「ぐっ……私が、この程度で倒れるわけには……」
「やめてくれ……もう無理だ……勝てるわけがない……」
満身創痍のクリスは、それでも未だに前線へ立ち続ける。後ろでは、すでに戦闘不能に陥ったクレアが制止の声を上げている。
「おい、大丈夫か?ただがむしゃらに突っ込んでいくだけが戦いじゃない。お前だってわかってるはずだ」
俺が諌めると、より一層辛そうな表情になるが、それでもクリスは止まらない。
「ッ……それでも!私は!」
いや、もはや止まれないと言ったほうが正しいだろうか。クリスは更に前へ、前へと進んでいく。その決意に満ちた瞳には、地上に降ろされた時に薄れてしまったはずの女神としての神性が確かに宿っていた。
「『この世に渦巻く我が眷属よ!』」
クリスが両手を掲げ、仄かな優しい光がクリスを包み込む。
「『幸運の女神、エリスが命ず!』」
そして、それはやがて片手の掌に集まり、小さかった光は神々しい輝きへと転じた。
「『均衡の秤たる世界の法を超越し、我が意に従え!』」
幸運を宿した右腕を振り下ろす。神の奇跡とも呼べるその一撃は、
「ロイヤル・ストレート・フラッシュ!」
「はいファイブカード」
「「あああああああああ!!!」」
俺の幸運値の前に呆気なく弾き返された。
「……何してるんですか、全く……魔法まで使ってやることですか?私までウェイトレスさんから変な目で見られましたよ。ようやく仲良くなってきたところなのに……」
「ついでに聞くけど、ウェイトレスとはどれくらい仲良くなったんだ?」
「この前、私が座ってたら注文してないのにお水出してくれたんですよ。凄くないですか?」
この世界にもトランプは普及していて、聞くところによると結構昔からあるらしい。やはりと言うか、昔に送られた転生者が地球の知識を使って売り出し、巨万の富を得たのだそうだ。
そんなこんなで俺たちはポーカーをやっていたんだが、どうもクリスは案外熱くなりやすいタイプらしい。負けたら次、負けたら次とどんどん勝負を挑んでくるので、これもしかしたら毟れるんじゃないかと野菜スティックを賭け出したところでクリスが変な魔法を使い、ゆんゆんに見つかってお説教を受けている所だ。
これも、俺のステータスで唯一高い幸運のなせる技だろうか。そのうち本当に商売に手を出しても良いかもしれない。
「熱くなるのは良いですけど周りの目とかも考えないと……偶にやんちゃしますよね、クリスさん」
「……はい、仰る通りです……」
「カズマさんも、こんなになる前にさっさと止めてやってくださいよ……」
「いや、こいつらがノリノリで……それに、良いカモだったし……」
「カモ!?ちょっとカズマさん今カモって言いました!?」
喚くクリスは置いといて、実際俺は悪くない。野菜スティック賭けようぜって言ったのは俺だが、2人ともノリノリだったし。何故か2対1を強要されたから寧ろ俺が被害者になるレベル。
「流石にその言葉は聞き捨てなりませんよ!私はカモじゃありません!次、次に勝てば今までの負けは……」
「クリスさん、もう止めよう。それ以上口に出したらいけない」
「いえ!次は勝てそうなんです!身体に運命の力が渦巻くこの感じ……いけます!」
「正直言うまでもないことですけど、さっきみたいに賭け事で魔法を使うのはイカサマ扱いになるのが一般的ですよ」
「……」
クレアに論破されてがっくりとうなだれるクリスを見ると、あのアクアとかいう駄女神の後輩だと言うのも納得できると思えてくる。
《数時間後》
「フルハウス!」
「キングとエースのフルハウス。俺の勝ちだな」
「おいコラ!おかしいだろ!何でそんなに強い手が毎回のように入るんだ!」
「その手の苦情は聞き飽きたよ、さっさと金おいて次に代われ。はい、次の挑戦者の方!もしも俺に勝てたら10万エリス!一回の挑戦につき1万エリスとなっておりまーす!」
