一人ぼっちの僕が提督になるお話【完結】   作:木啄

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とりあえず本日の更新はこれまでとなります。基本的なペースとして大体2~3日程度で更新していくのでよろしくお願いします(今更。)

とりあえず。今回も誤字脱字及び矛盾点ありの可能性です。ご注意ください


ぼくときみ

 僕は提督になります。そう鹿島教官に私は言った。

 

しかし、私はその時、彼女を励ましたいという思いで慌てていたのかもしれない。その後、彼女はとてもうれしそうに笑ってくれたことを私は今でも覚えている。

 

それが、一つの決意の表れだったのかもしれない。

 

 提督、それは、艦娘達の上に立ち、指揮を執り、勝利へと導くための最も重要な存在。

 

そんな”存在”に、私はなると決意したあの時、私は一体どんな心境だったのだろう・・?

 

それは、いまだに思い出すことができないでいる”私”だー。

 

・・・・・。

 

「はぁ~・・やってしまった・・」

 

 鹿島教官と別れたあと、私は一人、盛大にため息を漏らしていた。というのも、鹿島教官を泣かせてしまったことには変わりなく。もしほかの人が居たらきっととても怒られていたかもしれないからだ。

 

「・・・なぁせんせい。僕は・・間違ってるのかなぁ」

 

 自問自答に近い独り言を、突然降られたせんせいにとってたまったものじゃないだろう、と内心お察しするけれど、この時の私はそんなことどうでもよかった。

 

”そんなことない。ゆづきはがんばってる”

 

 えっさほっさと必死に机の上に広げたノートに、”せんせい”は文字を綴り、それを見て私は、うれしいような、突然のことに困らせてしまったのではという申し訳なさも含めて、小さなお菓子を一袋、”せんせい”に渡すと、せんせいはとてもうれしそうにお菓子をほおばり始めている。

 

「‥提督・・かぁ」

 

今度は床にごろんと寝転がり、見慣れた天井を見つめて、ぼそっとつぶやく。それはー

 

「もしも僕が提督になったら・・みんなと一緒に戦って。平和を取り戻すってこと・・だよな・・」

 

・・・そう。我々人類が目指している”本当の平和”。そして、海を取り戻すということ。

 

「‥これが重圧。なんだろう・・きっと」

 

これに耐え切れずに、きっとたくさんの人が挫折してしまったのかもしれない。抱く思いはあれど、その道は果てしなく険しく、見上げたハードルがあまりにも高い壁だったとき、人はその壁を越えていくのは容易ではないはずだ、と私は思っていた。

 

だから、あきらめるんだ。そして、逃げ出すんだ。と

 

・・かつて自分が。そうしていたように。

 

・・・・。

 

普通の人には見えないものがみえる。これだけで、私はいろいろな人から異物のような視線を向けられるようになった

それは、当時の幼い自分にもわかるほど、敵意にも近いものだったことを覚えている。

 

最初はふとした出来事だった。

 

「まま。あそこにだれかいるよー?」

 

 

 

「あら、もう。ふふ、お母さんをからかうんじゃありませんっ」

 

最初は、ほんとうに些細な出来事だったんだ。そして、そんな出来事が続いてー

 

「・・・っ。また・・優月は・・誰もいないじゃない。もう。お母さんを困らせないで」

 

「・・・ごめんなさい。まま」

 

少しずつ、母が私に対する態度は変わっていき、最終的には。

 

「優月!!!いい加減にしなさい!そんなの居ないって言ってるでしょう!?いい加減にして!!!!!」

 

暴力はない。しかし、突き刺さる言葉の痛みは、今もなお。消えることはない。

 

「・・・・・」

 

しかし、いるんだ。そこに。

 

”だいじょうぶ・・?”

 

私を前に。心配そうに首をかしげている、"ちっぽけな存在"が。私の前にー

 

 

 

・・・いつしか私は、人と話すことをやめるようになった。挨拶も・・しなくなった。

 

そしていつも私は、親友とともにいた。部屋の中でも、学校でも。公園でも。

 

「・・・・」

 

いつしか私の周りには、誰もいなくなっていた。

 

そして、好奇や怪奇といった類の視線を向けられるようになっていたんだ。

 

”へんなものが見えるへんなやつ”というレッテルを貼られた僕は、ただただ、下を向いて笑う事しかできなかった。

 

「だけど・・・いるんだ。ここに。」

 

”僕の大切な親友”が。

 

 

 

・・・高校は逃げるように遠い場所を選んで、なるべく自分という存在を知らない人たちの中に溶け込むようにした

 

そうして周りから向けられた視線を殺して。僕はただただ、”ひとりぼっち”という張り紙を貼られるようになった。

 

これでいい。そう。これでいいのだ。

 

私は、決して”化け物”じゃない。とー

 

 

「・・・いけない。また泣いていたのか。僕は」

 

昔を思い出しては、一人部屋の中で静かに涙を流す生活、逃げたくても、私を追い詰める過去からそっと守ってくれるのはー

 

”・・・・にこっ”

 

目の前で、静かに笑顔で私の涙をぬぐってくれた、数少ない唯一の親友だったんだ。

 

「・・ごめん。ありがとうな、せんせい。」

 

私がそういうと、”せんせい”はこくりとうなずいて見せた。気にするな、ということらしい

 

「・・よし!それじゃあもう少しだけ復習しようか。せんせい」

 

”・・!”

