我の相棒がバッドエンドを迎えるわけがない   作:もよぶ

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第十話(最終話)

帰りの新幹線の中

 

「はちまーん大富豪やろうぜ!」

「おまえ、自分のクラスは大丈夫なのか?」

「それが聞いてよはちえもーん、どうやっても対戦ゲームで勝てないからって我は追い出されたのだよ!だから大富豪やろうぜ!」

 

材木座は揺れる車内で器用にトランプを切りながら比企谷の前に座る、大丈夫だろうとは思っていたがやっぱり気になったので様子を見に来たのだ。

 

「あら?材木座くん、申し訳ないけど私たち今比企谷くんとお話しするのに忙しいから申し訳ないけどまたの機会にしていただけるかしら?」

「そうだよ中二!今ヒッキーとお話してるんだから!」

比企谷の両隣に座ってる雪ノ下と由比ヶ浜から文句が出る

因みに材木座の隣には戸塚が座っているので材木座が来る前は比企谷ハーレムだった模様

 

結局比企谷達は告白の後三人で話し合い、正式に三人で付き合うことになったようだ。

竹林の奥でどのようなやり取りが行われたかは知るものはいない、しかし三人がより密接な関係になることが起きたのは明白だった。

 

材木座がフラれたことに関しては比企谷の件のインパクトがあまりにも強かった為、誰の話題にも上らずそもそもそんなことがあったことすら誰も覚えていない状態だった。

 

ちなみに葉山グループはというと葉山が正直に今回の一件を三浦に話したところ、三浦はそういうグループ内の人間関係のことを何故グループ外の人に話すのか、何故自分に相談しないんだと怒り全員に説教したそうだ。

あの一件では三浦だけのけ者扱いだったので余計に怒り狂ったとか。

ただやはり同じグループの由比ヶ浜が比企谷に告白、公認の二股なんてことになったため、海老名のことよりむしろそっちの方に話題が移り何もかもが無かったことになったような状態となっていた。

 

「お主らはいくら告白したからと言って変わりすぎだろう、そんなに八幡とくっつきたかったのか?」

 

「...彼と私たちには深い絆があるのよ、それを再確認しているだけ」

「そ、そうだよ中二!絆を確認しているの!」

 

二人ともグッと比企谷の腕を抱きくっつき会う

「どうでもいいがこの状態で奉仕部の部室に戻ったらえらいことになるのではないのか?なあ八幡よ?」

「だ、大丈夫だ、何しろ俺は理性の化け物と言われたぐらいだからな、コイツらも自重するさ、そうだよな、雪ノ下、由比ヶ浜」

 

「そ、そうよ、当然でしょう?比企谷くんと密室にいるからと言って学校なんですもの、そんないかがわしいことやろうなんて露ほどにも思っていないわ」

「そ、そうだよ中二、いかがわしいことなんて部室ではやらない...と思う...」

 

「やれやれ、誰もいかがわしいことなんて言っておらぬだろう...我が訪れてみたら八幡に奉仕している最中とか止めていただきたいものだ」

 

その言葉に三人とも顔を真っ赤にする。

これは思考を読むまでもないな、とやれやれといった顔する材木座だった。

 

「そ、それより大富豪だったよな?」

比企谷は話題を強引に変えるが雪ノ下は不満げだ、甘い空間を邪魔されたのが大層気に入らない模様。

 

「ははぁ、現実の大富豪である雪ノ下殿はゲームとはいえ貧民になるのを恐れていると見えるな、やれやれとんだチキンであるな」

材木座はやれやれとオーバーなリアクションを取り雪ノ下を挑発する

「なんですって?いいわ、その安い挑発受けてたつわ、所詮カードゲーム、子供の遊びよ」

 

勝負の結果

「ファッハッハッハ!雪ノ下殿!大貧民になるとはな!主は正直すぎるから簡単に引っ掻けやすいわ!さあこの大富豪材木座義輝に強いカードをわたしていただこうかのう!」

と交換予定の弱いカードを差し出すが、雪ノ下は猛烈に悔しそうにしながら

 

「な、何故あなたとカードの交換をしないといけないのかしら?確か大富豪はローカルルールが多いと聞いてるから私と由比ヶ浜さんが貧民、大貧民の時は比企谷くんとカードを交換するルールにしましょう。私が大富豪の時はあなたのカードは要らないから渡さなくて結構よ、どうしてもの時は比企谷くんとしなさい」

