一杯のコーヒー
「な、何とか勝った」
夜襲を仕掛けてきたショッカーの再生怪人軍団を満身創痍になりながらもどうにか全滅させることができた。新型の怪人が出撃していないとはいえ、殆どの怪人とは私は戦ったことがないから必然的にボロボロになる。それも一度に大群が襲ってきたら、もうフラフラだ。一文字さんも疲れてはいるみたいだ。私よりもマシではあるみたいだけど。
「さてと帰ろうか」
「はい」
サイクロン号に乗ってレーシングクラブに帰った。
「お疲れ様、お二人さん」
帰ると親父さんがコーヒーを淹れて待っていてくれた。もう夜遅いのに。
「ありがとう、親父さん。こんな夜遅くまで起きて私達を待ってくれていて」
「いいよ、これくらい。お前達がやっていることに比べたらどうってことない」
「悪いね」
「さぁ、早いこと飲みな。冷めると良くない」
コーヒーの香りが何ともたまらない。カップを手に取り、一口飲む。
「あったかい…」
「親父さんは本当にコーヒーを淹れるのが上手だよ。コーヒーショップ始めても成功するんじゃないのか」
「かもしれんな、ハハハハハ…」
お店始めても大丈夫だろうね。美味しいもの…、それに何よりあったかい、なんだろう「あったかい」コーヒーといえば前にも何処かで…
「あれ、ここは…」
どこかの病室みたいだ…。SF映画みたいなのが気になるけど。
「うーん、何だか頭がジーンと痛い」
頭でも打ったのかな。その割には手を回してもたんこぶもない。じゃあ何でこんなところにいるのか。
それにしてもだだっ広い部屋だ。周りには機械以外何もない。恋愛小説でも置いてあれば良いんだけど。
「〇〇!」
「ふぇっ!」
部屋に誰か入ってきた。でも変だ。みんな顔が見えない。いや正確には見えている。ただ顔にモザイクがかかっている。おまけに声も機械音声みたいだった。そんな人達が何人も来たから少し身構えてしまった。
ただどうやらみんな私を心配してくれているみたいだった。私に何か話しかけたり、色々していた。何だか体や頭の中に良くないものがあったらしいんだけど、よく聞こえなかった。
「…が、私を…、助けてくれた。…陽だまり…」
見舞客の1人が私の手を取ってこんなことを言っていた。私がこの子を助けたらしいんだけど、何のことだか思い出せない。
やがてみんな帰ってしまい、少しした時また誰か入ってきた。ただコーヒーの入った紙コップしか見えなかった。どうなっているんだろう、私の記憶。
「あったかいもの、どうぞ」
その声に促されて紙コップを受け取った。コーヒーを一口飲む。
「あっ、これ…」
親父さんのコーヒーと同じ味…。いや違う、味じゃない。暖かさだ。このコーヒーの暖かさが親父さんのコーヒーと似ているんだ。
「多分、同じ暖かさを持つコーヒーを昔の私は飲んだことがあるんだろうなぁ」
記憶の底にコーヒーの暖かさが残っていた。私の身体はそれを覚えていたんだ…。
「あれあれ、寝てしまったな」
「コーヒーを持ったまま寝てるね、親父さん」
「器用なもんだ。まあいい、部屋まで運んでやるとするか」
「俺も手伝うよ。いい夢見ろよ、麻由」
如何でしたか。