陽だまりシリーズ:小日向未来<外伝>   作:ヨザリイコイ

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前に異聞録でローゼンシュトックと共に出したローゼンクノスペ。
この子の本来の仕様は、偵察機なんです。神獣鏡のステルス機能で色んなところに入り込んでは情報を取ってきています。目が未来シリーズの中で最も良いことから、目視の状況確認だけでもかなり詳しい情報を持ってくることができます。
生まれつき声が出せないこともあり、潜入しても殆ど気づかれないのだとか。尤も一部の人からは、どうやってギアを装着しているんだと、疑問を持たれているらしいですけどね。


情報屋

 最近、バータイムを始めたみらい堂に足を運んだ。目的は、酒と情報屋からの情報。

「やあ」

 カランと音を立てて、ドアを開けて中に入る。

 中では昼間は使わないシガーパイプを燻らせながら、情報屋ことローゼンクノスペとポーカーに興じているななみがいた。

「あら、姉さん。宅飲み派の姉さんが、こんな遅くに来るなんて珍しいですね」

「偶には外で飲みたくなったのよ。あとポーカーしてるなら混ぜて」

「負けたらお勘定3倍ですよ」

「じゃあ私が勝ったら、3杯分タダね」

 私が条件を出していると、横からクノスペがずっとメモを出してきた。

「何々……、あたしが勝ったら2人で6杯分奢ってね……、良いよ。ななみはのる?」

「勿論。じゃあ始めましょうか」

「始める前に、ドライ・ジンちょうだい」

「はい」

 

 

 

 

 

 その後、4回やって結果は2勝2敗。クノスペに2回もやられた。

「おっかしいなぁ。ポーカーは、賭場で相当鍛えられたのに」

「それだけクノスペが強いんでしょう」

 ななみの言葉を聞いて、ニヤリと笑うクノスペ。またメモを差し出してきた。

「さあて、12杯も何を奢ってもらおうかなー」

「ななみ。今夜は大赤字だね」

「破産したら責任とってくださいね」

「それは無理。博打で負けたなら自己責任、自己責任。戦った相手がゴロツキじゃないだけありがたく思わないと」

「それもそうですね。経験者が言うと違うなぁ」

「未来はガチで責任取らされたことあるもんね」

「よく知ってるじゃない。まぁ、ガチでヤバイ目に遭う前に逃げ出したけどね。それはさておき……、これからはお仕事の時間だよ。そろそろ本題に入りましょうか」

 カードをななみに返して、クノスペとの交信を始める。仕事の話は、テレパシーを使ってやるのが、いつもの決まりだから。

 

 

 

 

「どう、クノスペ? 何かめぼしい情報は掴んだ?」

「そうだね……。バルベルデ共和国の旧政府寄りのゲリラがパヴァリア残党と組んで、11月21日に反乱を起こそうとしていることを掴んだよ。ヴァネッサと同じタイプの改造人間が残党の中にいてね、そいつが投入される可能性もある。これがその顔写真なんだけど……」

 見せられた写真に写っていたのは、何処かで見た顔だった。あのスタンリーさんの元の顔に少し似た顔付きの女の子。

「名前はパトリシア・スタンリーだよ。未来がこないだ助けた人の娘さん」

「あら、あの人子供いたの。まさかとは思うけど、これ奥さんに何かされたんじゃないだろうね」

「当たり。パヴァリアは、実験用の改造人間を相当数抱えていたみたいなのよ。シュトックと踏み込んだクレタ支部では30人くらいだったけど、その時に手に入れたリストには、ざっと300人はいたよ。その中に、例のパトリシアもいた。で、件のスタンリーさんの奥さんのエミリーが、その開発主任……」

「うわぁ、悪夢だ。思想に合わない存在をよくもまぁそんなに作ったものだよ。しかも娘利用するとは……。いや、そういう爺さんはすぐ近くにいたけどね。風鳴機関を潰した時に、ミライに始末させたけど」

「何処に行こうとそういう人間はいるのよ。そこまでトチ狂ったどうしようもない奴ってのは」

 バーボンの入ったグラスを傾けるクノスペの顔は、険しかった。私も同じ顔だったと思う。

「ったく……、そういう手合いはお人形さんか粘土細工で我慢しろって話だよ……」

「そんなお遊び程度で我慢できるなら、アタシらが出てくる必要ないじゃん」

「全くだ。しかし何処かの国がナチスの猿真似をするのは、最近じゃ下火になってきたけど、今度は秘密結社がショッカーの猿真似を始めたからキリがないや」

「パヴァリアの残党は、家が金持ちだったり、事業していたりして、金がある奴も片手に数えられるくらいは居るけど、大半は逃亡生活で食い詰めている奴らばっかだしね。奴さん達が資金源にしていた商売は、香港の映画製作会社とか、合法的な物も含めて粗方おじゃんになったし。残っているのは、精々麻薬の密売とかヤバいのくらいだよ。まぁ、それも商売敵のメキシコ・マフィアに潰されるのも時間の問題だろうね。キャロルの遺産は、今や暗黒街では安くてお手軽に使える無人兵器だからさ」

