陽だまりシリーズ:小日向未来<外伝>   作:ヨザリイコイ

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新約:裏切りの独奏曲

 アメリカの軍事衛星ネメシスが、誰かに乗っ取られたらしい。この衛星、かなり強力なレーザー砲らしくて、小さな軍事基地なら軽く吹き飛ばせるという私のパチモンのような代物。それを押さえるために、アメリカ政府から日本政府にS.O.N.G.の装者の派遣が要請されて、マリアさんが向こうに行くことになったんだ。乗っ取った奴は、変な物を使ってたらしいから。まぁ、前置きはこのくらいにしておこうか。

 それで調査に行ったマリアさん、どういうわけか敵さんの味方してるのよ。おかしな物を食べたわけでも、頭を弄られたわけでもないようだけど、なんか様子が変。

 探りを入れた方が良いだろうってことで、今、派遣人員を選定しているんだ。しかしながら、何とかなりそうな子は1人としていない。皆、かなり直情的だからね。慎重に事を運ぶのが苦手な子ばかり。

 私もバルベルデへの派遣任務があるから忙しい。

 そこで私の妹でスパイをやっていた子がいないかって話になったんだ。

 まぁ、いるにはいるけど、予定が合うかは微妙なところ。みんな装者が本業じゃないからね。

 

 

 

 

 最初に連絡したのは、ソヴィエトでスパイをしていたことがあるななみ。これは駄目だった。近くの高校のテスト期間らしく、店が忙しくて寧ろ手伝いに来て欲しいとまで言われた。

 次は情報屋のローゼンクノスペ。この子も無理だった。スペインのバルセロナでやるロックフェスに出場するから、特訓でそれどころじゃないって断られた。

 それで最後に連絡を入れたのが、プラネテューヌで諜報員をしていたミライ。異次元在住ということもあり、半ば駄目元で頼んでみたら、二つ返事で承諾してくれた。仲良しの子の誕生日プレゼントの材料費が欲しいからって。

 

 

 

 

 

「1人じゃ話になりませんよ。せめて2、3人でかからないと」

「それはそうだが、こちらも割ける人員がいないんだ」

「そうは言いましてもね、1人だけでは何かあった時、連絡が取れなくなってしまいますよ。万が一、敵さんに何かされた時に、近くに動ける人がいなければ、マリーさんの二の舞になってしまいます」

 司令室で弦十郎さんとミライが揉めていた。どうも単身乗り込むという条件に、ミライが危険過ぎると難色を示したらしい。確かにその通りだけど、弦十郎さんの言う通り、人材不足なのもまた事実。装者は5人に減ってカツカツだし、他の職員も交代人員含めてギリギリの人数で動かしている。だから割けと言われたところで、割ける人がいないのも無理はない。マリアさんが1人で派遣されたのは、そういう事情もあるらしいし。

 結局、このままだと収拾がつかないから、私が出る事になった。普通の任務が回ってくることは余程のことがない限りないし、稼業に関しても予定されていたバルベルデ行きが3時間前に中止になり、手が空いたところだったから。

 

 

 

 

 

 派遣が決まってから2日後、私達はサンフランシスコに降り立った。しかし降り立つなりミライは、レンタカー屋でフォルクスワーゲンを借りて、さっさと街から出て行ってしまった。

「ちょっと、サンフランシスコは調べなくていいの?」

「別に後でいい。それよか敵さんの情報が欲しい。顔写真だけじゃ、名なしの権兵衛を調べようとするのと変わらない」

 そう言って、手渡された写真に写っていたのは、赤みのある茶髪に眼帯を付けた女。情報はこれだけしかない。アメリカ政府に問い合わせても知らぬ存ぜぬだったから。

「ロスアラモス国立研究所だったか? レセプターチルドレンとかいう子らがいたのって」

「その筈だけど」

「まずはそこを探ろう。マリーさんと同年代くらいで、得体の知れないもの使ってこの国を拠点に暴れ回ってるなんて、そこの人間くらいしか出来ないと思う。いかれ科学者や錬金術師が絡んでるなら話は別だが……」

「なるほど。それであてが外れた時は、サンフランシスコに戻ってってことか……」

「そういうこと」

 

 

 

 

 

 半日かけてロスアラモスに辿り着き、そこから研究所に向かった。

 車を近くの空き地に置いて見に行ってみると、関係者以外立ち入り禁止と書かれたフェンスが張られていた。その隙間から見える建物に繋がっていたであろう吊り橋も支柱だけ、その姿を残していた。

