一介の人形遣いに何を求めているんですか…   作:影元冬華

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若干、残酷な描写入ってます。最後あたり。


歯車は動き始めたのですよ

「ようこそ、我が居城へ!歓迎しようではないか、出来損ないの失敗作よ!」

 

 

絶賛公演中でございます。これから戦うシーンなんですけど、この演劇、なんと個性の使用ができちゃうんです!死ぬって。死なないけど。

午後のラストに私のクラスの演劇が当てられていまして、ラストということでめっちゃ人がいます。多すぎ。あ、でも一部は私の戦術人形たちで占領してます。みんな見た目綺麗で可愛いから周りの視線がすごいです。不埒者はトンプソンの姉御が目線で追い払っている模様。強い。

セリフを喋りながら、クラスメイトから渡された刀のレプリカを鞘から抜いて構え。そのまま演劇の主人公と殺陣(たて)を繰り広げます。クラスメイトの個性が、衝撃を受けると光るシールを作るというなんとも微妙な個性だったが、ここですごい役に立ってます。斬り合うたびに火花っぽい光が出るのでお客さん大盛り上がり。私もテンション上がってます。なんで練習で出してくれなかったんや。

 

「ほう!出来損ないの分際でありながらここまでやるとはな…。だが、それもここまでよ!無念のままに散るがいい!」

 

 

死亡フラグを無事立てて突撃しまーす。割と本気で戦っているので汗がすごかったりする。あ、相手は剣道部のエースです。なんでも、私がこの役になった瞬間に立候補したんだとか。私はその時、先生に呼ばれて居なかったんだよねぇ…。先生、なんであのタイミングで私をクラスから連れ出したんですか。もっと馬鹿騒ぎしたかったんですけど。

がっつり斬り合いをして、やっとあのタイミングが来ました。主人公が叫んで、他のクラスメイトが個性を使って、閃光弾みたいな感じでフラーーーッシュ!眩しいです。悲鳴を上げておきます。

 

「おのれおのれおのれぇぇえええええ!!!!無意味だ無駄だ愚かしい!滅びろ消えろ!宇宙のゴミがあぁああああ!」

「消えるのはお前の方だ!アルケミストぉ!!」

 

 

なんか、練習の時よりめっちゃ気合入ってる。迫力すごいぞおい。そんなわけで切り飛ばされて、そのまま吹っ飛ぶふりをしつつフェードアウト。私の役はこれで終わりでございます。はー、帰りに智春さんのとこ寄って行こうかな。両親はこれ見たら仕事に出ないといけないらしいから1人だし。1人じゃ無いけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校祭に招待されたため、ヒーローとしての仕事が終わり次第、ミッドナイトは来賓席に来ていた。時間的に最後の演目だったのだろう。体育館の中は観客でいっぱいになって居た。

この中学校は、毎年数人だが雄英に生徒を輩出している少数実力校の一つ。ある程度の実力を見たりするのに、幾人かのヒーローが見にくることは良くあるのだ。演劇の最初に出てきている生徒は普通。2年生ではあるが伸び代があるか無いかが微妙なところだろう。この調子だと再来年は来れるか分からない、と早々に見切ろうとした時だった。

 

 

 

 

「おのれおのれおのれぇぇえええええ!!!!無意味だ無駄だ愚かしい!滅びろ消えろ!宇宙のゴミがあぁああああ!」

「っ!?」

 

 

 ヴィランと間違うかのような気配と迫力。それに追い打ちをかけるような声量と明瞭さをもって、見切ろうとした気持ちを捨てさせた生徒がいた。レプリカであろう刀は本物のように、その場の空気は戦場のように張りつめている。それはまるで、今までに何度も戦いを潜り抜けた戦士を思わせるものだった。

 

 

「…へぇ?やるじゃないか、あの子。」

「本当ですよ。あの生徒は成績も優秀、素行も問題ない生徒でして。」

「校長、あの生徒の名前を聞いても?」

「秀内。秀内 奏(ひでうち かなで)と言います。」

 

 

 校長とのわずかなやり取り。それで十分だった。

 あの子は今後大物にも、場合によっては()()()()になる可能性もある。覚えておいて損はないだろう。

 

 

「楽しみにしているよ。」

 

 

 

 珍しくいいものが見れたミッドナイトは機嫌がよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅぅぅぅ~~~~~!!!!!!つっかれたあああああ!!!!」

「ハッハッハ!なかなかいい演技だったじゃないかボス。まさか、あそこまでいい声を出すとは思わなかったからな。」

「あんたにそんな才能があったなんてね。」

 

 

 現在、「春庭」を貸し切りにしてのんびりしてます。大体時間的に17時でございますぅ…。ここに来てから1時間くらい経ってるけど、気分的にはまだ30分くらいだったわ。あと何で酒飲んでるんだよARとMGは。でもいい、許す!