「そういや、ティファナって街でのマフィアの抗争で、アルカ・ノイズ同士が戦っていたことが、2ヶ月ほど前にあったね。鎮圧に行った翼さんとマリアさんが目を丸くしてたよ。何だこりゃって」

「残党が何かしらの切り札を持っているならまだしもさ、そんな話は聞かないし、前に響達が相手をした連中ほどの技量がある奴なんかいないでしょ。アルカ・ノイズだって、カラシニコフ並みに出回ってるんじゃ、錬金術師の出る幕はない。だから……」

「身売りをするまでに追い込まれた。サイボーグなら普通の兵隊よりも戦闘能力は高いから売り込めると……」

「そういうこと。量産型の子達やパヴァリアからの離脱者の人達に、注意を促した方が良いよ。後がない連中だから何をしでかすかわからないし。あと家族がいるモアナにも、いざという時に避難できるよう準備しておかないと。ミライにも、家族をこの世界に連れてこないことと避難所の開設を頼んだ方が良いかも」

「そうだね。こっちから注意喚起はしておくよ。あと避難に関しても、弦十郎さんの力を借りて、何とかしておく」

「早めにしておいてね」

「分かった。有益な情報ありがと。代金は今度口座に振り込んでおくから」

「まいどあり」

 

 

 

 

 

 ラムを一杯頼み、グラス半分だけ飲む。

「そういや、シュトックはどうしたの? あなたと番いの鳥みたく動いているあの子のことだから、この街の何処かにいると思うけど」

「ここの客間で寝てるよ。再来週、翼さんのライブにゲスト出演するから、その前準備も兼ねてここに来てるの。アタシもバックで演奏をする事になってるし、練習しておかないといけないからね」

 5ヶ月前に、翼さんがマルタであの子の歌を聴いて以来、2人でたまに会っているのを見てたけど、そんな話があったのね。

「へぇ……。とうとう其処まで漕ぎ着けたか……。南ヨーロッパとエジプトの方だと、地中海の歌姫ローゼンシュトックと言われてるくらいだし、翼さんやマリアさん程ではなくても、名前が売れている歌手同士の共演なんて面白いよ。そしてバックミュージックをクノスペが担当……、中々やるじゃない」

「ベーシストの人が腕を痛めているらしいから、その代理だよ」

「それでも人気歌手のライブで演奏なんて早々できることじゃないよ。頑張ってね」

「ありがと」

 

 

 

 

 

「それじゃあ、私もそろそろ休むね。明日の朝に東京まで行かないと行けないし」

「おやすみなさい」

「おやすみ」

 席を立って奥へと消えて行ったクノスペ。それを見送って、私はカウンターにいるななみの方に向き直った。

「良くやるね。情報屋をして、ベーシストして……」

「ほんと、活き活きとしてますね。羨ましいや」

 年寄り染みた会話をしながら、残ったラムを飲む。

「いや、ななみも十分活き活きとしてるよ。あの爺さんとその手下に片足だめにされても、また同じ場所で喫茶店続けてさ、しかも私達の拠点にまでしてくれるんだもの」

「非公式とはいえ、私も一応はS.O.N.G.所属の装者ですからね。これくらいの貢献はしないと。それにあん畜生とその徒党の殆どは、姉さんと妹達が片付けてくれましたし、生き残りは皆でお礼に地底旅行に招待しましたからね。もう心配要らないです。自由知らずの時代錯誤のダニを始末しておかないと、この国であの子達は演奏できませんから」

「そうだね……。まぁ、奴さん達に限らず、自由ってものが何なのか知らないしね。この国の人間はさ……。かくいう私もそうだけど、血みどろになってでも欲しいものって位はわかるようになってきたさ……。改造先が改造先だから説得力ないけどね……。はははは……」

「ふふふ……」

「あははは」

 2人して笑い合う。

「さてと……、今日は外泊許可貰ってるからさ、もう少し飲ませてくれないかな」

「良いですよ。アクアビットでもどうです?」

「命の水か……、2杯ちょうだい。1杯は貴女に」

「そりゃどうも」




如何でしたか?
ローゼンクノスペは、こんな感じで情報屋をする一方で、ローゼンシュトックのサポートもしています。やっていることは、緒川さんのそれに近いです。とはいえ彼のような技量は、クノスペは持っていませんけどね。経験の差や土台の違いがありますから。
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