 一旦、ビートルに戻り、あの施設のことについて話し合った。

「閉鎖されてる? いや、レセプターチルドレンを使った研究そのものは、まだ密かに続けられていたし……。でもこれは閉鎖して、何処かに移転したとしか……」

 でもどうも腑に落ちない。テネシー州のオーク・リッジに研究所が新設されたって情報もあるけど、調べたクノスペによると規模はかなり小さかったらしいし。

「最も設備が充実している場所を、災害やテロが起きた訳じゃないのに放棄するなんて考えられる?」

「いや。聖遺物の取り扱いは、ただでさえ莫大な費用が掛かるから、老朽化でもしない限り、施設を棄てるなんて考え難いよ」

「だろうね。現にあれ見てみなよ」

 ミライの指さす方向を見ると、大きなトラックが施設に横付けされているのが見えた。バックミラーが折れていて、フロントミラーに赤い物がべったりとついているのが気になるが、車自体は遠目から見てもまだ新しいのが分かる。野晒しにしていたとは、考え難い。

「あれが何かまではわからないけど、ほぼ新品のトラックをそのまま置くなんざ怪しすぎるわ」

 ビートルのドアを開けて、ミライは外に出て行った。

「行ってくる。留守番頼む」

「はいはい。気をつけて行っておいで。特に……」

 さっきから飛んでいる虫を見ながら、こう忠告しておいた。

「目玉虫には注意しなよ」

 その言葉にうなづいたミライは、物も言わずヒップホルスターからレジスタード・マグナムを引き抜き、左脇から銃口を覗かせて発砲した。

「ナイスショット」

 

 

 

 

 

 37分ほどして、ミライから連絡が来た。研究所のデータ保管所から例の人物の情報を引き出す事に成功したらしい。それと一緒に施設の様子も簡単にだが報告があった。

 それによると、施設はやはり現在も使われてはいるようだが、聖遺物の分析研究が目的らしく、昔日のような人体実験は行われている気配はないらしい。

 しかしながら、当時の研究記録はそのまま残されてはいるようで、これを参考にまたヤバイ実験を始める事はできなくなく、資材も残っているから気をつけた方がいいとのことだった。

「危険材料のままだったのか……」

 レセプターチルドレンがまた利用されていたことは、度々あった。案件と何処まで関わっているのか分からないけど、ここはもうちょい睨みを利かせておいた方がいいな。

 

 

 

 

 戻ってきたミライを迎えて、アルバカーキのモーテルへ向かい、そこでデータを見る。

 ミライの持ってきた暗号解読ソフト入りのノートパソコンを使い、回収したデータを開くとこう書いてあった。

「何々……、名前はジャンヌ・ロベスピエール。フランス共和国オーブ県……」

 データには、氏名、出身地、研究所を出た際の年齢、移動先までもが書かれてあった。

「9歳の時に2歳下の妹と一緒にレセプターチルドレンとして連れて来られた。それで4年間観測した結果、フィーネの器としての素質はなく、装者としての適性もないことから、ワシントン州ハンフォード・サイトのZ-08に移送された……」

「Z-08……」

 唾をつけてある研究施設をリストアップした手帳を紐解いてみたが、Z-01から05というのはあっても、08というのはなかった。

「ないね……、そんな施設は……」

「とすると……、何かの要因で吹き飛んだか……。例えばマリーさんの妹の死因と同じように、事故で施設がぶっ飛んだとか……」

「施設の移転もそうそうないしね。それに聖遺物を弄って大惨事なんてよくある話だし」

「まぁ、真相は分からないから明日はそこに行こうか。今日のところは、これくらいでいいだろう」

 

 

 

 

 翌朝、車を近くの店に返して、朝一の便でアルバカーキからシアトルに向かった。

「西と真ん中を往復してるね」

「ここまでの大移動になるとは思わなかった」

 7時間の空の旅を終えて、空港近くのレンタカー屋でフィアット500を借りて、ハンフォード・サイトの近くにあるリッチランドへ向かった。

「立入制限のある区域らしいから、後は歩きになるね」

「ああ、放射能汚染が酷い地域らしいが、そんなもの屁でもない。それより周りの警戒が何処まで厳重なのかが気がかりだわ」

「かなり厳重なんじゃないの。機密だらけの街って話だから、うっかりしてたら命落とすかもよ」

「怖いねぇ。怖いから目ぇ瞑っておくよ」

 助手席で後ろに倒した背もたれにもたれかかり、脚を組んでペルメルを吹かしているミライ。何とも太々しい奴。

「あんた、ホントは怖くも何ともないでしょ」

「勿論。死ぬのが怖くて装者なんかやってられんさ」

「それもそうだね」

 

 

 

 リッチランドのモーテルに車を止めて、ギアを装着してハンフォード・サイトへ向かった。

 そこに近づくにつれて、バイザーに表示される放射線量の数値が少しずつ上がり始めた。汚染のひどい地域っていうのは、やっぱり本当の話みたいだ。これなら簡単に人が立ち入ることなんてない。

