なので本編とは違う道筋を辿ったパラレルワールドになります。
さてさて今日も今日とてバイク屋稼業。
親父さんに仕込まれた技術を使って、バイクの修理をする。やっぱりいいね、バイクいじり。
「ここ、元の世界らしいんだけど実感ないんだよね。何にも覚えてないし」
記憶が完全に消されたせいか、なんかピンとこない。もしかしたら私には別に故郷も両親もないのかもしれない。でもそんなことは大したことじゃない。私は私、ここで生きていく術もあるし。
店から見える瀬戸内海は今日も綺麗だ。私の頭の中みたいに。
「さてと、この仕事もこれで終わりと…」
油まみれになった作業着を脱いで、お湯と洗剤を入れたバケツに入れる。
お風呂に入ってゆっくりと疲れをとる。あったかい。海を見つつ、のんびりとお湯に浸かってられるのも結構贅沢なことだ。
「お日様はまだ高いけど…、こういうのも良いよね」
身体が機械なのにお湯に浸かってられるのかなんて、私を見たら言う人がいるかもしれないけど、これでも元は多分人間だったはず。だからこうしていたらなんだか疲れがとれるような気がするんだよね。
「ふー」
大分身体も温まってきたし、そろそろ上がるか…、
「うわぁっ!」
な、何⁈下の方で何か大きな物が落ちたような音がしたんだけど!慌てて近くにあったバスタオルを身体に巻きつけて、窓から下を覗く。
下を見てみるとまあ大変。トラックがひっくり返って、その上荷崩れしていた。鉄パイプを運んでいたらしいが、何本か落っこちたみたいだ。
「たいへん、たいへん!」
急いで適当な服に着替えて、トラックの方に駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!」
運転手さんは一応、届け先と運送会社と警察、あとJAFには連絡したそうだ。ただ問題がある。トラックを元に戻そうにもレッカーが来るのには時間がかかる。なので…、
「よいしょ……っと」
「お、おい。大丈夫か?」
「これくらいなら…」
トラックの下に手が差し込める余裕があった。そこからトラックをある程度の高さまで持ち上げて余裕を作り、今度は全身を使って押し上げた。結構重いが、大したことはない。改造されているだけあって、この身体、パワーはかなりあるもの。
「まるで起重機だ…」
「よく言われましたよ、人間起重機の麻由って…、それっ!」
鈍い音を立ててトラックが道の上に立った。どんなもんだい!
「本当、ありがとな。これ少ないけど…」
「いやいや、良いですって!」
御礼にお金を渡されそうになったので、断った。私からしたらそれほどのことしたわけじゃないし。
「いや、頼むから受け取ってくれないか。俺の気がすまない」
「は、はい…」
そこまで言われちゃうとねぇ。
「まあ、ここの道はちょっと細いから、あまり使わないに越したことはないですよ」
「そうするよ、それじゃあな」
運転手さんは、レッカー車に乗っていった。
「ちょっと疲れちゃったな…、ここにはショッカーもゲルショッカーもいないから久々に身体動かした気分だよ」
「麻由さーん」
海を見ながら、背伸びしていると見知った声がする。
「んっ?あー、友奈ちゃん。あの子のことだから…、あれかな」
急いで店の中に戻る。
「麻由さん、あれ、出来ていますか?」
「出来たよ、これでいいかな」
この子の親友の為の車椅子。一台何かの折に壊しちゃったらしく、何とかならないかとこの子が持ってきたんだよね。自分のお小遣いと一緒に。まぁ、一銭もとらずにやったんだけどね。自分で出来る範囲でしたんだもの。これくらいはしないと。
「これなら簡単には壊れんさ。火の中に飛び込もうが水に飛び込もうがね」
「結構、頑丈なんですね。ありがとうございます!」
「気をつけて帰るんだよー。あとお友達によろしくねー」
まぁ、こんな日があってもいいだろうな
如何でしたか。
最後のあの子は、少し出してみました。勇者部所属しか見られなかったのですが、面白かったので。
Merry Christmas .