一人ぼっちの僕が提督になるお話【完結】   作:木啄

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こんばんわ。木啄です。さて、いよいよ11話です。2桁に入ってしまいまして、これって短編なの?って私自身疑問に持ち始めたところで、次回が最終回です。
おまけで2話ほど追加して、14話構成を狙っていきたいと思います。

こんかいはほのぼのかもしれません。多分。



優雅な休日

秋も終わりを告げ、気が付くと北風が吹くようになり、いよいよ制服も冬服に変り、もしかしかたらそのうち初雪が観測されるのではと思われる現在

「・・・さてと」

 

 今日は休日。時々訪れるこの日が、何とも言えない愛しさを感じるのは、世界共通に違い無いわけで

とはいえ。暇であることには違いない。普段からずっと任務だ、職務だ、なんだのと何かしら追われている私にとって、何も追ってこないと何をどうしたらいいのかという気持ちになる。

 

 しかし、だからといってひたすらぼーっとしているのも勿体ないわけで

 

「そういえばここは、僕が来る前にもいろんな人が居たんだよな」

 

 そう、ここは提督や、艦娘たちを育成する目的で建設された施設。であるならば、自分より前の人たちの痕があってもおかしくはない。

 

(普段から大淀さんとか鹿島教官がきれいにしてるから・・無いんだよな。そういうの)

 

 綺麗好きのおかげできれいに保たれている。ありがとう、大淀。鹿島。と、今現在ぐっすり寝ているであろう二人に礼を言いつつ、私は早朝の施設を歩き始める。

 

簡単な黒い長袖に、紺色のカーディガンという暗色オンリーの自分。普段の制服とは正反対だが。それがまたいいのだ、というよくわからない持論を抱く今現在早朝6時。せんせいはもちろんの事寝ている。

 

 そんなこんなで、普段はいらないような資料室や、図書館らしき部屋に入っては、いろいろなところを見て回る。こういった冒険も中々楽しい・・冒険というよりは、普通の・・うん?

「これは・・」

 

 本棚を見ていると、他とは違う、明らかにノートらしきものが偶然そこに挟まれていて

私はふと、興味を抱いてそのノートを手持ち、机の上に置いて、席に腰かける。

 

そこには何もタイトルが書かれておらず。しかし、見た感じそれはとても古いものであるとわかる

中を捲ると・・

 

「・・・提督になるための決意?」

 

 ・・それは、恐らくここを去る際に残していった提督達の言葉の数々だった。

 

そこにはー。

 

”必ず海を平和にする”

 

”水平線の向こうに勝利を”

 

”今までお世話になりました。提督として頑張っていきます” などなど。

 

 事細やかに年月日、その日の天気。時間。名前・・。そして、言葉。

 

「・・・。」

 

 1枚。1枚、室内に響くのは、私の呼吸と、ページをめくる音だけ。

 

今でも活躍しているのだろうか?それとももうすでに引退しているのだろうか・・。それすらも分からない”先輩”たちの言葉をゆっくりと見つめながら、私はただただ、その言葉を心に記していく。

 

これは、先人達が残した決意書なんだ。と。

もう二度と、ここには戻らないという覚悟で、戦場へと旅立った仲間達の文字で

 

個性の強い文字から、とてもきれいな文字。文字が薄いものから、とても濃いもの。いろんな人が、このノートに思いを綴り、旅立っているのがよくわかって。

 

その時ふと、私も数か月後には、このノートに新しく言葉を刻もうじゃないかという思いが湧いて。

 

 

・・そんな自分をなんだかとてもくすぐったがっているもう一人の僕がそこには居るような気がして。

そして、きっとたくさんの思いを持った僕が、今・・・ここにいる。そんな気がしてー。

 

「それはなんだかすてきですな」

「うわぁっ!!!・・びっくりした・・妖精さんか」

 

 気が付くとそこにいる妖精さん。本当に君は何者・・いや、妖精さんか。

「あさげのじかんでして?」

「あさげ・・あぁ。もうそんな時間ですか」

 

 ノートをしめようとしたとき。私は最後の一文字がそこに綴られていることに気が付いた。

 