 警備している重装備の兵隊を尻目に、「関係者以外、立入禁止」と書かれた看板の掛かった塀を飛び越えて中に入る。

「どんなものがあるのやら」

 しかし表の厳重な警戒とは裏腹に、中には幾つかのコンクリート片と建物の残骸があるだけだった。

「これだけ?」

「施設は取り壊された後だったのかな……」

 拍子抜けして、辺りを歩いて調べてみたが、特にめぼしいものはない。こりゃ困ったな。

「放射線量が多いくらいなら看板を置くだけでも良いはずなのに……、ん?」

「ミライ、どうしたの?」

「あれ」

 壁沿いに歩いていたミライが怪訝な顔をして、「この先、立入禁止区域」と書いてある標識を指差した。

「立入禁止の立入禁止なんて変じゃない?」

「確かに。それにガイガーカウンターの数値がだんだん減っていってるよ。そんな場所を立入禁止にするってことは……」

 標識の向こうに行くと、金網が張られていた。そして金網から向こうには、赤い線があちこちに張られてあるのが見えた。

「赤外線レーダーだ。そして横には……、おお怖い。バルカンが取り付けてある」

「それだけじゃない。下見てみな。地雷源になってるよ」

 バイザー越しに砂地を見ると30個ほど筒型の物が埋まっていた。Sミーネみたいな奴だ。

「よっぽど向こうに拙い物があるんだろうね。何だろうな」

「なんにせよ、向こうの建物の正体を暴かないことには、分からなさそうだ」

「そうそう、あの08と書いてある壁に辿りつかないことにはね……」

 

 

 

 

 空を飛んでシステムを飛び越し、壁の上から中を覗き込んだ。

 しかしそこには何もなく、何かが爆発したような痕跡が僅かに残っているだけだった。

「何にもないね……」

「発破解体したにしては、綺麗に吹き飛んでるし、原爆の実験なんかもうしてない筈だ」

「じゃあ聖遺物を使って爆発させたってところか……、ん?」

 焼け焦げた地面に妙な物が落ちているのが見えた。丸いブローチみたいなもの。

 地表近くまで降下してよく見てみると、あの目玉虫だった。でもピクリとも動かないし、ところどころ焦げていた。

「目玉虫が聖遺物絡みなのは、間違い無いか……」

 そしてここでこれに関する実験があったのは確か。件の女の人は、恐らくそれの被験者の生き残りで間違いない。

「これをサンプルに何とか調べたいけど、迂闊に触るのは危ないし……」

 そこでミライに使わない義手を貸してもらい、マジックハンド代わりにして、目玉虫の死骸を回収した。ついでに私たちを付けていた2匹も捕まえて、モーテルへと持ち帰った。 

 

 

 

「へぇ……、そんなのがあるんだ」

 エルフナインちゃんに例の目玉虫の写真を送ると面白い報せが返ってきた。イギリスの研究機関に同じ物があるらしい。

 その名もアルゴスの目。名前の通り、ギリシア神話の巨人アルゴスの目玉なんだけど、目玉虫ことベビー・アルゴスを寄生させることで、本体から対象を監視できるテレスクリーンのような代物。

 10年前に監視カメラの代わりにする話があったそうだけど、プライバシー権との兼ね合いやコスト面の問題でおじゃんになったらしい。

「アメリカにもどういうわけかそれがあって、ネフィリムみたく変な研究に使った挙句、あそこをドカンと吹き飛ばしたってところかな?」

 それで爆死した研究員は、独身ならダーウィン賞狙えるよ。何とも間抜けな話じゃない。

「何か分かったかい?」

「うん。あれは超強力な監視カメラみたいなものだよ。しかも迂闊に触ると寄生するらしいから、義手で回収しておいて正解だった」

「後で弁償してね。800ポンドで勘弁してあげるから」

「分かった、分かった」

 マグカップを受け取り、中に入ったコーヒーを飲む。

「親玉から操作して、こっちの動向を監視できるらしいよ」

「私達と変わらんね。といっても攻撃は体当たりしかできないみたいだが」

「そこはどっこいどっこいでしょ。しかしながらこれ使って、宇宙空間からレーザーぶち込むなんて、なかなか派手好みだね。例の人は……」

「狙撃銃使ってスナイパーやった方が良い気もするがね。かなり慎重にしないといけないけど、レーザーよりも周りに迷惑かけ難いし、何よりよく目が見えるのだから」

 そんな事を話していると呼び鈴が鳴った。

「はてさて、誰も呼んだ覚えはないのだけど……」

「出前頼んだ覚えもない。食材はあるし」

「となると、待ち人来る……か?」

「いらっしゃった……か?」

 覗き窓を見ると、眼帯をつけた茶髪の女の人、件のジャンヌ・ロベスピエールが立っていた。

 

 

 

 

「コーヒーどうぞ」

「いや、お気遣いだけで結構。何分、コーヒーは苦手な物で」

「そうですか。それで何かご用ですか? 自首するなら場所が違いますよ。私達は、FBIでも州警察でも無いですから」

「そのつもりはない。取引をしに来ただけだ」

「取引?」

「そうだ。お前を仲間に引き込みたい」

 まさかヘッドハンティングしに来るとは思わなかった。そして私の事もよく知っている模様。目玉から見ていたのか、前から知っていたのか、それは知らないけど、ヘッドハンティングしに来たとなると後者と見た方がいい。キッチンにいるミライには、声をかけてないし。