 

「なにその八幡至上ルール、ちょっと酷いであろう...」

「あら?比企谷くんは私たちの恋人よ、恋人のことを想うのは当然じゃなくて?」

 

「はちえもん!雪ノ下殿がいじめるよー」

「雪ノ下、あんまり材木座をいじめるなよ?一応恩人みたいなもんだろ」

「...そうだったわね、比企谷くんがそういうなら仕方ないわね、材木座くん受け取るのを許可するわ」

「なんでしょう、我が大富豪なのに感じる敗北感」

「中二だからしかたないね、はい!いきなり革命!」

 

「ちょっと由比ヶ浜殿!あーモウダメダ、最強の布陣が完成したと思ったのに!、大富豪はもうこりごりでござるよー」

 

「なんだかとっても楽しいね」

戸塚がニコニコしながら言う

 

「神は天にいまし、すべての世は事も無しと言うからのう、平和なのが一番であるな!」

目の前でイチャイチャしている三人を見ながら

「これで女神の依頼も終了だな」

ボソッと呟くと

「女神ってなんだ?またなんかのアニメか?」

「ヤッホー材木座くん」

「成田殿、神崎殿ではないか」

 

「お前の相棒の噂の二股男を見に来たんでな」

「あー私、雪ノ下さん派だったのに両方とも選んじゃうなんてこの色男!」

 

材木座は成田と神崎を比企谷達に紹介し席を譲り通路を挟んだとなりの席に座る。

今や奉仕部の三人は学年中の公認の仲となっていた。

楽しそうに話している6人を見ながら材木座は思う。

「相棒がバッドエンドを迎えていいわけがないのだよ。やはりハッピーエンドでないとな」

波乱に満ちた修学旅行の思い出を噛みしめ肩の荷が降りた材木座はどっと疲れが出てそのまま眠ろうとしたのだが

 

目の前の椅子にいつのまにか神崎が座っていた

「材木座くんお疲れ様だったね」

「あ?ああ?確かにお疲れなのでな、我は眠りたいのだが」

 

「うーん、私としては雪ノ下さんとくっつくのかなと思ってたけど二人同時とはね、あなたの活躍も大きいけどやはり比企谷八幡の行動は予測がつかないわ」

 

口調や雰囲気がいつもと違う感じがして違和感を感じる材木座

「?どうされた神崎殿?なんか雰囲気がいつもと違うような?」

 

「んー?そうだね、それより能力を悪用せずちゃんと目的の為に使ってくれたみたいで私は安心したよ、授業中に使ったのはお試しってことでノーカンにしておくわ」

「!!!神崎殿?貴女はいったい?」

 

「女神って言えばわかるかな?材木座義輝、あなたがちゃんと働いてくれたようで嬉しいわ、これで最悪のルートに行くことはなくなった、さすが私の見込んだ男ね!」

 

「え?女神?神崎殿は?」

「ふふふ、神崎って人はクラスに初めからいなかったのよ、いたと思わせていた的な?ま、私女神だからその程度の記憶操作や認識操作は朝飯前なのよね」

 

「...なんと、そういえば隣の席って誰だったのかよく覚えていないな、そもそも誰がどこに座っていたかがはっきりと覚えていたはずなのに良くわからぬ」

「まあーねー、誰に聞いてもクラスの人数も席の並びもあやふやなはずよ」

 

「でも女神殿がいたのなら我がやらなくても女神殿があれこれすればよかったのでは?」

 

「だから初めに言ったでしょ?手伝えないって、だから私は天界のルールで直接手出しできないのよ、私がいたのはあなたが能力を悪用しないか見張るだけ、比企谷八幡のことはここの人たちがどうにかしないといけなかったの、ま、竹林つれていったり、比企谷八幡の噂流したりそのぐらいはさせてもらったけどね」

 

「なんかメンドクサイルールですな、あと一応突っ込んでおくが見込んだって間違って召喚したのであろう...」

 

「まぁ怪我の功名とか言うじゃない!」

 

「...それはなんか違うのでは、それよりこれで依頼は達成であるな?わざわざ来たってことは依頼達成のお礼になんかくれるのか?」

「あなたも大概即物的ね...残念だけど今与えてるマジックアイテムで我慢してほしいわね」

 