あの後、トランプゲームを禁止された2人は暇を持て余して討伐クエストに向かった。あの2人なら心配するだけ無駄なので、俺とゆんゆんは賭けはしない条件で2人でトランプで遊んでいた。ポーカーだったりブラックジャックだったり、七並べだったりと本当にトランプは有能だ。
そろそろ季節は秋に差し掛かり、畑の秋刀魚が美味しくなる季節(これは冗談じゃない。この世界ではマジで秋刀魚が畑に実る)。この頃になるとちゃんとした会計役がいるパーティは冬に備えるための資金を集め終わっている者も多く、そんな奴らは大抵ギルドに集まって駄弁っている。
暇していた冒険者たちは俺たちに触発されたのか所々でトランプをやり始め、俺が悪ノリでこんな催しをしたら予想を遥かに超える大盛況となった。二重の意味で幸運値様々だなぁ。本当に商人の道を目指してみるのも面白いかもしれない。
「ほらほら、1万エリスが10万エリスになるかも知れないんだよ!?仮に10回挑んで1回しか勝てなくても、お財布にはプラスになるんだよ!?挑戦してくる勇気のある者はこの街にはいないのかい!?」
「…………」
「……おい、お前行けよ」
「今まで誰も勝ってないとか、絶対なんかあるだろ。お前こそ行けよ」
まあ、幸運の女神が
冒険者は命に関わる仕事を生業としており、そのせいか金を考え無しに使う奴が多いので、一回1万エリスの勝負にも平気で乗ってくる。既に数十万エリスの儲けが出ており、流石に勝てないことに気付いたのか挑戦者が居なくなってしまった。
「チッ……何だよしけてんな」
「もう充分でしょう……全く、クリスさんがいないのを良い事に……」
「待ちなさい!」
そろそろ店じまいかと思っていた頃に、挑戦しようという者の声。
仕方ない、キリも良いし、こいつを最後に…………
「ふふふ……真打登場!です!」
「…………」
クエストの報酬であろう札束を携えたクリスがいた。そんで、その後ろには俺たちの方を悟ったような目で見ているクレア。多分、クリスに止めるよう説得しても聞く耳を持たなかったのだろう。
そんなクリスのドヤ顔を見るや否や、この先の展開を悟った俺とゆんゆんは無表情でトランプと金を片付け始めた。
「あれ!?いやいや、待ってくださいカズマさん!ゆんゆんさんもどうして!?1万エリスならここに……」
「うわ、いくら稼いだんですか?ざっと30万エリスはあるんですけど」
「あーそんなに?しょうがない、今日は冒険者連中に奢って印象良くしておくか」
「何で無視するんですか!?次こそは勝てるんです!カズマさんの幸運値から逆算すると私に連続で勝てる回数はおよそ8回だからですね……」
「……いい加減に「いい加減にしなさいよ!」
……えっ?
「ここは冒険者ギルドよ!ギャンブルなら他所でやりなさい!」
声を上げたのは、見たことのない女の子だった。
この街の冒険者ではないようだが……
「え、あ……いや、えっとですね……」
「別に、私も無理してクエストに行って稼いでこいとは言わないわよ。ちょうどいい難易度のクエストが無いってこともあるでしょうけど……あんたは何なの!?クエストに行く実力があるのに、やることはギャンブルのタネ作り!?」
「うぐぅ……!
いやその、別に四六時中ポーカーばかりやってるわけでは……その、これでも一応アークプリーストで……」
「尚更よ!世界の為にキョウヤが頑張ってるって時に!ご加護をくれるエリス様に申し訳無いとは思わないの!?恥を知りなさい!」
「ごめんなさい……恥知らずでごめんなさい……」
うわぁ意識高けぇ……
最初はしどろもどろになりながらも反論をしていたクリスも、今や縮こまって情けない姿を晒している。申し訳ないと言うか、本人だしな……何気にあの言葉が1番心にキてそうだ。
周りの冒険者たちも、心なしか気まずい雰囲気を醸し出している……怠けてる自覚はあるんだな、お前ら。
そんな事を考えていると、戦士風の少女の怒りが俺の方へ飛び火し……
「そこのアンタ!そもそもは……「その辺にしとけ、クレメア」
すると、青い鎧と巨大な剣を携えた茶髪のイケメンがその子を諌めた。
「キョウヤ……!