”絶対に誰も悲しませない”

 

 その意味が一体どういう意味なのかは分からない。

しかし、この一文字を書いた人にとっては、とても大切なものに違いはなくて

 

「・・さ。いこうか、妖精さん」

「あいあいさー」

 私は、そのとても大切なノートを閉じて、先ほど挟まっていた場所に戻しては、部屋を後にする

 妖精さんはふわふわと空中を漂いながら、私の隣を歩く・・歩く?のだろう。多分

「おなかすきましたです」

「あぁ。僕もだ」

 

 簡単な会話を交わしながら。私と妖精さんは食堂へと足を進めていった

 

・・・・。

 

「お、きたきた。遅いでー」

「お先にいただいています。優月提督候補生」

 

 食堂に足を運ばせると、そこにはもう既に龍驤や大淀。そして、明石に叢雲。そして鹿島の姿も見える。

要するに全員大集合状態である訳だ。

 

「さて・・」

 

 この訓練施設にも勿論食堂は存在していて、その運営方針はこちらではなく、大本営のほうが行っている。

流石に食事方面も管理させると大変だろうというせめてもの優しさなのかもしれないが、その効果は確かにこの時の私はとても助かっていてー

 

(何を頼もうか)

 

 こうしてメニューを見上げて、何を食べようかと考える時間が一番ときめく時間なのかもしれない。

そうして食券を購入、食事を担当する大本営の補給艦である彼女達にそれを渡すと、了解しました!と元気の良い声が返ってきてくれて

 

”・・・!”

 

「あれ、せんせ。どこにいたんだ?」

 

 一体いつの間に肩の上に座っていたのか、気が付くとそこにはせんせいが居て。周囲を見回すとー

「んぐ・・はむはむはむはむっ・・・これは・・まいう・・!!」

「たまんねー・・です」

「とってもでりしゃすかと・・!」

 

 机の上でお菓子をおいしそうに頬張る妖精さん達。・・恐らくせんせいもここにまじっていたんだろう。

微かに甘い菓子の香りが漂っている

 

(たまには・・いいか)

 

 私の肩の上で満足そうにおなかをさすっているせんせいの頭を撫でているとー

「はい!おまたせしました!」

 

 おいしそうな香りが漂う朝食が、配膳トレーの上に綺麗に並べられて、私はそのトレーを手に席をどうしようかと見渡そうとすると

 

「ほら、こっちよ。あんたもきなさい」

「叢雲。っとと、ひっぱらないでくださいね。」

 

 もう、しっかりしなさいよねっ。と特にきつくもない言葉を受けつつ、私は叢雲の後ろをついていき、案の定艦娘達のグループに入らせられる私である訳でありまして

「たまにはこうやって皆と食べるのもええなーっ」

「そうですねっ!同じ釜の飯を食う!うん!いい感じです・・!」

 

 龍驤の言葉に同意する明石、両腕を組み、そうですよねっとしみじみと頷いていると偶然私と目が合いー

「・・はうっ」

「・・・・はぁ。」

 

 時折始まる”あれ”に、隣の大淀はため息を吐き、そんな大淀を見て

「だ、大丈夫ですよっ!!!なんも起きてないじゃないですかー!!」

「これから起きるようなこと言わないでください明石。ほら、朝食食べないと冷めてしまいますよ」

 

 さらっと受け流す大淀。スルースキルもだいぶレベルアップしてきたようで、私はただただ苦笑いを浮かべるしかできない。

「こうやって落ち着いて食事ができるのは・・良いことね」

「そうですね・・普段では考えらませんしね」

 

 そう。提督候補生の補佐でもある秘書艦任務であれば、提督候補生と一緒に食事を定刻に食べられるわけだが、鹿島とともに帰投した際に食事をとるために、基本的に重なる事が無い。なので全員と食べるということは滅多になく。かなり珍しいともいえる現状に(主に鹿島が)喜ぶ。・・・何故だ。

 

「せや!せっかくやし、記念にこれどうや」

 