「そうは言ってもこれって、今回の依頼の為に特別にくれた物なのでは?セオリーだと依頼が終わったと同時に能力が消滅するとかそういう話になるんでは?」

と材木座が疑問を投げかけるが女神は言いにくそうに

「実は比企谷八幡が二人を選んじゃったことによってまた未来が変な方向に歪んじゃってね...」

とこれから比企谷八幡に起きる未曾有のトラブルについて話し始める

 

「はぁ?聞いてないぞ!条件があるなら初めに提示しろ!この駄女神!」

「駄女神いうなー!大体こうなったのもあんたが雪ノ下雪乃を焚き付けて二人同時におつきあいなんてさせるからよ!私は悪くないわ、だって手出ししちゃいけなかったんですもの!」

「くっこいつ本当にあの駄女神みたいに無責任なこと言いおってからに!大体あの場合他にやりようがなかっただろ!」

 

「そんなの知らないわよ!こんなの予想外過ぎるもの!私は絶対悪くないわ!」

 

「こんのー駄女神が!大体女神の癖にけいおんみたいな学生生活に憧れるとかアホか!どうせ何百年も生きておるのだろう!小学生なんていつの話だ!このロリババア!」

 

「ロリババアってなによ!たまたまこっちの世界のテレビ見てたらはまっちゃったのよ!いいじゃない!何に憧れたって!そもそもこっちの人の年齢に合わせると小学生のころって言わないとおかしくなっちゃうでしょ!それに私は永遠の17才なのよ!老け顔のあなたとは違うんですぅー」

 

「はぁ?どっかの声優か?お主は『おいおい』と突っ込みいれてほしいのか!あとその髪型、ホントにどっかのラノベに出てくる駄女神みたいな変な髪型しおって!なにそのわっか?」

 

「これはわたしのチャームポイントなのよ!変って言うな!大体髪のこと言うなら、あんたのその髪染めてんの?デブオタの癖になに色気ついてんのよ!髪染める前にそのくっさいコートとだっさい眼鏡とその出っぱってる腹を何とかしなさいよ!もうこんな髪引っこ抜いてやるわ!」

 

「んだと?我のチャームポイントをバカにするのか!つかやめろ!いででで!抜くな!禿げてしまうではないか!貴様これでも食らえ!」

材木座は報復に女神にアイアンクローを仕掛ける

 

「おとなしく禿げなさい!いたたた!ちょっとあんた!オタクのくせに力強すぎ!」

「直接顔に触らん我の優しさにうち震えるがよいわ!」

 

二人でぎゃーぎゃー掴み合いしていると通路を挟んだ席の成田と比企谷が不安そうにこちらを見る

「おい神崎、材木座どうした?喧嘩なんてやめてくれよ?」

「材木座が喧嘩なんてめずらしいな?ってかさっきから女神がどうたらって神崎さん?も材木座と同類なのか?」

 

「い、いやほら、喧嘩するほど仲が良いと言うではないか!今回の修学旅行で我と神崎殿の仲は進展したのだよ!なぁ神崎殿?」

と我に返った材木座は取り繕う

「仲が進展したってそれって...」

と由比ヶ浜が目をキラキラさせながらこちらを見ているが

 

「え?ええそうよ、材木座くんとはいいお友達だからねー」

と神崎

「中二...あんまり勘違いしない方がいいよ...」

由比ヶ浜が一転憐みを含んだ目で材木座を見る

 

「んもー何でこうなるの?何でまたフラれたみたくなってんの?そういう事じゃなくてだな...」

反論するのも馬鹿らしくなる材木座だったがまるで空気を読まない駄女神こと神崎が叫ぶ。

 

「もうあなたしか頼る人がいないのよ!比企谷八幡に近くて私の駒...ゲフン私の手伝いをしてくれる人が、さぁ私たちの戦いはこれからよ!」

「ちょっと声が大きい...って今駒って言ったであろう、もう勘弁してくれ...」

皆がポカンとして見ている中あまりにも酷い内容に頭を抱える材木座だった。

 

修学旅行を終えた彼らは一路千葉へと向かうがその先で材木座の波乱に満ちた学生生活はまだしばらくは続きそうであった。

 




これで一応おしまいです。
材木座と言えばどたばた感溢れる展開が似合ってると個人的には思います。
彼は立派な三枚目ですね。

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