あと、今回も誤字脱字等の可能性有なのでよろしくです
日本海軍の管轄でもある訓練校に入る最低条件は、”提督”としての素質があるかどうかに左右される。
というのも、先の試験による妖精さんが目視できるかどうかも、「艦娘」と呼ばれる彼女達との連携ができるかできないかという死活問題になるらしいからだ。
そういった素質を兼ね備えた人物というのは日本だけでも数少なく、それぐらい希少価値の高いといっては失礼かもしれないが、数少ない存在だと教官は言うー
(…そもそも大学を強制的に退学扱いさせて、機密性満々のこの場所に今、僕が居る事自体・・なぁ)
なんとも信じられないというか、まだ私自身夢を見ているんじゃないかなという錯覚を受けるわけで。
「艦娘になるためにはそれ相応の適正試験があり、貴方のような提督候補生さんとまではいきませんが、こちらもこちらで厳しい審査がいろいろと待っているというわけです。ここまではご理解できましたか?」
黒板に書かれた様々な文面をノートに書き写しては、なんとか覚えようと必死になっている私を見て、「艦娘」でもある教官の彼女は、どこか満足そうに微笑んでいる。
「久々にまじめな・・といいますか、ちゃんとした候補さんが来てくれて、私もうれしいです♪」
「ちゃんとした・・ですか?ええと・・”鹿島”教官」
はい♪鹿島ですよ♪とウインクする彼女を見て、私は少し目線をそらす。
こう言ってはなんだけれど、私はあまり女性と接したことがないから、どのように会話をすればいいのか少し困っていた。
しかも提督候補生は私一人。他は落第だっというからさらに驚きを隠すことができず、「これからは二人で頑張りましょうね♪」と、その豊満な体で抱きしめられたときは一体なにが起きたのかとパニックを引き起こしかけたぐらいでー
「・・・提督というのは、やはり命を懸けて行う職務でもあります。しかも、その提督は、もともとの海上勤務の経験ある軍人や兵士ではなく、”素質”がある人たちのみで形成される存在でもあるので、国や上層部も頭を悩ませてはいるのです」
せっかく提督としての素質があったとしても、死にたくないと思う人間は大半のはず。そのため、途中で怖くなって離脱するという人間がよくあらわれ、結局は0人卒業したという報告も少なくはないという
「私も、”彼女達”も。あの青い海を取り戻したくて戦っている人たちがたくさんいるんです。
・・だから、”彼らも”そして、提督になるであろう”あなた”も。私たちと同じ世界で戦ってほしい・・」
そう、私は思っているんですよー、と、鹿島教官は寂しそうに笑った。
・・・・・。
「青い海を取り戻すために・・・か」
学生寮と称された施設に戻り、一人部屋の中でごろんとなる私と、そんな私を不思議そうに見つめている”せんせい”が1匹。
今日の座学で学んだことを忘れないようにと先ほどまで復習をしていたけれど、途中で疲れたために休憩をしているというわけでー
「・・・僕に、そんな覚悟があるのかな」
「”・・・??”」
私はふと、”せんせい”に質問をしてしまっていたようだ。いけないと苦笑いを浮かべながら、なんでもないさ、と”せんせい”の頭を優しくなでる。
「まだ、ほかの艦娘たちに会ったことないから。わかんないっていうのもあるんだよね」
そう。この施設に入ってもう1か月経過しているわけだが、鹿島教官以外の艦娘に会ったことがない。というより、誰が艦娘でだれが提督なのかも把握できていないわけだが。
「・・・鹿島教官に聞いてみるというのも手、かな?」
ー鹿島教官。見た目はとてつもなく聡明、そして秀麗で。男だったら一目ぼれしてしまう人物が出てきてしまうのではないかと思えるくらいのルックス。
それくら美人な人と、毎日同じ部屋で座学を行ったり、軍事に関する内容の勉強などをしているわけだ。
思春期真っ盛りの男子であれば、それだけでいろいろ募ってきそうな状態だが、彼はそういったことに疎い性格をしている。
そのためどちらかというと無意識に彼女から避けられているのではと思われるほどにだ。
ここで少し補足をしておくが、彼は幼少期から一人、または”せんせい”といることが多かった。
そのため、友達というのもできなかったし、恋人なんていう存在もまた夢のまた夢なわけで
そんな彼が今現在、そんな美人さんと一緒にいても、どう接したらいいだろうかと困惑するのはおかしくない話で。
「さてと・・もうひと頑張りといきますか」
そういって再びペンをとろうとしたとき
「あんまり頑張りすぎても疲れちゃうだけですよ?候補生君」
ガチャリと扉が開く音とともに入ってきたのは、鹿島教官であった。
「・・・あれ。教官。どうしたんですか??何か用事・・でしょうか」
私が首をかしげていると、そういうわけじゃないんですけどね、と困り眉毛の鹿島教官。
「とりあえず入ってください。立ちっぱなしというのもあれですから」
私が中へ促すと、失礼しますね♪と靴を脱いで鹿島教官は私の部屋へと足を踏み入れる
「すみません突然。ご迷惑でした?」
「いえ、迷惑だなんて。そんな」
鹿島教官は私の隣に座ると、先ほどまで復習していたノートをちらりと覗き込む。
こぼれた髪の毛を片手でかきあげつつ、彼女はふむふむと、何やら楽しそうに見つめている
「ふふふっ・・♪90点。でしょうか。中々うまい具合に要点を纏めてあって・・流石です」
人差し指を立てて、にっこりと笑う鹿島教官を見て、私は頭を下げた。
「いえ、これぐらいは。鹿島教官の教え方が上手ですから」
