叢雲編も今回で終了になります。シリアスあり、戦闘描写、及び若干の流血表現ありなので、ちょっと注意してご覧ください。
では、恒例の。
誤字脱字の可能性有 です・・。宜しくお願い致します。
夕方から夜に変わろうとしている時刻を、黄昏時と人は呼ぶ。
夕暮れから夜になり、あたりが暗くなって君は誰だろうというニュアンスから誰そ彼、黄昏と呼ばれるようになったらしい・・というのはどうでもいいとしてー
私は一人。勝手に装備を持ち出して海上の上をぽつんとたたずんでいた
「・・・何。やってんだろ。私」
妖精さんもいない。対夜戦用の装備もない。夜の海はたとえ近海でも深海棲艦に襲われたらたとえ艦娘でもひとたまりもないというのは、以前の講習や座学で覚えたはずだ。
なのに私は、たった一人。海の上に立っている
「・・・だめだめ、しっかりしなさい叢雲。」
そう。私は叢雲。誇り高く、名誉ある名前の艦の名前を引き継いだ”艦娘”。それにー
(こんなんじゃあ”姉さんたち”に顔向けできない・・)
「もっと強くならなきゃいけないのよ。私は・・!」
再び海上を移動開始。自分の出来る最大限の周囲を警戒しながら、一人で単独演習を始める。
大丈夫。今日だってみんなは普通に帰ってきた。おそらくこの近海には何も居ない
(それに、ちょっとぐらい無理したほうが、あの子たちの勉強にもなるでしょう?)
提督候補生の指示だけ聞いて動いているだけじゃ。立派な艦娘になんかなれないってことぐらいー
私は少し鼻を鳴らしながら、海上を素早く滑るようにして進んでいく
自慢ではないが、私はこう見えて大本営の訓練所ではそれなりの高成績を叩き出していた。
運動だって姉さんたちに負けないし。勉強だって負けない。だから、いつかきっと必ず。
”吹雪姉さんのような立派な艦娘になるんだー”
「っといけない・・少し離れすぎたかしらね」
鹿島教官の指定されている海域から出ると、下手すれば轟沈する可能性もあるという話。
というのも、最近では敵深海棲艦の攻撃も活発化しており、各鎮守府の艦娘達は総勢力を以て
反抗作戦に挑んでいるという情報だ
むろん。そこには吹雪姉さんや、他の吹雪型の姉妹達だって含まれている。だからこそ私はー
その刹那。
「・・っ!?」
突如私の立っている付近の海上に水柱が立ち始める。そう、これは誰かの悪戯ではなくてー
(しまった・・!もしかして波を大きく立てすぎていた・・・!?)
慌てて背中の槍を構え、艤装をフル稼働。持てる装備を持って、単装砲を構える。
「き・・来なさいっ!!」
神経を研ぎ澄まして。私はー
「そこね!!!!」
・・・・・・・・・・。
「---・・!!!!!!!」
肩の上に座っている”せんせい”が突如立ち上がり、見たこともないようぐらい焦っている。
「ど、どうしたんだ。せんせい?」
せんせいはあわてて私のむなポケットから手帳を抜き取り、適当に開いたページに鉛筆をもって文字を書き始める。そこにはー
”むらくも こうせん かのうせい”
「叢雲・・?こうせん・・可能性・・?」
まて。こうせん?
