一介の人形遣いに何を求めているんですか…   作:影元冬華

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これ、人によっては気づくぞ…同じサイト内に作品があるから分かる人いるはず。








それはそうと低体温症も夜戦ってマジですか????SGとMGの育成しろって言われたんですけど????


迷い込むは狭間の可能性。交わるはまだ見ぬ未来

 チリーン…チリーン…、と神社で聞くような鈴の音が耳元で聞こえる。どこかはっきりとしない意識の中、その音に釣られるようにして目が覚めていく。焦点が定まらず、ゆらゆらとした視界が安定していき目の前に映っているのは…黒地に白い桜の紋様の描かれた振袖と、灰色の袴を身に纏い___いわゆる、大正と呼ばれていた頃の女学生の衣装と酷似している服を着ている…一〇〇式と瓜二つの女性だった。だが、違うとすればその瞳は桜を思わせる赤みを帯びたものではなく、冬の晴天を思わせる蒼い瞳であり、頭についている飾りが桜の簪になっていることだろうか。

 そしてもう一つ、今見えているのはこの女性の顔。そこから考えられるのは…

 

 

 

 

「ああ、ようやっと起きなはったんやなぁ。おはようさん。」

「…!?」

 

 

 

 

 

 どう考えても、この女性に膝枕をされていたということだ。あまりの出来事に声も出せなかったし動くこともできなかったけど…一〇〇式のようにしか見えないこの容姿の女性は笑って私のことを見ている。

 ガバッと身を起こして周りを見渡せば…そこは先ほどまでいた森の中ではなく、石塀で囲まれ下は石畳、目の前には時間が経ってはいるがボロボロにはなっていない神社の神殿。そして後ろには赤い鳥居が一列にずっと続いているように見える。だが、それ以外のところは深い霧に覆われており、何も見えない状態になっているようだった。私とこの女性はどうも、この神社の境内のど真ん中に居座っているようで…もし管理する人がいればこっぴどく怒られているだろう。

 

 

 

 

「…えっと、ごめんなさい?」

「ええよええよ。うちもここに迷い込んだだけの放浪人や。それに…ももちゃんと縁の深い人物に合うのは久しぶりやからねぇ。」

 

 

 

 

 とても陽気に笑うこの女性は一〇〇式のことを知っている?でも大陸版にもそんなキャラはいなかったはずだし…見逃してたらしょうがないけど。それにしても…本当にももちゃんそっくりな人だなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というか、そんなこと思ってる場合じゃない!ここどこだ!?コルト姉は!他のみんなの気配が一切ないしどうなっているんだ!?

 

 

 

 

 

 

「落ちつきぃ。ここはあんさんの力でできた隙間みたいな空間らしくてなァ…でも出ようにも出られず、かといってここに居続ければ現実に戻ることもなくどっかの狭間に消えてまうんじゃないか、というのがうちの考えなんよ。」

「ちょっとまって?もしかして、ここがどこか分かるんですか…?」

「だーかーら、ここはあんさん自身の中ってことなんよ!恐らく、(現実)で不味いことなりようて反射で作ったんちゃうか?うちはある意味それに巻き込まれただけやけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 ますます分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じゃあ、もしかしてここは私の中にある基地とか門とかと同じ系列の場所なのかな?」

「うちは分からへんて。ただ呼ばれたような気がして歩いとったら、あんさんがここで眠ってはったんや。そんで悪戯するつもりで膝枕したら起きてまってなぁ…。」

 

 

 

 

 

 この少し変わった話し方…関西系の方言に近いけどちょっと違う気もする言葉の女性、名前を「セツ」というらしい。本人は本当の名前はあるけど話したくない、というので偽名なのだが今は問題ないので気にしていない。

 でもこの人もどうやら人間ではなく人形、それも一〇〇式と関わり深い人形だったらしい。道理で見た目がそっくりなわけだ…。でも名前からして戦術人形ではないらしいけど。

 

 かいつまんだ憶測を聞くと、この神社は私が現実で不味い攻撃を受けて反射的に作った精神世界、ということであり、同時に私の気の持ち方によって出口ができるのではないか?ということだった。今は何ともないけど、正直なところ現実世界で体に異常があればすぐに崩壊して死ぬ可能性もあるらしい。

 

 最後に覚えている光景だと、AR-15に背負われて合宿の施設に帰る途中だった、ということしか覚えていない。どこに危険があったんだ。私の個性になってから戦術人形には傘ウイルスなんて仕込む奴いないだろうし…あったらそもそも私が何とかできるから意味ないし。その線からまずAR-15にやられた可能性は消えた。あとは外部からの攻撃だけど…洗脳系に対しては効果がないって体育祭でわかったし、UMP45のおかげでそれが成り立っているのも実証済み。

 じゃあ洗脳系…あるいは精神系の攻撃ではないもの?

 

 

 

 

 

「外じゃなくて、内側からやられてまえば…その壁は意味ないんとちゃうか?」

「内側…?」

「せや。たとえば、最近誰かから贈り物が来たり、あるいは殴られた、蹴られたってことは?」

「贈り物はないけど殴る蹴るはここ2日いっぱいあったよ。でも全員物理系の個性だからね…精神攻撃とかできる個性はないはず。」

 

「じゃあ____昔、そういったことはあったりせえへんかった?」

 

 

 

 

 

 

 昔…そうだ、今から2年前に変な奴に襲われて…!