でも、こいつらが!」
「彼らに当たってもしょうがないだろ。別に犯罪を犯してる訳じゃないし」
「うっ……」
落ち込むクレメアと呼ばれた少女に対し、そのイケメンは笑顔を見せて自然に頭を撫でる。
「気にすることはない、その考えは正しいさ。彼らが間違ってるとは言わないけどね」
「あ……」
頭を撫でられ、クレメアは顔を赤くした。周りに人がいるにもかかわらずキョウヤは撫でるのを止めない。
「「「…………」」」
一応言っておくが、ここはギルドの酒場。さっきまでの賑わいもそのままに、ざっと3、40人の人が周りで見ているのだ。
……何だこのテンプレ鈍感系主人公野郎は。
見ててとてもイライラする。
多分、ここにいる冒険者の殆どがそう思っているだろう。何だこれ?俺たちは一体何を見せられているのだろうか。
「そこの君、悪かったな。
ただ、ゲームを主催するのはいいが、それを悪質なお金儲けに使うのは……特に女の子からお金を巻き上げるのは絶対に辞めておけ」
「あ、あぁ……」
……いや、反射的に頷いてしまったが、別に俺はクリスから金を巻き上げた覚えはないんだが。むしろ止めたぞ?
そのまま奴は、クレメアに言い負かされていたクリスに話しかけようとする。
「私……私悪くないもん……ちょっとやってみたかっただけだし……」
「プリーストさんも、これに懲りたら賭け事は………………えっ」
奴はクリスを見て固まる。そして、今までの余裕も何処へやら……目を見開いて大声で叫んだ。
「め、女神様ああああああああ!?」
「はああああ!?転生した時に女神様をこの世界に引きずり込んだ!?いったい何を考えているんだあなたは!」
ミツルギが当たり前のように女神女神と連呼するので、取り敢えずクレアと戦ったあの路地裏に来て説明をすると、ミツルギは俺の胸ぐらを掴んできた。
こいつの名前は
「ちょ、やめてください。私は別に不自由はしていませんし、結構楽しくやってるので気にしてませんし……」
「だからって……!女神様、この扱いは不当ですよ?貴女は女神、もっと素晴らしい生活をしてしかるべきでしょう!それに女神様をカモ扱いしてお金を巻き上げるなんて……!」
「いえ、それは誤解なんですが……」
ミツルギは更に腕の力を強める。ちょ、苦しい苦しい……
すると、クレアがミツルギの手を掴んだ。ミツルギは思わず手を離し、俺を解放する。
「おい、さっきから何なんだお前は。さっきから黙って聞いていれば偉そうに。クリスさんの知り合いのようだが、サトウカズマとは初対面なのだろう?少しは礼節というものをわきまえろ、無礼者」
俺には恨みがあるため、基本的に冷たいクレアが今回ばかりは怒っていた。なんだかんだ言ってクレアは真面目だ、いつまでも勘違いしたまま俺を悪者扱いするのは気に食わなかったのだろう。
人を嫌うよりも自分の悪い所を先に考えるタイプのゆんゆんですら、ミツルギに対して嫌悪の目を向けている。
案外あっさり手を離したミツルギは、興味深そうにクレアとゆんゆんを見る。
「君は……クルセイダーか。そしてもう1人はアークウィザード。それに2人ともすごい美人さんだな。サトウカズマ、君は仲間だけには恵まれているんだね」
「……」
……失礼な物言いで、ミツルギは続ける。
「それなら尚更だよ。君はこんな優秀そうな人たちとパーティを組んでいるのに、こんなところでだらけきった生活をして恥ずかしく無いのか?さっきの話だと、就いている職業も最弱職の冒険者らしいじゃないか」
……何だコイツ?いったい何の権限があってここまで俺をボロクソに罵っているのか。温厚な俺でもさすがにカチンと来るぞ。
というか、そもそもそこまでだらけきった生活を送ってなどいない。確かに今日は朝からトランプ三昧だったが、昨日はちゃんとクエストにも行っている。
「……おいクリス、何だこいつ。何でここまで俺を目の敵にしているんだ?あと何でこんなに人の話を聞かないんだ」
「目の敵にされている理由はちょっとわかりませんが、人の話を聞かないのは生来の性格なのでは……まぁ、仲間の女の子には慕われているようなので、普段は悪い人ではないと思いますけど……」
はっ、どうせ転生する時にクリスに一目惚れしたとかその辺だろ?そんで俺が連れ回してるの見てイラついてるんだろうな。
そんな俺の考えを他所に、ミツルギは同情でもするかのように哀れみの混じった表情で俺の仲間たちに話しかけた。