その意味を悟ったとき。私は体の体温が一気に下がる感覚を感じた
せんせいは滅多な事で慌てたりといった感情を表に出すようなことはしない、それはー
自分が一番。よく知っているから
「・・・こんなとこで道草を食ってる暇はない・・!!!!急いで海上に出てる4人に連絡を取るんだ!!」
波止場付近を捜していた足を直ぐに施設へと向け、即座に通信機が備え付けられている通信室へと向かうー
「だけど・・っどうしてお前はわかるんだ・・っ・・!?」
全力で走りながらせんせいを問うと、せんせいは首を振る。自分でもよくわからないらしいー
「あ!ていとくこーほせいさん」
「いたよいたよ!むーさんしるひと!」
「むーさん、むーさんがしんぱい」
私を探してたのだろう叢雲の艤装にくっついている妖精さんや、そのほかの単装砲や槍といった装備に宿っている妖精さんは即座に感じとったのかもしれないー
”叢雲。交戦ノ可能性アリ”
ということを
・・・・・・。
「龍驤さん!!大淀さん!!!!!!!緊急事態です!!!」
海上にて、探照灯を用いて叢雲捜索をしていた明石、鹿島チームと。大淀、龍驤チーム。
簡易の通信傍受機を普段から身に着けている(優月提督候補生からの通信を傍受するため)鹿島教官は、優月提督候補生から送られてきた通信内容を聞いて慌てて二人の元へと走りだす
「まさか・・安全海域から抜けて一人危険エリアに入ったんじゃ・・!!」
「だ、だけどどうして叢雲ちゃんは・・!?」
(・・わからないわー・・どうしてー・・まさか・・?)
「どうしました?鹿島教官」
「い、いえ・・。あっ!見えました!!龍驤さんと大淀さんです!!」
鹿島と明石。二人も敵深海棲艦の夜戦襲撃を最大限に警戒しつつ、二人の元へ。
遠くからちらりと見えた探照灯の光に、鹿島は大きな声で叫び声にも近い大声をあげたー
・・・・・。
・・・。
「あんの阿呆・・!!!!夜の怖さを知らないわけないっちゅーに・・!!」
「とにかく今は、優月提督候補生のそばにいる妖精さん達の反応と。龍驤さんの艦載機を頼りましょう。
私たちだけでは限度があります」
焦る気持ちを殺し、大淀は冷静に分析を行う。それが彼女の最大の強さだ
「せやな・・頼むで・・妖精さんたち・・。また・・失うのだけは嫌なんや・・!!」
(またー・・?)
ーーー時同じくして
「・・っ・・・はぁ・・っ・・・この・・!!」
先ほどからこちらを取り囲むようにして包囲している敵深海棲艦。回避の一点張りで、私は防御するしか方法がなかったー
「私だって・・私だって・・!!!」
最後の希望と祈りを込めて。私は上空に救急信号でも用いられる照明弾を放った直後ー
「はあああああああ!!!」
痛む体を殺して、敵深海棲艦に単騎での突撃を行う。
”攻撃は最大の防御”・・・私は絶対に沈まない。 その意思だけが今の彼女を支えていてー
「喰らいなさい!!!!!!」
名前もわからないまるで闇そのもののような存在の、真っ赤な口の中へと砲台を突っ込み、自爆覚悟で発射。
「ああああああああああっ!!!」
強烈な反動と爆発によるダメージ。敵深海棲艦らしき存在は1匹。撃沈されたとされるが、それに似たダメージが叢雲を襲う。
こんなところで。負けてたまるものですか
「・・・だって・・私・・は・・・!!」
たった一人で敵深海棲艦の集団を壊滅近い状態まで追い込み、その時の怪我で艦娘を引退せざる得なくなった。英雄である姉の妹なのだからー!
「こんなところで・・沈むわけにはいかないのよ・・!!!」
既に艤装もぼろぼろ。片足は海に沈みかけているこの危機的状況の中。私は砲身を敵に向ける
(私は・・吹雪型駆逐艦5番艦・・誇りある叢雲の艦を引き継いだ・・・艦娘・・!)
