幸運の女神様と共に(リメイク版)   作:圏外

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そろそろ前作の焼き直しが終わりを迎えます。


第十二話

 ミツルギ事件(ゆんゆん命名)から数日。俺たちはとある場所に来ていた。

 

 

 

「ここか。なるほど、流石に町一番の豪邸と言うだけはあるな!」

 

「……私は罪悪感で今にも潰れてしまいそうなんですけど……」

 

 街の郊外にある、一軒の巨大な屋敷。

 

 そう、ミツルギ事件で俺があいつに要求した『この街で一番広くて高い屋敷と、この世界で最高級の家具一式を全部屋分』の屋敷の方である。

 

「……それにしても大きいですね。屋敷にしては小さい方だと業者の方は言っていましたが、庭まで合わせると紅魔の里の5分の1くらいありそう」

 

「いまいち例えがわからんが、別荘ならこんなものじゃないか?」

 

 ちなみに、ゆんゆんとクレアは我関せずの姿勢を貫くことにしたらしい。要求についてはやり過ぎだと思うが、ミツルギにも非があるからとりあえず静観、ということだそうだ。

 

「……カズマさん」

 

「ん、なんだクリス」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それでは、話を少し前に戻そう。

 

 魔剣グラムは、現在ベルディアさんの元で『預かって貰っている』状態である。これは別に、俺が魔剣を売っぱらったからベルディアさんの店のショーケースに展示してあるという意味ではない。ただ預かって貰っているだけだ。

 

 と言うか、元々俺に扱えないとわかった魔剣に興味はない。持ってみたところ結構重いし、下級の戦士職にすら就く事が出来ない俺にあんなでかい剣を扱えるとは思わないし。

 

 つまり、あの剣は交渉用に奪ったのである。屋敷はやり過ぎだというのは重々承知、その上でミツルギの中で屋敷と同程度の価値を持つであろう魔剣を奪っておき、片方を返すという条件で屋敷を手に入れようという算段だ。

 

『最初に無理難題を押し付け、少しずつ要求の度合いを下げる』というやり方の値引き方があるそうだが、俺は『交換条件を出すことで無理難題に正当性を持たせる』方法を採った。交換条件用の魔剣もミツルギから奪ったものだし、コスパ最高である。

 

「大丈夫大丈夫。勿論、約束は守る」

 

「本当ですよね⁉︎最後になってやっぱやめたとか言いませんよね⁉︎」

 

 ……しっかしまぁ本当に屋敷をくれるとは。あいつどんだけ金持ってたんだ?流石に冗談半分だったんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん!なんとなんと、キセルから出てきたのはネロイドでしたー!」

 

「うおおおお⁉︎どうなってんだコレ⁉︎」

 

「アクア様!もうあんたが女神でいいから、もう一度!もう一度お願いします!」

 

「だーめ。やれと言われてやったら本当に芸人になっちゃうじゃないの。それに、一度ウケたからといってそれを何度もやる様な安い女神じゃないわ。

 そんな事より、次のもすごいわよ!なんとなんと……じゃーん!屋敷の壁に起動要塞デストロイヤーッ!」

 

「「「おおおおお‼︎」」」

 

「やめろ!俺の屋敷を汚すな……って凄っ⁉︎」

 

 俺が拠点を手に入れて初めての夜。

 

 一体何処から漏れたのか、俺が屋敷を手に入れたことが冒険者連中にバレていた。

 何かにつけて呑んだくれてるこいつらがこんな絶好のイベントを見逃してくれるわけもなく、俺の新居は宴会に巻き込まれてしまった。

 

 それを聞きつけ、宴会芸の神こと駄女神アクアもやって来た。宴会なら自分に任せろとばかりに駆けつけ、酒を呑んではしゃぎ回り、今は本業の芸の方をやっている。

 

 正直な所、うるさいだけでとても迷惑だと思っていたのだが、アクアの芸の腕はまさしく神懸かっていた。壁に描かれたハ◯ルの動く城っぽい兵器に至ってはもはや芸術品の域である。

 

「あれ⁉︎さっき酒を壁にぶっかけただけだった様な……ちょ、ちょっとアクアさん?もう一度同じ事を……ああいや、同じじゃなくてもいいから似た様な事を……」

 