「仲間と言われましてもね……。そちらの目的を聞かない限りは、お答えしかねます。何と言いましても、テロの片棒を担がされる訳ですからね」

「目的か。この国の違法研究施設の破壊及びそこの技術者の抹殺だ。非道な研究に携わる者を生かしておく訳にはいかんのだ。妹のメルと生きていくためにはな」

「ははあ……、成る程。確かにリスキーですからね。イカレポンチがのさばる世の中で、訳ありの体を引きずって生きていくのは……」

「理解が早くて助かる」

「しかしながらお誘いについては、申し訳ないですがお断りします。こちらとしては、バックボーンのない貴女とビジネスをしたところで、損をするだけですから」

 なるべく穏やかに断ったが、向こうさんはどうも不満らしい。でもこの人、胸の中を覗き込むとS.O.N.G.のような良いパトロンやビジネスパートナーはいないようだ。着ている服がどこか貧乏くさいことからもそれは十分分かる。この御時世に一匹狼なのは立派だが、しみったれのテロリストと付き合える程、こっちも余裕がある訳じゃない。

 ジャンヌが口を開こうとしたのを手で制し、こちらから話題を切り出した。

「とはいえ、そちらの目的はただのテロではなく、違法研究の絶滅と妹さんの安全保障ということはよく分かりました。これは、あまり大きな声では言えないのですが、前者に関しては、我々の業務の一部とも一致します」

「何?」

 向こうの目の色が変わった。食いついてくれたようだ。

「そのような話は、マリアからは何も……」

「知らなくて当たり前ですよ。こんな事、表に出せる話じゃないですから」

 これは本当の話。私達の汚れ仕事を知っている人は、S.O.N.G.でも一握りだから。

「どうでしょう。一つ、我々と一緒に仕事をしませんか? 今のようなテロを仕掛けては、目的を達成してもその後の生活に差し障りが出てしまうでしょうし、妹さんが何を言われるか分かったものではないでしょう?」

「それは……、そうだな……」

 マリアさんと同じタイプだ。妹さんを盾にされては、無茶な事をしようとは考えないらしい。

「パトロンがないままだと、食事にも事欠く悲惨な状態になりますし、懐事情なども照らし合わせて、考えてはもらえませんか?」

「分かった……。だが少し考えさせてはくれないか? 急に押しかけた私がいうのもなんだが、直ぐに決めるわけにもいかん」

「構いませんよ。こちらも本部との調整が必要ですから」

「助かる。ではまた明日」

 こうしてジャンヌは帰っていった。

 

 

 

 

 

「つ、疲れた……」

 疲れがどっと出て、ソファーにもたれ込んだ。交渉なんかしたことないから、物凄く緊張した。

「初めてにしちゃ、上出来だったよ」

 アイントプフの入った鍋を持ったミライが、ニヤリと笑いながら出てきた。

「ヴァネッサ達との取引の時に、貴女こんなことしてたの……?」

「まあね。でも奴さん達は牙のない狼同然だったから、あの人ほど危なくはなかった」

 そりゃ整備不良で瀕死の改造人間じゃ、そこまで怖くは無いよね。

「ふーん。でも確かに棍棒があるのと無いのとでは訳が違うよ。しかも振り下ろされた時の被害は甚大……」

「奴さんの意向次第でおまんまの食い上げになるからね。怖い話さ……」

 その()()()()の支度をしながら、ミライがそうぼやいた。

 

 

 

 

 

 夕食のあと、弦十郎さんから連絡が入った。例のジャンヌさんの件についてメールを送ったら、直ぐに確認の問い合わせが入った。

「敵の目的は、君とほぼ同じなのか?」

「はい。ですからこちらに来ないかどうか説得してみたんです。下手に衛星兵器なんか使って暴れられるよりもリスクは最小限に収まりますし、何より法的な保護が受けられない状態では、妹さんの世話もままならないとかで……。勝手なことをしてすみません」

