【過去ー幼少時代】
雨。冷たい雨。
窓に打ち付ける青い雨が、今日も降っている。
窓に息を吹きかけると、そこが白く曇り、また外の外気によって窓は白くなる。
「・・・。」
僕は一人。たった一人。狭い部屋の中で、一人
外を見つめていた。
・・・少し。違うかもしれない。
人じゃないけど、僕には、数少ない友達がいるんだ。
「・・・うん?」
ぼくがひとり寂しそうに窓を見つめている時、いつもそばにいてくれたのは、ほかの人たちには見えない、不思議な”友達”だった・・。
ほかの子にも、親族も見ることができない”それ”は、明確な意思を持ち、今、僕の前に立って、一生懸命メモにペンを走らせている
”さびしくないか”
その小さな”友達”は、両手いっぱいに握られた1本のエンピツで、不器用にも文字を書いた。
「へへっ。寂しくないよ」
だっていつも。”君が”そばにいてくれたからね。
君は僕の。親友だからねー
・・。
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・・あの時の私は確かに、変わり種だったのかもしれない。
「次、十五番」
「は・・はいっ!」
ー【今現在】
勢いよく立ちすぎた余り、体の姿勢を崩しかけるも、なんとか意地でその場に立ちあがる私は、現在「提督」と呼ばれる存在になれるかどうかの適正試験を受けている。
まだ齢19の私が、いったいなぜこんなところにいるのだろう。そしてどうして私が、提督試験というものを受けなければならないのだろうかー。
その発端は過去まで遡る。
私・・柊優月は、特異な性質の持ち主なのか。不思議な存在である妖精さんを見ることができる。
昔から見えていたから自分にとってそれは当たり前として思っていたのだけれど。世間一般では特異能力という存在であり、海軍等の募集している「提督」と呼ばれる存在になることができるらしい。
特に興味があったわけでもない。しかし今現在、海は深海棲艦と呼ばれる存在によって奪われ、その海を取り戻すために「提督」と呼ばれる人たちと「艦娘」と呼ばれる存在が必死に戦っているという事を聞いた。
今まで誰からも必要とされたことはない・・と思う。学校でもあまり人と話すことは得意というわけでもなかったし話しかけたいとも思わない。だけど、それでも、たった一度。たった一度だけでいい。
”誰かから、必要とされたかったんだ”
そしたら無意識に私はその募集に応募し。気が付いたら今、家から少し離れた場所にある”鎮守府”と呼ばれる場所で、私は適性試験を受けているというわけです。
「・・あなたはこの前に座っている”存在”が見えますか?」
「存在・・ですか?」
私はちらっと机の上にある椅子に目を向ける。するとそこには、ランチョンマットを広げてはお菓子をパクパクと口の中に放り込んでいる”彼ら”たちがいる。
”「・・なんだかこのひとぼくのおかしみてるです?」”
”「あらまー」”
”「それはとってもでんじゃらすかと」”
「・・・え?ううん。僕は・・食べないけれど・・君たちしゃべれるんだね」
私はぼそっと言うと、周りの審査員や、役人たちは目を丸くした、いったいどうしたのだろう?
”「このひとぼくたちのことばわかるですと」”
”「あらまー」”
”「それはとってもでんじゃらすかと。おかしたべるです?」”
・・・なんだろう。彼らと話していると普段悩んでいることもどうでもよく思えてくる、そんな陽気な・・いや、のんき?どこか抜けてる不思議な彼らを見ているとー
「き・・君。彼らの言葉がわかるのか!?」
一人の男性がこちらに歩み寄り、目を丸くして私の肩をつかむ。
・・え?一体どうしたんだろう?何かあったのか・・?
「あ・・はい。僕は普段文字を書いてのやりとりが多かったんですが・・ここの子たちはしゃべることができるんですね」
私がそういうとさらに会場内がざわめき始めている。一体なにが起きているのか、それは私自身もわからなかった。しかし、この子たちはとても楽しそうにお菓子を口に放り込んでいるのだけは見てわかる。
「そ・・そうか。君は・・柊優月君だね。覚えておく。試験は終了とする」
審査官の一人が私の名前をメモしたと思うと、どうやらこれにて提督適正試験の大半は終了し、あとは簡単な筆記試験だと説明してくれた。なんだか思っていたよりあっさりしてびっくりしている。
・・・だけど私はまだわからなかった。これから先、まさか本当に私が提督になり、艦娘と呼ばれる存在とともに、深海棲艦と戦っていくなんて
誰が想像できたでしょうか?
・・・・・・。
「それでは試験を終了します。適性試験に来ていただいた方々は気を付けてお帰りくださいませ。」
試験官らしき眼鏡をつけた女性の声ととともに、私たちは立ち上がり、それぞれ帰路につき始める。むろん私も同じように。
「・・あれ?」
筆記用具をしまおうと鞄を開けると、そこには”親友”がいた。どうやら家からついてきてしまっていたようで、鞄の中でお菓子の袋を広げ、その中で丸まって寝ている。
「・・・もう。君は・・」
私の存在に気付いたのだろう、”親友”はぱちっと目を開き、こちらを眠そうに見上げては、鞄の中から飛び出して来ては、肩の上に座る。これが親友のいつもの場所。
鞄の中からメモ帳を開き、手持ちのシャープペンシルで”親友”に見えるようにすらすらと文字を書いていく
”もう帰るからね”
「・・!!」
すると親友はどこから取り出したのか鉛筆(お手製の小さいエンピツ)を持ち、同じようにすらすらと文字を書き記していく。
”疲れた。おうち帰ろう”
「・・・うん。帰ろうか」
指で小さく頭をなでると、気持ちよさそうに目をつぶる親友を横目に、私は席を立ちあがり、部屋を立ち去る。その際、すれ違った少女達がしきりに私の肩を見ていたが、彼女たちも見えていたのだろうか・・?
「・・いけない。そんなことより夕ご飯どうしようか・・」
すぐに思考を切り替え、私は一人、今日の晩御飯はどうしようかという事に対し、頭を悩ませたー。
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「ねえねえ。今の肩に乗ってた子って妖精さんだよね!」
「うん!あの人って一般の人かにゃ?」
「かもしれないわ~。今日って確か提督適正試験の一次試験日だったし・・って。ほらほら睦月ちゃんに皐月ちゃんも。早く大淀さんに書類もっていかないと!」
幼げな容姿の3人は、楽しそうに談話をしつつ廊下を進む。その廊下の先は先ほどまで適性試験の会場として用いられていた部屋。
「あ!いけない!早くいこ!!」
「はわ~!皐月ちゃんまってにゃしー!」
「こーらっ!二人とも廊下は走っちゃダメよー!」
なんともほほえましい風景だと思うかもしれないが。彼女たちも立派な艦娘の一人。
一般人と比べ、その力はとても大きく、世間では不安視する人も少なくはない。
しかし、提督という存在があるからこそ、彼女達は彼女達らしく生きていけているということも、強ち間違いではない。
(さっきの人・・)
やんちゃな妹とおてんばな姉を追いかける女の子は、くすっと小さく笑う
「何だかかわいい男の子だったわね♪」
「どうしたのー?」
「なにかいいものでもあったのかにゃ~?」
二人がこちらを不思議そうに見つめている。女の子はなんでもないよと首を振りながら
「ううん、なんでもないよ。ほら、いきましょ?」
「はーい!」
「はーいにゃしー!」
二人を促し、歩きはじめましたとさ。