一人ぼっちの僕が提督になるお話【完結】   作:木啄

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さて、こんばんわ。木啄です。いつも読んでいただきまことにありがとうございます。

なんとなくですかストーリーも終わりに近づいているような気がします。なんとなく寂しくも感じますが、長々と続けるよりかスパッと切って新しくストーリーを構築したほうがいいかな?などなどいろいろ考えている今現在

今回も戦闘描写、およびシリアスシーンが含まれます。宜しくお願いします



なかまたち

 燃える赤い海の上に立つ。そこはまるで血の海のようにも見えて、それはまるで

 

 

ー”地獄”のようにも見えた。

 

 大規模作戦による敵深海棲艦。および深海棲姫の撃退。それが私たちの鎮守府の最重要任務内容。

装備も問題ない、仲間たちとの連携も。これなら確実に勝てるであろう

 

・・そう。私は思っていた。

 

思って、いたんだ。

 

 

「味方遊撃部隊全滅!!!主力艦隊後方から敵深海棲艦接近中!!!!」

 

「なんやて!?まさか回り込まれたんか!!!!」

 

 私はあわてて艤装を構えて、形代に念を送っては即座に艦載機を発艦させる。

まだだ、ここで攻撃されては、仲間たちが危ない。

 

「このままじゃ私たちも危ういです。姉様・・」

 

「大丈夫、仲間たちを信じるのも大切よ・・?山城?」

 

「とはいえ、こっちも限度ってもんがあるからな。どうする。いくら俺たちでも厳しいぜ?」

 

 あちらこちらから硝煙の匂い包まれつつも。私たちは炎によって空が赤く染まっている空の下を駆け抜け、最終目標である深海棲姫の居る海域まで突き進む。

 

「ほかのみんな!ここはうちがなんとか抑える!!せやから行くんや!!」

 

「そんなことをしたらお前が・・」

 

 わかっている。下手をすれば轟沈は免れないこの危機的状況。だけど私があえてその危険な役を引き受けた理由を、彼女たち全員が理解していたはずだ。

 

ー私がどうあがこうと、どう頑張ろうと。私は所詮軽空母。加賀や赤城達には到底追いつかない。

 

「いいから行くんや!!!!!!うちの事を心配する時間は無いやろっ!!!!!」

 

「・・龍驤さん。ご武運を。行きましょう、皆さん。いまは進まなければ」

 

・・・そうや。それでええんや。あんたらはあんたらの任務がある。うちはうちの出来ることがある

 

 後輩でもあり、かわいい子らでもある”加賀”がうちをじっと見つめている。その瞳は、必ず生きて。という強い意志が感じられてー

 

・・・。

 

数刻後、後方から敵深海棲艦らしき姿が見えてくる。艦載機を飛ばして漸滅させたとは言え、限度があった訳やな。だけどー

 

「うちにも負けられない理由があるんや・・舐めたらあかんで・・うちの本気。見せたる!!!」

 

 保存している大半の形代を空へ放ち、うちの手がぼんやりと淡い光を放つ。

 

ー”勅令”

 

「さぁ・・いくで!皆!!!ここがうちの正念場や!!!!!!」

 

 あの子(加賀)達には劣っても。それでもうちの出来ることを最大限に。

 

ーそれがうちの。”龍驤”の戦い方やー

 

 

 

 赤い空を飛び行く”鶴”たちは、迫りくる敵深海棲艦を次々と撃沈させていく。その一つ一つの艦載機の動きは、すべて龍驤の頭の中でイメージ、操作する。

 

 敵の砲撃を回避。回避、回避、そして反撃を行うかのようにして艦載機による空爆や魚雷などで破壊。

しかし、今現在相手にしている敵深海棲艦は、深海棲姫直属の部隊。無限にも湧いてくるのではないかと言わんばかりの敵の数に、龍驤の放つ鶴達も、次第に数を減り、このままではやがて全滅を迎えるだろう

 

 

そうした時、龍驤はただの的にすぎないー

 

(頼むで・・みんな・・・あとは・・!!)