「いや、被害を抑えられるのなら、別に咎めはしないさ。しかしその姉妹をどうやって脱出させるか……。これは中々の難問だぞ」

「そこがネックですか……」

 どうしたものかな。2人とも顔はそこそこ割れているし、何より身体に聖遺物がくっついてるとなると、変装させたくらいじゃ駄目だろうな。

「日本大使館に逃げ込ませるとかは……」

「無駄だ。どの国の在外公館でも、大っぴらに亡命希望者を受け入れることは出来ないんだ。警備兵が駆け込んできて、一巻の終りになる」

「そうなんですか……。知らなかった……」

 拙い事になった。どうやってあの子達を逃そうか。

「あのさ……。生き返らせたらどう?」

 悩んでいると、さっきまで黙っていたミライが口を挟んできた。

「え? 生き返らせる?」

「ステュクスの岸辺への往復切符を2枚発行するんだ。死んだ奴に手出しなんかできやしない」

 ステュクス……、死んだ奴……、ああその手か。弦十郎さんも何のことだか合点がいったらしい。前に人一人亡命させた方法を使うつもりだ。

「棺桶2個と死体2体なんてどう用意するのさ」

「棺桶も死体も要らないようにすればいい」

「何方も不要ということは……」

「お空の星に願ってもらえば、済む話ですよ。弦さん」

「自爆か」

「そういうことです。堅牢にできている私達はともかく、聖遺物をくっ付けただけの人間じゃ、あんなの食らえば骨も残らない筈」

「脱出はどうする?」

「私に変装させますよ。ジャンヌって人は、背丈は私と同じくらいですから。ただ……」

「一つ穴があるよね。妹さんどうするの? 調べたデータ見たけど、私よりも背は低かったよ」

「そこが問題なんだよ。旅行鞄に隠れてもらおうかとも考えたんだけど」

「そんなことして生きていられるのは、あんたの知り合いのお巡りさんくらいでしょ。そうだ、マリアさんに連れ出してもらうのは」

 マリアさんが彼女を連れて脱出したら、見つかったとしても、人体実験の後遺症からS.O.N.G.の医療施設での検査が必要だのなんだの言えば、かなり苦しいけど筋は通せる筈。

「それでいこう。よろしく頼むぞ」

「分かりました」

「任しといてください」

 

 

 

 

 

 

 2日後、私はメル・ロベスピエールとともに脱出してきたマリアさんと()()()をフィアットに乗せて、リッチランドを後にした。勿論、メルには変装させている。

「お疲れ様でした。マリアさん」

「ありがとう……。でも一体どういう風の吹き回しなのかしら。急にこの子を連れて逃げろなんて言いだすなんて……」

「さあ? 資金も物資も底をつく寸前だったから、妹さんだけでも逃すつもりだったんじゃないですか? おっと、そろそろ始まるみたいですよ」

 カーテレビからジャンヌのアジトの位置が割れて、陸軍が制圧に向かったというニュースが流れてきた。

「いよいよだが……、彼女は大丈夫なのか?」

 横から心配そうに()()()が小声で話しかけてきた。

「大丈夫だよ。無茶ならこんな事しないよ」

「だと良いのだが……」

 身代わりを心配してくれているところからして、根は悪い人ではないみたいだ。

「そのうち派手な花火が見られるさ。心配しないで」

 

 

 

 

 

 リッチランド空港で待機していたヘリコプターに乗って、緒川さんの操縦でS.O.N.G.の潜水艦が待機している太平洋に向かった。

「緒川さん、なるべく急いでこの街から離れてください」

「分かってますよ。花火に巻き込まれては、ひとたまりもありませんからね」

「万が一巻き込まれたら、忍法でどうにかなりますか?」

「流石に無理です。ただこれは足の速い機体ですから、街から逃げるのに15分もかからない筈ですよ。予定時刻前に退避することは可能です」

「民間機の待避の方はどうなってますか?」

「上首尾です。既にワシントン州政府からアジト付近を通る全ての交通機関や道路へ通行制限が出ています。それに周辺住民への避難命令も出ていますから、民間人が巻き込まれる可能性は、限りなく低くなっている筈です」

「良かった。巻き添えを喰う人が居ては大変ですから」

「全くです」

 さあて、後はあの子がうまくやってくれることを祈るだけだ。

 

 

 

 

 シアトル上空までヘリコプターが来た時に、遠くの方で黄色い光の筋が見えた。ネメシスの最後の1発が発射されたようだ。

 そしてそのすぐ後に、空の上に赤い物がポツポツと見えた。あのやばい人工衛星が崩壊して、部品の一部が流れ星にでもなったのだろう。何とも不細工な星だ。流れ星を見るのは好きだけど、あれはできることなら2度と見たくない。例え響と一緒でもだ。

「あーあ……、シアトルの夜景が台無しだよ…………。ミライから群蜘蛛借りとけば良かった……。あんな星、一振りすれば真っ二つにできるのに……」

 帰ったらスコッチ飲んで寝よう。仕事だから飲めなかったし。

「それにしてもミライさん、大丈夫でしょうか」

 緒川さんも心配してくれてはいるみたい。人気者だね、あの子。

「あいつは傷の治りが悪いだけで、私同様、頑丈さは半端じゃないですから大丈夫だと思いますよ。弦十郎さんも訃堂も奴には致命傷を負わせることも能わなかったんですから……。チンケな衛星兵器くらいで死にはしませんよ」