その次の瞬間。私の立っている海上が赤い炎によって包まれるー。
「待たせたな!!叢雲ーーっ!!!」
ー。
ー。
”敵深海棲艦 壊滅 確認”
夜。私と妖精さん達は通信室に籠り続けて数時間が経過しているのではないかという錯覚を覚えるほどに、彼女たちからの通信をひたすら。ただひたすら待ち。そしてー
「・・・敵深海棲艦壊滅確認。これより帰還する・・だそうです」
私の一声と同時に、部屋の中にいた妖精さん達が一気に喜びの声をあげるー
「よかったですよかったですみんなぶじだー」
「はらしょー」
「やっほいやっほいおかしたべりゅですか!」
しかし。通信には続きがあった。
”叢雲 大破”
・・・・・・。
空はもう暗闇。聞こえてくるのは、妖精さんたちの息継ぎと、静かな波の音だけ。
「てーとくこーほせいさん、ごあんしんしてくださいな」
「むらはいきてるです。かんじるですよ?」
二人の妖精さんが私に語り掛けてくる。そんな二人の頭をそっと撫でながら、私のもう片方の肩に乗っている”せんせい”は、私と同じように、ただまっすぐ。暗い海の向こうを眺めていた。
”仲間たちが戻ってくる”そう信じて
遠くで光が見えた。数はー4つ。恐らくは・・彼女達であってほしい。
「こっちだ!!!おーい!!おーーーい!!!」
私は大きな声を出した。腹から声を出して、仲間たちを呼んだ。叫んだ。必死に。
彼女たちに抱えられているであろう。叢雲に向けてー
「すまん・・提督候補生。うちらも全力を出したんやけど・・」
「私たちの実力では・・なんとか守り切ることに精一杯で、龍驤さんと鹿島教官が敵を退けてくれました。
私と明石は叢雲ちゃんの護衛を」
ぼろぼろになった5人。そして、叢雲はうつらうつらと遠のいているであろう意識の中
「・・・ご・・ん・・なさー」
力を振り絞った言葉を聞いた途端、私は海の上に立っている仲間たちから、叢雲を奪うようにして
彼女を無理やりに抱きかかえる
「ちょっ!!提督候補生さん。なにやってんの・・!?」
「ごめん。でも、彼女は僕が・・運ばせてくれないか。・・ゆっくり運ぶから」
慌てた龍驤の声に、私は酷く沈んだ声でそう言うと、彼女は「しゃあないな・・・まったく」と呆れつつも私の言葉に従ってくれたようだ。
本来であれば、担架といったもので運ぶのが一番いいに決まっている、だけど、だけど僕はー
「・・・痛むか。叢雲」
腕の中。荒い呼吸をしつつ、体中が傷だらけ。血もぽたぽたと複数見え、片方の腕はだらんと垂れてしまっている・・恐らくは必至の抵抗の末に・・だろう。
「・・痛むん・・だから・・ゆっくり・・はこびなさい・・よね」
荒い呼吸を繰り返しながら、叢雲はゆっくりと口を開ける
「・・わかった。ごめん・・ごめんな。」
雨でもないのに。冷たい雫がぽたぽたと叢雲の頬に落ちる。そして彼女は、うっすらと目を開けた
言葉を出す気力も・・もうない。だけど、彼女はきっとこう訴えていたんだろうー
”どうしてあんたが謝ってるの。どうしてあんたが”
ー”泣いているの”
・・・・。
・・・。
提督室。他の4名も入渠や補給といった指示を出した後、私は一人部屋の中に籠っていた。
そして、頭の中で考えていたことは、彼女達が無事でよかったという事。そしてー
”叢雲が以前のように元気になってくれるかどうか”だ。
大破認定というのは、轟沈1歩手前まで追い込まれた、人でいう峠を越えるか超えないかという瀬戸際の状況で、下手すれば命に関わり、彼女達でいう”轟沈”こちらで言う”戦死”という扱いになることだってある。
・・だからこそ、提督達は轟沈ゼロを目指し、なるべく仲間たちを失わないようにしようという意思を胸に誓い、深海棲艦と戦っているわけで。
「・・・お前も不安・・だよな。」
”・・・こくり”
一人と一匹。広すぎるこの部屋が、今はなんとも物寂しさしか感じられなくて、私は意を決したように立ち上がり、せんせいを見つめる。