「だーかーらー、さっきも言ったでしょ?私は同じことは二度とやらないの」

 

「そこをなんとか!一応ここの家主は俺なんだし、少しくらい……あいたっ」

 

「なにやってるんですか。アクア先輩もあんまり屋敷を汚さないでくださいよ」

 

「なによー!せっかく盛り上がってるのに!そんなこと言ってると、あんたのその胸パッド取り上げ「わー!わかりました!芸はやって良いですからそれ以上は言わないでください!あと壁も汚さないで!」ったく、しょうがないわねー」

 

 やれやれとかぶりを振り、また芸を始めるアクア。赤くなっているクリスは恥ずかしそうにしている。

 2人は先輩後輩の間柄だと言うし、案外天界では仲が良かったのかもしれない。少なくとも相性は良いように感じる。

 

「ハハッ、女神様にも可愛い一面があるんだな。意外だよ」

 

「いつもあんな感じだっての」

 

 今話しかけてきたのはミツルギだ。なんだかんだ宴会に参加しているあたり、ちゃっかりしている。屋敷を買ったのはミツルギなので、どちらかと言えばいない方がおかしいのだが。

 

 一応は和解したが、色々酷い目に遭わせたはずなのに平然と話しかけてくるのは……さすがに女をはべらす勇者候補なだけあってリア充というか、図太いというか。

 

「……それにしても、アクアさんって何者なんだ?昔から凄い芸をするとは思っていたが、エリス様……もといクリスさんに先輩と呼ばれているようだが……」

 

「そっくりそのまま先輩の女神らしいぞ。もともとクリスが俺たちの世界の担当で、あのアクアがこの世界担当の女神なんだと」

 

「本当かい!?それは……意外だな。昔ウチのパーティに勧誘したら断られた挙句逆にしつこく宗教勧誘されて困ったものだが、改宗してでもパーティに入って貰うのもアリかもしれないな」

 

「お前……マジかよ」

 

 どうやらミツルギはアクアに目をつけたらしい。確かアクアの宗教は奇人変人の集まりだと聞いたが、こいつは知らないのだろうか。と言うかクリスに断られたから別の女神に目をつけただけのように見える。

 

「あんなの見てよく誘おうと思えるな。どう考えてもろくなことしないだろ」

 

「僕は、女神様をパーティメンバーに出来るのならどんな事でもするべきだと思う。それは君が一番良くわかってると思っていたんだが?」

 

 そういうものなのか?

 

「ま、わからんこともないけどな。クリスには色々助けられてるし。たまに暴走するけど」

 

「ははは、彼女は意外とお茶目なんだな。意外と言えば、君がみんなのお酒代を払っているのも意外だったよ。かなりお金にはがめついイメージがあったんだが……」

 

「はぁ?なに言ってんだ、冒険者仲間とは繋がりを作っておくに越したことはないだろ。少なくとも、何かあったら助けてくれる程度の間柄は必要なんだよ」

 

 ミツルギの場合、チートを貰って転生したのだから1人でも充分に活躍が出来て、のちに仲間が出来た、という流れだろう。だが俺は俺自身が強い訳じゃないから、つーか俺自身は強くなれる気がしないから。

 

 いざという時、自分は頼りにならない。なら仲間に頼るしかないのだ。丸投げとも言う。

 ここの男の冒険者は()()()があるからか、結構高レベルな人が多い。レベル30台のベテランもちらほらいる。

 

「……そうか。君にとっては、仲間は屋敷にも匹敵する程の……いや、何よりも価値があるものなんだね」

 

「……」

 

「改めて、この前の件はすまなかった。これで許してもらえるとは思っていないが、この屋敷を僕の気持ちだと思って受け取ってくれ」

 

 深々と頭をさげるミツルギに対して、俺はなにも言わなかった。

 ……印象って大切だと思うんだ、うん。

 

「……それはそうと、僕がここに来たのは宴会に参加するためじゃないんだ。ちょっと君に話したい事があってね」

 

 穏やかだったミツルギの表情が、急に深刻そうな面持ちに変わった。

 

「話したいこと?