 

 鳳翔から「りゅーちゃんこれを・・」と言われて手渡された彼女が折っててくれた最後の形代たち

 

「これで・・最後や・・・!!!任せたで・・!!!”勅令”!!!!」

 

 水上に無数の水柱が立ちあがり、その中を一人の戦士が滑りゆく。

その名は龍驤。誇りある大日本帝国海軍による航空母艦の名を受け継いだ”艦娘”

 

水面ぎりぎりを翔けていく”最後の希望”達。そんな彼らとともに前進する彼女は、咆哮をあげたー

 

”負けてたまるものか”

 

その意思を胸に。

 

 

「1体撃破・・よし・・次や。まだいける・・いける!!流石や鳳翔!あんたの鶴はうちの子らと同じぐい優秀やな!!」

 

 敵戦艦の姿が見えないのは不幸中の幸い。イ級といった駆逐クラスの集団が龍驤を襲いかかるも、彼女は鬼神にも負けぬ戦いぶりで、その前線をたった一艦で、後方にいる仲間たちを守り切ることに成功す。

 

「あとは仲間たちの援護に行かんと・・!!待っててな・・!」

 

”今、行くからなー!!”

 

 

・・・結果的に言えば。勝利であった。しかし、多数の仲間を失ったうちらたちからすれば。負けた。

 

その後、うちが駆け付けた時。それはもう”遅すぎて”

 

「・・・すまん・・俺が・・俺がもっと頑張れば・・そしたら・・皆は・・皆は・・」

 

 血だらけの体。ボロボロの剣を構えて、沈みかけた軽巡の一人を、うちは抱きかかえた。

 

「・・・無事・・撃沈確認したぜ・・多数の犠牲を・・払ったけどな・・へへ・・」

 

 

ーどうして

 

ーどうしてこうなってしまうんや?

 

ーどうして、大切な仲間たちが。

 

うちが・・うちがいけなかったんやろか。あの時、うちだけ勝手に。

 

ー。

 

「まってりゅーちゃん!!!!どうしてそんな・・!!解体申請なんて・・!!」

 

「ええんや鳳翔。うちは守り切れんかった。仲間を。だから、うちはここに居る資格なんてない」

 

 鎮守府に帰投したあと、入渠を済ませたうちは、提督にとある書類を渡すために廊下を歩いていた。

その後ろを、鳳翔が必死に止めようとしてくる。だけどうちは、その言葉を無視して

 

「提督、失礼するで」

 

 扉をノックしてから中に入る、そこには大規模作戦の処理に追われ、疲労の色が見える提督が居た。

 

「あんな。うちー・・」

 

・・・・・・・・・・・・。

 

「せや。だからうちらの艦載機はこうして毎度ちゃーんと整備しんとな、だめになるんや」

 

「なるほど・・そうなんですね、勉強になります」

 

 

 あれから時は流れて、うちは今。訓練施設で1からまた始めている。本来であれば、解体されてこの世界から消えているか、ただの一般人として生きているかの二択しかなかったはずなのに。

 

うちはまだ、艦娘をしている。

 

「もーっとたくさん勉強してな。うちらの事、知れば知るほど提督は強くなるんや」

 

 だから。仲間たちを失うような、そんな悲しい出来事だけはさせへんといてな?

つらいのは、うちらも同じだからー。

 

「はい。わかりました、頑張ります、龍驤さん」

 

 まだ、戦場を知らないこの青い提督候補生を見て、うちは微笑んだ。

 

ー。

 

【まだ優月が提督候補生になる直前】

 

「解体は・・できない?なんで、なんでなん提督。どうして」

 

 うちは、提督に解体申請を提出。その後受理されて、うちは大本営に連れていかれると思っていた

しかし実際は違った

 

「お前を解体する理由が無いからだ。・・お前に罪はない。罪があるのは・・この私だからだ」

 

「違う!!!!うちが、うちが悪いんや、そうやろ!?・・だって、だってうちがもっと頑張れれば、あの子たちは失わずに済んだんやろ!!!!」

 

 暗い表情で、深い海に沈んだような表情をしている秘書艦を隣に、提督はただまっすぐとうちを見る。

その瞳は、とても強い瞳をしていて、弱いうちでは揺さぶられてしまう。そう感じてしまうほどに

 

「龍驤。お前は非常に優秀な艦娘だ。・・よって、解体ではなく、別の任を設ける。」

 

「・・は?任務・・?」

 