 私はトンプソンとVectorの2人に挟まれて、智春さんが淹れてくれたコーヒー飲みながらぐでぐでして話してます。店内は私と戦術人形しかいまーーせん!はたから見れば女子会をやっているような状態です。どうもみんな、バッテリーを持ち出していつの間にか学校でいろいろ楽しんでたらしい。そうだよね、今のところ私がちゃんとした状態で顕現させられるの3人が限界だもん。時間は3日だし。バッテリーは余りまくって溢れてるらしいので、気にする必要はないってリーさんに言われた。うん、ならいいんだわ。

 

 

「ちょっとあっついな…。外に出て涼んでくるー。」

 

 

 からんころーん、と扉を開けてお外へゴー。ついでにちょっと離れた本屋に気になってた本を見に行こうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、見つけたよ。()()()()()()さん♪」

 

 

 

 

 

 そんな男の声は、私のすぐ真横から聞こえてきた。

 

 

「っつぁあぁぁあ!!」

 

 

 

 咄嗟に距離をとったが、間に合わなかった。男が持っていたナイフは、私の左目を上から下までざっくりと切り裂き、左肩を刺されていた。どくどくと流れ出る血が、地面に血だまりを作っていく。出血する目を抑えつつ、男の姿を確認する。

 

「ッぅう…。なん…だよ、い…きな…り…!」

「おや?僕の個性が効いていなかったみたいだね…。面白い、面白いよぉ!」

 

 男は大仰に両腕を広げ、嗤っている。切り裂かれた傷が、灼熱の痛みを訴えてくる。今すぐにでもしゃがんでしまいたいが、きっとここでしゃがめば、殺される。

 そこまで考えて、ようやく気付いた。

 

 

「(人が…いない!?今の時間帯なら、確実にいるはずなのに。)」

「あっははははは!気づいたかい!!そうだよ、ここは僕と君だけの場所さ!!」

 

 

 男は先ほどよりも大きな声で嗤っている。さっきよりも痛みが増し、視界が揺らぐ。何とかしてあの男を無力化しなければいけない。しかし、先ほどから彼女たちを呼ぼうとしても、何の反応もない。焦りと痛みだけが、今ある現実である。奴と一対一、味方はおらず、こちらは手負い。ふらり、と体が揺れた。

 

 

「っつぁあ…!」

「ああ、いいね…!いいよォ!そうだ!もっといいカオをしてくれよなぁあ!」

「だま…れ!っが…!」

「いつまで正気でいられる?いつまで助けを待てるんだい君は?ここには僕と君しかいないというのに…ねぇっ!」

「っが…!」」

 

 

 倒れたところで、首を、気道をつぶされた。うまく力が入らず、視界が狭まってゆく。意識が薄れていくなか、ふと思い出したのはとある人形のことだった。

 

 

 

 敵の手によって陥れられ、孤立無援の中で大切な仲間のために、たった一人で敵へと立ち向かった、桜色の髪を持つ人形(彼女)。彼女は最後の瞬間まで全力で抗っていた。だが、私にはそこまでの力はない。今の私は、どうしようもなく無力なのだ。

 

 

 

 せめて、彼女のような力が…あれば…。

 

 

 男がナイフを振り上げ、私の心臓に狙いをつける。流れる景色が、ゆっくりとなり、見える景色が緩慢になる。ああ、これで終わりなのか。

 

 

 

 

 そう思い、すべてを諦めようとした瞬間、先ほど思い浮かんだ彼女の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 刹那、私の中に足りなかったモノが入ってくるような感覚とともに、力の奔流があふれ出た。

 

 

 

「な…ぁあああ!」

「…。」

 

 

 切られた左目と左肩からは未だに血が流れている。だが、先ほどまで感じていた痛みは感じない。残った右目で、男を睨む。

 

「なんだよ、なんだよそれ…!ここは、ここは僕のセカイなんだぞっっ!!」

「…、何のことかは知らない…けど。お前なんかにやられるなっていうことらしくて、なぁ!!」

 

 

 ()()()()()()S()T() ()A()R()-()1()5()を構え、銃口を向ける。

 

「ありえないありえないありえないありえない!!ここは僕だけのセカイだ!!こんなのは、こんなことは絶対にあってはいけないんだよぉ!!僕は君を愛し(殺し)たいんだ!そのために全てを!!ここに!!このセカイにしたのに!!」

「『黙れ!私はこんなところで燻っている時間なんぞ持ち合わせてはいない!とっとと消えろ!!』」

 

 

 右手に持った彼女の本体から鋼鉄の咆哮が放たれ、存在しない自分勝手なセカイを撃ち壊した

 

 

 

 

 

 瞬間、元の世界が戻ってきたと同時に、思い出したように傷が痛みを訴え、私の意識は今度こそ暗闇の中へと引きずり込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急げ!出血が思いのほかにひどいぞ!」

「救急車はまだなの!?」

「離れて!ここは見世物なんかじゃないんだぞ!」

 

「なになに?なんかあったの?」

「いきなり人が出てきたんだって。しかも血まみれの女の子一人とやばそうな感じの男らしい。」

「事件ってこと?ヒーローが誰か来た?」

「いや、ヒーローは来ていないらしいぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『次のニュースです。昨夜、__駅前にて血まみれの女の子が倒れていると通報があり_____』

『____もう1人の男は現在、捜索中だった容疑者の男であった可能性が高いとされ、長年未解決だった殺人事件の解決につながるとされています。』

『_____第一発見者である女性を警察では探しており、ピンク色の髪に大ぶりのギターケースを持っている女子高生の情報を求めています____』

 

 

 

 

 

 

 

 




AR-15「っ!指揮官、指揮官!!」
UMP9「くそっ、間に合わなかった!」
UMP45「顔からの出血はともかく、左肩がやばい。416、圧迫止血を。」
416「ええ。副官、救急車を…ってその様子だともう呼んだようね。」
一〇〇式「…。」
9「あの男は放っておいても問題ないよ。わかっていると思うけど、撃たないでね。」
45「コルト、貴方は先に戻って。カフェにいる他の人形も連れて行って。」
15「…そうするわ。あとをお願い。」
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