一人ぼっちの僕が提督になるお話【完結】   作:木啄

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外伝その2 きみと、私

 ホラーや閉じ込められた密室の中で、気が付くとそこに居た・・のような感覚で、私はそこに居ました。

青い海と、白い空の境界線に、ぽつんと立つ”私”は。なぜここに居るのかも分からなくて。

 

”・・・・?”

 

 あたりをきょろきょろ見ても、そこにあるのは青と白の線だけ。

私は一体どうしたらいいのだろう?一番初めに浮かんだことは、それでした。

 

”「-ろ。せーーい。」”

 

 ふと、空の彼方から聞き覚えるのある”彼”の声がしてきます。一体どこに居るのでしょうか?

その声はだんだんと近づいてきて、私の体もふんわりと空を飛びます。まるで妖精さんのように。

 

”いま、いくよ。”

 

ーゆづき。

 

・・・・。

 

”(・・・ぱちっ・・!!)”

 

 私は、目を開けました。とっても、とてつもなく眠たいです。だけど目が覚めてしまったのです。

「ふう、やっと起きたか、せんせい」

 

 私を見て呆れるような表情をしている”彼”がそこにはいます。いつもの事ながら、彼は私を起こすのが非常に雑だと思うのです。もう少し優しく起こしてもいいような気がします。

「・・・よし。今日も頑張ろうな、せんせ」

 

 数秒間。私をじーっと見つめては、微笑んでくれる。それが彼の1日の始まりで、私も彼の笑顔に応えようと必死に笑顔になって見せます

”(にこーーーっ)”・・・変でしょうか?

 

 制服に着替えている間に私は朝ご飯を食べます。・・今日は〇ッキーです。なんとチョコたっぷり。とってもふまーなはへほほはほへふ(うまーな食べ物なのです)

”もっもっもっもっ”

 

 本来であれば私は食事などとらなくても生きていけます。・・普通の妖精さんであれば補給は大切ですが、私は・・普通ではありません。なので、食事は本来必要ではないのですが、彼からくれるお菓子はとっても甘くておいしくて、ついついたくさん食べてしまうのです。なぜでしょうか?

 

 さて、お菓子を食べている間にまたご説明しましょう。

私はせんせいです。・・いえ、これは私が彼に呼んでもらっている”愛称”で、本来の私を指す名前はありません。残念ながら、私でもわからないのです。

 

 というのも、私は気が付いたらそこに居ました、どこかの・・神社のようなところで目を覚ましました。

近くの人が”フナダマ”と言っていましたが、いったいなんのことでしょう・・よくわからないです。

 

 私はふわふわと空を漂いながら、何か大きな十字マークの建物に興味を惹かれて入ってみました。

「おめでとうございます。男の子です」

 

・・・ふと、建物の中に入ると、いったいどこに紛れ込んでしまったのでしょう。沢山の汗を拭きだすように流している女性の中から、小さな、とても小さな男の子が一生懸命泣いている姿を見ました。・・どこか痛いのかもしれません。「大丈夫・・かな?」そう思って近づいてみました。

 

「おぎぁーー!!!!ん・・!!んぁあーー!!!!」

 

 必死に、必死に、だけどそれはきっと生きるためにしていることだと、私は悟りました。

”頑張ってください”私はそう祈りをこめて、そっとその小さな柔肌に触れてみました。

 これが・・私と”彼”の出会いだったとは、言えません。恥ずかしいですから。

・・こほん。それはさておき、彼はどうやらびっくりしたことに、私が見えるようです。

 

 私を初めて目視してくれた存在はいませんでした。なので、とてもうれしかったことを記憶しています。

そして私は決めました。”彼”のそばにくっついて生きてみたら、きっと面白いかもしれない。なんて

・・しかし、その結果が彼を孤独に追いやってしまったことを、私はとても反省しています。後悔に近いのかもしれません。その思いは未だに消えることを知らないでしょうし、消したいとも思いません。

 

 

 

”これは私の罪の一つ”ですから

 

 

 

「ねえねえ見てみて。これなんてどうかな」

 

 それから私は、彼と同じ時を過ごすようになりました。同じ景色を見て、同じ色を見て。

同じ世界を共有して生きていたある日。

 

工作艦と呼ばれる存在がヘマをして、彼の頭上に機械が落ちようとしたとき、私はとっさに飛び出してー

”あぶない・・・!!優月・・っ!!!”