「僕たちも、入渠施設付近まで行こうか。もう出てるかもしれないし」
するとせんせいはもう一度頷き、私の肩の上によじ登る。お互いに思っていたことは同じだったようで
暗い廊下の扉を開けて、私とせんせいは、本来であれば禁止されているであろう”走るな廊下”を破った。
今はただ。仲間の元に。それだけが私の頭の中にあったからー
ー。
「ま、あの様子だからな。しばらく入渠してれば回復するやろ」
「そうですねっ。叢雲さん。早く元気になってほしいです、ね。大淀」
「はい。彼女が居ないと、やはり寂しいですから」
龍驤。明石、大淀の3名は無事入渠。及び補給を済ませ、休憩できるスペースで一息入れているとー
「は・・・はぁっ・・流石に・・・走り続けるのは・・厳しい・・な」
「てっ・・提督候補生!?どうしてここに・・」
「というかどないしたんや、ここまで走ってきたんか・・?」
「とりあえず私の飲みかけですが。提督候補生。水を」
大淀から手渡された水を私はひたすらに飲み。荒い呼吸を落ち着かせながら飲み干したペットボトルを大淀に手渡す。
「すみません・・ふう・・・助かりました・・大淀さん」
数分後。私はゆっくりと一息入れつつ、大淀から手渡されたタオルで汗を拭う。
「かまいません。ですが・・やはりお気になされて・・でしょうか」
大淀の言葉に、私は素直にうなずいた。すると龍驤は苦笑いを浮かべる
「あんのなぁ・・提督候補生さんの気持ちもよーーーくわかるけどな。まだ数時間もかかるんやで・・?
流石に早すぎとちゃうかーっ?」
「ですね・・龍驤さんの言う通りですよ。提督候補生さんも・・その。あちらこちら必死に走り回ってたりしたんですから。お休みされたほうが」
「ですが・・僕だけ休むことはできません。僕は・・何もしてやれませんでした。もう少ししたら僕も戻りますから。先に3人は休んでください」
流石に提督候補生を放置して自分たちが先に休むという事に対してあまり快く思っていないのだろう。
私の言葉に対して、素直に頷けない3人がそこにはいて。
「いえ、私も。待ちます。提督候補生が待っているのに。私一人休むことは。できませんから」
「明石も同意しますっ。」
大淀に明石は二人して頷き。その隣に座っている龍驤も「しゃあないな」といったようなあきらめに近い表情で苦笑いを浮かべている。おそらく彼女の本心もまた、この二人と同じなのだろう
「鹿島教官は中で、叢雲さんと一緒にお話をしているかもしれませんね。」
「そうなんですか・・・・。」
「覗いたらだめやで?乙女の秘密や」
誰がそんなことするかっ。と内心つっこみを入れるも。私は苦笑いを浮かべることしか今はできなくて
4人ともいまかいまかと、施設から出てくる二人の姿を待った。
・・・・。
・・。
「優月さん。外で待ってますよ。叢雲さん」
入渠施設。鹿島教官は、私の隣でそう呟いて見せる。しかし、視線は上を向いたままでー
「・・・合わせる顔がないわよ。今更・・」
・・そう。私は提督候補生の指示を破って、勝手に出撃して、勝手に大破して。今現在入渠しているのだから
本来であれば解体されて軍法裁判にかけられてもおかしくはないだろう、しかし。
私は、別の意味で彼と顔を合わせられないでいた。
(私が悪いのに・・どうしてあんたが泣いてたのよ・・)
湯気が空をふわふわと漂う。それはまるで能天気な妖精さんにも見えなくはなくて
「ふふっ。優月さんの事考えてたんですか。」
「へっ!?ち、違うわよ!!」
しまった。思いっきり図星じゃない私ー。
「・・あの人は、優しすぎます。私たちの事を。私たち以上に大切にしようとする・・。
・・・正直言えば未熟です」
「へえ。いつもあいつを見てるあなたがそう言うなんて。」
私がそういうと、鹿島教官は少し慌て始める