「そうですね。未来さんや未来さんの妹さん達には、攻撃を当てても当てても起き上がってくるから、こちらが先に疲れてしまうと司令も仰っていましたし」

「へぇ……、そうでしたか。まぁ、実際のところ、それくらいしか対抗手段が無いんですよね。テクで挑めば負けますし」

「長所を利用するのは、良いことだと思いますよ。溺れてしまうのは、決してよくありませんが」

「そうですかね……」

 

 

 

 

 

 潜水艦に着艦したヘリコプターからロベスピエール姉妹を降ろし、射爆場に連れ込んだ。神獣鏡を使うには、ここが一番良いからだ。

 どうもアルゴスの目が、2人の体をいつぞやの響のガングニールの如く蝕んでいるそうで、神獣鏡でそれを消し飛ばすことにしたんだ。

「それじゃ、治療にかかりますよ。威力はなるべく弱くするけど、痛いのは痛いからそこのところは勘弁してね」

 普段は鈍器がわりに使うのが関の山だったアームドギアを2本取り出し、先端に光を集める。右手のは細く、左手のは太く。

「いくよ。せぇのッ!」

 2人にそれぞれビームを撃ち込む。ジャンヌには左目に、メルには全身に。ジュッと2人の患部が焦げていく。決して本人達を溶かさないように、慎重に光を当てる。

「上手くいってくれよ……」

 

 

 

 

 

 アルゴスの反応が消えたことが、神獣鏡に表示された。

「終わったか……。もういいよ、お二人さん」

 私の言葉には、何の返事も返ってこなかった。どうやら気を失ってしまったらしい。無理もない。聖遺物の切除は、今までも何度かしたことがあるが、気絶しない奴は1人もいなかった。熱で焼き切るわけだから仕方がないといえば仕方がないか。

「お嬢さん、起きなさいな。あの忌々しい義眼はもう消えたぜ。ほら」

 手鏡を渡して、左目を見せる。そこにあった不気味な義眼は消えてなくなり、ジャンヌの左目には空洞が出来ていた。

「後で義眼をあげるから。前のよりかは視力落ちるけど」

「助かる」

「妹さんからも、あの薄気味悪い目玉は消えた。悪趣味な巨人の呪いは、たった今過ぎ去ったんだ。念の為、この後再検査は受けてもらうことになるけど、多分大丈夫だろう。これで姉妹仲良く人間の世界に帰れるよ。おめでとさん」

 ジャンヌの右肩にポンと手を置き、射爆場の出口へ向かう。

「何から何まで感謝する。ありがとう」

「礼ならマリアさんに言ってくれ。元はといえば、あの人をあんたが捕まえたのが事の始まりだ。それがなければ、お前さんら姉妹のことなんか気付きもしなかったろうさ……」

 キーを押してドアを開け、外に出る前に、後ろへ振り返って私はこう言った。

「それとさ……、ジャンヌさん。貴女と仕事するという話は、申し訳ないが忘れてくれ……。汚れ仕事するには、あんたはちょっと荷物が大きすぎる。それ抱えて血に塗れるよりかは、全部忘れて堅気の世界に脱出する方がずっといいさ……。生きている間まで……、地獄にいることはない……」

 

 

 

 

 

 

「いよぉ。カッコ良かったぜ」

 外に出るとミライが手をひらひらさせて待っていた。

「なんだ、帰ってたのか」

「死んだと思った?」

「あんな物で死ぬほど、脆くないでしょ」

「ああ。あれで死んだなら次世代型の名折れさ」

「名折れね……。折れるといえば、衛星はもう使えなさそう?」

 部品が吹き飛んでも使えるようではどうにもならない。あんな物をこれからも空の上に置かれたら、こっちの仕事が立ち行かなくなる。

「問題ない。アジト消滅後に調べに行ったら、基部はもう焼け焦げていて使い物にならなかったし、砲身も溶けて再使用は無理な状態だった。あれなら大丈夫だ」

「そう……、良かった……」

 

 

 

 

 司令室のドアを開けて、報告に入る。

「お疲れさん。2人ともよく働いてくれた」

「ありがとうございます……。早速ですが……、今回の案件の重要参考人のロベスピエール姉妹から……、アルゴスの目を切除しました……」

「衛星兵器ネメシスも最大出力で発射したことや複数回にわたる使用から機体は大破しました。基部や砲身の破損具合から、修復はもはや不可能かと思われます」

「よく分かった。正式な報告書は改めて提出してもらうとして……、こちらからも2人に報告しておく事がある」

「何でしょう」

「まずロベスピエール姉妹についてだが、アメリカ政府は死亡扱いにしている。アジト跡地から2人の遺体が発見されなかったことやネメシスの威力からそう判断したとのことだ」

「となると……、あの姉妹については一先ず安心ということですね……」

「そう考えて良いだろう。ただ、これからは名前を変えて生活してもらわなくてはならない。特にジャンヌ・ロベスピエールは、テロ事件を起こしていることもある。それくらいはしなくてはな」