 

その時私が一瞬体が大きくなり。”両手”で彼を突き飛ばしたと共に私はまた小さくなってしまってー。

そのあと、彼と同じように転んでしまう結果・・。

 

「・・・ってて・・って、せんせい・・!?大丈夫か・・っ?」

 

 私を慌てて拾い上げて、両手に包み込むようにして私を見つめる彼は、自分のことより私を心配してー

どこも怪我はないか、羽は大丈夫か。痛くないか。

 

”大丈夫。痛くないよ。優月”

 

 私は首を縦にふって、彼の掌の上でくるりと回って見せる。すると彼は安堵の表情を浮かべて

「よかった・・・」と。笑ってくれて。

 

「僕は無事です。とりあえず倒れた機械のほかにけが人が居ないか確認を。点呼とります!」

 

 

 優月。ゆづき、あの子はいつも、無茶をする。本当はとっても、怖かったはずなのに・・・?

直ぐに立ち上がり、私を肩に乗せて彼女たちの名前を呼ぶ、昔とは違う彼の面影に私の中で、彼に対する思いが小さく揺れる。

 

 彼はこの短い時間で強くなっているのだろうか。そしてもし彼が強くなった時・・・

・・・私は、彼の肩の上に座っていられるのでしょうか。そんな不安が、私の中で生まれて

そんなことを思いながら、私は机の上にあったラムネを食べています。とてもおいしくて、いくらでも入ってしまうほどに。

 

「・・・だけど、僕を押した人は一体誰だったんだろうな」

 

”・・・!!!!”

 

 彼の言葉に、私は思わず止まってしまいました。・・もしかして気が付かれてしまったのですか?

そんな事を思いながら、彼は私をじっと見つめていたと思うと、突然はっとしたように立ち上がって

 

「こーらせんせい!!このあとごはんだろう!いま食べていたら食べられないじゃないか!」

 

 私のもとに駆け寄ってくる彼を見て、ほっとしたのもつかの間、今のこの私の慌てっぷりを見られてしまってはいけません。と、せめて彼に顔を見られないように明後日の方向に向いてみます・・効果はありますか?

 

「君というやつは」と、あきらめに近いような声を聴きつつ、私はちらりと彼の様子をうかがってみます。

困ったような、呆れたような、何とも言えない苦笑いを浮かべながら、私と同じ目線まで腰を下げる。

 

どうやら艦娘たちのお迎えに行くようで、私は手持ちにあった小さな紙を用いて、わかったと返事をしてみることにしましょう。・・・文字は汚いですが、仕方ありません。

「な、せんせ」

 

”どうしましたか。優月”

 

言葉に出さず、私は首をかしげてみます。

 

「・・海、きれいだな」

 

 海に沈もうとしている太陽を見つめて、彼はそう言うと、ふんわりとした、穏やかで、彼らしい優しい笑みを、私に向けてくれて

 

”・・・こくり”

 

 そんな私は、私は。恥ずかしくなって、彼の顔を見ずに、沈んでいく太陽を見つめて、頷きました。

 

ーー。

 

ー。

 

 

 そして、彼女達との訓練も無事終了し、彼は、優月は提督になって、大本営というところから離れた、小さな島暮らしを始めていて

 

「あぁ、せんせい、その書類見せてくれるか」

 

”これかな?”

 

そう思いつつ私はそれを小さな両手でつかんで、優月の前に持ってくると、彼は「ありがとう」と言って頭を撫でてくれました。

「だけどあれですねぇ。提督とその子。すっごい仲良しさん!」

 

 私より大きいけど、かわいらしい女の子が優月に声をかけている。すると優月は「うん?」と返事をして。

そのまっすぐな瞳で私を見つめて

「あぁ。私にとってせんせいは。」

 

”大切な存在だからなー”

 

 そう言ってくれたのを、私は月日が流れた今でもなお、覚えているよ、優月。

ぼくと”きみ”、きみと。”わたし”。

 

「せんせい。居るか?」

 

 あぁ、”彼”の声がする。行かなくちゃ

 

”まってて、今行くから”

 

私はそう彼に心の中で返事をしながら、慌てて”彼”のもとへと飛び立ったー。

 




 そしてこのお話で完璧に終了となります。

また機会があれば書いていきたいと思いますから、その時はまた。

この啄木鳥・・ではありませんね、木啄を。宜しくお願いします

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