「ち、違います!普段からちゃんと私は審査してるんですよ!!!こうみえて練習艦ですし!皆さんにも示しを付けないといけませんから・・!ではなくてですねっ」
こほん!とかわいらしいせき込みをして、彼女は話題を戻す
「ですが、あの人はほかの人とは違う・・なんでしょう?懐の広さといいますか。なんでも許容して包み込んでしまうといいますか・・男の人なのに女の子らしさがあるといいますか・・」
「・・・話題の路線がどんどん脱線していってるわよ」
はっ!!そうでした!私としたことが!!と、再び路線を戻そうとしている鹿島教官。
この人もこの人で抜けているところがあるのだけれど・・それでもやはり、私たちとは違う雰囲気を感じる。
「あの人はまだ候補生さんですが。提督になったら、きっとほかの艦娘さんたちも彼についていってくれる。私はそう思っているんです」
最初から完璧な人なんていませんし。彼はきっと努力をする天才なんだと私は思います。と。鹿島教官は言いいつつ、私のほうを見つめる。
「だから、叢雲さん。貴方ももう少し糸を緩くしたほうがいいと私は思うんです。・・こんなやり方でたとえ強くなったとしても。いつか必ず転んでしまう。私はそう思うんです」
「いつか・・転ぶ?」
私がそう聞き返すと、彼女は頷く。
「・・・叢雲さんのお姉さんの話は、有名です。」
「・・・!!」
私は驚いた表情を見せるも、彼女はそのままの表情で、視線をまっすぐ向ける。だけどその視線の先は壁を見ているのではなくてー
「・・・あの子も最初から強かったわけじゃないそうです。皆と一緒に訓練をして、演習をして、出撃をして。同じ艦隊の仲間たちと一緒に戦ったから強くなったんだと私は思います。・・そして。あの時もまた、仲間たちを信じていたからこそ。戦えたんだと思います」
「仲間を・・信じる?」
吹雪姉さんは。仲間を大切にしていた。・・・私は?・・・私は、仲間を大切にしていただろうか?
「・・ふふ。直ぐに大切に、信じるなんてことはいくら私でも、そして吹雪さんでも無理だと思います。
だからこそ、仲間たちと一緒に過ごしていくんです。仲間たちと、焦るときも、仲間に相談して。そうやって、仲間たちと一緒に成長していくんです」
私の心の中を読み取るかのようにして、鹿島教官はゆっくりと言葉を紡いでいく。
そして、彼女はまっすぐと私を見つめる。だけど、その表情はとても優し気で
”どこか、優月提督候補生のような雰囲気を、彼女から感じられたー”
・・・・。
「しっかしえらい長風呂やな。バケツでも使ったらええやん」
「いまの運用ではばけつも貴重なんです。龍驤さん。理解してください」
「ま、まぁまぁ、二人とも落ち着いてください。ね、提督候補生さんっ」
彼女達の会話を聞きつつ、私と龍驤、大淀、明石の4名は、不謹慎かもしれないが団らんのような時間になっていた・・というのも。「ただじっとまつのもつまらん!」という龍驤の言葉から始まったわけだが
「ま。ほんまに無事でよかった。それが一番や」
「はい。・・ですから今回の件は不問にしようと僕は思っています」
龍驤の言葉に同意するように、私はゆっくりと自分自身の意思を彼女たちに伝える。
「今回の件を・・ですか?」
「はい。・・本来であれば、何かしらの罰を、彼女に与えるべきなのかもしれない。ですが、事の発端は、もともと僕にあると思っています。僕の、提督候補生としての実力不足が招いた結果ですから」
「ちょ。ちょっとまってって。気持ちはわかる。あんたの言う言葉も理解できるけど、どうしてそこまでして自分を追い込もうとするんや?」
追い込んではいない。そうじゃない、と私は首を横に振る。
「例え凄惨な結果になってしまったとはいえ。彼女はたった一人で包囲された敵深海棲艦の攻撃を回避して見せた結果があります、それだけでも初陣としては十分な成果だと思います。・・甘いと言われるかもしれませんが、今回のこの件を叢雲さんにとっての良い勉強という事で、不問にしてあげてほしいのです」