「そこは仕方ないですね。仰る通り、あんな騒動をしでかしたんですから。しかし……、これから先、あの2人はどこで生活するんです……? まさかこの潜水艦なんて訳にはいかないでしょう……。それに戸籍も吹き飛んだ訳ですし……」

 折角、人間の世界に戻れたんだ。魚のように、水の中で生き続けるわけにもいかないだろう。

「それについては、八紘兄貴と連絡を取りつつ、対策を練ることにする。迂闊な事をして生存がバレると、姉の方はアメリカへの引き渡しという可能性も出てくるからな」

「確かにそういうルールありますものね」

「ああ。だからこそ慎重に事を進めねばならん。それに日本でもテロリストと発覚すれば、ただでは済まない可能性が高いからな」

 あの子の身の安全を保障するのは、予想以上に大変らしい。マリアさん達の時は、被害を被ったのがほぼ日本だけだったことから、アメリカは口出しできなかったけど、今回は逆だからね。

「日本で戸籍を作るだけじゃ、どうにもならないですね」

「その通りだ。こればかりは俺の一存ではどうにもならない。あの姉妹を日本に受け入れるかどうかは、日本政府次第だからな」

「そりゃまぁ、そうですね。受け入れるかどうかは、国の勝手ですし」

「生まれ故郷に送り届けたとしても、はねつけられたら最後だ……」

「中々、難しい話ですね……。難民とは違うし……」

「全くだ」

 うーん……、頭抱えたくなるな。命を拾ったら拾ったで問題発生だなんてさ。

「この話については、今後どうなるかはまだ分からん。ただできる限り2人に不利益にはならないように取り計らうつもりだ」

「それは良かった……」

 

 

 

 

 

 

「次にネメシスだが、修復や再生産はもう不可能なようだ」

「ほほう。それは法的にですか。それとも資金繰りの都合ですか」

「両方だ。まずあの兵器自体が、宇宙条約違反という批判が国内外から殺到したとのことだ。目的も冷戦時代の戦略防衛構想とは異なり、明確なものではなかったからな」

「そういえば……、一体何のための武器なのか……、分からずじまいでしたね……」

 弦十郎さんの言う通り、弾道ミサイル撃ち落とし装置ということならまだ分かるけど、それにしたって威力が強過ぎた。上手くいけば、街一つは軽く吹き飛ばせそうな代物だったもの。

「ああ。それに加えて、製造や運用の為のコストが莫大で、また1から作るにしても、その為の予算を割く余裕もないとの事だ。修復するにしても、多額の金が吹き飛ぶのは間違いない」

「確かに莫大なお鳥目が必要でしょうしね。レーザー兵器作って、衛星軌道上に乗せるなんて。それに基礎から壊されたんじゃ……」

 莫大な金かけて直すのも、アホらしくなるか。

「その結果、ネメシスの同型機の開発は取りやめとなった。流石にこれ以上足掻いても、マイナスの評価をつけられては国益に反すると向こうさんも判断したらしい」

「賢明な選択ですね」

「全くだ」

 

 

 

 

「最後にマリアくんについてだが、今回の件ではお咎めなしで済みそうだ」

「そうですか……。良かった……」

「ジャンヌ・ロベスピエールからS.O.N.G.本部の砲撃というカードを切られて、その上監視付きで心身共に他にやりようがない状態に追い込まれていたとのことだからな。処罰しようにもしようがないといったところだ」

「なるほど。言うなれば、あの女のマジックハンドにならざるをえなかったってところですか」

「そんなところだ」

「それなら……、確かに責任の問いようがないですね……」

 F.I.S.の時とは違い、本当に仕方がなかったわけだし。今回の事で責任を取らせるのは、いくら何でも酷な話だから。

「幹部連中の意見もこれで一致している。今回の件で責任があるのは、ジャンヌ・ロベスピエールだけだとな。そして彼女は、法的に死亡したことになっている。ここまで来れば、今回の騒ぎは、誰にも責任を負わせられない形になる」

「完璧ですね。これで全ては有耶無耶になる」

 ミライの言葉に、弦十郎さんがニヤリとして頷く。

「俺からの報告事項は以上だ。2人とも御苦労だった」

「ありがとうございます」

「失礼しました」

 

 

 

 

 

 かくて1週間近くに渡る馬鹿騒ぎは、色んなものが吹き飛ぶ形で終わりを告げた。

 日本に到着した後、報告書を認めたミライは報酬を受け取って、さっさと帰っていった。この後、クーリェの宿題の手伝いがあるからって。

 私はといえば、マリアさん帰還パーティーをそっと抜け出して、この前、クノスペから貰ったドン・ペリニョンとワイングラス2個を持って、留置施設に行った。

 面会室に入ると、既にジャンヌは椅子にかけて待っていた。

「やぁ、調子はどう?」

「悪くはない……。ただ落ち着かないな」

「檻暮らしなんてそんなものさ。気休めかもしれないが、じきに慣れるよ……」

 コルク抜きを使って瓶を開け、テーブルの上に置いたワイングラスにシャンパンを注ぐ。

「20歳は越えてる?」

「ああ」

「なら良し。それじゃ、貴女たち姉妹が人間に戻った記念に」

「乾杯」

「乾杯」

 