「あぁ、入ってくれ」と提督が言うと、がちゃりと扉が開かれてー

 

「失礼します提督。練習艦鹿島です」

 

 

 そこには、大本営直属の練習艦である鹿島教官がそこには立っていて

「本日付けで、龍驤、お前はこの鎮守府から異動。大本営に行ってもらう」

 

「・・・なんやそれ。うちはあれか、厄介箱か。解体もしてくれないとわーわー騒ぐ邪魔を排除しようってことか?提督」

 

 ・・そうは言っていないだろう。と呆れた表情にも近い提督は、視線を机の上の書類に戻す。

これ以上お前が何を言っても聞くつもりはない、という姿勢だ

 

「1からやり直してみろ。龍驤。数日後に久々の若い奴が訓練場に入る、そいつの補佐。及び自分自身を見つめなおすいいきっかけになるだろう。鹿島、あとは任せた」

 

 提督がそういうと、鹿島教官は「わかりました」とだけ言い、うちを見つめる。

 

「初めまして、龍驤さん。私は鹿島です。これからよろしくお願いします」

 

「・・・まだうちは決めたつもりやないねんけど」

 

 

 ”決定事項”だ。と提督は言う。

 

 

 何があってもお前をこの海軍から失わせる訳にはいかない、という意思がもろに見え、うちは呆れを通り越して関心すら覚える。

 

(・・ま。最初っからやり直すっていうのも・・ええのかもしれん・・な)

 

死んだ仲間達のために。そして、これから来るであろう未来の提督のために。

 

ー同じような悲しみを、味合わせないために。

 

「わかった。龍驤。行くで、鹿島さん」

 

「はいっ。龍驤さん。それでは提督、失礼しますねっ」

 

 鹿島教官がそういうと、提督は「よろしく頼む」とだけ言い、うちと鹿島教官は部屋を去る。

 

「仲間を守れなくてすまなかった・・龍驤」

 

 ガチャンと扉が閉まる直前。提督が言った言葉が聞き取れず、うちは後ろを振り向くもー

そこにはもう、閉じられた後の扉しかなくてー

 

「さ!行きましょうかっ、龍驤さん」

 

「はいはい。行くからちょっと待ってな」

 

 鹿島教官の後ろを、うちは仕方なくついていく。

 

(というかこいつ胸大きすぎやねん・・さっきからなんなん・・!?)

 

 歩くたびにほよん。ほよん。当てつけか?ええ度胸してんなぁ!?あぁ!!?

 

・・・まさか背後から予想もしない事で敵意むき出しにされているとは気が付かない鹿島教官。その先に立っている人を見て、鹿島教官は立ち止まる。

 

「おん?どうしたんや」

 

「いえ。龍驤さん。ほら」

 

 

 視線の先には、先ほどから不安そうにこちらをじっと見ている鳳翔の姿が居て、うちを見るや否や、慌ててこちらまで駆け寄り、うちの手を握りしめる

「りゅ・・りゅーちゃん。大丈夫・・?えっと・・解体は・・?」

 

「そんな焦って、うちはどこにも逃げへんよ。鳳翔。”異動”や。これからくる新人提督の指導に、うちも加わることになったんや」

 

「・・異動・・?居なくなったりするんじゃなくて・・?」

 

 ・・まぁここからいなくなるは居なくなるけど。この世界からいなくなるわけではないねんな。

 

「せや。大本営から少し離れた施設に行くんや。だから安心してな鳳翔。」

 

「・・わかりました。あの。りゅーちゃん。」

 

”頑張ってね”

 

 

寂し気に笑う彼女を見て、うちは、うちはこれ以上鳳翔に心配かけさせないために

 

「任せとき!この龍驤、やったるで!!!」

 

思いっきり、笑って見せたー

 

・・・・。

 

 

「しかし提督候補生さん。えらい器用やな。うちの形代折ってみるか?」

 

「えっ。いいんですか?ですが、とても大切なものと聞きましたが」

 

「せやで!うちらの生命線にもなる大切なものや!だから、心を込めて、祈りを込めて。折るんやで」

 

 うちがそういうと、提督候補生さんは「わかりました」と真剣な表情で頷く。けなげで素直で、本当にいい子だとうちは思う。

 

(・・もしこの提督候補生さんが提督になったら、きっと皆から慕われるんとちゃうかな)

 

 ・・・そこにもし。もしもうちに鳳翔が居たら

 

 

ーいいのにな。

 

「・・・必ず。帰ってきますように・・帰ってきますように・・」

 

 提督としての職務も終え、終業までの時間を、うちと提督候補生さんは、二人で形代の折る時間になる

 

真剣な思いで、まなざしで、気持ちを込めて折られていく形代。この人が折ったものを、うちは飛ばして、また強くなる。

 

「・・っと。せんせい。お前も折るのか?」

 

”・・・!”