 

 

 

 

 

「…やられた。この顔の傷と左肩。合宿に来てから特に左肩はいきなり痛くなった!」

「原因、というよりトリガーはそれやな。痛くなったのは左肩っちゅうことは、あとそこから入り込むことはできへんやろなぁ。でも、残るはその目ってことやな。」

「これをどうにかしないと戻ってもまたやられる…それどころか、今も現実ではあいつに襲われてるってことか!」

「せやろなぁ。______だからこそ、うちがここに来たかもしれへんな。」

 

 

 

 

 

 

 チリーン。また、最初に聞こえた鈴の音が後ろ____神社の本殿から響く。

 私の言葉に、何かに気づいたらしい。目の前にいるセツは先ほどまでの明るい笑顔ではなく、どこか覚悟を決めたような顔をしていた。

 

 

 

 

 

「____ここは可能性が集まり、そして数多の可能性を紡ぐための収束点。神社の姿を取ったのはあんさんのイメージしやすいものになるためだったかもしれへんな。」

「セツ?」

「今思えば、そもそもうちがここに来ることも…もう一度ももちゃんの力になることもなく、消えた可能性の一つとして漂うはずやったんろうな…。」

 

 

 

 

 

 悲し気に、しかしどこか晴れた顔をしたセツ。その澄んだ蒼い瞳で私をじっと見つめ、懐かしむように頭をなでてくる。

 

 

 

 

 

 

「もしかすれば、これは過ぎたモノかもしれへん。けれども、ももちゃんと縁が深いあんさんは今、死ぬかもしれへん…。だったら、少しでも…ももちゃんの力に、ももちゃんと一緒に居るあんさんの力になってあげたいんよ。」

「えっと…セツ、なにをするつもりなの?」

「そうやなぁ…ここから出るための唯一の手段をやろうとしてるんよ。」

 

 

 

 

 スッと立ち上がり、どこから取り出したか分からない扇を広げたと思ったら視界をふさがれた。それを避けてセツを見ようと思ったけど、他でもないセツに「動かんといて」と言われてしまい、そのままじっとしている。

 チリーン、チリーン…と鈴が連続で鳴り始め、途切れなくなってきた。

 

 

 

 

「よう聞き。きっと目が覚めればうちのことは忘れるはずや。けれども、あげるだけで教えないのは癪やから使い方だけは覚えさせておくよ…。絶対に、絶対にももちゃんと一緒に…あんさんの個性(人形達)と一緒に最後まで生き続けといてや。」

「セ…っ!」

「うちは違う世界でももちゃんと出会って…そして消えた。けれども、もう一度会えるのなら、力になれるのなら惜しむつもりはもう無いんよ。」

 

 

 

 

 

 セツを呼ぼうとして声を出そうとしたら、抱きしめられた。だが、次第にその体が消え始めているようで…後ろにあるはずの鳥居が見えてきている。

 ほんのわずかな時間しか一緒に居なかったはずなのに、どうしてここまで悲しいと感じるのだろうか。分からない、けれども…いやだと思う自分がいる。

 

 

 

 

『いい?うちが背中を押したげる。したら、あとは決して後ろを向かずに鳥居を潜ってまっすぐ行くんや。絶対に、絶対に後ろを向いちゃいかんで…』

「セツ…!」

 

『ふふっ、なんでやろなぁ…君に直接会ったのはこれが初めてなのに、なぜかももちゃんと一緒に居るように感じてなぁ…。でももう、時間なんよ。さ、胸張って前を向いて________桜と一緒に舞って!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とんっ、と背中を押される感覚。それはどこか、懐かしいようで、悲しくて。けれども、その意思に沿うようにして_____私は鳥居でできた道をまっすぐに駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

『うちの名前はなぁーー!■■■…いや、□□って言うんやでぇーーー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の最後で、どこから吹いたか分からない風にかき消されて聞こえなかった本当の名前だったけど…この会話すらも忘れると思うと、悔しくて、けれども笑って私も叫んだ。

 その声が、届いたかどうかは分からないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________

 

 

 

「…んぅ。」

「っ!指揮官!」

「ちょっ、ももちゃ…うぐっ。」

 

 

 

 

 起きて呻けば飛び込んできた一〇〇式の姿が映る。そのままベッドとももちゃんに挟まれて潰された蛙みたいな声が出たけど、致し方ないと思う。寝ぼけたままの頭で何が起きたか…というかなんでこうなったのかを思い出そうとしたけど…すぐには思い浮かばなかった。合宿中で森の中にいたはずなんだけどなー。

 部屋を見ればももちゃんのほかにいたのはAR-15、スプリングフィールド、HK416にスコーピオン、そのほかにも6人くらいと個室じゃなければ絶対に迷惑になるだろう人数だった。そして外を見れば真っ暗。カーテンを閉めているわけではないのでたぶん夜だということだろう。…もしかして何日か寝込んでたのか?