ですがー。と大淀は声を出そうとしたとき
”ーあんたは本当に甘い男ね”
そう言い放つ声の主が、ゆっくりと現れて。
「・・だけど、本当に優しい人なのね」
叢雲の表情は、普段の凛々しいものから一転して、どこか困ったような感じの表情でー
「・・・もう、大丈夫。なんですか?」
私はゆっくりと立ち上がると、せんせいもまた、私の肩の定位置に座り、じっと叢雲を見つめている。
その様子は普段と変わらないもので、とても落ち着いていて。それはきっと、叢雲がもう”元気になった”という証なのだろうな。と私は思った
「えぇ。もう大丈夫よ。心配かけてしまったみたいで、ごめんなさい・・今回の件は・・深く反省するわ」
「・・・・。」
申し訳なさそうに、気まずそうに視線を下に向けている叢雲に対して、私はゆっくりと、しかし1歩1歩彼女に歩み寄りー
「・・・叢雲さん・・っ!!」
「・・ぇ!?えっ!?ぇ・・っ!?」
「・・・へ?」
「ほほーう。」
「うっそぉ・・!!」
「あらあら・・♪」
4人はそれぞれ別の反応をみせつつー
「ていとくこーほせいさんやりますねえ」
「これはつよいです」
「らぶすとーりーはとつぜんに」
一方の妖精さんたちもまた、元気よくはしゃいでいてー
気が付くと私は、彼女を思い切り抱きしめてしまっていて。しかしそれでもまた涙がこぼれてくる。
大切な仲間が、大切な部下が。大切な、大切な、大切な。
私にの中であふれる思いが、すべて涙でこぼれてしまうかのような。
「よかった・・無事で・・よかった・・本当に・・」
「・・も・・もうっ!ど・・どうしてあんたが泣くのよ!!私も・・泣けてきちゃうじゃない・・」
ばか・・酸素魚雷・・食らわしてやるんだから・・っの一言で、彼女から言葉は出なかった。
近くで妖精さんたちが大はしゃぎをしている中。4人はー
「あの・・うちらは?」
「完全に空気ですね。行きましょうか」
「そ、そうですね!!ですがこれはこれでおいしいですね!(?)」
「むう・・私とはしてくれないんですか・・?」
4人はそれぞれ複雑な思いを抱きながら、そっとその場をあとにせざる負えない状況だったー。
「とてもはらしょーですな!」
「あまあまらぶすとーりーです?」
「らぶすとーりーはとつぜんに」
・・・・・・。
「本当に御免なさい。これからは気を付けるから」
その翌日、贖罪の意を込めて、今日の秘書官は叢雲が引き受け、仕事が始まる。
「気にしなくていいですから、叢雲。本来であれば今日も休ませる予定だったのですよ?」
書類にペンを走らせて、本日の業務を少しずつ終わらせていく私と、完了した書類に目を通しては誤りがないかどうかをチェックしてくれている叢雲はー
「ううん。いいのよ、これも大切な任務だもの。私が、やるわ。だってこれは、大切なー」
”仲間たちのためだもの”。
彼女の横顔は、以前みた時よりか、なんだか少し
柔らかくなったような気がしたんだー
そして、後日。この一報が吹雪達姉妹に通達された際、酷く慌てていたようだが、吹雪だけは
「叢雲ちゃんを信じてあげよう」。この一言で、姉妹たちを落ち着かせたそうで。
そして、吹雪もまた、退艦してもなお、かつて所属していた鎮守府から声がかかり、現在では駆逐艦達の指導をしているとか。
そうした出来事が書かれた手紙を読んで、叢雲は一人こっそり泣いていたらしい・・が。妖精さんに見られていたそうでー
「むらーはとってもかわいいですって!」
「むらーはぷりてーでち!」
「わーいおにごっこだー」
「待ちなさい!!違うのよ!!これは!これは!!!!!」
違うんだからーーー!!!!!!
今日も今日とて、なんだか賑やかで騒がしいような。そんな日になりそうだ。
私とせんせいは、そう思った