 

「さっきからずーーっと寝てた寝坊助妖精さんやないかい。まったく。調子ええなぁ」

 

 うちをじーっとみつめる。そしてその後、にこりと笑う。

 

「・・はぁ。しゃーないな。ほら、君も折ってみ。」

 

”!!”

 

 嬉しそうに紙を受け取ると、提督候補生さんがいう”せんせいさん”は楽しそうに折り始める

 

外から聞こえてくる明石のとんかんする音が遠くから聞こえつつも、静かな時間が流れる。

 

(・・うち。こんなことしてて・・ええんかな)

 

 思い出すのは、仲間たちの姿。・・だけどもう、そこには居ない。

 

 

どこにも。居ない

 

 

「龍驤さん?どうしましたか?」

 

「へっ?なんでもないで!なんでもない!」

 

 そう言ったとき。ふいにうちの目から、一滴の涙がこぼれる

 

任務帰還後、呆けたように入渠して、仲間たちの死を弔う時も、涙が出なかったくせにー

 

(どうして‥こんな時に・・出てくるんや・・っ)

 

 気づかれないように拭っても、拭っても涙がこぼれる。そんなうちを見て、提督候補生さんはー

「大丈夫ですから。」

 

「へ・・っ・・?」

 

 何も言わず。うちの頭をそっと撫でる。なんで・・?

 

「大丈夫です。僕は・・何も見てません。だから、泣いても、大丈夫です」

 

 何かを感じ取ったのか。それとも悟ったのか、提督候補生さんは、黙々と形代を折り続ける。

・・その表情はとても大人びていて、普段見せる顔とは、また違うもので。

 

「・・・っ・・・・ごめん・・なっ・・ごめん・・」

 

 情けない。ほんまに情けないけど。うちはここで、泣きながら形代を折った

 

声を殺して、彼の手に甘えながらー

 

 

・・・・・・・・・・。

 

「・・・寝ちゃったね。せんせ」

 

 机の上に大きなよだれを垂らして眠る”空母”の龍驤を見つめながら、私はそっと彼女を抱きかかえる

 

「っと・・軽い・・ですね。ちゃんとご飯・・食べてるのかな?」

 

余計なお世話や!とつっこまれるかもしれないが、やはり提督候補生として不安にはある。これも立場上仕方のないことだと頭の中でそう思いつつ、私はソファーに彼女を移動させて、手持ちの上着を彼女にかけつつ、室内の明かりを少し薄暗くさせる。

 

「外はもう真っ暗だね。せんせ」

 

”・・・こくり”

 

 肩の上で頷くせんせいを横目に、ちらりと龍驤に視線を送る。

 

「どうして泣いたのかわからなかったけど・・」

 

 あの涙は、きっと意味のある事に違いない。私はそう思っていた

 

普段から笑顔を、そして、艦隊の元気担当でもある龍驤。そんな彼女が涙を流す。それにはきっと、私が考えるよりもっと深い何かが彼女にはあってー。

 

「・・さて、せんせ。なんかあったかい飲み物でも用意しようか」

 

”・・・”

 

 無言の同意?もしかしてお前も飲みたいのか。と内心思い、仕方なく小さいカップを提督室の隣にある給湯室の棚から取り出すとー・・

 

”ぱぁあああ!”と言わんばかりの笑顔。単純に自分も何か欲しかったようだ。

 

「さて、何を淹れようか・・」

 

 

 夜。空には青い月が灯り、銀色の光が、この建物を。そして、青い海を、銀の海に変える。

 

夜が来て、また朝が来る。そしたら

 

「また君も笑顔になるかな。龍驤さん」

 

 そう、思ったんだ。

 

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