 

頑張れと言わんばかりに両手を振る”せんせい”を見て、私はまた”笑顔”になった。

 

青い空から茜色に、そしてゆっくりと空は薄暗くなり、次第に夜が訪れていく。小さな部屋に、灯りが灯され、私とせんせいは、お互いのんびりとした時間を過ごす。

 

一人は未来のために。一匹は・・おいしいものを食べるために・・?いや、違うかもしれないが

 

時として人は様々な出来事を見て、聞いて、感じ、そして成長していく生き物だとある人は云う。

 

人はそれを”経験”と呼ぶのだろう。

 

だが私はどうなんだろうか。この暖かな思いも。気持ちも、”経験”の一つになっていくのだろうか。

 

ノートにペンを走らせ、鹿島教官や、今もなお海の上で戦っているのであろう顔も知らぬ仲間たちのことを思いながら、提督候補生である私は。ひたすらに自分のできる最大限の事をする。

 

それがきっと、暁の水平線に勝利を刻む、一歩なのかもしれない。と信じて。

 

少しずつ、夜は更けていくのであった。

 

・・・・・・。

 

・・・・。

 

「優月さん。今日はこちらを触っていただきます」

 

翌日。鹿島教官が机の上に置かれたのは、見慣れない様々な機械だ。彼女たちはこれを”艤装”と呼ぶらしい

 

海の上に立つ必要な装備で、これを身に着け彼女たちは海の上の任務に赴くらしい。

 

「これが艤装ですか。しかし・・小さいですね?」

 

「はい♪普段は収納されているんですが、実は私も普段。身に着けているんです♪」

 

 へえ・・・それはびっくりした。

 

いったいどこにそんなものを身に着けているのだろうという興味を抱いてみたものの、さすがに貴方の体を調べさせてほしいなどといえるわけもなく。

 

「そうなんですか。」

 

というなんともいえないぶっきらぼうな返事しかできない私に、一つ喝を入れてもいい気がする。鹿島教官。

 

「ふふふ、そしてこちらが・・火器になります」

 

目の前に置かれた大きな砲台。片方の手で持ち、もう片方で砲身を支え、発砲するタイプの火器。単装砲と呼ぶらしい。

 

「ごく一般的な人間さんですと・・おそらく重すぎて持ち上げられないかもしれません。持ってみますか?」

 

「・・え?僕が・・ですか?」

 

ごく自然に振られて私は一瞬戸惑ってしまう。無理もない。今現在、彼女は”普通の人では持ち上げられない”と断言してきたものを、持ってみますかと言い放ったのだから。

 

「はい♪」

 

(・・・大丈夫・・・なのかな)

 

おそるおそるその火器に手を触れ、意をけして持ち上げようとしたとき。素っ気なくそれは持ち上がった。

 

「・・・あれ?持ち上げられる・・?」

 

私が目の前できょとんとしていると、鹿島教官は両手で拍手をしながら、さぞ嬉しそうにしている。

 

「さっすが優月さんです♪妖精さんにも愛されているんですね♪」

 

「え・・?妖精さん・・?」

 

そういわれて単装砲を見ると、なんということだろう、砲身にいつのまにか、かわいらしい女の子の妖精さんが座って、こちらをじっと見つめているではないか。

 

「えっと・・はじめまして・・?」

 

すると妖精さんはぺこりと頭を下げ、にこーっと笑顔でこちらに手を振っている。気にいって貰えたのだろうか・・?

 

「妖精さんは、私たち艦娘にとって切っても切り離せない大切な存在なんです」

 

 日本には古来から、付喪神と呼ばれる神の教えがある。物には必ず神様が宿る。だからこそ物を大切にすれば、きっといいことがある。

 

 艦娘達の妖精さんたちも、それに似たような存在らしいが、そもそも見える人は艦娘と提督。そして、それに関係する人物のみのため、今現在まったくもって研究が進んでいないらしい。

 

 何かオカルトめいたことにもなりかねないという判断で、あえて研究をせず。”そういうものなんだよ!!!妖精んは!!!”と、納得している人も中にはいるらしい。いや、それでいいのか。それで

 

 

「それじゃあ僕とも・・仲良くしてくれるのか・・?」

 

試しに私は、単装砲に座っている妖精さんに話しかけてみると、彼女は突然顔を真っ赤に染めて隠れてしまった。

 

・・・もしかして嫌われてしまったのだろうか?

 

どうしようか。と少しおろおろする私を見て、鹿島教官は楽しそうに笑う。

 

「ふふふっ。妖精さんは普段私たちとしか接しませんから・・男の人に恥ずかしくなってしまったのかもしれなせんね・・・?かわいいですっ♪」

 

どこか楽しそうに、そして意地悪そうなその視線に、僕は何とも言えない苦笑いを浮かべることしかできないのでありましたとさ。とほほ

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