「まぁっお上手ですね♪でもうれしいです。そういってくれるひとはいませんでしたからっ」
そうなんですか?と私は質問すると、彼女は「はい」と苦笑いを浮かべる
「やっぱり・・怖いのかもしれません。ここでの”日々”を過ごして、時を重ねるごとに、提督としての責務の重さが」
「プレッシャー・・ですか」
「・・はい。・・あっ。ごめんなさい!私、しんみりさせるようなこと言ってしまって・・教官失格ですね」
隣でうなだれる教官を見て、私と”せんせい”は目線をお互いに交差させながら
「いいじゃないですか。教官だって、教官の前に一人の人間ですから」
「・・・・えっ?」
私の言葉に、彼女はびっくりしたように目を丸くさせていた。
「私が・・人間・・ですか?」
「??だってそうでしょう?僕は普段、艦娘は”兵器”だと教えられています。ですが、今ここに居る鹿島教官は、兵器には見えません」
普通の。女の子に僕は見えます。
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練習艦。それが私に与えられた艦娘としての”役割”だった。
深海棲艦との激しい攻防を繰り広げる海域に出撃するのではなく、そういった戦地に赴くための艦娘たちを教育、指導するのが練習艦としての役割であると長門教官から教えられた。
「それと同時に、提督の教育も行ってもらう。なに、安心してくれ。今は補佐として、香取と一緒に行動してもらい、活動に慣れたところでお前も教官になってもらうだけだ」
練習艦香取。それは私の姉にあたる存在。だけど私には姉がいない。
「初めまして・・・は変よね。私たちは姉妹艦だもの。よろしくお願いします。鹿島」
私の前に立つ女性は、いかにも教官という見た目の、きれいな女の人で、初めて会ったときから、なんだか
懐かしいような感覚にとらわれていた私は、慌てて頭を下げた。
「は、はい!よろしくお願いします!香取教官っ!!私、頑張ります!!」
私が慌ててそういうと、香取教官はびっくりしたように目を丸くして、そして笑った。
ーふふふ、私たちは”姉妹同然”なのだから。そんなに気にしないで、鹿島。
それ以来、私は香取教官を香取姉さんと呼ぶようになり、そんなある日のこと。
「・・・はぁ。また一人、提督候補生が辞められたわ」
「え・・っ。あんなに勉強熱心だった子がどうして・・」
教員室とされている場所に二人、私と香取姉さんが座り、書類の処理をしていた時のこと。
突然のことで私はびっくりして、香取姉さんに聞いてみたんです。そしたらー
「兵器の上に立って指導なんて嫌だ。だそうよ」
その時の香取姉さんの。とても寂しそうな笑顔は、今でも忘れられません。
・・・そう。私たちを兵器として認識して、指揮を行うことに対しての恐怖。なぜなら私たちは
非力な人間とは違い、整備で永久とも近い生を受けられることもできますし、年齢もとらないからー
・・・・・・。
ーですが、今ここに居る鹿島教官は、兵器には見えません。”普通の”女の子に見えます
この時私の中の何かが音を立てて崩れていく瞬間でした。
愁いを帯びたような、優しげな表情で、私をまっすぐと見つめてくれるそんな提督候補生のあなた。
まだあって1カ月も経たない、いきなり連れてこられたに近い扱いを受けているにも関わらず。
私を”人”として思ってくれる”人”がいまここにいるということ
「だからそんなこと・・って。教官・・大丈夫・・ですか?」
「ふぇっ・・?えと・・あれ?ごめんなさい。私」
「ご、ごめんなさい!せんせい!はんかちかティッシュ探して!!」
”・・・!!”
目の前で慌てふためく候補生さんと妖精さんを見つめながら、私は流れる涙をぬぐいながら、笑った
「ごめんなさい、大丈夫ですよ。ふふ、ちょっと恥ずかしいですね・・♪」
「あ、あの。これ使ってください。もしあれでしたら貰っていいので・・」
そういって手渡されたのは和柄の手ぬぐいで、なんとも彼らしいチョイスだなと思いました
「すみません・・ありがとうございます。提督さんっ」
私がそういうと、彼は困ったような笑みを浮かべてー。
「あはは・・僕はまだ提督候補生ですよ。鹿島教官・・ですが。」
必ず提督になってみせます。
彼は、私にそう言って、卒業していきました
・・・・・。
・・・・。
それから数カ月後、新しい提督候補生さんが来ることなく、普段どうりの、練習艦としての 任務を全うする私と香取姉さん。
空を見上げると、もう夏も終わりかなと思わせる夕暮れで、私はポケットからハンカチを取り出します
「・・・あら?鹿島、珍しいものを使っているのね」
「・・はい。これは私の大切な人からの頂き物なんです」
そういって私は、”彼”からもらったハンカチを広げてみせる。女の子には珍しい藍色のはんかち。
だけど香取姉さんはー
「・・ふふ。いいものをもらったのね。あら・・もしかして・・?」
好きな人からのプレゼントかしら?となぜか小声で。
「・・・!ち、ちがいますっ!!そりゃああの人はかっこよくて素敵ですけど・・!って!!」
ふ~ん?となんとも意地悪そうな笑みを浮かべる香取姉さんを見て、私は困ったような恥ずかしいような。
ですが・・。
「今はきっと。新人提督さんとして、頑張っているはずですから。また会えます。きっと!」
私はそう言って、大切にはんかちを握りしめました。
(・・そうですよね。優月提督)
その日はまるで、あの時のような夕暮れで、私は海に沈んでいく夕陽を見つめながら、心の中で彼の名前を呼びました。
これは、きっと彼には届かない、私の大切な・・気持ちです♪