 龍驤が取り出したのはカメラ・・?といっても使い捨てタイプのやつだ。どこで買ってきたんだろうか。

「私はいい。写真映りよくないし」

 

 叢雲はきっぱりと断りを入れる。が、それを聞き入れる残り4名のはずがないのはー

「そんなこと言わないで下さいよっ!ねっ?叢雲さん!折角なんですし!!」

「まぁ・・私もあまり写真に写ったことないのであれですが・・気にはなります」

「あはは・・まぁ。叢雲、たまにはこういったことも・・・ほら、経験ですよ。経験」

 

 なんて言っているが、私など自分を被写体に撮られた経験など1回もないが、そんなことを言ってしまっては示しがつくはずがない。そこは黙っておく。

 

「もう・・調子いいんだから。・・ほら、さっさと集まりなさいよ」

「はーいっ・・って、私が提督候補生さんの隣ですかっ!」

「僕は中心なんですね・・・」

 

 私を中心に左に明石、右に鹿島。そしてカメラ上にして自撮りのように構える龍驤。

フレームのギリギリ内側に入っている大淀。何とも言えないこの構造ではあるもののー

 

「ほら!いくで。はいっちーずっ」

 

 満面な笑顔の龍驤に、恥ずかしそうにしている叢雲。若干のぎこちなさを感じていたが、いい感じに微笑んでいる大淀に、目を丸くしている明石、そしてー

 

 そんな艦娘の中。優し気に微笑む青年が一人。

 

「これ、焼きまわしして皆に配るからな!折角やし」

 

”大切な思い出。作っていきたいやん?”

 

 龍驤がそういうと、鹿島もうなずき、他の皆もまぁそうですねといった表情をしている。

 

「あと数ヶ月したら、うちらも別の鎮守府にちりぢりになるかもしれん。だから、今のうちにたくさん学べることは学んで、遊べることは遊んでおくんや。後悔のないようにな」

 

 彼女が言うと言葉の重みが違う。鹿島は一人。そう心の中でつぶやく。

 

無論、その言葉の重みを知るものは彼女一人しか居なくてー

 

 龍驤は大事そうに、それを机の上に置いたー。

 

・・・・・。

 

 私の許可によって、今現在5名は外出をしている。折角の休日である、近くのアーケード街にでも遊びにいったらどうだという私の提案に、彼女たちは乗ってくれた。

 

 外に出ると、冷たい風が吹く・・。

 

「・・流石に冷える・・あの子たちは‥大丈夫かな?」

 

 艦娘は寒さや暑さに対して普通の人より耐性があると鹿島は言うものの、やはり個体差は無論ある・・が。

あの5名は特にそういうのは大丈夫なのかもしれない

 

”・・・・”

 

 せんせいは私の胸ポケットの中でごそごそと動いている。どうやらせんせいは寒いらしい

寒がりの妖精に、寒がりの私。なんとも似ているなぁと思いながら、息を吐く。

 

「せんせいは雪って好きか?」

 

 ポケットの中でもごもご動く。おそらくこれは首を横に振っている。

「・・・寒がりめ」

 

するとこんどは痛くもないキックを受ける。おそらくお前もだろうというツッコミに違いない。

「・・あと数ヶ月で、僕は提督だってさ。せんせ」

 

 まだ夏の初めの時は、そんな事まったく抱いてすらいなかったというのに。この短時間で、本当にたくさんの事を経験したような気がする。

 

・・そして、この短期間で。私は人の温もりも、また知ることができたような気もしている

 

「多分・・僕は弱虫だからさ。沢山迷惑をかけると思う・・。だけど、それでも僕らしい僕で、頑張っていきたいと思うんだ。せんせい」

 

 すると、せんせいはポケットの中でまたもごもご動いては、その口から1枚のメモが出てくる。

・・・私はそれを指でつまんで、内容を確認するとー。

 

”きみは きみ。 そばにいる”

 

 私は私。他の誰でもない私だからこそ。その道を進むのも、その道を決めるのも、私が決める。

そして、そんな私のそばに居てくれるのであろうせんせいの言葉に、私は「ありがとな」と呟いた。

 