 

 

 

 

「メルはどうしている?」

 ドン・ペリニョンをグラス半分だけ飲んだジャンヌが、心配そうに私に尋ねた。やはり妹さんのことが、第一らしい。

「あの子なら大丈夫さ。あと2、3日もすれば目を覚ますらしいよ」

「そうか。それは良かった……。申し訳ないが、一つ頼みたい事がある」

「何? 仕事に加えて欲しいの?」

 あれではやはり納得してくれなかったかと思ったら、そうではないと首を横に振っていた。

「いや、それはもういい。お前の言う通り、メルを抱えたまま、あちこちの軍事施設を荒らし回るのは、確かにリスクが大きすぎる。下手をすれば、元の木阿弥になりかねない。そう考えると、もう荒事からは身を引いたほうがいいと思ったんだ。だから仕事に加わるのは、こちらからも遠慮させてもらいたい」

「それを聞いて安心したよ。切符が有効なうちに、人間の世界にお帰りなさいな。それはさておき、頼みって何?」

「メルのことだ。ここの司令から聞いたのだが、私の処遇は未だに安定しないらしい」

「そのようだね」

「それで……、万が一私にツキがなかったら、メルの事を頼めないか?」

「妹さんを……?」

「私の場合、起こした事が事だけに、生存がバレたらどうにもならない可能性が高い。だがそうなった時、メルの保護者が誰一人として居なくなってしまうんだ。なんとか頼めないか」

「申し訳ないけど、それはできない相談だ……」

「そんな!」

 縋り付こうとするジャンヌを落ち着かせて、私は理由を答えた。

「知っての通り、私は方々のヤバイ施設を荒らし回っているものでね。そんなのが妹さんの面倒を見ると、ろくな事にならないのは目に見えている。それに……」

「それに?」

「私の体目当ての連中に襲われたときに、子供を無駄死にさせたんだよ。とてもじゃないけど、妹さんがそんな目に遭えば、君に申し訳がたたない」

「そうか……」

「代わりと言ってはなんだけど、この組織の司令に、話をつけておくといい。あの人の事だから、自分の力の及ぶ限り、手を尽くしてくれる。ルールの扱い方は心得ているし、私よりもずっと顔が広い。あの人に頼むことをお勧めするよ。若しくはマリアさんでもありかもしれない」

「マリアか……。しかし私は……」

「脅した事に関しては、今更どうしようもないけど、妹さんの事については頼んでみるだけ頼んでみたら? 情け深い性格だし、妹さんのことは心配していたから、きっと力にはなってくれるさ。もしもの時は、私からも口添えするから」

「分かった。だがどちらもダメな時は……」

「その時は……、私が保護者になるさ。子育てなんて柄じゃないが、子持ちの知り合いはそれなりにいるんでね」

「助かる」

 その言葉と共に、残りのシャンパンを口に運ぶジャンヌ。そして飲み干したところで、渋い顔をした。

「妙だな。急に苦くなった……」

「ならそろそろお開きにしようか。ゆっくり休むといい」

「そうさせてもらう。ではまたの機会に」

「お休みなさい。それと神の御加護があらんことを……」

「君にこそ」

 

 

 

 

 

 面会室を出ると、マリアさんが通路の壁にもたれかかっていた。面会にでも来たのだろうか。

「一足遅かったですね……。あの人、もう寝てしまいましたよ……」

「あら、そうなの。残念ね」

「明日の朝、会えますよ……今日はもう引き上げましょう……」

 非常灯だけが照らす通路を2人で歩いて、それぞれの居住ブロックへと引き揚げる。

「あの子、これからどうなるのかしら……」

「さぁてね……。お上が決めることですから……」

「随分と薄情な答えね」

「屋根の上でヴァイオリンを弾いている奴が、絶対に落ちないなんて言えますか?」

「無理ね」

「つまりはそういうことですよ……。聞くならく、あの人には装者としての素質なんかないし……、あの目玉だって尻に火がつく事がなければ動かせなかった……。マリアさん達みたく、何か芸ができる訳でもないですからね……。ひとつ間違えば本当にあの世行きになる可能性は、かなり高いです……。今できることは、あの子の悪運の強さと弦十郎さんと八紘さんが事をいい塩梅に落ち着けてくれることを祈るだけですよ……」

「なら、そうなることを祈りましょうか……」

「それがいいです……」




如何でしたか。
このジャンヌというキャラクター、出来ることと目的は、闇未来さんに非常に近いんです。違うところといえば、スポンサーがいない事ややり口が傍若無人にも程があることくらいでしょうか。そこのところは、未来はまだマシだと言えます。
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