そのため色々とぼかしています。ただこのお話に繋がるかは未定です。
舞台は帰還後になっています。
それではどうぞ。
その日は11月だというのに吹雪だった。
そんな吹雪のヨーロッパの小さな町の中をこれまた小さな人影が紙袋を抱えて早足で歩いていた。何かに見つからないように必死に歩いているようだ。
「あれに見つかったら、僕はもうおしまいです…」
建物の陰に途中隠れたりしながら、人影は町外れの森にある小屋を目指した。
「なんとか無事に辿り着きました…」
件の人影は道中何事もなかったことに胸を撫で下ろし、小屋の中に入った。
小屋の中では女性が1人、暖炉の火に当たっていた。
「ただいま戻りました。未来さん」
「お疲れ様、ありがとうね。エルフナインちゃん。態々、買い出しに行ってもらって。」
人影ことエルフナインが話しかけると左目に眼帯をつけた女性、小日向未来が彼女の方に振り返ってねぎらいの言葉を掛けた。
「いいんです、これくらい。それに今日は未来さんの誕生日なんですから、ゆっくりしていてください」
「ありがとう。エルフナインちゃんもこっちにおいで。外寒かったでしょう」
「はい、ありがとうございます」
2人は火に当たって暖を取った。
「それにしてもさ…、エルフナインちゃん…」
未来はしみじみとエルフナインに話しかけた。
「何ですか」
「今日はあの子達は襲ってこないね」
「そういえばそうですね。道中、警戒していたのですが、杞憂に終わりました」
「あの子達と雖も、今日だけは暴れたくはないのかな」
未来の問いにエルフナインは答えた。
「そうなのかもしれませんね。確証は全くないですけど…」
「そうだね。でも…、そうだったらいいな」
未来は微笑んだ。エルフナインが言うように、相手にもそういう気持ちがあるとしたらそれはそれで嬉しいからだ。
(何せ、あの子達は私の妹みたいなものだしね)
「そうだ。未来さん。あまり大したものではないのですが、その…プレゼントを…」
「プレゼント?ありがとう。嬉しいよ」
「本当に大したものじゃないんです。今はどこに行っても役に立ちそうな材料はほとんど無いですし…」
エルフナインは申し訳なさげに答えるが、未来は気にしていなかった。
「こんな状況下でプレゼントを貰えるだけでも有難いよ。流石に今年は誕生日を祝うどころではないと思ってたから」
「喜んでもらえるといいのですが…、未来さん、少し仰向けに倒れてもらえませんか」
「いいよ」
そう言って部屋にある小型のベッドに仰向けに未来は倒れた。そこにエルフナインが小さな箱と道具箱を持ってやってきた。
「はい…、もういいですよ。未来さん、どうですか…、義眼の調子は」
「普通の目と同じようによく見えるよ。流石だね、エルフナインちゃん」
未来の左目にはエルフナイン謹製の義眼が嵌め込まれていた。普通の義眼とは違い、視力を回復させることが可能な優れものだ。
「少し前に片目を潰されてから戦うの大変だったから助かるよ」
「いえ、このくらい…。それに未来さんがその…、色々と大変な目に遭って、挙句の果てにはそのような身体になってしまったのは僕の責任ですし…」
そう言って未来を見遣ったエルフナインは、とても申し訳なさそうだった。
「いやいや、エルフナインちゃんの責任じゃないよ。並行世界に行くと決めたのは私だから」
「すいません…」
俯いてしまったエルフナインに未来はこう返した。
「別に辛いことだけじゃなかったんだよ。英語やバイクの扱い方を覚えたように、プラスのことだってちゃんとあったんだ。だからエルフナインちゃんが気にすることはないよ」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」
「夜も更けたし、そろそろ寝ようか」
「そうですね、おやすみなさい」
「おやすみ」
部屋の明かりを全て消して2人は眠りについた。
久しぶりにゆっくりと眠ることが出来た日だった。
帰還後の誕生日までに何が起きたのかは、後のお話をお楽しみに。
小屋には未来とエルフナインしか居ません。2人だけで祝った小日向未来の誕生日でした。