いつの時も、ずっと私はせんせいと一緒に居る気がする。気のせいでは・・ない。そして今は

「僕だけじゃ・・ないもんな」

 

”・・こくり”

 

 ポケットの中で、頷くような感覚。

 

 再び強い風が吹き、突き刺さるような冷たい風に、私は思わず目を閉じる。

「・・あの子たちが帰ってきたとき、なんか温かい飲み物でも準備するか」

 

 たまには私が労ってやらばければいけないな。と考えながら、空を見つめる

お世辞にも綺麗とは言えないどんより雲の空の下、冷たい海風にさらされながらも、私はとても穏やかだった

 

「大切な思いで・・あっ」

 

 ふと。空から1粒の真っ白な粒が落ちてくる

 

「・・どうりで今日は」

 

・・寒いと思ったんだ。

 

・・・・・・・・・・・。

 

数時間後、降り始めた白い雪を体にまとわせながら、5人の艦娘達は訓練施設に帰投する

 

「まさか振り出すとは思いませんでしたね~雪」

 

「えぇ、そうね・・でも一番はしゃいでたのは明石よね」

 

「いいじゃないですかっ!雪!私は・・好きですよ!」

 

「気持ちはわからないでもないですが。とにかく食堂にでも行って温かい物でも・・あら?」

 

「ん~?おっ!ストーブや!!」

 

 

 空調設備のみで部屋を暖めていた訳だが、それでも厳しくなりつつあった為に、妖精さんと力を合わせていくつかの灯油ストーブを部屋に設置して

 

「お帰りなさい皆さん。いま丁度お湯を沸かしているところですから。タオル・・置いときます。風邪でもひいたら大変ですし」

 

 エプロン姿の私が珍しいんだろうか?と思いつつ、私は厨房に足を踏み入れる。

 

ヤカンの蒸発を知らせる「ピーーッ」という音に、ガスを消して、手元に置いてあるココアパウダーを6つのコップにぱぱっと入れていく

 

「こーほせいさん、おさとーおいといたです」

「あまあま。おさとうあまあまー」

「こらっ。かってにたべるなです」

 

 手伝いをしに来てくれた妖精さん、一人は叢雲の艤装にくっついている子だ。

「ありがとう。助かるよ」

 

 

 私がそういうと、「あいあいさー」とかわいらしい敬礼をしてくれる。私も彼女達に敬礼をして、お砂糖をコップの中に入れていく

 

 ココアの黒と、砂糖の白が混ざり合い、その中にお湯を入れていく・・するとたちまち白い湯気が上って

「・・・よし。出来上がりっと」

 

 それをトレーの上にのせて、ゆっくりと彼女たちの元に。

 

「お待たせしました。簡単だけどココアです。もしよければ飲んでいってください」

私が一人一人机の上に置いていくと「ありがとう」と彼女たちが笑う。つられて私も微笑んだ。

 

「・・あんたも。いい笑顔してるじゃない」

「へ?」

 

 叢雲の言葉に、私は何か言ったのかと聞き返すと、慌てて「なんでもないわよ!!」と首を振っている。

「叢雲~もっかい提督候補生さんに言うたらええやん~。なっ、なっ!!」

「し、知らないわ!ふん!!」

 

 そんな叢雲をにやにやした目で見る4人、よく意味が分かっておらず、きょとんとしている私が一人。

外を見ると、しんしんと雪が降り注ぎ、恐らく明日には雪が積もっているだろうなと思われる中、私たち6人は、そんなそとの冷たさに負けることなく。温かい笑顔を彼女たちは振りまいていて。

 

「も、もう!あんたもなんかいったらどうなのよ!!」

 

「あははは・・」

 

・・・そんな彼女達と過ごす穏やかな日も。あと残りわずかであるという事を、私は心の中でどこか寂しく思っていて。

 

 ゆっくりと。ゆっくりと時は流れ、雪は解け、花が咲き。桜が咲き乱れる頃。私たちは別れを迎える。

 

その時まで、私は彼女達と色んなことをしていこう。

 

そう、思っていたんだとさ。

 

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