「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは僕と一緒に来ると良い。君たちはこんなところで腐っているには勿体無いよ!それに、ソードマスターの僕と戦士のクレメア、そしてクルセイダーのあなた。盗賊のフィオと女神様が支援をして、後衛はアークウィザードのその黒髪の子だ。完璧なパーティ編成じゃないか!」
「断る」
そのパーティに俺が入っていないぞと文句を言う前に、クレアがその提案をバッサリと断った。
「あまり調子に乗るなよ。私は嫌々このパーティで活動しているんじゃないし、不満も特にない。自分の意思でこのパーティに属しているんだ。それに、貴様のようなナンパ紛いの引き抜き行為をする常識知らずに背中は任せられん」
「私も同意見です。私を誘ってくれたこの人たちと冒険がしたいんです。誰でも良いわけじゃありません」
……不覚にもグッときてしまった。こいつら、良いやつじゃねぇか……
「……そういう訳ですので、悪いですが貴方のパーティには入ることは出来ません。私はカズマさんたちと一緒に魔王討伐を目標に頑張りますので、貴方も頑張ってください」
クリスも俺のパーティに残ってくれるようだ。ミツルギには悪いが、コレは俺たちの絆を再確認するイベントだったと思っておこう。
「じゃ、俺たちは戻るから。お前は優秀なんだろ?魔王討伐頑張ってくれ。応援してるぞ、魔剣の勇者様」
俺は適当なお世辞を、みんなと一緒に立ち去ろうと……
………………
「あの、どいてくれます?」
「悪いが、女神様をこんな境遇に置いておく訳にはいかない。君にはこの世界は救えないし、魔王を倒すのはこの僕だ。女神様は、僕のパーティに来た方が絶対に良い」
……うわぁ、此処までナルシスト入ってるのか。
此処まできたら、この先の展開は予想できてくる。クレアと同じパターンだ。
「僕と勝負しないか?僕が勝ったら、女神様を僕のパーティに貰う。君が勝ったら……そうだな、君の言うことを何でも一つ聞いてあげようじゃないか」
ほら、やっぱりこうなる。
どうせこいつも異世界に良いイメージを持って転生してきたんだろ?俺は散々現実を叩きつけられたから分かっているが、こいつは違う。初めから魔剣を持ち、俺TUEEEEEプレイをし続けてきたミツルギはまだ夢と現実の区別がついていない。つまりは、この勝負がクリスを仲間にするイベントにしか見えていないのだ。
ま、現実はそう甘くない。勝負とか言い出すあたり世間知らずっぽいから、本当に対人戦をした事はないはずだ。あったとしてもせいぜい模擬戦レベルだろう。
「貴様、いい加減に」
「はぁ、良いぞ。ただし、勝負が終わった後に何を言われても恨みっこなしだからな?」
クレアが怒りに任せて怒鳴り付けようとするが、それを遮るように、俺はその勝負に応じた。
「はは、構わないさ。何でも好きに命令するが良い。もし僕に勝てたら、の話だけどね」
「おい、サトウカズマ!何も受ける事は……」
「まあ待て、こっちも勝算があってやってるんだ」
俺の言葉に、ミツルギは眉を顰める。ハッタリ半分本気半分だが、これが重要だ。ベルディアさんから【魔眼】を教えてもらった時から考えていた作戦が、漸く使える。
「まずはルールだ。先に負けを認めるか、武器を失った方の負け。基本何でもあり。これで良いな?」
「……ああ、文句はない」
ミツルギは頷いた。これで仕込みは完了だ。
そして、俺はミツルギに話しかける。
「……なあ、お前は俺を随分と舐めてかかっているようだが……」
「……?」
「宣言しよう。お前は自ら敗北を認める事になる」
「何……?」
「【魔眼】。さあ、俺の目を見ろ……!」
そう叫んで目に魔力を込めると、咄嗟に俺の目から視線を外したミツルギは俺の前から飛び退いた。
《ミツルギside》
「【魔眼】ッ!」
「クッ!」
女神様をこの世界に引きずり込んだ彼は、勝負開始の宣言を待たずして謎のスキルを発動させた。一瞬瞳の色が変わったように見えたが……
僕の推測では、アレは洗脳か幻術の能力。
女神様を連れてきたという話を聞いて、転生特典は女神様だと勝手に信じ込んでいたが、まだ隠し玉を持っていたとは。確かに、女神様を守護するために何かの能力を貰っていてもおかしくはない。
とにかく、相手の能力がわからない以上、迂闊に攻め入るのは危険だ。少なくとも、彼の言う通りにあの眼を直視したら何が起きるかわかったもんじゃない。