 

 

 

 

「よう。もう肩の痛みとかは無くなっていると思うが調子はどうだ?」

「お、提督。おはよう?それともこんばんわ?まあいいや、痛くない。…どのくらい寝てた?」

「ざっと2日半。そんでもってどこまで覚えてる?」

「うーん…3日目の途中まで。あとはあやふやで全然。あとなんで寝込む羽目になってたの?」

「あー、結果だけ言えば変態ストーカーにまた襲われたとしか言えねえ。あとそのほかに、あの合宿自体に敵の襲撃があった。」

 

 

 

 

 たぶん見回りの検診に来た提督…もとい和田抓先生は簡単にだけど何があったか教えてくれた。合宿の3日目に敵の襲撃があったこと、それとは別口で私が単体で狙われて死にかけてたこと、そして_____生徒とプロヒーローが一人ずつ誘拐されて行方不明になったこと。肩が急に痛み出したのはその攻撃の一つであり…精神を別の空間に持って行くためのきっかけだったらしい。まじか…また死にかけて皆に心配かけてたのかよぉ!

 

 

 

 

 

 

「ま、間一髪だったが何とか救出してそのまま病院送り。幸い、外傷はなかったからお前さんが起きるのを待ってたってとこだな。大変だったんだぞ?お前の人形達、思いの外にアグレッシブでな…。」

「_____本当にそうよ。艦娘の私達なんて、かつての艦の馬力がそのまま出るから本気で押さえるわけにはいかないし、かといって見てるだけだとそこらへん火の海にしかねないし。Admiralがどれだけ苦労した事やら…。」

「本当にすみませんでした。」

「おう、あとでもう少し人形たちを抑える指導をしてくれ。ともかく、手遅れになる前に戻ってこれたようでよかった。それと、お前さんの親は家に帰したが…かなり心配してたぞ。」

 

 

 

 

 

 あー、まあそうだよね。これでお世話になるの2回目だし、何より今回は外傷ないくせに意識が戻らなかったからなぁ…。だが私は悪くない!悪いのは突っかかってきたストーカー野郎だ!

 

 そんな風にガウガウと怒ってたら新たに部屋に入ってきた人が4人…UMPの2人とG11、そしてMG4だった。その手には何やら紙の資料が握られており、4人の顔はどこかやり遂げたような顔をしている。その様子を見た416がこちらを向き、ある事を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官、これまでに突っかかってきた裏社会の奴らと今回のストーカー野郎…後ろに大きなバックがあることを突き止めました。」

「…待て、今までのやつら全員に共通しているのか?」

「ええ、全員です。ストーカー野郎に関しては2年前は関係なかったものの今回の合宿時には付いていたようでして。_____そして今、その黒幕に対しての大型捕獲作戦が実行されるとのことです。」

 

 

 

 

 一瞬で部屋の中が緊張に包まれる。特に一〇〇式は殺気も混ざっており…怒り心頭といったところか。和田抓先生は何かを察して、顕現していたアーク・ロイヤルと一緒に部屋を出て行ってくれた。

 

 

 MG4が持っていた資料をこちらに渡してくる。そこに書かれていたのは…今までに撃退してきた裏社会の奴らとその母体、さらにはそれらはすべて一人の人物に集まっていたことが書かれている。

 その一人の項目を見れば…人体実験、大規模殺害やテロ、極め付きには「他人の個性を奪う」ということまで表記されている。読んでいるだけでも虫唾が走るくらいの悪党だ。

 

 その黒幕の名前は…「オール・フォー・ワン」。

 

 

 

 

 

「…こいつの狙いは私自身か、それとも個性か。どちらにせよ、今までの襲撃の恨みを何もせずに他人に任せるのは少しばかり不愉快だな。」

 

 

 

 本当はこんな事すれば、叱られるだけじゃ済まない。それどころか、場合によっては退学処分ですら甘いかもしれない。それでも、長年の恨みを晴らさないわけにはいかないし…何より、私自身が頭に来ているんだ。

 

 

 

 

「では…指示を、指揮官。私たちはあなたの人形ですから。」

「一〇〇式達はいつでも動けます。」

 

 

 

 

 いつものような明るい声ではなく、戦闘中のように気を引き締めた声。部屋の中にいる人形たちのほかに_____私の中の基地にいる人形からも、その気配が伝わってくる。

 チリーン、と鈴の音が一瞬聞こえた。どこかで聞いたような、けれども思い出せない。しかし、同時に受け取ったモノが私自身の中で起きた。

 

 準備はできた、だが殺しはご法度…さらには資料を見る限り私のことなど小指一つで殺すことも容易いだろう。なら、できるのは______

 

 

 

 

 

 

 

「出撃。今まで散々こっちをいじってきた大悪党だ。本命は叩きたくとも恐らく敵わない。だからこそ_______奴がこれまでにやっていたこと…つまり徹底的に造ったものを壊して塵芥にしてやれ!」

 

 

 

 

 

 

 

_______コイツが造った今までの努力を無に帰すことだ。




セツ→雪です。あとで関わる事なので覚えておいてね…





_______反撃、開始。
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