 ああ、あの魔剣の話か?あれは信用できる場所に保管してあるから……」

 

「いや違う……そっちの話も聞きたいが、今は違うんだ。

 ……最近何か変わったことないか?こう、クエスト中にモンスターに襲われたりだとか」

 

「いや、そんなことはないぞ。そもそも街から出てないからな、先週くらいに冬牛夏草(とうぎゅうかそう)の討伐に行ったのが最後だし」

 

「……そうか、ならいいんだ」

 

 ……変な奴だな。

 

「まぁいいや、飯でも食おうぜ」

 

 そう言ってテーブルの方に目を向けると……

 

 ……そこにはもう俺たちの飯は残っていなかった。

 

「もぐもぐ……ごっくん」

 

「……」

 

「……」

 

「ふぃー、久しぶりにこんなにいっぱい食べれましたよ……あ、私のことはお構いなく」

 

 料理の代わりと言わんばかりに、大量の皿が積まれた席に座った黒髪の少女が、満面の笑顔で俺たちを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、ベルディア魔道具店。

 

「……どうしてこうなった」

 

 ベルディアは目の前に置かれた神器(魔剣グラム)を見つめながら、なんとも言えない虚しさに襲われていた。

 

「そんな便利スキルじゃないだろ魔眼は……どっちかというと上級者向けの戦闘補助スキルのはずが何故こんな反則スキルに……」

 

 実際は反則級と言えるほどのスキルでもなく、色々と縛りはあるいのだが、使い手と組み合わせによって化けるスキルなのは間違いない。

 

「……どうしたもんかなぁ、クリスちゃんが居る以上あんまり強くも出られんし……できれば持ち主に返してやりたいところだが」

 

 カズマが決闘で手に入れた魔剣グラム。使用者以外が使っても効果が薄い神器だが、珍しい武具を収集しているコレクターは嬉々として飛び付くだろう、上物の武器だ。

 

 そういったコレクターの手に渡れば、未来永劫陽の目を見ることはなくなってしまうだろう。

 

 魔王軍幹部のベルディアとして考えるのなら売り捌くのが正解なのだろうが、武器防具の類は戦場で輝くのが1番、と考えてしまう騎士ベルディアとしての感情がそれを許さなかった。

 

 ミツルギに要求したと言う屋敷を受け取ったら返すとカズマはベルディアに言っていたが、どう贔屓目に見てもカズマはまともな神経をしていない。期待は薄いだろう。

 

 実際、クリスをけしかけられたらまず勝ち目がないベルディアは、期待に身を委ねるしかなかった。

 

(しかし……クリスちゃんは一体何者なんだ?ただの上級アンデッドならまだしも、魔王軍幹部であり魔王様の加護によって神聖属性を遮断している俺にあそこまでのダメージを与えるなんて……)

 

 事実、ターンアンデッドでベルディアにダメージを与えられる人間など、ゼスタかエリス教の大神官くらいであり、世界最強のプリーストとして名を馳せる者たちである。

 

 それを鑑みると、明らかにクリスの異常さが際立つ。ベルディアが知る由もないことだが、クリスのレベルは未だ一桁だ。

 

 クリスは、もしかしたら神の加護を受けた本物の勇者か……本腰を入れた天界が遣わした天使の類か。ベルディアはそう予想していた。

 

「今の魔王もそろそろ歳だし、世代交代も近いかもな。流石に娘ちゃんが負けるなんてことはないだろうが……」

 

 そんな独り言を語っていると、不意に扉がノックされ……鍵がかかっているはずの扉がゆっくりと開いた。

 

「ん?……ッ!?」

 

 そこには、長らく顔を合わせていない同僚の姿。

 

 端整な顔立ち、ふわふわとしたウェーブのかかった栗色の髪に、雪のように白い肌。

 

 それに、えらく身体のラインがはっきりと出る、フードに悪魔のツノが付いたデザインの黒いローブを纏っている。

 

 好きか嫌いかで言えば好きだが、過去に色々と確執があり少々苦手意識のある美女は……その実力に見合わずおどおどとした態度で、爆弾を投げかけてきた。

 

「あの……なんでもお手伝いしますので、暫くここに泊めてもらえないでしょうか……」

 

 ベルディアは鼻血を吹きそうだった。




ウィズのローブは原作1巻の挿絵で着ている服です。
あの格好はちょっとえっちすぎる。
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