僕はさらに警戒を強めると共に、必殺の武器である魔剣グラムを握りしめ……
「【スティール】!」
……閃光が放たれ、あっさりと僕の両手から魔剣が消え失せた。
《カズマside》
「はい、武器を失ったお前の負けな」
「え、は、はぁ!?ちょ、ちょっと待て!その魔眼とやらの力は……?」
「なんでお前に教えなきゃいけねーんだよ。あ、もしかして信じちゃった?自分が何かしらの能力で負けを認めさせられるとか本気で信じちゃったぁ?ぷーくすくす!ウケるんですけど!調子こいて勝負とか言っちゃった挙句、格下のハッタリに騙されてご自慢の武器盗まれるとかちょーウケるんですけど!」
「あぁ……そうだ、コイツはこういうことする奴だった……はは……うぇっ」
「ああ!クレアさんがトラウマで吐きそうになってる!」
「トラウマじゃないぞ……トラウマじゃないからな……」
やっぱり騙されたコイツ。
どうせ【魔眼】って聞いて写○眼連想したんだろ?なんでもありの勝負で敵の言うことを間に受けるとか、煽り抜きで超ウケるわ。何で目に関する力ってだけで強そうに聞こえるんだろうね。
実際にはただちょっと動体視力が良くなって、魔力の動きが見えたりするだけなのに。それの仕様がちょっと便利すぎるが。
そう、この【魔眼】というスキル……ベルディアさんはただの近接戦闘補助のように言っていたが、本質は『魔力の流れを観る』というスキルであり……その性質を応用して、魔力があるものであれば『ロックオン』することができる。
本来はロックオンしたところで魔力の流れをより細かく見れるだけというただのオマケ効果。だが、他のスキルと併用することでロックオンは真価を発揮する。
【狙撃】スキルであればロックオンした部位へ必中となり、仮に魔力のある物質をロックオンすれば……【
本当に最高のスキルだ。ベルディアさんには感謝してもしきれない。
「んじゃ、この魔剣は貰っていくぞ。あぁ、それと……」
「ひ、卑怯者卑怯者卑怯者ーーっ!あんた恥ずかしくないの!?」
「こんな勝ち方、私たちは認めないわ!さっさとその魔剣グラムを返しなさい!それはキョウヤにしか使えないんだから!」
ミツルギの仲間が喚き散らしている。俺は負け犬の遠吠えを軽くあしらおうと……ちょっと待て今何つった。
「え、マジで?これ俺には使えないの?」
思わずクリスに尋ねる。
「……はい、その魔剣グラムはミツルギさん専用です。なので、カズマさんが持っていても少しよく切れる剣位の価値しか無いと思います。だから返してあげても……」
「えー……」
チッ、何だよ……せっかくチート武器が手に入ったと思ったのに……
「まあ良いや、この安物のダガーよりは強いだろ。そんな訳で、これは貰っていくから」
「カズマさん!?」
「まっ、待ってくれ!」
またもミツルギが俺の前に立ち塞がり、日本人らしく土下座を決めた。おい、仲間の前で恥ずかしく無いのか?
「……何でも一つ言う事を聞くなどと言っておきながら、こんな事を頼むのは虫が良いのも理解している。お願いだ、魔剣グラムを返してくれないか?代わりに、武器屋で一番高い剣を……いや!装備一式を買ってあげよう!」
「……はぁ?何言ってんだお前?」
「確かに、こんな事を頼むのは恥晒しだと分かっているが……」
「いやいや、そっちじゃねぇよ」
「……へ?」
俺の言葉に、素っ頓狂な声をあげて顔を上げるミツルギ。
「だから、何でも一つ言う事を聞くと言っておきながら〜って所の話だよ?俺はまだお前に何も命令してないぞ」
「……は?」
ミツルギは何を言われたか理解していないように、目を見開いて固まっている。
「だーかーらー、この魔剣は俺がスティールで手に入れた物だろ?つまりはただ実力で奪っただけ。命令とは別だろ」
「え、ちょ……はは、ちょっと何言ってるかわからないな……」
「『何言われても恨みっこ無し』だろ?回数制限もしてないし、勝った時とも言ってない。何かおかしいこと言ったか?俺」
「「「……うわぁ……」」」
ウチの3人組は、みんながみんなドン引きしたような目で俺を見ている。
「い、いや、それは……」
「まあ良いや、んじゃ命令な
うーんそうだな……
取り敢えずこの街で一番広くて高い屋敷と、そこに置く為のこの世界で最高級の家具一式を全部屋分、よこせ」
俺以外の全員が、絶句した。
やったねカズマ!屋敷と魔剣が手に入ったよ!