば、自ずと戻ります。」
「だから、あなたはいったい何者なんですか!」
現れた時と変わらない態度で話を続ける謎の戦術人形。その人形に向かって怒りを向ける一〇〇式の顔には焦りが浮かび、おおよそ冷静ではないと一瞬でわかる状態だった。
「落ち着け副官!他でもないアンタが冷静じゃなくなれば総倒れになるぞ!」
「…トンプソンの言う通りよ。それにしても、まさかあなたまで出てきているとはね____AUG。」
「ええ。実を言えば、
一歩前に出て一〇〇式のほうを見る人形、AUG。しかし、そこには先ほどまで感じることのなかった圧力があり、最初の時のように怒りの言葉を向けることはできそうになかった。
「この際、はっきりと告げましょう。今回の敵に対して、我々戦術人形は無力であり______どうすることもできない。今更出たところで壊された人形の残骸しか出てこないでしょう。」
「…っ!」
「…ですが、それはあくまで
凛として言い放たれたAUGの言葉。それはある意味、分かっていたことであり…同時に、認めたくなかった己の無力さである。
不安な心を抑えて、落ち着いた一〇〇式は前を向く。今できる、自分がやるべきことをするために。
「_____総員、戦闘準備。今この領域にいる敵を抑えつつ、増援が来るまで時間稼ぎをします。ですが、あくまで我々は指揮官の個性であること…故に、許されているのは正当防衛のみ。決して攻め込まないこと。また、要救助者がいるようであればそちらの援護を。」
「了解だ!ようやくそれらしいことができそうだ。」
「ハイモデルタイプの人形は艦娘の指示に従って現場待機。指揮官とAR-15を見つけ次第護衛しつつ撤退を。」
「ああ。AR小隊4名及びAK-12、準備完了しているぞ。」
「覚悟は決まったようですね。なら、私は私の役目を果たすとしましょう。」
「作戦、開始!絶対に指揮官達を取り戻します!!」
こんなところで立ち止まるわけにはいかない。その決意のもとに、
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「アッハハハハハ!!!結局守るとか言っテ、その程度シか動けないのかよ!!」
「くっそ…!」
「諦メて彼女を僕に寄こセばよかったのになァ!!」
背中に背負った指揮官の意識は戻ることなく、目の前の男に捕まらないように逃げ回るので精一杯。ダミーはあの男に掴まれた瞬間にその部位が綺麗に切り落とされ、最後は頭を落とされて全部オフライン。そして今、切り立った崖の端にまで追い詰められ、逃げるためのルート上にはあの男がいる。
すでにこの空間に引きずり込まれて45分ほど経過しただろうか。目の前にいる男に有効打の一つも与えられず、AR-15はただただ追い回されるのみであった。
だが、先ほどからところどころの木に、最初に感じた違和感を感じなくなっており、もしかしたら時間で何とかなっているものかという推測もできている。できるなら、ダミーを用いてもう少し時間を稼ぎたいところであったが、もはやそれは叶わない。しかし自分が死ねば指揮官も死ぬ。本当に、八方塞がりな状況に変わりはなかった。
「後ろは崖…目の前には僕がイる…もう逃げ場はないん___ゲッホゲホ___ガハッ。」
「っ!」
突然、男がその場にうずくまるようにして咳き込んだ隙を見逃さず、一気に駆け抜ける。男は未だにその場から動かず…口元に手をやり、押さえている。その指の隙間からは数滴だが、血が流れていた。
「ああ…もう時間がないのか…ならなおさら、遊んでいられないよなぁ!」
「お願い…これ以上はもう持たない…!」
神頼みなどしても意味はない。そう分かっていても願ってしまうのは、指揮官と長い間居たことで影響を受けたからなのか。
だが、神という不確定な存在はいなくとも_____仲間は、頼りになる存在はいる。
『______見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
聞き覚えのない、しかし味方だとわかるその声が響いたと思ったその瞬間、違和感だらけの虚像の世界が壊れ、靡く緋色の髪が男を殴り飛ばした。
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敵が撤退してから15分後。救急や消防が到着した。
生徒41名のうち、敵のガスによって意識不明時の重体15名、精神攻撃による昏睡1名。重・軽症者9名。無傷で済んだのは15名だった。
そして_____行方不明1名。
プロヒーローは6名のうち1名が頭を強く打たれ重体、1名が大量の血痕を残し行方不明となっていた。
一方、敵側は3名の現行犯逮捕。その3名を残し他の敵は跡形もなく姿を消した。
その他、現場から20㎞離れた地点で
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「日の光を見る人形あれば、影にてすべてを飲み込む人形もまた、必要でしょう。」
つぶやく言葉は誰にも聞こえず、聞く者もいない。あるのは、たった今自分が
あのあと、AR-15と指揮官を見つけ出し、元凶たるこの男をその場で殺そうとした一〇〇式を抑え、警察に送るといった後_____AUGはひとりでに偽装し、この男を処刑した。無論、これは私情が大半であり決して許されざる行為ではないことを自覚している。だが、汚れるのは前の世界で既に人を撃った自分だけでいい、という考えであるAUGは、指揮官の指揮下に加わらずに動いている。
「『偽り』。私自身の在り方とお前の力の使い方を示す楔として、この花を手向けとしよう。」
そうして、一輪の黄色いユリが遺体の上に置かれる。そして、AUGは誰に見られることもなく姿を再び消した。
殴り飛ばされて簀巻きからの引きずりコース。撃たれないだけまし。なお最終的に「お前は最後に殺すといったな?あれは嘘だ」の状態になる模様。
五〇〇式ちゃんが6人出来ました。(なお残り資材と人形製造契約)
このあとKSGも作らないといけないんですけどぉ!?